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第2章 謎は霧の中に
Ver.3/第26話
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「はあー! 出られた!」
グッと大きな背伸びをして、ハルマが大扉から出てきた。
「おかえ……り!?」
出迎えたチップ達は、しかし、そこで目を疑う光景に動きを止めてしまった。
「ここから出るのって、何十年ぶりなんだ?」
ハルマの後ろから続けて出てきたのも、ハルマだったからである。
違いと言えば、先に出てきた方の恰好が執事服というくらいであろう。
「え? どういうこと? マリーちゃんが一緒の方が、本物だよな?」
さすがに、見慣れた恰好をしているハルマが本物であるとすぐに気づいたが、館の中で何があったのか、さっぱり理解できなかったのである。
「ああ。これは失礼しました。改めて、ご挨拶を」
執事服のセバスチャンは、自分の姿形がハルマと同じであることを思い出すと、ポンと煙に包まれ本来の姿へと戻っていた。
「拙者、ハンゾウと申します。この館に仕えていた忍びでござる。この度、ハルマ殿に仕えることになったでござるよ。以後、お見知りおきを」
「え!? ハンゾウ? 忍び? 俺に仕えるの? いや、まあ、そりゃそうか」
深々と頭を下げたハンゾウに対して最初に驚きの声を上げたのは、ハルマであった。
「何でハル君が一番驚いてるのよ?」
ユキチも呆れ顔である。
「いや、だって。さっきまでセバスチャンって名乗ってたから。それに、その姿も初めて見るし……。え!? スケルトン!?」
色々と状況を理解できないハルマだったが、ハンゾウの姿を見て益々混乱していた。
下げた頭を戻すと、そこには骸骨の頭が乗っていたのである。忍者特有の頭巾と額当てを付けているので、お面を付けているようにも見えるが、落ちくぼんだ目の位置は、ぽっかり空洞となっている。
「拙者、忍びの里の秘術にて、不死の体でござる。故に、この館で永きに渡り、主のお世話をできていたのでござるが、それもハルマ殿が解放してくださった。仕える主が館からいなくなってしまったゆえ、今後は新たにハルマ殿に主になっていただくでござるよ」
「え? いや。別に構わないけど、クエストの報酬なら、ちゃんと貰ったぞ?」
何度目になるのか、事後承諾による仲間入りに、呆れるやら戸惑うやらである。
「ああ。その杖は、そのままお使いくだされ。拙者、ハルマ殿の心意気に感銘を受けたゆえ、仕えることを決めたので、お気になさらず」
ハンゾウが改めてハルマに宣言すると、視界の中にアナウンスが表示された。
『クエスト/謎の館をクリアしました』
『報酬として、花鳥闇霧の杖を手に入れました』
『EXクエスト/呪われし館をクリアしました』
『クリア報酬として、ハンゾウとの盟約が結ばれました』
『詳細はなかまメニューから確認できますが、テイムモンスターと同じ扱いになります』
「まあ、でも、お姉ちゃんの予想はちょっとだけハズレちゃったね。カワイイ系じゃなくて、残念だったねー」
ユキチは、これがハルマかと感心していたが、無言のままの姉に声をかけていた。
しかし、当のアヤネは、ぶるぶると震え、我慢の限界を超えたようにクワッと目を開き、声を上げていた。
「かわいいぃぃぃ! いやーん。スケルトンとか、いかにもファンタジーじゃない! まーたハル君だけズルいぃぃ!!」
一気にテンションの上がったアヤネは、ハンゾウの回りをぐるぐるしながら、飽きることなく観察を続けていた。
その様子を、他のメンバーは「ああ、そういう感じなのか……」と、微苦笑を浮かべながら見守るのであった。
グッと大きな背伸びをして、ハルマが大扉から出てきた。
「おかえ……り!?」
出迎えたチップ達は、しかし、そこで目を疑う光景に動きを止めてしまった。
「ここから出るのって、何十年ぶりなんだ?」
ハルマの後ろから続けて出てきたのも、ハルマだったからである。
違いと言えば、先に出てきた方の恰好が執事服というくらいであろう。
「え? どういうこと? マリーちゃんが一緒の方が、本物だよな?」
さすがに、見慣れた恰好をしているハルマが本物であるとすぐに気づいたが、館の中で何があったのか、さっぱり理解できなかったのである。
「ああ。これは失礼しました。改めて、ご挨拶を」
執事服のセバスチャンは、自分の姿形がハルマと同じであることを思い出すと、ポンと煙に包まれ本来の姿へと戻っていた。
「拙者、ハンゾウと申します。この館に仕えていた忍びでござる。この度、ハルマ殿に仕えることになったでござるよ。以後、お見知りおきを」
「え!? ハンゾウ? 忍び? 俺に仕えるの? いや、まあ、そりゃそうか」
深々と頭を下げたハンゾウに対して最初に驚きの声を上げたのは、ハルマであった。
「何でハル君が一番驚いてるのよ?」
ユキチも呆れ顔である。
「いや、だって。さっきまでセバスチャンって名乗ってたから。それに、その姿も初めて見るし……。え!? スケルトン!?」
色々と状況を理解できないハルマだったが、ハンゾウの姿を見て益々混乱していた。
下げた頭を戻すと、そこには骸骨の頭が乗っていたのである。忍者特有の頭巾と額当てを付けているので、お面を付けているようにも見えるが、落ちくぼんだ目の位置は、ぽっかり空洞となっている。
「拙者、忍びの里の秘術にて、不死の体でござる。故に、この館で永きに渡り、主のお世話をできていたのでござるが、それもハルマ殿が解放してくださった。仕える主が館からいなくなってしまったゆえ、今後は新たにハルマ殿に主になっていただくでござるよ」
「え? いや。別に構わないけど、クエストの報酬なら、ちゃんと貰ったぞ?」
何度目になるのか、事後承諾による仲間入りに、呆れるやら戸惑うやらである。
「ああ。その杖は、そのままお使いくだされ。拙者、ハルマ殿の心意気に感銘を受けたゆえ、仕えることを決めたので、お気になさらず」
ハンゾウが改めてハルマに宣言すると、視界の中にアナウンスが表示された。
『クエスト/謎の館をクリアしました』
『報酬として、花鳥闇霧の杖を手に入れました』
『EXクエスト/呪われし館をクリアしました』
『クリア報酬として、ハンゾウとの盟約が結ばれました』
『詳細はなかまメニューから確認できますが、テイムモンスターと同じ扱いになります』
「まあ、でも、お姉ちゃんの予想はちょっとだけハズレちゃったね。カワイイ系じゃなくて、残念だったねー」
ユキチは、これがハルマかと感心していたが、無言のままの姉に声をかけていた。
しかし、当のアヤネは、ぶるぶると震え、我慢の限界を超えたようにクワッと目を開き、声を上げていた。
「かわいいぃぃぃ! いやーん。スケルトンとか、いかにもファンタジーじゃない! まーたハル君だけズルいぃぃ!!」
一気にテンションの上がったアヤネは、ハンゾウの回りをぐるぐるしながら、飽きることなく観察を続けていた。
その様子を、他のメンバーは「ああ、そういう感じなのか……」と、微苦笑を浮かべながら見守るのであった。
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