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第2章 謎は霧の中に
Ver.3/第22話
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「うわー。派手に壊れてるな」
部屋を出てすぐ、周囲の様子に身じろぐ。が、そこで奇妙な反応を捕えていた。
「あん? 誰かいる?」
最初は、チップ達が別の部屋にいて、合流できるのかとも思ったが、近くにいるPC及びNPCの気配を見つけることができるという〈発見〉のスキルに、反応はひとつしかない。
ハルマは誘導されるように視線を反応があった方向、天井へと向けていた。
すると、天井の穴からこちらを覗き込んでいる誰かと視線がぶつかった気がした。
「え!?」
隠れていた人物は気づかれたことに驚いたのか、驚きの声を発してしまったことに驚いたのか、天井裏を駆け抜けて、スキルの範囲から消えてしまう。
「お? 待ってー」
逃げられると追いかけたくなるものだ。
しかし、逃げ込んだ先は壁の向こうの空間であり、大広間に降りたところで通路も扉も見当たらない。
吹き抜けから1階を見下ろし、どこかに抜け道でもないかと探してみるが、重厚な石造りの壁がそびえるだけである。
「ええ……。ってことは、あの穴から追いかけないとダメなのか?」
天井にはシャンデリアがぶらさがっているが、例え飛び移れたとしても届きそうにない。
ハルマが見上げている場所からでも、天井まで5メートル以上はあるので、普通に飛び上がったところで届く高さでもなかった。ジャンプ力はSTRとAGIの高さによって変化するが、どちらかが高ければ良いというものでもなく、両方のバランスで決定されるのだ。そのため、覆面でワーウルフになろうが、ワーラビットになろうが、ジャンプ力は低いままなのである。ちなみに、空中での制御能力にはVITとDEXが必要となり、大ジャンプからのアクロバティックな動きは、ステータスの要求値がかなり高い。
ハルマの仲間内で最もジャンプ力が高いのはモカで、次いでシュンであろう。ハルマよりもステータスの高いゴリの場合は、装備品の重さの関係でハルマと同程度しかないのが現状だ。
ジャンプ力に優れたプレイヤーであれば、5メートルくらいであれば到達できる高さと言えるだろうが、実現できる者の数は、そう多くないであろう。
対して、ハルマの場合、5メートルの高さまでジャンプする能力はない。つまり、ここでお手上げ。……の、はずなのだが、ひとつの手段が残されていた。
〈大工〉のスキルを使って地道に1階から階段を築き上げることも可能ではあるが、さすがに時間が掛かり過ぎる。
その点、もっと手っ取り早い方法を身につけている。
「このくらいなら、余裕だな」
そうつぶやくと、ひとつのアイテムを取り出していた。
「ほい。奇術〈人体浮遊〉」
〈手品〉から〈奇術〉に進化した時に覚えたスキルのひとつである。
体を浮遊させる奇術であるが、タネは単純で、空中に足場となる直径50センチくらいの透明の円盤を配置して、その上に乗る、というものだ。
円盤には細い支柱が付いているので、足場となる透明の円盤をどこかに固定できれば、いくつでも連鎖して好きな場所に設置できるため、空中を歩いているように見せることができる。
本来、このスキルも、手の届く範囲にしか設置はできないのだが、トラップと同じ性質を持つからか、〈離れ技〉との併用も可能だった。
そのため、遠隔設置もできるので、かなり離れた場所まで足場を置くことができるのだ。
ハルマ以外には見えない即席の階段が出来上がると、早速天井の穴に向かって移動を開始するのだった。
部屋を出てすぐ、周囲の様子に身じろぐ。が、そこで奇妙な反応を捕えていた。
「あん? 誰かいる?」
最初は、チップ達が別の部屋にいて、合流できるのかとも思ったが、近くにいるPC及びNPCの気配を見つけることができるという〈発見〉のスキルに、反応はひとつしかない。
ハルマは誘導されるように視線を反応があった方向、天井へと向けていた。
すると、天井の穴からこちらを覗き込んでいる誰かと視線がぶつかった気がした。
「え!?」
隠れていた人物は気づかれたことに驚いたのか、驚きの声を発してしまったことに驚いたのか、天井裏を駆け抜けて、スキルの範囲から消えてしまう。
「お? 待ってー」
逃げられると追いかけたくなるものだ。
しかし、逃げ込んだ先は壁の向こうの空間であり、大広間に降りたところで通路も扉も見当たらない。
吹き抜けから1階を見下ろし、どこかに抜け道でもないかと探してみるが、重厚な石造りの壁がそびえるだけである。
「ええ……。ってことは、あの穴から追いかけないとダメなのか?」
天井にはシャンデリアがぶらさがっているが、例え飛び移れたとしても届きそうにない。
ハルマが見上げている場所からでも、天井まで5メートル以上はあるので、普通に飛び上がったところで届く高さでもなかった。ジャンプ力はSTRとAGIの高さによって変化するが、どちらかが高ければ良いというものでもなく、両方のバランスで決定されるのだ。そのため、覆面でワーウルフになろうが、ワーラビットになろうが、ジャンプ力は低いままなのである。ちなみに、空中での制御能力にはVITとDEXが必要となり、大ジャンプからのアクロバティックな動きは、ステータスの要求値がかなり高い。
ハルマの仲間内で最もジャンプ力が高いのはモカで、次いでシュンであろう。ハルマよりもステータスの高いゴリの場合は、装備品の重さの関係でハルマと同程度しかないのが現状だ。
ジャンプ力に優れたプレイヤーであれば、5メートルくらいであれば到達できる高さと言えるだろうが、実現できる者の数は、そう多くないであろう。
対して、ハルマの場合、5メートルの高さまでジャンプする能力はない。つまり、ここでお手上げ。……の、はずなのだが、ひとつの手段が残されていた。
〈大工〉のスキルを使って地道に1階から階段を築き上げることも可能ではあるが、さすがに時間が掛かり過ぎる。
その点、もっと手っ取り早い方法を身につけている。
「このくらいなら、余裕だな」
そうつぶやくと、ひとつのアイテムを取り出していた。
「ほい。奇術〈人体浮遊〉」
〈手品〉から〈奇術〉に進化した時に覚えたスキルのひとつである。
体を浮遊させる奇術であるが、タネは単純で、空中に足場となる直径50センチくらいの透明の円盤を配置して、その上に乗る、というものだ。
円盤には細い支柱が付いているので、足場となる透明の円盤をどこかに固定できれば、いくつでも連鎖して好きな場所に設置できるため、空中を歩いているように見せることができる。
本来、このスキルも、手の届く範囲にしか設置はできないのだが、トラップと同じ性質を持つからか、〈離れ技〉との併用も可能だった。
そのため、遠隔設置もできるので、かなり離れた場所まで足場を置くことができるのだ。
ハルマ以外には見えない即席の階段が出来上がると、早速天井の穴に向かって移動を開始するのだった。
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