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第9章 魔除けのペンダント
Ver.2/第72話
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ウィンドレッドに到着し、馴染みとも呼べるカフェに向かう。
この店のマスターであるウィリアムが、今回のクエストの届け先だ。
「あ! ダイバーさんだ!」
店が見えてくると、見慣れた不審人物が寛いでいるのが目に入り、マリーが飛んでいく。
シルクハットに真っ白なチョビ髭、目元を隠すマスクと全身を覆うマント。ハルマの〈手品〉の師匠であるNPCであり、マリーと出会うキッカケを作った人物でもある。
マリーに気づいたダイバーは、仮面でよくわからないながらも、穏やかな笑みを浮かべ手を振ってきた。
「やあ、マリー。元気にしてたかい?」
「うん! ハルマのおかげで毎日楽しいよ! ラフも大活躍してるよ!」
「おお、おお。それは良かった」
すっかり祖父と孫の様相である。
「お久しぶりです。ダイバーさん」
ハルマも遅れて到着すると、頭を下げる。
「はい、お久しぶりです。マリーも楽しくやれているようで、何よりです」
「ははは……。確かに、楽しくやってますね。トラブルも多いですけど」
「ほっほっほ。それは、この子の本分ですからね。調子が良い証拠ですよ。ところでハルマさん。手品の腕前も上がっているようです。新しい手品をお教えしますよ。今回から、ちょっと大掛かりなものを紹介しましょう」
そういうと、ダイバーはカバンの中からいくつかのアイテムを取り出し、ハルマに渡してきた。
『スキル〈手品Ⅱ〉が〈手品Ⅲ〉に成長し、〈奇術Ⅰ〉に進化しました』
『新しい奇術専用道具のレシピを覚えました』
『DEXが常時90増える』
【取得条件/規定値以上のDEXで、規定の回数手品を披露する】
「お? 進化した」
手品と奇術の違いはよくわからないが、何となく派手になるイメージだろうか。進化と表現されているが、スキルの使い方は変わらないようである。
「水面歩行とか、普通に便利そうだな」
いくつか並んだ〈奇術〉のスキルに目を通し、〈手品〉よりも大掛かりだと説明された意味を理解した。
この他にも人体浮遊であるとか、カーテンコールというものがあるようだ。
「それでは、良いお年を」
ふむふむとスキルを確認していると、ダイバーは店を後にしてしまった。どうやらハルマへの用事が済んだらしい。
「こういうところは、やっぱりNPCなんだよな……。良いお年をー」
立ち去るダイバーの背中に向かって手を振り、本来の目的である届け物をするために店の中へと入っていく。
「やあ、いらっしゃいませ。親父達は、迷惑かけてませんか?」
ハルマの姿を見るなり、マスターは笑みを浮かべながら尋ねてきた。
「迷惑だなんて……。いつも助けられてますよ」
「そうですか。良かったです。それで、今日は?」
「ご両親から、新年の贈り物を預かっていまして。届けに来たんですよ」
インベントリから預かっていた小包を取り出し、手渡す。
「あー。もう、そんな時期か……。わざわざ、ありがとうございます」
マスターは小包を開封すると、中から緑色のツノがモチーフになっているペンダントを取り出していた。
「ペンダント?」
新年の贈り物と聞いていたので、不思議に思う。
「あれ? 知りませんか?」
そう告げると、首元から同じデザインのペンダントを取り出した。違うのは、首にあるものには、ツノがいくつもぶら下がっている点だ。
「どういう由来かは知りませんが、この緑色のツノを身につけていると、魔除けになるって言い伝えがあって、昔から親しい人に無病息災を願って、1年の終わりに贈る風習があるんですよ。で、1年使い続けたペンダントを奉納して、新しい物と取り換えるんです」
「へー。それって、誰からもらってもご利益あるんですか?」
「ご利益があるかどうかはわかりませんが、縁起物ですからね。誰からもらっても嬉しいものですよ」
そういうと、少し自慢気に、いくつも付けられたツノをジャラジャラと揺らして見せる。
それを見つめながら、ハルマは「ふーん」と、しばらく考え事をするのだった。
この店のマスターであるウィリアムが、今回のクエストの届け先だ。
「あ! ダイバーさんだ!」
店が見えてくると、見慣れた不審人物が寛いでいるのが目に入り、マリーが飛んでいく。
シルクハットに真っ白なチョビ髭、目元を隠すマスクと全身を覆うマント。ハルマの〈手品〉の師匠であるNPCであり、マリーと出会うキッカケを作った人物でもある。
マリーに気づいたダイバーは、仮面でよくわからないながらも、穏やかな笑みを浮かべ手を振ってきた。
「やあ、マリー。元気にしてたかい?」
「うん! ハルマのおかげで毎日楽しいよ! ラフも大活躍してるよ!」
「おお、おお。それは良かった」
すっかり祖父と孫の様相である。
「お久しぶりです。ダイバーさん」
ハルマも遅れて到着すると、頭を下げる。
「はい、お久しぶりです。マリーも楽しくやれているようで、何よりです」
「ははは……。確かに、楽しくやってますね。トラブルも多いですけど」
「ほっほっほ。それは、この子の本分ですからね。調子が良い証拠ですよ。ところでハルマさん。手品の腕前も上がっているようです。新しい手品をお教えしますよ。今回から、ちょっと大掛かりなものを紹介しましょう」
そういうと、ダイバーはカバンの中からいくつかのアイテムを取り出し、ハルマに渡してきた。
『スキル〈手品Ⅱ〉が〈手品Ⅲ〉に成長し、〈奇術Ⅰ〉に進化しました』
『新しい奇術専用道具のレシピを覚えました』
『DEXが常時90増える』
【取得条件/規定値以上のDEXで、規定の回数手品を披露する】
「お? 進化した」
手品と奇術の違いはよくわからないが、何となく派手になるイメージだろうか。進化と表現されているが、スキルの使い方は変わらないようである。
「水面歩行とか、普通に便利そうだな」
いくつか並んだ〈奇術〉のスキルに目を通し、〈手品〉よりも大掛かりだと説明された意味を理解した。
この他にも人体浮遊であるとか、カーテンコールというものがあるようだ。
「それでは、良いお年を」
ふむふむとスキルを確認していると、ダイバーは店を後にしてしまった。どうやらハルマへの用事が済んだらしい。
「こういうところは、やっぱりNPCなんだよな……。良いお年をー」
立ち去るダイバーの背中に向かって手を振り、本来の目的である届け物をするために店の中へと入っていく。
「やあ、いらっしゃいませ。親父達は、迷惑かけてませんか?」
ハルマの姿を見るなり、マスターは笑みを浮かべながら尋ねてきた。
「迷惑だなんて……。いつも助けられてますよ」
「そうですか。良かったです。それで、今日は?」
「ご両親から、新年の贈り物を預かっていまして。届けに来たんですよ」
インベントリから預かっていた小包を取り出し、手渡す。
「あー。もう、そんな時期か……。わざわざ、ありがとうございます」
マスターは小包を開封すると、中から緑色のツノがモチーフになっているペンダントを取り出していた。
「ペンダント?」
新年の贈り物と聞いていたので、不思議に思う。
「あれ? 知りませんか?」
そう告げると、首元から同じデザインのペンダントを取り出した。違うのは、首にあるものには、ツノがいくつもぶら下がっている点だ。
「どういう由来かは知りませんが、この緑色のツノを身につけていると、魔除けになるって言い伝えがあって、昔から親しい人に無病息災を願って、1年の終わりに贈る風習があるんですよ。で、1年使い続けたペンダントを奉納して、新しい物と取り換えるんです」
「へー。それって、誰からもらってもご利益あるんですか?」
「ご利益があるかどうかはわかりませんが、縁起物ですからね。誰からもらっても嬉しいものですよ」
そういうと、少し自慢気に、いくつも付けられたツノをジャラジャラと揺らして見せる。
それを見つめながら、ハルマは「ふーん」と、しばらく考え事をするのだった。
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