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第6章 癒しの水を求めて
Ver.2/第46話
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「で? 長老樹はどうやったら元気になるんだ?」
地上に戻り、長老樹を見上げたところで困ってしまう。
天に広く伸びた枝の先には、大きな葉が茂っているが、そのほとんどが枯れたように赤茶けた色になってしまっている。
おそらく、ジャアクビーに養分を吸われたことが原因なので、失った活力を補充してやることで復活するのだろうが、その手段がわからない。
「植物の成長に必要なものっていったら、水と光と肥料ってところか……。光は申し分なさそうだから、水と肥料かな? 水を取りに来たのに、水をやらないといけないとは……」
おおよその見当をつけるも、すぐにできることはなさそうだったので、情報を得るためにダークエルフの里に向かうことにする。
「よく参った、戦士の集落の長、アルベルトの娘ニノエよ。そちらのお方が、風喰いを退治してくださった、英雄ハルマ様じゃな?」
「はい。里長様。こちらが風喰いを退治し、先ほど、長老樹に巣食う魔物を追い払った英雄ハルマ様です」
「なんと! 風喰いだけでなく、あの魔物どもまで……。ああ、なんとお礼を言ったらよいか……」
ニノエの案内がなければ、到底無理であろう複雑な手順を踏み、ようやく迷いの森を抜けると、スタンプの村よりも一回りほど大きいだけの小さな里があった。
森の民であるダークエルフ達は狩猟に出る期間も長いため、里の外で暮らす者も多いのだそうだ。
そうやって里の中を一頻り案内してもらい、里長との面会となったのだが、ニノエの変貌に吹き出しそうになるのを堪え、用件を切り出す。
「あのー。それで、ですね。問題の長老樹が、魔物達のせいでだいぶ弱っていまして……。活力を取り戻す方法を何かご存知ないかと伺いに来たのです」
「そういうことでしたか。それでしたら、水と肥料を与えると良いでしょう。水は、この森に水神様の眷属が棲まわれる湖がありますので、そこの水を使うと効果が大きいでしょう。エルフの水瓶を差し上げますので、お使いください」
そう告げられるとアナウンスが表示され、あっさりエルフの水瓶はインベントリの中に収納された。
これは案外、簡単に話が進むかと思ったが、やはり単純な話ではなかった。
「しかし、我らダークエルフは農耕には疎いものでして、肥料に詳しい者はおらぬのです。その手の知識は、人間の方が詳しいのではないでしょうか?」
「そうですか……。いや、水瓶だけでもありがたく使わせてもらいます」
申し訳なさそうな表情になる里長に笑顔を向けると、英雄を歓迎する宴の誘いを断り、というか振り切り、ダークエルフの里を後にするのだった。
地上に戻り、長老樹を見上げたところで困ってしまう。
天に広く伸びた枝の先には、大きな葉が茂っているが、そのほとんどが枯れたように赤茶けた色になってしまっている。
おそらく、ジャアクビーに養分を吸われたことが原因なので、失った活力を補充してやることで復活するのだろうが、その手段がわからない。
「植物の成長に必要なものっていったら、水と光と肥料ってところか……。光は申し分なさそうだから、水と肥料かな? 水を取りに来たのに、水をやらないといけないとは……」
おおよその見当をつけるも、すぐにできることはなさそうだったので、情報を得るためにダークエルフの里に向かうことにする。
「よく参った、戦士の集落の長、アルベルトの娘ニノエよ。そちらのお方が、風喰いを退治してくださった、英雄ハルマ様じゃな?」
「はい。里長様。こちらが風喰いを退治し、先ほど、長老樹に巣食う魔物を追い払った英雄ハルマ様です」
「なんと! 風喰いだけでなく、あの魔物どもまで……。ああ、なんとお礼を言ったらよいか……」
ニノエの案内がなければ、到底無理であろう複雑な手順を踏み、ようやく迷いの森を抜けると、スタンプの村よりも一回りほど大きいだけの小さな里があった。
森の民であるダークエルフ達は狩猟に出る期間も長いため、里の外で暮らす者も多いのだそうだ。
そうやって里の中を一頻り案内してもらい、里長との面会となったのだが、ニノエの変貌に吹き出しそうになるのを堪え、用件を切り出す。
「あのー。それで、ですね。問題の長老樹が、魔物達のせいでだいぶ弱っていまして……。活力を取り戻す方法を何かご存知ないかと伺いに来たのです」
「そういうことでしたか。それでしたら、水と肥料を与えると良いでしょう。水は、この森に水神様の眷属が棲まわれる湖がありますので、そこの水を使うと効果が大きいでしょう。エルフの水瓶を差し上げますので、お使いください」
そう告げられるとアナウンスが表示され、あっさりエルフの水瓶はインベントリの中に収納された。
これは案外、簡単に話が進むかと思ったが、やはり単純な話ではなかった。
「しかし、我らダークエルフは農耕には疎いものでして、肥料に詳しい者はおらぬのです。その手の知識は、人間の方が詳しいのではないでしょうか?」
「そうですか……。いや、水瓶だけでもありがたく使わせてもらいます」
申し訳なさそうな表情になる里長に笑顔を向けると、英雄を歓迎する宴の誘いを断り、というか振り切り、ダークエルフの里を後にするのだった。
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