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第12章 魔王城への挑戦 後編

Ver.1/第90話

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 魔王城の城門前に集団がいくつか現れる。
 総勢24人が挑むのは、パーティプレーを得意とするテスタプラス率いる魔王軍である。
 すでに魔王イベントも中盤に入っており、情報はだいぶ漏れてきているが未だ無敗を続けている魔王のひとりだった。
 魔王城の造りは、運営の用意した選択の扉、振り分けの天秤、瞬転の魔法陣、探索の扉、といった侵入者を分断させる仕掛けが緻密に配置され、24人が同時に魔王の間にたどり着くのは難しい。手分けしてルートを探っていかなければ、1時間の制限時間であっても、あっという間に過ぎてしまうからだ。15分の戦闘時間を確保できるルートが用意されていたとしても、そのルートを見つけられなければ意味がないのである。
 しかも、何とか魔王の間にたどり着いても、そこで待ち構えているのは魔王プレイヤーの中で最多となる、10人の魔王軍なのである。
 これは、8人プレーを常に心がけるため、都合が悪い時に助け合うサポートメンバーの存在があるからだ。
 通常は8人までしか組めないパーティも、この空間での制限はなくなる。それを活かして、連戦連勝を続けているのだ。
 前回のイベント〈ゴブリン軍の進撃〉でも見せた連携プレーが運営の目に留まり、今回の権利獲得となっていた。

 しかし、これも、イベントが続いていくとほころびが出てくる。
「すみませんが、俺たち魔王の間に行ったことがあるので、ついてきてもらえませんか!?」
 同じ魔王城に複数回マッチングできることはあまりない。特に、人気の高いプレイヤーの魔王城であればなおのことである。
 しかし、今回、その少ないチャンスをものにしたプレイヤーが現れた。
「おー! 助かります!」
 相手の戦術は比較的調べやすいが、攻略ルートは伝聞だけではなかなか理解しにくいものである。
 現状、勇者のエンブレムの獲得率は高くはない。ランキング下位で権利を得た者であっても、相当な実力者であることに違いはないからだ。
 是が非でも報酬をゲットしたいと思うのも、仕方のないことだ。
 そうして、24人は案内されるのに従って、すんなりと魔王の間に到達することができたのだった。

 そうなると、困るのが魔王側である。
「マジかー。全員そろってるじゃん」
 テスタプラスの隣にいた幹部のひとりが、半ば諦めた声を上げる。
「ははは。いずれはこうなることはわかっていたじゃないか。だいたい、僕達はみんなで楽しむことを目標にしてるんだ。今回も存分に楽しもう!」
 さわやかボイスでテスタプラスは仲間を鼓舞すると、武器を構えた。
 
「うそ……だろ? こっちは倍以上の人数いたんだぞ?」
 激しい戦いは、制限時間ぎりぎりまで続いた。
 寝転がって天を仰ぐのは、挑戦者プレイヤー。肉体的な疲労は感じないため、精神的な疲労によって動くことが困難になっていたのだ。それだけ激しい戦いだったということである。その証拠に、残っているHPはわずかだ。
 それでも、魔王の討伐に成功したことに変わりはない。
 しかし、勝者という感覚はなかった。
 何しろ、残ったのは彼も含めて満身創痍の2人だけだったからである。
 いくら即席のパーティだったとはいえ、戦力差はじゅうぶんだと思っていた。
 ところが、戦闘が始まると連携の大切さが身に染みた。
 攻撃と守りのタイミング、仲間との距離、互いのスキルの活かし方。どれをとっても阿吽の呼吸でなされていくのである。
 短い言葉だけで全てを把握し、時にはテレパシーでも使っているのかと思うほどの動きに、挑戦者サイドは翻弄された。
 勝てたのは、単にルールのおかげだった。
 魔王サイドの回復アイテムが先に尽きてしまったことが、勝因だったのだ。
「こいつらとは、二度とやらん」
 残った勝者は、そんな捨て台詞とともに仲間の待つ控室へと消えていったのだった。
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