上 下
89 / 276
第11章 魔王城への挑戦 前編

Ver.1/第88話

しおりを挟む
 落ち物パズルの元祖。
 上からひとつずつ落ちてくる、形の異なるブロックを横一列に隙間なく並べると消えていくアレである。
「妙な違和感の正体って、やたら通路が複雑だと思ったら、俯瞰で見たら壁が全部4つのブロックで出来てたからなんだな」
 この状況を把握するように、頭の中に木魚を叩くような擬音が鳴り響く。

 ポクポクポクポクポクポク……ちーん。

「この壁も、動かせるんじゃね?」
 壁の上下に隙間があるのも、これで腑に落ちる。
 思い立ったら実行に移したくなるものだ。幸い、誰が見ているわけでもない。見当違いだったとしても誰かに笑われることもないのだ。
 ハルマは奥にある凹んだ場所の隣に配置されている、正方形の区画を押し込もうと試みる。
「ん! んんんんんんん! ビクともしねえ!」
 さすがに思い違いだったかと思ったが、そこでこの遺跡の石碑に書かれていた文面を思い出した。
「知恵と力で封じられし遺跡……。STRが足らない!?」
 よくよく考えてみれば、これだけのオブジェクトを動かそうと思ったら、並のSTRでは無理なことくらい想像できるというものだ。
「マジかー。そうなると、俺じゃ無理かー」
「ハルマ、何やってるの?」
「んー? この壁を動かしたいんだけど、俺じゃ無理っぽくてな」
「マリーも手伝おうか?」
「ハハハ……。さすがにマリーに手伝ってもらって……も……?」
 そこで、ふと気づく。
 ズキンだったら押せるのでは? と。
「ズキン。ちょっと、この壁を押してもらえないか?」
 ズキンは素直に従ってくれるが、ズキンでも難しそうである。しかし、壁が動くという事実だけは確認することができた。
「おお! ちょっとだけど動いた! 俺とラフも一緒にやったら、動かせないかな? マリー、頼む」
「まかせろー」
 そうやって3人で力を合わせて動かそうとすると、ズキンひとりの時よりも反応が良かった。感覚的にもう一押しというところだ。
「よし! ラフ、エンチャントSTRをかけてくれ。ズキンはこのSTR上昇薬も」
 ハルマもステータスアップのアイテムを使って、STRの底上げをする。
「せーの!」
 そうやって、現状で出せる最大値で押した結果、壁は見事に奥の凹みに収まると同時に、横一列の壁ごと消失したのだった。
「やった! やっぱりこの奥に、何か封印されてるんだ!」
 今回は今までと違い、自ら率先して行動した結果の出来事だったため、素直に興奮してしまう。
 ハルマはその後も、同じ作業を繰り返し、奥へと進んでいくのだった。

 ……が。

「くそー。また詰んだー。どっかの順番が違うのかあ」
 奥に進めば進むほど、どの壁を移動させるのかが難しくなっていたのだ。幸い、詰んでも遺跡に入り直すことでやり直すことができたが、かれこれ15回くらい往復していた。
「仕方ない。ここはまた今度にするかな? 本来の目的の〈トラップ〉はⅢに上げられたから上々だろ」
 気づけば遅い時間になっていたため、この日は攻略を諦め、またの機会にすることにした。
 何せ、明日からは〈魔王城〉に手を加えなければならないのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

生産職から始まる初めてのVRMMO

結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。 そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。 そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。 そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。 最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。 最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。 そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。

【短編】冤罪が判明した令嬢は

砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。 そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

処理中です...