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第11章 魔王城への挑戦 前編
Ver.1/第88話
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落ち物パズルの元祖。
上からひとつずつ落ちてくる、形の異なるブロックを横一列に隙間なく並べると消えていくアレである。
「妙な違和感の正体って、やたら通路が複雑だと思ったら、俯瞰で見たら壁が全部4つのブロックで出来てたからなんだな」
この状況を把握するように、頭の中に木魚を叩くような擬音が鳴り響く。
ポクポクポクポクポクポク……ちーん。
「この壁も、動かせるんじゃね?」
壁の上下に隙間があるのも、これで腑に落ちる。
思い立ったら実行に移したくなるものだ。幸い、誰が見ているわけでもない。見当違いだったとしても誰かに笑われることもないのだ。
ハルマは奥にある凹んだ場所の隣に配置されている、正方形の区画を押し込もうと試みる。
「ん! んんんんんんん! ビクともしねえ!」
さすがに思い違いだったかと思ったが、そこでこの遺跡の石碑に書かれていた文面を思い出した。
「知恵と力で封じられし遺跡……。STRが足らない!?」
よくよく考えてみれば、これだけのオブジェクトを動かそうと思ったら、並のSTRでは無理なことくらい想像できるというものだ。
「マジかー。そうなると、俺じゃ無理かー」
「ハルマ、何やってるの?」
「んー? この壁を動かしたいんだけど、俺じゃ無理っぽくてな」
「マリーも手伝おうか?」
「ハハハ……。さすがにマリーに手伝ってもらって……も……?」
そこで、ふと気づく。
ズキンだったら押せるのでは? と。
「ズキン。ちょっと、この壁を押してもらえないか?」
ズキンは素直に従ってくれるが、ズキンでも難しそうである。しかし、壁が動くという事実だけは確認することができた。
「おお! ちょっとだけど動いた! 俺とラフも一緒にやったら、動かせないかな? マリー、頼む」
「まかせろー」
そうやって3人で力を合わせて動かそうとすると、ズキンひとりの時よりも反応が良かった。感覚的にもう一押しというところだ。
「よし! ラフ、エンチャントSTRをかけてくれ。ズキンはこのSTR上昇薬も」
ハルマもステータスアップのアイテムを使って、STRの底上げをする。
「せーの!」
そうやって、現状で出せる最大値で押した結果、壁は見事に奥の凹みに収まると同時に、横一列の壁ごと消失したのだった。
「やった! やっぱりこの奥に、何か封印されてるんだ!」
今回は今までと違い、自ら率先して行動した結果の出来事だったため、素直に興奮してしまう。
ハルマはその後も、同じ作業を繰り返し、奥へと進んでいくのだった。
……が。
「くそー。また詰んだー。どっかの順番が違うのかあ」
奥に進めば進むほど、どの壁を移動させるのかが難しくなっていたのだ。幸い、詰んでも遺跡に入り直すことでやり直すことができたが、かれこれ15回くらい往復していた。
「仕方ない。ここはまた今度にするかな? 本来の目的の〈トラップ〉はⅢに上げられたから上々だろ」
気づけば遅い時間になっていたため、この日は攻略を諦め、またの機会にすることにした。
何せ、明日からは〈魔王城〉に手を加えなければならないのだ。
上からひとつずつ落ちてくる、形の異なるブロックを横一列に隙間なく並べると消えていくアレである。
「妙な違和感の正体って、やたら通路が複雑だと思ったら、俯瞰で見たら壁が全部4つのブロックで出来てたからなんだな」
この状況を把握するように、頭の中に木魚を叩くような擬音が鳴り響く。
ポクポクポクポクポクポク……ちーん。
「この壁も、動かせるんじゃね?」
壁の上下に隙間があるのも、これで腑に落ちる。
思い立ったら実行に移したくなるものだ。幸い、誰が見ているわけでもない。見当違いだったとしても誰かに笑われることもないのだ。
ハルマは奥にある凹んだ場所の隣に配置されている、正方形の区画を押し込もうと試みる。
「ん! んんんんんんん! ビクともしねえ!」
さすがに思い違いだったかと思ったが、そこでこの遺跡の石碑に書かれていた文面を思い出した。
「知恵と力で封じられし遺跡……。STRが足らない!?」
よくよく考えてみれば、これだけのオブジェクトを動かそうと思ったら、並のSTRでは無理なことくらい想像できるというものだ。
「マジかー。そうなると、俺じゃ無理かー」
「ハルマ、何やってるの?」
「んー? この壁を動かしたいんだけど、俺じゃ無理っぽくてな」
「マリーも手伝おうか?」
「ハハハ……。さすがにマリーに手伝ってもらって……も……?」
そこで、ふと気づく。
ズキンだったら押せるのでは? と。
「ズキン。ちょっと、この壁を押してもらえないか?」
ズキンは素直に従ってくれるが、ズキンでも難しそうである。しかし、壁が動くという事実だけは確認することができた。
「おお! ちょっとだけど動いた! 俺とラフも一緒にやったら、動かせないかな? マリー、頼む」
「まかせろー」
そうやって3人で力を合わせて動かそうとすると、ズキンひとりの時よりも反応が良かった。感覚的にもう一押しというところだ。
「よし! ラフ、エンチャントSTRをかけてくれ。ズキンはこのSTR上昇薬も」
ハルマもステータスアップのアイテムを使って、STRの底上げをする。
「せーの!」
そうやって、現状で出せる最大値で押した結果、壁は見事に奥の凹みに収まると同時に、横一列の壁ごと消失したのだった。
「やった! やっぱりこの奥に、何か封印されてるんだ!」
今回は今までと違い、自ら率先して行動した結果の出来事だったため、素直に興奮してしまう。
ハルマはその後も、同じ作業を繰り返し、奥へと進んでいくのだった。
……が。
「くそー。また詰んだー。どっかの順番が違うのかあ」
奥に進めば進むほど、どの壁を移動させるのかが難しくなっていたのだ。幸い、詰んでも遺跡に入り直すことでやり直すことができたが、かれこれ15回くらい往復していた。
「仕方ない。ここはまた今度にするかな? 本来の目的の〈トラップ〉はⅢに上げられたから上々だろ」
気づけば遅い時間になっていたため、この日は攻略を諦め、またの機会にすることにした。
何せ、明日からは〈魔王城〉に手を加えなければならないのだ。
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