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第2章 いたずらゴースト マリー
Ver.1/第11話
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ウィンドレッドの町を出て、モンスターの徘徊するフィールドへと足を踏み入れる。外の景色はサービス開始からまだ1週間も経っていないというのに、ずいぶんと様変わりしていた。
「すっかり、さびれちまったなー」
初日の賑わいが嘘のように近くで戦っているプレイヤーはいなかった。遠くにポツリポツリと見かける他は戦闘ではなく、素材集めに奔走するプレイヤーをチラホラ見かける程度だったのだ。
新規プレイヤーが次から次に生まれているはずなのだが、そういったプレイヤーも先人たちが見つけた美味い狩場を目指して、すぐにこの場所から卒業してしまうらしいのである。
「すごーい! モンスターさんがいっぱいだね! なつかしー」
ハルマの感想とは裏腹に、マリーは興奮した様子だ。どうやら、いたずらゴーストになってからは町の中から出られなかったらしく、外のことはあまり知らないようだ。
「ま、ケット・シーを見られると何かと面倒なことになりそうだから閑散としてるのは好都合だな。行こうか」
ハルマはマリーを連れて、更に人気のない方角へと進んで行く。
「この辺でいいかな」
途中はモンスターを回避するか弓で仕留めるかして、発見のスキルを活かして進んできた。
町の周辺の平原エリアを抜け、隣接する森林エリアへと足を踏み入れる。
この辺はまだエリアボスを倒す必要のない範囲である。出現するモンスターの強さは平原エリアと変わらないものの、見通しを邪魔するオブジェクトが多数存在するため初心者には不人気なエリアであるのだ。
ただ、隠れてスキルの確認を行うには持って来いの場所となる。
「うわー! おっきな虫! 気持ち悪っ」
「ハルマ、見て見てー! キレイでしょ!」
マリーは近くの木に張り付いた蛾を見つけて触ろうとして逃げられたり、落ちている木の葉を教会で瓦礫を飛ばせたみたいに巻き上げたりして遊び始める。
「マリーは物を触れるのか?」
素朴な疑問である。
「ん? 触ろうと思えば触れるし、通り抜けようと思えば通り抜けられるよ?」
「何とも便利な身体だな」
「えへへー」
ハルマの言葉を誉め言葉ととらえたのか、マリーは得意気だ。
ふたりはそのまま周囲を軽く散策して素材を集めた後、他のプレイヤーがいないことを確かめてからケット・シーのラフを取り出した。
「スキル〈傀儡〉」
戦闘中に先に出しておく必要はないのだが、装備品の変更は前もって行わなければならない。
「ごきげんよう。お二方ともお元気そうで何よりにゃ」
「やあ、ラフ。今日はラフにこれを作ってきたんだ」
「にゃんと。これは立派なレイピアですにゃ」
二足歩行する黒猫はレイピアを受け取ると、何度か宙を突いては使い心地を確かめる。その動きは流麗で、人形とは思えない見事なものだ。
「ラフ。かっこいいよ!」
マリーはその様子を眺めると、うれしそうにラフの回りをぐるぐる回って色々な角度から観察していた。
「満足してもらえたみたいだから、少し戦ってみようか」
「え? つっよ!? は?」
スキル〈発見〉を活用し、モンスターの気配を頼りにソロでも倒せそうなモンスターを見つけては次から次に戦いを挑んだ結果、ラフの強さは初心者が扱うレベルではないことが判明した。
それもそのはずだ。そもそも〈手品〉スキル獲得のクエストはDEX120以上が条件なのである。仮にDEXにポイントを一度も振らなかった場合はレベル20でも届かない数値なのである。実際、レベルが低いうちはハルマみたいに生産職をメインでやっていこうと思っていない限り、優先順位はもっとも低いというプレイヤーが多いのだ。しかも、生産職をメインでやっていくにしても、DEXにのみ注力しているというは極めて稀である。
そんなクエストのEXスキルが弱いはずもなかった。
「いやー。こんなに強いなら戦闘はラフに任せて、俺は素材採取できればもっと楽なんだけどなあ。ラフと繋がってる間は両手がふさがって採取もできないもんなー」
「それなら、あたしがラフを使おうか? 見てるだけじゃつまらないし」
「へ?」
「あたしも〈傀儡〉使えるよ?」
「そういえば、ダイバーさんも自分より上手いって言ってたな……」
ハルマはキョトンとしながら、色々と話が変わってきたぞ? と、徐々に苦笑いへと変わっていくのだった。
「すっかり、さびれちまったなー」
初日の賑わいが嘘のように近くで戦っているプレイヤーはいなかった。遠くにポツリポツリと見かける他は戦闘ではなく、素材集めに奔走するプレイヤーをチラホラ見かける程度だったのだ。
新規プレイヤーが次から次に生まれているはずなのだが、そういったプレイヤーも先人たちが見つけた美味い狩場を目指して、すぐにこの場所から卒業してしまうらしいのである。
「すごーい! モンスターさんがいっぱいだね! なつかしー」
ハルマの感想とは裏腹に、マリーは興奮した様子だ。どうやら、いたずらゴーストになってからは町の中から出られなかったらしく、外のことはあまり知らないようだ。
「ま、ケット・シーを見られると何かと面倒なことになりそうだから閑散としてるのは好都合だな。行こうか」
ハルマはマリーを連れて、更に人気のない方角へと進んで行く。
「この辺でいいかな」
途中はモンスターを回避するか弓で仕留めるかして、発見のスキルを活かして進んできた。
町の周辺の平原エリアを抜け、隣接する森林エリアへと足を踏み入れる。
この辺はまだエリアボスを倒す必要のない範囲である。出現するモンスターの強さは平原エリアと変わらないものの、見通しを邪魔するオブジェクトが多数存在するため初心者には不人気なエリアであるのだ。
ただ、隠れてスキルの確認を行うには持って来いの場所となる。
「うわー! おっきな虫! 気持ち悪っ」
「ハルマ、見て見てー! キレイでしょ!」
マリーは近くの木に張り付いた蛾を見つけて触ろうとして逃げられたり、落ちている木の葉を教会で瓦礫を飛ばせたみたいに巻き上げたりして遊び始める。
「マリーは物を触れるのか?」
素朴な疑問である。
「ん? 触ろうと思えば触れるし、通り抜けようと思えば通り抜けられるよ?」
「何とも便利な身体だな」
「えへへー」
ハルマの言葉を誉め言葉ととらえたのか、マリーは得意気だ。
ふたりはそのまま周囲を軽く散策して素材を集めた後、他のプレイヤーがいないことを確かめてからケット・シーのラフを取り出した。
「スキル〈傀儡〉」
戦闘中に先に出しておく必要はないのだが、装備品の変更は前もって行わなければならない。
「ごきげんよう。お二方ともお元気そうで何よりにゃ」
「やあ、ラフ。今日はラフにこれを作ってきたんだ」
「にゃんと。これは立派なレイピアですにゃ」
二足歩行する黒猫はレイピアを受け取ると、何度か宙を突いては使い心地を確かめる。その動きは流麗で、人形とは思えない見事なものだ。
「ラフ。かっこいいよ!」
マリーはその様子を眺めると、うれしそうにラフの回りをぐるぐる回って色々な角度から観察していた。
「満足してもらえたみたいだから、少し戦ってみようか」
「え? つっよ!? は?」
スキル〈発見〉を活用し、モンスターの気配を頼りにソロでも倒せそうなモンスターを見つけては次から次に戦いを挑んだ結果、ラフの強さは初心者が扱うレベルではないことが判明した。
それもそのはずだ。そもそも〈手品〉スキル獲得のクエストはDEX120以上が条件なのである。仮にDEXにポイントを一度も振らなかった場合はレベル20でも届かない数値なのである。実際、レベルが低いうちはハルマみたいに生産職をメインでやっていこうと思っていない限り、優先順位はもっとも低いというプレイヤーが多いのだ。しかも、生産職をメインでやっていくにしても、DEXにのみ注力しているというは極めて稀である。
そんなクエストのEXスキルが弱いはずもなかった。
「いやー。こんなに強いなら戦闘はラフに任せて、俺は素材採取できればもっと楽なんだけどなあ。ラフと繋がってる間は両手がふさがって採取もできないもんなー」
「それなら、あたしがラフを使おうか? 見てるだけじゃつまらないし」
「へ?」
「あたしも〈傀儡〉使えるよ?」
「そういえば、ダイバーさんも自分より上手いって言ってたな……」
ハルマはキョトンとしながら、色々と話が変わってきたぞ? と、徐々に苦笑いへと変わっていくのだった。
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