12 / 276
第2章 いたずらゴースト マリー
Ver.1/第11話
しおりを挟む
ウィンドレッドの町を出て、モンスターの徘徊するフィールドへと足を踏み入れる。外の景色はサービス開始からまだ1週間も経っていないというのに、ずいぶんと様変わりしていた。
「すっかり、さびれちまったなー」
初日の賑わいが嘘のように近くで戦っているプレイヤーはいなかった。遠くにポツリポツリと見かける他は戦闘ではなく、素材集めに奔走するプレイヤーをチラホラ見かける程度だったのだ。
新規プレイヤーが次から次に生まれているはずなのだが、そういったプレイヤーも先人たちが見つけた美味い狩場を目指して、すぐにこの場所から卒業してしまうらしいのである。
「すごーい! モンスターさんがいっぱいだね! なつかしー」
ハルマの感想とは裏腹に、マリーは興奮した様子だ。どうやら、いたずらゴーストになってからは町の中から出られなかったらしく、外のことはあまり知らないようだ。
「ま、ケット・シーを見られると何かと面倒なことになりそうだから閑散としてるのは好都合だな。行こうか」
ハルマはマリーを連れて、更に人気のない方角へと進んで行く。
「この辺でいいかな」
途中はモンスターを回避するか弓で仕留めるかして、発見のスキルを活かして進んできた。
町の周辺の平原エリアを抜け、隣接する森林エリアへと足を踏み入れる。
この辺はまだエリアボスを倒す必要のない範囲である。出現するモンスターの強さは平原エリアと変わらないものの、見通しを邪魔するオブジェクトが多数存在するため初心者には不人気なエリアであるのだ。
ただ、隠れてスキルの確認を行うには持って来いの場所となる。
「うわー! おっきな虫! 気持ち悪っ」
「ハルマ、見て見てー! キレイでしょ!」
マリーは近くの木に張り付いた蛾を見つけて触ろうとして逃げられたり、落ちている木の葉を教会で瓦礫を飛ばせたみたいに巻き上げたりして遊び始める。
「マリーは物を触れるのか?」
素朴な疑問である。
「ん? 触ろうと思えば触れるし、通り抜けようと思えば通り抜けられるよ?」
「何とも便利な身体だな」
「えへへー」
ハルマの言葉を誉め言葉ととらえたのか、マリーは得意気だ。
ふたりはそのまま周囲を軽く散策して素材を集めた後、他のプレイヤーがいないことを確かめてからケット・シーのラフを取り出した。
「スキル〈傀儡〉」
戦闘中に先に出しておく必要はないのだが、装備品の変更は前もって行わなければならない。
「ごきげんよう。お二方ともお元気そうで何よりにゃ」
「やあ、ラフ。今日はラフにこれを作ってきたんだ」
「にゃんと。これは立派なレイピアですにゃ」
二足歩行する黒猫はレイピアを受け取ると、何度か宙を突いては使い心地を確かめる。その動きは流麗で、人形とは思えない見事なものだ。
「ラフ。かっこいいよ!」
マリーはその様子を眺めると、うれしそうにラフの回りをぐるぐる回って色々な角度から観察していた。
「満足してもらえたみたいだから、少し戦ってみようか」
「え? つっよ!? は?」
スキル〈発見〉を活用し、モンスターの気配を頼りにソロでも倒せそうなモンスターを見つけては次から次に戦いを挑んだ結果、ラフの強さは初心者が扱うレベルではないことが判明した。
それもそのはずだ。そもそも〈手品〉スキル獲得のクエストはDEX120以上が条件なのである。仮にDEXにポイントを一度も振らなかった場合はレベル20でも届かない数値なのである。実際、レベルが低いうちはハルマみたいに生産職をメインでやっていこうと思っていない限り、優先順位はもっとも低いというプレイヤーが多いのだ。しかも、生産職をメインでやっていくにしても、DEXにのみ注力しているというは極めて稀である。
そんなクエストのEXスキルが弱いはずもなかった。
「いやー。こんなに強いなら戦闘はラフに任せて、俺は素材採取できればもっと楽なんだけどなあ。ラフと繋がってる間は両手がふさがって採取もできないもんなー」
「それなら、あたしがラフを使おうか? 見てるだけじゃつまらないし」
「へ?」
「あたしも〈傀儡〉使えるよ?」
「そういえば、ダイバーさんも自分より上手いって言ってたな……」
ハルマはキョトンとしながら、色々と話が変わってきたぞ? と、徐々に苦笑いへと変わっていくのだった。
「すっかり、さびれちまったなー」
初日の賑わいが嘘のように近くで戦っているプレイヤーはいなかった。遠くにポツリポツリと見かける他は戦闘ではなく、素材集めに奔走するプレイヤーをチラホラ見かける程度だったのだ。
新規プレイヤーが次から次に生まれているはずなのだが、そういったプレイヤーも先人たちが見つけた美味い狩場を目指して、すぐにこの場所から卒業してしまうらしいのである。
「すごーい! モンスターさんがいっぱいだね! なつかしー」
ハルマの感想とは裏腹に、マリーは興奮した様子だ。どうやら、いたずらゴーストになってからは町の中から出られなかったらしく、外のことはあまり知らないようだ。
「ま、ケット・シーを見られると何かと面倒なことになりそうだから閑散としてるのは好都合だな。行こうか」
ハルマはマリーを連れて、更に人気のない方角へと進んで行く。
「この辺でいいかな」
途中はモンスターを回避するか弓で仕留めるかして、発見のスキルを活かして進んできた。
町の周辺の平原エリアを抜け、隣接する森林エリアへと足を踏み入れる。
この辺はまだエリアボスを倒す必要のない範囲である。出現するモンスターの強さは平原エリアと変わらないものの、見通しを邪魔するオブジェクトが多数存在するため初心者には不人気なエリアであるのだ。
ただ、隠れてスキルの確認を行うには持って来いの場所となる。
「うわー! おっきな虫! 気持ち悪っ」
「ハルマ、見て見てー! キレイでしょ!」
マリーは近くの木に張り付いた蛾を見つけて触ろうとして逃げられたり、落ちている木の葉を教会で瓦礫を飛ばせたみたいに巻き上げたりして遊び始める。
「マリーは物を触れるのか?」
素朴な疑問である。
「ん? 触ろうと思えば触れるし、通り抜けようと思えば通り抜けられるよ?」
「何とも便利な身体だな」
「えへへー」
ハルマの言葉を誉め言葉ととらえたのか、マリーは得意気だ。
ふたりはそのまま周囲を軽く散策して素材を集めた後、他のプレイヤーがいないことを確かめてからケット・シーのラフを取り出した。
「スキル〈傀儡〉」
戦闘中に先に出しておく必要はないのだが、装備品の変更は前もって行わなければならない。
「ごきげんよう。お二方ともお元気そうで何よりにゃ」
「やあ、ラフ。今日はラフにこれを作ってきたんだ」
「にゃんと。これは立派なレイピアですにゃ」
二足歩行する黒猫はレイピアを受け取ると、何度か宙を突いては使い心地を確かめる。その動きは流麗で、人形とは思えない見事なものだ。
「ラフ。かっこいいよ!」
マリーはその様子を眺めると、うれしそうにラフの回りをぐるぐる回って色々な角度から観察していた。
「満足してもらえたみたいだから、少し戦ってみようか」
「え? つっよ!? は?」
スキル〈発見〉を活用し、モンスターの気配を頼りにソロでも倒せそうなモンスターを見つけては次から次に戦いを挑んだ結果、ラフの強さは初心者が扱うレベルではないことが判明した。
それもそのはずだ。そもそも〈手品〉スキル獲得のクエストはDEX120以上が条件なのである。仮にDEXにポイントを一度も振らなかった場合はレベル20でも届かない数値なのである。実際、レベルが低いうちはハルマみたいに生産職をメインでやっていこうと思っていない限り、優先順位はもっとも低いというプレイヤーが多いのだ。しかも、生産職をメインでやっていくにしても、DEXにのみ注力しているというは極めて稀である。
そんなクエストのEXスキルが弱いはずもなかった。
「いやー。こんなに強いなら戦闘はラフに任せて、俺は素材採取できればもっと楽なんだけどなあ。ラフと繋がってる間は両手がふさがって採取もできないもんなー」
「それなら、あたしがラフを使おうか? 見てるだけじゃつまらないし」
「へ?」
「あたしも〈傀儡〉使えるよ?」
「そういえば、ダイバーさんも自分より上手いって言ってたな……」
ハルマはキョトンとしながら、色々と話が変わってきたぞ? と、徐々に苦笑いへと変わっていくのだった。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました
k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
★お気に入り登録ポチリお願いします!
2024/3/4 男性向けホトラン1位獲得
難病で動くこともできず、食事も食べられない俺はただ死を待つだけだった。
次に生まれ変わったら元気な体に生まれ変わりたい。
そんな希望を持った俺は知らない世界の子どもの体に転生した。
見た目は浮浪者みたいだが、ある飲食店の店舗前で倒れていたおかげで、店主であるバビットが助けてくれた。
そんなバビットの店の手伝いを始めながら、住み込みでの生活が始まった。
元気に走れる体。
食事を摂取できる体。
前世ではできなかったことを俺は堪能する。
そんな俺に対して、周囲の人達は優しかった。
みんなが俺を多才だと褒めてくれる。
その結果、俺を弟子にしたいと言ってくれるようにもなった。
何でも弟子としてギルドに登録させると、お互いに特典があって一石二鳥らしい。
ただ、俺は決められた仕事をするのではなく、たくさんの職業体験をしてから仕事を決めたかった。
そんな俺にはデイリークエストという謎の特典が付いていた。
それをクリアするとステータスポイントがもらえるらしい。
ステータスポイントを振り分けると、効率よく動けることがわかった。
よし、たくさん職業体験をしよう!
世界で爆発的に売れたVRMMO。
一般職、戦闘職、生産職の中から二つの職業を選べるシステム。
様々なスキルで冒険をするのもよし!
まったりスローライフをするのもよし!
できなかったお仕事ライフをするのもよし!
自由度が高いそのゲームはすぐに大ヒットとなった。
一方、職業体験で様々な職業別デイリークエストをクリアして最強になっていく主人公。
そんな主人公は爆発的にヒットしたVRMMOのNPCだった。
なぜかNPCなのにプレイヤーだし、めちゃくちゃ強い。
あいつは何だと話題にならないはずがない。
当の本人はただただ職場体験をして、将来を悩むただの若者だった。
そんなことを知らない主人公の妹は、友達の勧めでゲームを始める。
最強で元気になった兄と前世の妹が繰り広げるファンタジー作品。
※スローライフベースの作品になっています。
※カクヨムで先行投稿してます。
文字数の関係上、タイトルが短くなっています。
元のタイトル
超リアルなVRMMOのNPCに転生してデイリークエストをクリアしまくったら、いつの間にか最強になってました~年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれています〜
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~
ゆるり
ファンタジー
☆第17回ファンタジー小説大賞で【癒し系ほっこり賞】を受賞しました!☆
ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。
最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。
この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう!
……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは?
***
ゲーム生活をのんびり楽しむ話。
バトルもありますが、基本はスローライフ。
主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。
カクヨム様にて先行公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる