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交通の都ヘパイドン
22.集いし者
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投稿が遅れたお詫びとして、本日2話目の投稿になります。
◇
その者は煙身を包んでいると表現してもおかしくはない程に煙に包まれていた。江戸時代の花魁を彷彿させる黒色勝山髷と、着崩した真紅の着物、肌が真っ白になるほどのお粉を塗りたくっている。
本当の顔など分かりようもないほどに化粧し尽くされた顔は過去に拓郎が脳裏に焼き付けられたものと何ら変わりがない。美しいと感じる者もいるのだろうが、拓郎にしてみれば恐怖の対象でしかなく、尚且つ最大限の憎しみの対象でもある。
槍を握り締める手が震える。手も足も出ず、ボロ雑巾のごとくやられた過去が。最後の最後に勇者が道連れにしたからこそヘパイドンは守りきれたが――と、ここまでを思い出したことで拓郎は冷水を浴びたように思考が冷静になる。
そうだ、確かに勇者はセニャーレと相打ちになった。女の爪は勇者の喉を抉り、同時に勇者の日本刀は目の前にいるセニャーレの体を左右になるほどに真っ二つに分断したはずだ。
「なぜ生きている?」
搾り出すような声で拓郎が問いかけると、セニャーレは不思議そうに首を傾かせ、「なぜ、あれで死んだと思う?」と訊ね返す。拓郎も街の皆も、勇者が相討ちにしたと思い込んでいたが、相討ちにしたのではなく、4年も潜伏せざるを得ない程の深手を負わされた為に撤退しただけであった。
『なんじゃ、勇者は死んだのか。次は心臓でも抉ってやろうかと思っとったのn』
嬉しそうに喋っていたセニャーレが突如動きを止め、右の口端に赤い亀裂が入る。まるで笑みのような傷口から血が滴り落ちると、傷を作った張本人である拓郎は静かに「黙れ」と忠告する。
『ほぅ…ガタガタ震えておっただけの奴g』
次いで左口の端から右と同じような亀裂が入り、口裂け女のような様相へと変貌させた拓郎の持つ槍が一瞬光った瞬間、セニャーレの体を稲光が貫通し、大きく仰け反る。
何事もなかったかのように起き上がったセニャーレの顔には傷など存在せず、最初と変わらぬ作り物のような美しさを保っている。
『なるほどの……多少は腕を上げたようじゃが――』
拓郎の視界から姿が消失し、真横から『まだまだじゃ』と声がしたかと思えば、セニャーレの腹部に白金色の刃が生えた。
セニャーレのものではない。高速移動で拓郎の真横を取った瞬間、更にその背後を拓郎が取り、彼女の腹に槍を突き刺した。そして、引き抜くと同時に特大の雷の柱が容赦なくセニャーレを包み込む。
上級雷魔法[トール・ハンマー]。何十本もの雷を収束させた空から発せられる特大レールガン。全体攻撃に向かず、消費MPも馬鹿高い為に上級という括りだが、単体の敵ならばワンランク上の超級に匹敵する破壊力を誇る。
ここまでの大技の連発。拓郎は勝負を急いているわけではない。これほどまでの大技を叩き込んで尚、確信して言える。相手のHPはわずかにしか削れていない、と。
『ちょこまかと…小手先の技で戦おうとは…』
セニャーレの足元からいくつもの影が触手のように伸び、彼女の体に纏わりついて衣服や皮膚に同化をしていく。
「シッ!」相手の目前にて姿を現すと同時に、拓郎の刃が腹部へと突き放たれる。1度貫かれたその場所は既に傷痕など残っておらず、再び貫かれるかと思われた――だが、今度は貫かれることはない。拓郎の槍に服から伸びた闇の触手が絡まり、完全に動きを封じ込めている。
これこそ、4年前にも拓郎が目撃をした彼女の戦闘スタイルだ。術者が認識した攻撃を自動で防御する上級闇魔法の[ブラックカーテン]と8つの目を自由自在に操る偵察用の魔法[蜘蛛の目]を合わせた鉄壁の防御、[女郎蜘蛛化粧]である。
拓郎は過去にも今までと同等の攻撃を繰り出したのだが、尽く攻撃を塞がれ、逆に相手の攻撃は全てがこちらに到達しうる。
唯一、勇者の攻撃は膂力かステータスの差から相手に届いていたのだが、傷を負わせるものの忽ちの内に傷を癒してしまった。
最後の最後、両断をされたセニャーレの体は炎と共に消え去ったことが、死んだと思い込んだ切っ掛けの1つである。
『さぁどうすr』
セニャーレが何かを喋ろうとした矢先、またもや声が途切れた。
今度はセニャーレの頬にまで達する傷であり、その攻撃にセニャーレの魔法は反応を示さなかった。これにはセニャーレも予想外だったのか、然れどその顔の笑みを崩すことはない。
「とりあえず――切り刻まれろ!!」
触手に捕らえられたままの状態から、不可視の刃が執拗にセニャーレを切り刻むという摩訶不思議な光景であった。
例え風の刃であろうとも、セニャーレの認識防御の前では無力であるにも関わらず、一切反応を示さない。即ち、全く感知出来ていないということになる。
『なるhd、面白いkとを考えtくもnだ。』
顔だけではなく拓郎を掴んでいた触手諸共全身を切り刻まれ、解放されたことで拓郎は相手の射程圏外まで一気に退く。
その間にもセニャーレの体は再生をしており、まるで今から戦い始めと言わんばかりだ。
『今のは[ライト]か?なるほど、【光槍】の二つ名を本当の物にしおったか。』
「くそがっ…」
あっさりとこの手品のタネあかしをされ、拓郎は舌打ちと共に悪態をつく。
セニャーレの予想通り、拓郎は初級中の初級、光源を確保する魔術である[生活魔法]の[ライト]を刃化させ、文字通り光る槍を作り出した。
過去ではこの槍は単なる光り輝くだけであったが、拓郎はそこに[大旋風斬舞]等で魔法を放出させる技術を加えてみることにした。
すると、光るだけであった槍は【光の速度で放出される斬撃】へと見事に昇華したのだ。対象に刃の鋒を向けてライトを刃化させるだけで最早拓郎の攻撃から逃れられるものはいない。
しかし、この魔法にも弱点がある。威力――破壊力である。
本来、刃化させたとしても魔法そのものの威力が上がるわけではない。生活魔法のライトなど、攻撃力は皆無である。それに槍の切れ味を追加させただけなので、速度は最速でも攻撃力という点は間違いなく最弱である。
しかも、その距離が遠ければ遠くなるほど、斬撃の収束は甘くなっていき、傷ひとつ付けることができない。
至近距離で使うのならば、この[光刃]よりも、炎を纏わせるヒートソードの[炎刃]や雷を纏わせるプラズマブレードの[雷刃]の方が攻撃力は桁違いに高い。
よって、今のように近くで捕縛されて身動きがとれない状況から繰り出すという点では有用であるが、遠距離攻撃にはとことん向かない、なんとも使い勝手の悪い技になってしまったのだ。
過去のトラウマに苦しめられながらも、拓郎が必死になって編み出したこの技は、セニャーレの為だけに作られた技といっても過言ではない。
致命傷こそ与えられないものの、拓郎の攻撃は相手に届いている。それこそが4年前との決定的な違い、拓郎の成長であった。
『槍の。その程度の攻撃で私を殺そうとするならば、貴様のMPが十(回)は枯渇せんと殺せんぞ?』
「わかってるよ糞ったれ。―――しつこいな、またか!」
あくまでも今のは通用するかしないかの実験である。ここから先が本番。そう言わんばかりに槍を構え直した拓郎だったが、またもや彼の下に近づく者が――仮面の男だ。
日本刀を振り回しながら拓郎に迫りくるが、対処をしようものならセニャーレに隙を見せることになる。
万事休すか…仮面の男が無視できない距離まで近寄ってきたその時、仮面の男目掛けて何かが凄まじい速度で飛んできた。それに気付いた仮面の男は即座にそれを日本刀で切り払い、飛んできた方向へと向く。
丁度拓郎の背後であり、セニャーレに注意を払っている拓郎はその人物の姿を見ることができない。
「誰かは知らんが助かった。だが今は逃げろ。あの女は俺の――」
「拓郎。待たせたな。」
拓郎の背後から聞こえてきた声、それはここにいるはずのないヘパイドンで別れたはずの親友の声だった。
「ろ――」
「ゥ……ウ…Uooooooooo!!」
名前を叫ぼうとした拓郎の声をそれまで無言を貫いていた仮面の男の声が遮り、今までにない反応に注意が一瞬セニャーレから逸れる。その時を狙ってかセニャーレの姿が消え、遅れて拓郎の姿も消える。先に姿を見せたのは拓郎だ。凄まじい衝撃音を伴いながら地面と水平に飛翔し、槍を突き立てて漸く動きを止める。
遠くではセニャーレが『残念』と表情とは裏腹の言葉を口にし、仮面の男は新たな敵めがけて武器を振り回しながら襲いかかるところだった。
「逃げろぉぉっ!!」
拓郎の悲痛な叫びが響くが、逃げるよりも先に仮面の男は緑色の髪の男に詰め寄っていた。
振りかざした日本刀が何の躊躇もなく振り下ろされ、拓郎は彼の名前を叫んだ。
「おう、呼んだか?」
手合わせをした限りでは、拓郎の知る彼よりも仮面の男の方がはるかに強かった。それは、実際に両者と戦った拓郎だからこそ比較できる実力差である。だが、そんな仮面の男の攻撃をあっさりと躱し、カウンターに槍の柄で拓郎同様に横殴りで吹き飛ばしている。
「お前…なんだ?どこかで見たことがあるような…。」
「UuuUUuuu……。」
「まぁ良い。あいつもあいつで手一杯みたいだし、拓郎の代わりにお前は俺が引き受けた。」
拓郎と同じように構える縁緑朗太の後ろ姿は、拓郎が嘗ての仲間を彷彿とさせる程に頼もしく感じさせた。
◇
場所は変わり、森の中、木から降りて藤枝と対峙していたリゴラは、広場が1VS2の状況が2VS2になったことで一先ず安堵することが出来た。
火を点けて破壊をしたはずの煙の発生源からまさかあんな化物が出てくるとは思いもよらず、しかもそれが4年前の魔王軍幹部であるとわかるや直様逃げ出そうと判断を下した。
拓郎を見捨てる形になるが、それは仕方がないとあっさり見捨てることのできる判断力の速さと非情さ、更には逃げ出すために如何なる手段をも用いようとする生き意地の汚さ。これは全人類の中でもリゴラはトップクラスだと自負するほどだ。そんな彼が逃げ切れずにいるのは、単に魔王軍の藤枝のせいである。この男、接近戦向きのバトル野郎かと思いきや、前衛ではなかった。
能力は煙草の精製と言っていたが、煙草の煙に紛れて毒を撒布させて臭いを嗅いだ相手に様々なステータス異常を引き起こしたりする後方支援、しかも索敵や妨害を主としたタイプである。
使用する武器は直接命に関わるものからそうでない物まで様々だが、問題なのはリゴラでも頑張れば倒せるかも知れないと思わせる程に拮抗しているということではない。藤枝の能力は感知も兼ねており、未だに薄らと残る煙の中ではリゴラはどこに逃げても直ぐに見つかってしまうのだ。
「なぁ、あんた。なんでそんなに怒ってるんだよ。あの箱を壊したおかげであの美人の姉ちゃんが復活したってなったら、感謝こそされども恨まれる覚えはないぜ?」
とんだ暴論ではあるが、リゴラはなんとかしてここから逃げ出したいと必死であった。
が、そんな心情は知らず、尚且つ憤っている藤枝はハッキリとリゴラを見逃すことはしないと断言した。
「貴様が何を喋っているのかは知らん!!だが、あの箱は貴様らのような野蛮人が手にかけていい箱ではない!!ましてや、油まみれにした挙句に火を放つなど言語道断!言語道断だ!!」
青白い肌を紅潮させながら怒り狂う藤枝の様子に、言葉がそもそも通じないので交渉は初めから成立しなかったんだな、と後悔する。こうなれば最早自棄糞である。相手は恐らく星の流れ者。どの程度の実力があるかは定かではないが、今のリゴラでも十分勝てる可能性があるとわかれば、覚悟を決めるしかない。
「やれやれ…あんまり本気で戦ってくれるなよ。」
「殺す!!いや、殺すだけでは足りん…貴様の体の一つ一つを装飾品のように加工し、あの方に献上して差し上げるのだ!!」
「何を言ってるかわからんが、お前さんよっぽど碌でもないこと考えてるだろ。顔でわかるよ。」
へへとリゴラが鼻で笑うと、馬鹿にされていると思った藤枝は更に怒りを爆発させ、口に何本もの煙草を咥えて一気に紫煙を精製する。セニャーレとは異なる煙であるが、藤枝もまた、煙を精製する能力を持っていた。
彼の能力は[躊躇なき喫煙者]。生み出した煙草を吸い、吐き出した紫煙に様々な能力を付与する効果を持つ。効果の付与は任意で選べ、効果付与にはMPの消費はない。彼の煙草は1箱単位でMPを1消費する燃費の良さなのだが、彼自身のレベルは未だに低いままだ。
緑朗太と時を同じくしてこの世界に転移をした為、戦闘行為をいくつかこなしているとしても。リゴラの様な歴戦の戦士というわけではない。
厄介な能力持ちだとは言え、付け入る隙は必ずある。
藤枝の周辺を漂っていた煙がリゴラに襲いかかるや、地面を蹴り、スリングショットを口に咥えて器用に近くの木を登っていく。
「上に逃げるとは悪手の極みだな!!」
上へと一気に押し寄せる紫煙。怒りに任せて追跡するその煙で互いの姿が完全に見失われたのを見計らい、煙を貫いて藤枝に木の上から鉄球が襲いかかる。
煙の感知能力を察知していた藤枝が一歩後ろに下がると、今まで立っていた地面に鉄球がめり込む。続けて何度も礫が撃たれ、それら全てを藤枝は避け続けた。
藤枝を攻撃し続けている間、リゴラはこの煙のコントロールの性質を解析していた。今、敵は回避に専念している。煙で防御をするといった物理的な接触は出来ず、代わりにこうまで正確に避けれるということは感知系の機能が働いている可能性が高い。ということは攻撃しながらであれば、恐らく簡単に逃げられる。ただし、この男は完全に自分に狙いを定めているので、この男だけはなんとしても始末しなくてはならない。
しばらく攻撃を続けていると、追っていた煙は徐々に晴れていく。速い攻撃ではないので、回避に専念するということは実戦経験が低いということの表れだ。
リゴラは相手の視界から外れたのを良い事に、木から木へと飛び移り、広場からどんどん距離をとる。逃亡とも取れるリゴラの行動に、馬鹿め!と藤枝はほくそ笑んだ。リゴラの背後から凄まじい勢いで煙を吐きながら、追跡を開始する藤枝。その様子を観察しながら、煙の効果範囲、追跡スピードなどと言った情報を逐一集め、確実に勝てる場所への誘導を完了させた。
前日に森の探索を行った際、見つけていた花々で彩られた丘。拓郎達が戦っている広場程ではないが、周囲を見渡すのになんら問題はない場所である。
そこで他の場所よりも高い地点でリゴラは立ち尽くして煙が襲って来るのを待った。追ってきているはずの相手は姿を見せない程に撒いた。が、色の異なる紫煙はゆっくりとリゴラに接近をしているのだ。念の為にと口元を布で覆い隠し、準備を終えた頃、見下ろす彼の視界に紫煙を纏わせて肩で息をする藤枝の姿が飛び込んできた。
喫煙者ということが拍車をかけるほどに、体力が消耗されているのだろう。それでもリゴラを睨みつけるだけの元気があるのは意地という他ない。
待ち構えるリゴラを不信感を抱きながらも、リゴラが両手を万歳と上げているのを見れば、最早逃げるのを諦めたのかと勝ちを確信した。
大きく息を吸い込み、紫煙に奴を殺せ!と命令せんとした時――周囲の花々が一瞬にして枯れはて、藤枝の顔色が一変した。
「ゲッ…カッ……ァァッ…」
「あぁ、やっぱり気付かなかったか。割ときつい臭いなんだけど…あんな臭いを纏ってたら気づかないよな。」
喉を掻き毟りながら苦悶の表情を浮かべる藤枝に、リゴラはやれやれと言いた気な顔で「冥土の土産だ。」と、どうしてこうなったのかを話し始めた。
「お前が今立っている場所にはな。俺がいざという時に拓郎を殺す為の毒薬が散布されてるんだよ。あぁ、最初から殺すつもりなんてなかったさ。けど、なにが切っ掛けで拓郎から俺に迷惑が掛かるかわからないからな。確実に始末できるよう、気化性で毒耐性持ちでも致死率80%を超える猛毒だ。」
日本語しか理解できない藤枝には何を話しても無駄であったが、この症状は相手の仕業だと遠ざかる意識の中で確信をした。そして、最後の悪あがきとして力を振り絞り、己の能力を全力で発動させて、リゴラへと襲いかからせた。
「あぁ、どうしてさっき使わなかったかって?同じ立地条件だと下手したら俺も吸い込むからな。こうして高低差がある場所で背後から風を受けてないととてもじゃないけど使えない。その上、あそこで使って誤ってあいつらを殺したら、あの黒女郎の狙いが俺に来るかもしれなかったからな。引き離す必要があったわけだ。」
リゴラは説明を終えると同時に、スリングショットで鉄球を放った。最早避ける気力もなかった藤枝の眉間を陥没させながら鉄球が直撃し、仰け反り、地面に背中から倒れると、以降はピクリとも動くことはなかった
煙はリゴラの目前で霧散し、彼を襲うことはない。
撒いた毒薬も数十秒ほど猛威を振るった後にあっさりと効果が切れる。これで銀板が9枚と金貨7枚というのだからぼったくりも良いところだとリゴラは考えている。
実際、拓郎を殺せるかと問われたらリゴラは首を横に振る。あの男はそれをあっさりと覆すことのできるリゴラが認める数少ない実力者だ。
だが、そんな実力者の拓郎が過去に手も足も出なかったというやばすぎる相手――こうしてリゴラはその場からあっさりと帰還を果たし、せめてもの償いにと急ぎ伝令鳥をヘパイドンとモルガニアへと飛ばすのであった。
◇
その者は煙身を包んでいると表現してもおかしくはない程に煙に包まれていた。江戸時代の花魁を彷彿させる黒色勝山髷と、着崩した真紅の着物、肌が真っ白になるほどのお粉を塗りたくっている。
本当の顔など分かりようもないほどに化粧し尽くされた顔は過去に拓郎が脳裏に焼き付けられたものと何ら変わりがない。美しいと感じる者もいるのだろうが、拓郎にしてみれば恐怖の対象でしかなく、尚且つ最大限の憎しみの対象でもある。
槍を握り締める手が震える。手も足も出ず、ボロ雑巾のごとくやられた過去が。最後の最後に勇者が道連れにしたからこそヘパイドンは守りきれたが――と、ここまでを思い出したことで拓郎は冷水を浴びたように思考が冷静になる。
そうだ、確かに勇者はセニャーレと相打ちになった。女の爪は勇者の喉を抉り、同時に勇者の日本刀は目の前にいるセニャーレの体を左右になるほどに真っ二つに分断したはずだ。
「なぜ生きている?」
搾り出すような声で拓郎が問いかけると、セニャーレは不思議そうに首を傾かせ、「なぜ、あれで死んだと思う?」と訊ね返す。拓郎も街の皆も、勇者が相討ちにしたと思い込んでいたが、相討ちにしたのではなく、4年も潜伏せざるを得ない程の深手を負わされた為に撤退しただけであった。
『なんじゃ、勇者は死んだのか。次は心臓でも抉ってやろうかと思っとったのn』
嬉しそうに喋っていたセニャーレが突如動きを止め、右の口端に赤い亀裂が入る。まるで笑みのような傷口から血が滴り落ちると、傷を作った張本人である拓郎は静かに「黙れ」と忠告する。
『ほぅ…ガタガタ震えておっただけの奴g』
次いで左口の端から右と同じような亀裂が入り、口裂け女のような様相へと変貌させた拓郎の持つ槍が一瞬光った瞬間、セニャーレの体を稲光が貫通し、大きく仰け反る。
何事もなかったかのように起き上がったセニャーレの顔には傷など存在せず、最初と変わらぬ作り物のような美しさを保っている。
『なるほどの……多少は腕を上げたようじゃが――』
拓郎の視界から姿が消失し、真横から『まだまだじゃ』と声がしたかと思えば、セニャーレの腹部に白金色の刃が生えた。
セニャーレのものではない。高速移動で拓郎の真横を取った瞬間、更にその背後を拓郎が取り、彼女の腹に槍を突き刺した。そして、引き抜くと同時に特大の雷の柱が容赦なくセニャーレを包み込む。
上級雷魔法[トール・ハンマー]。何十本もの雷を収束させた空から発せられる特大レールガン。全体攻撃に向かず、消費MPも馬鹿高い為に上級という括りだが、単体の敵ならばワンランク上の超級に匹敵する破壊力を誇る。
ここまでの大技の連発。拓郎は勝負を急いているわけではない。これほどまでの大技を叩き込んで尚、確信して言える。相手のHPはわずかにしか削れていない、と。
『ちょこまかと…小手先の技で戦おうとは…』
セニャーレの足元からいくつもの影が触手のように伸び、彼女の体に纏わりついて衣服や皮膚に同化をしていく。
「シッ!」相手の目前にて姿を現すと同時に、拓郎の刃が腹部へと突き放たれる。1度貫かれたその場所は既に傷痕など残っておらず、再び貫かれるかと思われた――だが、今度は貫かれることはない。拓郎の槍に服から伸びた闇の触手が絡まり、完全に動きを封じ込めている。
これこそ、4年前にも拓郎が目撃をした彼女の戦闘スタイルだ。術者が認識した攻撃を自動で防御する上級闇魔法の[ブラックカーテン]と8つの目を自由自在に操る偵察用の魔法[蜘蛛の目]を合わせた鉄壁の防御、[女郎蜘蛛化粧]である。
拓郎は過去にも今までと同等の攻撃を繰り出したのだが、尽く攻撃を塞がれ、逆に相手の攻撃は全てがこちらに到達しうる。
唯一、勇者の攻撃は膂力かステータスの差から相手に届いていたのだが、傷を負わせるものの忽ちの内に傷を癒してしまった。
最後の最後、両断をされたセニャーレの体は炎と共に消え去ったことが、死んだと思い込んだ切っ掛けの1つである。
『さぁどうすr』
セニャーレが何かを喋ろうとした矢先、またもや声が途切れた。
今度はセニャーレの頬にまで達する傷であり、その攻撃にセニャーレの魔法は反応を示さなかった。これにはセニャーレも予想外だったのか、然れどその顔の笑みを崩すことはない。
「とりあえず――切り刻まれろ!!」
触手に捕らえられたままの状態から、不可視の刃が執拗にセニャーレを切り刻むという摩訶不思議な光景であった。
例え風の刃であろうとも、セニャーレの認識防御の前では無力であるにも関わらず、一切反応を示さない。即ち、全く感知出来ていないということになる。
『なるhd、面白いkとを考えtくもnだ。』
顔だけではなく拓郎を掴んでいた触手諸共全身を切り刻まれ、解放されたことで拓郎は相手の射程圏外まで一気に退く。
その間にもセニャーレの体は再生をしており、まるで今から戦い始めと言わんばかりだ。
『今のは[ライト]か?なるほど、【光槍】の二つ名を本当の物にしおったか。』
「くそがっ…」
あっさりとこの手品のタネあかしをされ、拓郎は舌打ちと共に悪態をつく。
セニャーレの予想通り、拓郎は初級中の初級、光源を確保する魔術である[生活魔法]の[ライト]を刃化させ、文字通り光る槍を作り出した。
過去ではこの槍は単なる光り輝くだけであったが、拓郎はそこに[大旋風斬舞]等で魔法を放出させる技術を加えてみることにした。
すると、光るだけであった槍は【光の速度で放出される斬撃】へと見事に昇華したのだ。対象に刃の鋒を向けてライトを刃化させるだけで最早拓郎の攻撃から逃れられるものはいない。
しかし、この魔法にも弱点がある。威力――破壊力である。
本来、刃化させたとしても魔法そのものの威力が上がるわけではない。生活魔法のライトなど、攻撃力は皆無である。それに槍の切れ味を追加させただけなので、速度は最速でも攻撃力という点は間違いなく最弱である。
しかも、その距離が遠ければ遠くなるほど、斬撃の収束は甘くなっていき、傷ひとつ付けることができない。
至近距離で使うのならば、この[光刃]よりも、炎を纏わせるヒートソードの[炎刃]や雷を纏わせるプラズマブレードの[雷刃]の方が攻撃力は桁違いに高い。
よって、今のように近くで捕縛されて身動きがとれない状況から繰り出すという点では有用であるが、遠距離攻撃にはとことん向かない、なんとも使い勝手の悪い技になってしまったのだ。
過去のトラウマに苦しめられながらも、拓郎が必死になって編み出したこの技は、セニャーレの為だけに作られた技といっても過言ではない。
致命傷こそ与えられないものの、拓郎の攻撃は相手に届いている。それこそが4年前との決定的な違い、拓郎の成長であった。
『槍の。その程度の攻撃で私を殺そうとするならば、貴様のMPが十(回)は枯渇せんと殺せんぞ?』
「わかってるよ糞ったれ。―――しつこいな、またか!」
あくまでも今のは通用するかしないかの実験である。ここから先が本番。そう言わんばかりに槍を構え直した拓郎だったが、またもや彼の下に近づく者が――仮面の男だ。
日本刀を振り回しながら拓郎に迫りくるが、対処をしようものならセニャーレに隙を見せることになる。
万事休すか…仮面の男が無視できない距離まで近寄ってきたその時、仮面の男目掛けて何かが凄まじい速度で飛んできた。それに気付いた仮面の男は即座にそれを日本刀で切り払い、飛んできた方向へと向く。
丁度拓郎の背後であり、セニャーレに注意を払っている拓郎はその人物の姿を見ることができない。
「誰かは知らんが助かった。だが今は逃げろ。あの女は俺の――」
「拓郎。待たせたな。」
拓郎の背後から聞こえてきた声、それはここにいるはずのないヘパイドンで別れたはずの親友の声だった。
「ろ――」
「ゥ……ウ…Uooooooooo!!」
名前を叫ぼうとした拓郎の声をそれまで無言を貫いていた仮面の男の声が遮り、今までにない反応に注意が一瞬セニャーレから逸れる。その時を狙ってかセニャーレの姿が消え、遅れて拓郎の姿も消える。先に姿を見せたのは拓郎だ。凄まじい衝撃音を伴いながら地面と水平に飛翔し、槍を突き立てて漸く動きを止める。
遠くではセニャーレが『残念』と表情とは裏腹の言葉を口にし、仮面の男は新たな敵めがけて武器を振り回しながら襲いかかるところだった。
「逃げろぉぉっ!!」
拓郎の悲痛な叫びが響くが、逃げるよりも先に仮面の男は緑色の髪の男に詰め寄っていた。
振りかざした日本刀が何の躊躇もなく振り下ろされ、拓郎は彼の名前を叫んだ。
「おう、呼んだか?」
手合わせをした限りでは、拓郎の知る彼よりも仮面の男の方がはるかに強かった。それは、実際に両者と戦った拓郎だからこそ比較できる実力差である。だが、そんな仮面の男の攻撃をあっさりと躱し、カウンターに槍の柄で拓郎同様に横殴りで吹き飛ばしている。
「お前…なんだ?どこかで見たことがあるような…。」
「UuuUUuuu……。」
「まぁ良い。あいつもあいつで手一杯みたいだし、拓郎の代わりにお前は俺が引き受けた。」
拓郎と同じように構える縁緑朗太の後ろ姿は、拓郎が嘗ての仲間を彷彿とさせる程に頼もしく感じさせた。
◇
場所は変わり、森の中、木から降りて藤枝と対峙していたリゴラは、広場が1VS2の状況が2VS2になったことで一先ず安堵することが出来た。
火を点けて破壊をしたはずの煙の発生源からまさかあんな化物が出てくるとは思いもよらず、しかもそれが4年前の魔王軍幹部であるとわかるや直様逃げ出そうと判断を下した。
拓郎を見捨てる形になるが、それは仕方がないとあっさり見捨てることのできる判断力の速さと非情さ、更には逃げ出すために如何なる手段をも用いようとする生き意地の汚さ。これは全人類の中でもリゴラはトップクラスだと自負するほどだ。そんな彼が逃げ切れずにいるのは、単に魔王軍の藤枝のせいである。この男、接近戦向きのバトル野郎かと思いきや、前衛ではなかった。
能力は煙草の精製と言っていたが、煙草の煙に紛れて毒を撒布させて臭いを嗅いだ相手に様々なステータス異常を引き起こしたりする後方支援、しかも索敵や妨害を主としたタイプである。
使用する武器は直接命に関わるものからそうでない物まで様々だが、問題なのはリゴラでも頑張れば倒せるかも知れないと思わせる程に拮抗しているということではない。藤枝の能力は感知も兼ねており、未だに薄らと残る煙の中ではリゴラはどこに逃げても直ぐに見つかってしまうのだ。
「なぁ、あんた。なんでそんなに怒ってるんだよ。あの箱を壊したおかげであの美人の姉ちゃんが復活したってなったら、感謝こそされども恨まれる覚えはないぜ?」
とんだ暴論ではあるが、リゴラはなんとかしてここから逃げ出したいと必死であった。
が、そんな心情は知らず、尚且つ憤っている藤枝はハッキリとリゴラを見逃すことはしないと断言した。
「貴様が何を喋っているのかは知らん!!だが、あの箱は貴様らのような野蛮人が手にかけていい箱ではない!!ましてや、油まみれにした挙句に火を放つなど言語道断!言語道断だ!!」
青白い肌を紅潮させながら怒り狂う藤枝の様子に、言葉がそもそも通じないので交渉は初めから成立しなかったんだな、と後悔する。こうなれば最早自棄糞である。相手は恐らく星の流れ者。どの程度の実力があるかは定かではないが、今のリゴラでも十分勝てる可能性があるとわかれば、覚悟を決めるしかない。
「やれやれ…あんまり本気で戦ってくれるなよ。」
「殺す!!いや、殺すだけでは足りん…貴様の体の一つ一つを装飾品のように加工し、あの方に献上して差し上げるのだ!!」
「何を言ってるかわからんが、お前さんよっぽど碌でもないこと考えてるだろ。顔でわかるよ。」
へへとリゴラが鼻で笑うと、馬鹿にされていると思った藤枝は更に怒りを爆発させ、口に何本もの煙草を咥えて一気に紫煙を精製する。セニャーレとは異なる煙であるが、藤枝もまた、煙を精製する能力を持っていた。
彼の能力は[躊躇なき喫煙者]。生み出した煙草を吸い、吐き出した紫煙に様々な能力を付与する効果を持つ。効果の付与は任意で選べ、効果付与にはMPの消費はない。彼の煙草は1箱単位でMPを1消費する燃費の良さなのだが、彼自身のレベルは未だに低いままだ。
緑朗太と時を同じくしてこの世界に転移をした為、戦闘行為をいくつかこなしているとしても。リゴラの様な歴戦の戦士というわけではない。
厄介な能力持ちだとは言え、付け入る隙は必ずある。
藤枝の周辺を漂っていた煙がリゴラに襲いかかるや、地面を蹴り、スリングショットを口に咥えて器用に近くの木を登っていく。
「上に逃げるとは悪手の極みだな!!」
上へと一気に押し寄せる紫煙。怒りに任せて追跡するその煙で互いの姿が完全に見失われたのを見計らい、煙を貫いて藤枝に木の上から鉄球が襲いかかる。
煙の感知能力を察知していた藤枝が一歩後ろに下がると、今まで立っていた地面に鉄球がめり込む。続けて何度も礫が撃たれ、それら全てを藤枝は避け続けた。
藤枝を攻撃し続けている間、リゴラはこの煙のコントロールの性質を解析していた。今、敵は回避に専念している。煙で防御をするといった物理的な接触は出来ず、代わりにこうまで正確に避けれるということは感知系の機能が働いている可能性が高い。ということは攻撃しながらであれば、恐らく簡単に逃げられる。ただし、この男は完全に自分に狙いを定めているので、この男だけはなんとしても始末しなくてはならない。
しばらく攻撃を続けていると、追っていた煙は徐々に晴れていく。速い攻撃ではないので、回避に専念するということは実戦経験が低いということの表れだ。
リゴラは相手の視界から外れたのを良い事に、木から木へと飛び移り、広場からどんどん距離をとる。逃亡とも取れるリゴラの行動に、馬鹿め!と藤枝はほくそ笑んだ。リゴラの背後から凄まじい勢いで煙を吐きながら、追跡を開始する藤枝。その様子を観察しながら、煙の効果範囲、追跡スピードなどと言った情報を逐一集め、確実に勝てる場所への誘導を完了させた。
前日に森の探索を行った際、見つけていた花々で彩られた丘。拓郎達が戦っている広場程ではないが、周囲を見渡すのになんら問題はない場所である。
そこで他の場所よりも高い地点でリゴラは立ち尽くして煙が襲って来るのを待った。追ってきているはずの相手は姿を見せない程に撒いた。が、色の異なる紫煙はゆっくりとリゴラに接近をしているのだ。念の為にと口元を布で覆い隠し、準備を終えた頃、見下ろす彼の視界に紫煙を纏わせて肩で息をする藤枝の姿が飛び込んできた。
喫煙者ということが拍車をかけるほどに、体力が消耗されているのだろう。それでもリゴラを睨みつけるだけの元気があるのは意地という他ない。
待ち構えるリゴラを不信感を抱きながらも、リゴラが両手を万歳と上げているのを見れば、最早逃げるのを諦めたのかと勝ちを確信した。
大きく息を吸い込み、紫煙に奴を殺せ!と命令せんとした時――周囲の花々が一瞬にして枯れはて、藤枝の顔色が一変した。
「ゲッ…カッ……ァァッ…」
「あぁ、やっぱり気付かなかったか。割ときつい臭いなんだけど…あんな臭いを纏ってたら気づかないよな。」
喉を掻き毟りながら苦悶の表情を浮かべる藤枝に、リゴラはやれやれと言いた気な顔で「冥土の土産だ。」と、どうしてこうなったのかを話し始めた。
「お前が今立っている場所にはな。俺がいざという時に拓郎を殺す為の毒薬が散布されてるんだよ。あぁ、最初から殺すつもりなんてなかったさ。けど、なにが切っ掛けで拓郎から俺に迷惑が掛かるかわからないからな。確実に始末できるよう、気化性で毒耐性持ちでも致死率80%を超える猛毒だ。」
日本語しか理解できない藤枝には何を話しても無駄であったが、この症状は相手の仕業だと遠ざかる意識の中で確信をした。そして、最後の悪あがきとして力を振り絞り、己の能力を全力で発動させて、リゴラへと襲いかからせた。
「あぁ、どうしてさっき使わなかったかって?同じ立地条件だと下手したら俺も吸い込むからな。こうして高低差がある場所で背後から風を受けてないととてもじゃないけど使えない。その上、あそこで使って誤ってあいつらを殺したら、あの黒女郎の狙いが俺に来るかもしれなかったからな。引き離す必要があったわけだ。」
リゴラは説明を終えると同時に、スリングショットで鉄球を放った。最早避ける気力もなかった藤枝の眉間を陥没させながら鉄球が直撃し、仰け反り、地面に背中から倒れると、以降はピクリとも動くことはなかった
煙はリゴラの目前で霧散し、彼を襲うことはない。
撒いた毒薬も数十秒ほど猛威を振るった後にあっさりと効果が切れる。これで銀板が9枚と金貨7枚というのだからぼったくりも良いところだとリゴラは考えている。
実際、拓郎を殺せるかと問われたらリゴラは首を横に振る。あの男はそれをあっさりと覆すことのできるリゴラが認める数少ない実力者だ。
だが、そんな実力者の拓郎が過去に手も足も出なかったというやばすぎる相手――こうしてリゴラはその場からあっさりと帰還を果たし、せめてもの償いにと急ぎ伝令鳥をヘパイドンとモルガニアへと飛ばすのであった。
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