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江戸時代。彼らと共に歩む捜査道
人魚の出現2
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「……ってことがあったのよ、玉藻前。」
夜。一郎さんからの話を告げると、玉藻前は夕食の野菜炒めを食べながら首を振った。
「わたしは反対だ。この間危険な目に遭わせたのを犬は忘れたのか?関わらないのが一番だ。そもそも、群馬は海なし県だろう。どうやって人魚が出る??無病息災のアマビエの絵でも飾ってたのではないか?」
(前回巻き込んできたのは貴方だけどね。)
しかしそれは前回の件が終わったあと謝られたので許している。
「しかも詳しい事情は言われてないのだろう。情報も吐かずに協力してもらいたいなどと無視がよすぎる。協力する筋合いはない。」
「いや、もしかしたら力を借りるかもって話だし……そもそも、貴方だけ手伝ったらいいじゃない。」
「断る。女がいないのでは華がない。あんなやつと、しかも男だぞ?楽しいわけないだろう。」
(いや事件を面白がっちゃダメでしょ。)
ビシィーと彼のてを叩く。
いたた、と言いながら、手をさするが、意思は変えんぞ、と彼は言う。
「おまえがいないなら協力する義理はないしお前をわたしは危機に晒したくない。同じ間違いなど起こさん。もし協力してほしいと言われたなら、そういってやれ。」
「いやまぁそれでいいならいいんだけれど。私正直巻き込まれてただけだもの。」
ただ、ほんのちょっぴり、つまらない日常に戻ってしまうわね、とは思ったわ。
そして前言撤回するのは次の日のこと。
一郎さんの話によると、江戸では、人魚の影響により、栗が取れなくなっているそう。
そしてショーケースを見れば、昨日あったはずの栗系統のデザートはすべて【品切れ】と書かれている。ご丁寧に、栗がとれないためなどと理由も看板についていた。
「……許さん。許してなるものか……!おい店主!!人魚を駆除しにいくぞ!!」
「貴方私よりデザートのほうが大切なのね!?」
「安心してくれ、今度こそわしが守るつもりだ。」
やだ、一郎さんイケメン…と心臓をはねあげらせていると、玉藻前はどこからか地図を取り出した。しかも、江戸仕様の。どこで買ったの??作ったのかしら??
「見ろ、人魚が現れたという場所をピックアップ……この地図に丸で囲んで書き込んでおいた。」
それを見れば、どこもおかしなことに山のなか。しかも群馬で、だ。
「なぜだ……?普通は上州ではないだろう。海などないし、上州以外で被害が出てるなどの報告……情報は聞かなかった。この地図も上州のみ丸をつけられているしな。」
「……ふむ。変だな。そもそも、山を登り歩き回るなら足がいる。足のある状態でなぜ人魚だとわかるのだ……?」
「……。どうやら今回は早く解決しそうだな。情報元を探ってこよう。」
「ならばわたしたちは……。」
玉藻前ははっと気づいたようにこちらを見た。
「……わたしは、山を見てこよう。店主、おまえは書物でも呼んでいろ。」
「えっ……!」
いいの!!と本好きのこころが浮かれる。
「ああ、そうだな……。行ってくる。待っていてくれ。」
一郎さんはそう言い、出ていく。それにつられるように玉藻前もそとに行く。
「本当に、置いていくの……。」
なんだか肩透かしを食らったような、寂しい気持ちで奥の畳の部屋へと移動し、図書館から適当に借りた本を鏡を潜り抜けバッグから取り出した。
「………植物の本に、魔女の歴史に……恐竜の本。我ながら、変なチョイスだわ。
……そういえば、小さい頃も恐竜の本なんて見た記憶がないわね……。」
なんとなくモヤモヤした気持ちを抱えながら、私は本を開いたのだった。
夜。一郎さんからの話を告げると、玉藻前は夕食の野菜炒めを食べながら首を振った。
「わたしは反対だ。この間危険な目に遭わせたのを犬は忘れたのか?関わらないのが一番だ。そもそも、群馬は海なし県だろう。どうやって人魚が出る??無病息災のアマビエの絵でも飾ってたのではないか?」
(前回巻き込んできたのは貴方だけどね。)
しかしそれは前回の件が終わったあと謝られたので許している。
「しかも詳しい事情は言われてないのだろう。情報も吐かずに協力してもらいたいなどと無視がよすぎる。協力する筋合いはない。」
「いや、もしかしたら力を借りるかもって話だし……そもそも、貴方だけ手伝ったらいいじゃない。」
「断る。女がいないのでは華がない。あんなやつと、しかも男だぞ?楽しいわけないだろう。」
(いや事件を面白がっちゃダメでしょ。)
ビシィーと彼のてを叩く。
いたた、と言いながら、手をさするが、意思は変えんぞ、と彼は言う。
「おまえがいないなら協力する義理はないしお前をわたしは危機に晒したくない。同じ間違いなど起こさん。もし協力してほしいと言われたなら、そういってやれ。」
「いやまぁそれでいいならいいんだけれど。私正直巻き込まれてただけだもの。」
ただ、ほんのちょっぴり、つまらない日常に戻ってしまうわね、とは思ったわ。
そして前言撤回するのは次の日のこと。
一郎さんの話によると、江戸では、人魚の影響により、栗が取れなくなっているそう。
そしてショーケースを見れば、昨日あったはずの栗系統のデザートはすべて【品切れ】と書かれている。ご丁寧に、栗がとれないためなどと理由も看板についていた。
「……許さん。許してなるものか……!おい店主!!人魚を駆除しにいくぞ!!」
「貴方私よりデザートのほうが大切なのね!?」
「安心してくれ、今度こそわしが守るつもりだ。」
やだ、一郎さんイケメン…と心臓をはねあげらせていると、玉藻前はどこからか地図を取り出した。しかも、江戸仕様の。どこで買ったの??作ったのかしら??
「見ろ、人魚が現れたという場所をピックアップ……この地図に丸で囲んで書き込んでおいた。」
それを見れば、どこもおかしなことに山のなか。しかも群馬で、だ。
「なぜだ……?普通は上州ではないだろう。海などないし、上州以外で被害が出てるなどの報告……情報は聞かなかった。この地図も上州のみ丸をつけられているしな。」
「……ふむ。変だな。そもそも、山を登り歩き回るなら足がいる。足のある状態でなぜ人魚だとわかるのだ……?」
「……。どうやら今回は早く解決しそうだな。情報元を探ってこよう。」
「ならばわたしたちは……。」
玉藻前ははっと気づいたようにこちらを見た。
「……わたしは、山を見てこよう。店主、おまえは書物でも呼んでいろ。」
「えっ……!」
いいの!!と本好きのこころが浮かれる。
「ああ、そうだな……。行ってくる。待っていてくれ。」
一郎さんはそう言い、出ていく。それにつられるように玉藻前もそとに行く。
「本当に、置いていくの……。」
なんだか肩透かしを食らったような、寂しい気持ちで奥の畳の部屋へと移動し、図書館から適当に借りた本を鏡を潜り抜けバッグから取り出した。
「………植物の本に、魔女の歴史に……恐竜の本。我ながら、変なチョイスだわ。
……そういえば、小さい頃も恐竜の本なんて見た記憶がないわね……。」
なんとなくモヤモヤした気持ちを抱えながら、私は本を開いたのだった。
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