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江戸時代。彼らと共に歩む捜査道

河童3

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急いで一郎さんのもとへ行くと、誰かと話していた。
「だからってなぜ_____。なんだと!?_______!」
何かを言い争ってるのか、突然一郎さんが声を荒げる。
「_____でして、_____こっちを先に解決しなけりゃあ____ですぜ。」
一郎さんと話している男性は、まさに美青年と言われるだろう顔立ち。しかし残念なのは、江戸の武士のヘアスタイルであることだ。その男性は、たんたんと話をしている。
「_____仕方ない。」
ふう、と息を吐き椅子に座りなおした一郎さんは、気難しい顔をしてこちらを向き、呆気にとられた顔をした。どうやら、私たちが一郎さんたちを伺っていたことに今気が付いたみたいだわ。
「……その、だな。こちらは、依頼主の……わしらは沖田さんと呼んでいる、常連さんだ。」
「はあ?アンタ何言って……。」
「あんた、じゃないよな、いつも、一郎殿、と呼んでいるだろう??なあ?」
「……はあ。了解ですよ、イチロウ殿。それで、そこの姉さん。この人の職業は何だって聞いてます?」
「瓦版を……。」
「なぁるほど。理解しましたぜ。俺は沖田総司。新選組の副長です。……いてっ。
……机の角に足をぶつけただけっす。」
「え……!」
その名前は知っている。剣士としても、イケメン腹黒キャラとしても有名であるからだ。しかし……。
「あの、副長さんって、土方歳三という方では……?」
そういうと、なぜか沖田さんは笑い出す。
「あっはっはっは!あはは!なあんだ、知ってたんですか!そうですよ、俺は
新選組副長助勤。
よろしくお願いしますね。」
不思議なからかいをされ、首を傾げようとしてしまうが、踏みとどまる。
「あれ、でもどうしてこんな時間に?新選組の方なら、もう少し忙しいのでは?」
「それは、まあ……俺の上司の土方さんが、報告書やらいろいろと事件以外の雑務を終わらしてしまいましてねぇ。やることもないんで、散歩してたら、イイにおいがするんで。入ってみたら、イチロウ殿がいたってわけで、仲良くお話してたってことですよ。」
それにしては、険しい顔をしていたような……とは思ったが、もしかしたら一郎さんはこの人が苦手なのだろうと思い、追及するのはやめておいた。まあ、なんというか沖田さんのような軟派な、簡単に言うとチャラい人種は、一郎さんのような硬派な人には合わないのでしょう。でも仕事で情報もらわないといけないため、切ろうとしても切れぬ縁なのね、と一人で勝手に納得する。


「……なんだか、憐れまれてるのは気のせいか?」
「俺は蔑まれてる気がしますねえ。」
「そんな……気のせいですよ。」
心内を感づかれドキッとするが、ごまかせたようだ。
「にしても、いい店っすね。食べもんもうまそうだし。」
ご注文がおありですかときくと、一郎さんのパフェをつまみ食いしたらしく、あのうまいもんをもうひとつ、と頼まれた。
「満腹満腹~。そんじゃ、これ代金。うまかったんで、また来たいところですが……上司を怒らせそうなんで、今度イチロウ殿に差し入れたのみます。」
値段はと聞かれたので答えると、安すぎでしょ!?と言われた。しかし、原価0円だし、こっちのお金の価値が私にはわからないことを見越してか、勝手に値札は張られているため、
そういわれてもという気持ちではある。
「ごちそうさまでしたぁ~。じゃあ、姉さんまた会いましょ~。」
そういいドアに歩いていく沖田さんは、ドアを開けようとして……止まった。
くるり、と振り返り、言ったのだ。
「あの件、確かに伝えましたからね、イチロウ殿。」
……と。
「……わざわざこんな明朝に呼び止めたのにすまんが、調査は明日でいいだろうか。少し、
やらねばならないことができてな。ミノコクのうち、ハツコクの最初でどうだろうか。」
「え、ええ……正直、私としては何日後でもいいんですけれど……。」
「店主殿は優しいな。」
(いや事件に自分から巻き込まれに行きたくないだけなのよ……!!調査やめません!?)
しかし微笑んでいる彼の前でそんなこと言える筈もなく。泣く泣く、私は頷いたわ。
そして彼は帰っていった。
ふっと自嘲の笑みを浮かべ玉藻前のほうを向けば、先生のような服……白いシャツに茶
色のベスト、同じ色のズボンに、眼鏡をかけている。
そう、まるで先ほど江戸言葉がわからず自嘲の笑みを浮かべたことを見透かしたような格
好だ。
「さて、玉藻前先生の、お江戸言葉授業だ。」
「一応聞くけど、あなた平安出身よね?」
玉藻前は、ある程度は頭に入っているという。けれど、貴方のある程度はどれほど膨大な情報量のことを言っているの??てんさいこわいわ……と、狐火を見た時よりも恐ろしく感じた私は、店を閉め、ブランケットを持って席に座った。
「まずは……巳の刻。これは、 午前 9時~午前11時のことを差している。およそ現在の
二時間を一刻としており、明け六ツから一日が始まり、朝五ツ、朝四ツ、昼九ツ、昼八ツ、昼七ツ、そして暮れ六ツ、夜五ツ、夜四ツ、暁九ツ、暁八ツ、暁七ツそして再び一日の始ま
りとなる明け六ツとされていた。所謂
いわゆる、不定時法と呼ばれる時刻の数え方だ。」
「へえ……それじゃあ、ハツコクっていうのは?」
「二時間を二つに区切り、最初の一時間を初刻、最後の一時間を正刻というんだ。」
なんかもう、はあ……というしかない。ちなみに、これはグーグ〇に書かれていたことを丸暗記した、と言った。〇ーグルに書かれてること全部覚えてるの?あなた。
「さて、最後に坂東太郎、これだな。これは、なじみ深いだろう。利根川のことだ。」
「え……っ!」
「ちなみに、きっとそこにいる河童は祢々子だろうな。女の河童で、茨城中心だが、関東各地にも話が伝わっているため、たまたま今回群馬に来たのだろう。奴が現れると、その場所は災いが起きる、とも言われている。また、河童どもの大親分ともいわれているな。」
「え、じゃあ今回の異変……事件?」
「異変でいいんじゃないか?」
「じゃあ、異変。それって、その祢々子っていう河童さんの仕業じゃないの?」
「そうだ……と言いたいところだが、奴にはそんな力はない。せいぜい物理攻撃を仕掛けてくるだけだ。」
「なんでそんなことわかるのよ?」
もしや……と思いみつめる。その視線を受け取った玉藻前は、眼鏡の奥の瞳を鋭くし、大きくうなずいた。
「犬から話を聞き、すぐに利根川へ向かったが、そこにいたのはマーライオンごとく吐いてる河童でな。見たところ妖術の仕える個体ではないし、私を見た途端蹴りを入れようとして、わたしの妖力を浴び恐怖で倒れた。かつ丼を渡し取り調べをすると、どうやら奴は巻き込まれていたようでな。本人曰く自分はすごく不運体質で、行くところで事件やトラブルが起き、巻き込まれるそうだ。なんであたいばっかりこんな目に、と泣き崩れながら茨城に帰っていった。」
途中刑事ドラマか!とか河童に不運体質!?だとかつっこみどころ満載だったけれど。
(やっぱり……。)
「やっぱり会ったのね!?河童っていたの!……あら、でもその河童さんが犯人じゃないなら、犯人は……。」
「それを、犬とわたしとお前で調べに行くんだろう?」
玉藻前の笑顔はそれはもう妖怪らしき邪悪な顔だった。 
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