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江戸時代。彼らと共に歩む捜査道
河童2
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「はぁ。」
もう、私はそうとしか声がでない。鬼火の次は河童と来たものだから。
「いや、わしも信じとる訳ではない。しかし、実際に被害が出ているんだ。」
げっそりとした表情で、よく見てみれば、いささかやつれている気もする。
「すまん、店主。ほかの客の迷惑になっては、と思い、開店時間より早く来たが、その、甘いものが欲しくなってな。すまぬが、あのばななぱふぇを一つ頼めるだろうか……?」
一郎さんが指さしたのは、いつの間にかポスターも出ている、オレオクッキーのついた新作のバナナパフェである。念のため玉藻前に視線を送ると、私が張ったのではない、いつの間にか張られていた、と小声で教えてくれた。
パフェを一郎さんの目の前に置き、スプーンを渡す。一口食べた後、一郎さんは気が抜けたようにはあ、と息を吐いた。
「冷えた水ではないが、この店の甘味は、暑い夏や疲れたときにはよく身に染みるな。生き返るようだ。」
「おい、食べるのはいいが、もっと詳しく言え。それで?昨日はどこでどのように何が起きたのか、この店主に教えてやれ。」
「……女人をあまり荒事に巻き込みたくはないのだが。」
「今さらだろう?そもそも、犬の周りに事件が寄ってくるのが悪い。わたしはこの女から何日も離れる気はないし、巻き込みたくないのなら、今の職場やら事件を頼む知人とやらから離れることだな。」
「こら!なんてこというの…あら、でも職場?」
「ち、知人!そうだ、同じ職場の人を知人ともいうだろう!?」
「え?前は新選組に知り合いがって……。」
「今回の知人とは、別のやつなんだ!」
「えぇ……なるほど。」
(大変なのね、何人もの知人から事件を言われるなんて。)
その時、私は気が付いた。一郎さんの職業がわかってしまったのだ。ふつう、そんなに事件に触れることなどないだろう。そう、仕事で以外は……。
「まさか、一郎さんって……新聞者でしょう!?記者?っていうのかしら!?」
「……ん?」
スプーンを落とし、こちらを驚いた表情で見る一郎さん。
「ま、まて。キシャやシンブンシャって……何のことだ?」
「考えたな。店主。つまり、犬は事件のなどを紙に書き、民に知らせていると言いたいのか。」
「瓦版(かわらばん)のことか……!」
一郎さんは、ふむ、だの、ううむ、だのうねったあと、よくわかったな、と言った。
「あまり気づかれたくはなかったが……たしかに、わしは瓦版を売っている。民に事を素早く知らせなくてはいけないからな。」
「やっぱり……!」
「知人というのも、噂を話に来る奴らのことだ。まあ、わしらは依頼人と言っているが。わしは、真相がわかってから瓦版を書くため、調査が必要なのだ。まあ、可笑しなこと……前にあった火事や鬼火については、書けないが。上に伝え、審議をし、世に出しても問題のないもののみ書いている。玉や店主殿と関わってからおかしなこと続きで、ろくに書けていないため、いままでわしの書いた瓦版を見てはいないのだろう。」
「なるほど……。」
それで。
「私たちは、その河童さんに月にかわってお仕置きをすればいいんですね?」
「月…?」
「まてまて、それは犬には通じんぞ。」
手のひらを見せストップと体で表現している玉藻前とは真反対に、一郎さんは何のことか、ときょとんとしている。
「なんでもないですよ、ごめんなさいね。」
「はあ……。」
「気にするな、犬。それよりも、だ。」
ちらり、と玉藻前が一郎さんに目をやると、首を傾げた後、思い出したように頷いた。
「そういえば、詳しいことはまだ何も話せていなかったな。河童のことなんだが。」
__________________________________________
要約すると、つまりはこういうことだ。
この近くの坂東太郎(ばんどうたろう)という川で洗濯をしてはいけない。
なぜなら、
河童が出るというからだ。河童らしき姿を見、それが川に潜ったのを見て気味が悪く
なり慌てて洗濯物を川から引き揚げ家に帰っても、数日後に一家揃って体調を崩す
のだという。そう、河童を見た瞬間から、呪われているのだ……。
__________________________________________
「何ですかそれぇ……!私の知ってる河童は、相撲を申し込んだりするかわいいフォルムの生き物なんですけど……!」
「ふぃ……?よくわからんが、どうしたらいいのかも考えつかんで、そしたらこういうことに詳しいだろう玉が、昔祓い屋をしていて、解決の仕方に心当たりがあるというんで、恥を承知で力を借りに来たのだ。これで解決できんかったら、いよいよ進退これ谷まるのだが……。」
「……少々お待ちくださいませー。」
一郎さんにそう断ってから、玉藻前を店の奥の畳の部屋に連れていく。
「祓い屋って……あなたどっちかっていうと退治される側でしょ!?というか、そんな安請け合いをして大丈夫なの……?あなたがケガとかしたら……。」
「愛いな。心配してくれているのか。だがまあ、嘘は言ってないぞ?よく祓い屋(と対決)をしていたからな。」
「かっこの中があるのとないので結構意味が変わるけれど!?」
「ふ。それに、わたしを誰だと思っている。天下のお狐様だぞ。」
彼がそう言った瞬間、部屋中が熱気に包まれる。彼が、青白い炎を手のひらから出したからだ。
その炎は、見ているだけで引き込まれそうで、見惚れていれば、ふっと消された。気づけば、私の腕は先ほどまで炎のあった彼の手のひらへと伸びている。あと数センチ、近づけば……。
腕が炎に包まれ焼け落ちるのを想像しぞっとした。
「美しかっただろう?人も物の怪もまどわす、恐ろしい炎。狐の専売特許だ。」
「……こわいわ。ケーキが溶けたらどうするの。」
「いや思っていた感想と違うな?」
わかっているの、確かにあの時恐怖したのよ、わが身が炎に包まれることを想像して。しかしすぐに思い直す。私、彼の命の恩人だし、家に住まわせてあげてるし、彼からある程度の信頼あるはずだもの。傷つけられるいわれがないわ……と。あと。
「お前は強かだな?」
「正直、アイドル顔のイケメンに言われてもあんまり怖さがないのよね。」
本心である。
「……。なんだろうな。お前に魅力的な顔だといわれてうれしいが、妖怪として虚しい気分だ。
まあ、それはいい。いや、よくもないが……そろそろ、犬のもとへ行かなくてよいのか?わたしとしては、まだお前がわたしとともに二人でいたいというのなら、犬を放っておくが。」
「あ……!忘れてたわ、一郎さん!すぐにいかなくちゃ……!」
「私の口説きをスルーするな……。」
もう、私はそうとしか声がでない。鬼火の次は河童と来たものだから。
「いや、わしも信じとる訳ではない。しかし、実際に被害が出ているんだ。」
げっそりとした表情で、よく見てみれば、いささかやつれている気もする。
「すまん、店主。ほかの客の迷惑になっては、と思い、開店時間より早く来たが、その、甘いものが欲しくなってな。すまぬが、あのばななぱふぇを一つ頼めるだろうか……?」
一郎さんが指さしたのは、いつの間にかポスターも出ている、オレオクッキーのついた新作のバナナパフェである。念のため玉藻前に視線を送ると、私が張ったのではない、いつの間にか張られていた、と小声で教えてくれた。
パフェを一郎さんの目の前に置き、スプーンを渡す。一口食べた後、一郎さんは気が抜けたようにはあ、と息を吐いた。
「冷えた水ではないが、この店の甘味は、暑い夏や疲れたときにはよく身に染みるな。生き返るようだ。」
「おい、食べるのはいいが、もっと詳しく言え。それで?昨日はどこでどのように何が起きたのか、この店主に教えてやれ。」
「……女人をあまり荒事に巻き込みたくはないのだが。」
「今さらだろう?そもそも、犬の周りに事件が寄ってくるのが悪い。わたしはこの女から何日も離れる気はないし、巻き込みたくないのなら、今の職場やら事件を頼む知人とやらから離れることだな。」
「こら!なんてこというの…あら、でも職場?」
「ち、知人!そうだ、同じ職場の人を知人ともいうだろう!?」
「え?前は新選組に知り合いがって……。」
「今回の知人とは、別のやつなんだ!」
「えぇ……なるほど。」
(大変なのね、何人もの知人から事件を言われるなんて。)
その時、私は気が付いた。一郎さんの職業がわかってしまったのだ。ふつう、そんなに事件に触れることなどないだろう。そう、仕事で以外は……。
「まさか、一郎さんって……新聞者でしょう!?記者?っていうのかしら!?」
「……ん?」
スプーンを落とし、こちらを驚いた表情で見る一郎さん。
「ま、まて。キシャやシンブンシャって……何のことだ?」
「考えたな。店主。つまり、犬は事件のなどを紙に書き、民に知らせていると言いたいのか。」
「瓦版(かわらばん)のことか……!」
一郎さんは、ふむ、だの、ううむ、だのうねったあと、よくわかったな、と言った。
「あまり気づかれたくはなかったが……たしかに、わしは瓦版を売っている。民に事を素早く知らせなくてはいけないからな。」
「やっぱり……!」
「知人というのも、噂を話に来る奴らのことだ。まあ、わしらは依頼人と言っているが。わしは、真相がわかってから瓦版を書くため、調査が必要なのだ。まあ、可笑しなこと……前にあった火事や鬼火については、書けないが。上に伝え、審議をし、世に出しても問題のないもののみ書いている。玉や店主殿と関わってからおかしなこと続きで、ろくに書けていないため、いままでわしの書いた瓦版を見てはいないのだろう。」
「なるほど……。」
それで。
「私たちは、その河童さんに月にかわってお仕置きをすればいいんですね?」
「月…?」
「まてまて、それは犬には通じんぞ。」
手のひらを見せストップと体で表現している玉藻前とは真反対に、一郎さんは何のことか、ときょとんとしている。
「なんでもないですよ、ごめんなさいね。」
「はあ……。」
「気にするな、犬。それよりも、だ。」
ちらり、と玉藻前が一郎さんに目をやると、首を傾げた後、思い出したように頷いた。
「そういえば、詳しいことはまだ何も話せていなかったな。河童のことなんだが。」
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要約すると、つまりはこういうことだ。
この近くの坂東太郎(ばんどうたろう)という川で洗濯をしてはいけない。
なぜなら、
河童が出るというからだ。河童らしき姿を見、それが川に潜ったのを見て気味が悪く
なり慌てて洗濯物を川から引き揚げ家に帰っても、数日後に一家揃って体調を崩す
のだという。そう、河童を見た瞬間から、呪われているのだ……。
__________________________________________
「何ですかそれぇ……!私の知ってる河童は、相撲を申し込んだりするかわいいフォルムの生き物なんですけど……!」
「ふぃ……?よくわからんが、どうしたらいいのかも考えつかんで、そしたらこういうことに詳しいだろう玉が、昔祓い屋をしていて、解決の仕方に心当たりがあるというんで、恥を承知で力を借りに来たのだ。これで解決できんかったら、いよいよ進退これ谷まるのだが……。」
「……少々お待ちくださいませー。」
一郎さんにそう断ってから、玉藻前を店の奥の畳の部屋に連れていく。
「祓い屋って……あなたどっちかっていうと退治される側でしょ!?というか、そんな安請け合いをして大丈夫なの……?あなたがケガとかしたら……。」
「愛いな。心配してくれているのか。だがまあ、嘘は言ってないぞ?よく祓い屋(と対決)をしていたからな。」
「かっこの中があるのとないので結構意味が変わるけれど!?」
「ふ。それに、わたしを誰だと思っている。天下のお狐様だぞ。」
彼がそう言った瞬間、部屋中が熱気に包まれる。彼が、青白い炎を手のひらから出したからだ。
その炎は、見ているだけで引き込まれそうで、見惚れていれば、ふっと消された。気づけば、私の腕は先ほどまで炎のあった彼の手のひらへと伸びている。あと数センチ、近づけば……。
腕が炎に包まれ焼け落ちるのを想像しぞっとした。
「美しかっただろう?人も物の怪もまどわす、恐ろしい炎。狐の専売特許だ。」
「……こわいわ。ケーキが溶けたらどうするの。」
「いや思っていた感想と違うな?」
わかっているの、確かにあの時恐怖したのよ、わが身が炎に包まれることを想像して。しかしすぐに思い直す。私、彼の命の恩人だし、家に住まわせてあげてるし、彼からある程度の信頼あるはずだもの。傷つけられるいわれがないわ……と。あと。
「お前は強かだな?」
「正直、アイドル顔のイケメンに言われてもあんまり怖さがないのよね。」
本心である。
「……。なんだろうな。お前に魅力的な顔だといわれてうれしいが、妖怪として虚しい気分だ。
まあ、それはいい。いや、よくもないが……そろそろ、犬のもとへ行かなくてよいのか?わたしとしては、まだお前がわたしとともに二人でいたいというのなら、犬を放っておくが。」
「あ……!忘れてたわ、一郎さん!すぐにいかなくちゃ……!」
「私の口説きをスルーするな……。」
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