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平安時代、彼と最初の捜査
純白の花嫁
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最近、女が出るというんですよ。白無垢を着た、不思議な女だそうで。え?あたしは、見たことありませんよ。そりゃあ、たいそう美人だそうで、お目にゃあ掛かりたいですがね。ああ、そうそう、出るのは、いつも外が暗くなった頃で、飴を買いに行くそうです。それがまた、妙なもんで。六道辻に出たと思えば、ひとつの飴屋に向かうんです。そこの飴屋は、ここら辺じゃあ有名で。幽霊も流行りにのりたくなるんですかねぇ。でも、気味が悪いったらありゃしない。あそこの飴屋から、客足も途絶えはじめてるらしくて・・・お嬢ちゃん、こういうの好きそうだし、暇でしょ?客も少ないみたいだし、しばらく閉めても、大丈夫だろう?
・・・と、ちょっと失礼なご近所さんは言っていた。つい最近、ショコラケーキを食べに来る、お爺さんのお客さんだ。名前は、孝太さん。初めは、疑心暗鬼にケーキを見つめていたが、一口食べたらその美味しさと柔らかさに虜になったそうだ。正直、この時代のお金を渡されてもと思ったが、現代に戻ると換金されるらしい。勝手に増えるケーキといい、不思議すぎる。ご近所さんは、頼んだよと言い、お金を置いて出ていってしまった。ご近所さんには、たまに野菜などを貰っているため、断るに断りきれなかった。
「なぜいる?」
「私のセリフです!!」
「セリ・・・は?」
夜中の12時に、聞いた六道辻(辻とは、十字路や丁字路のこと。)に行くと、この前の黒髪のイケメンがいた。
「なんでいるんですか・・・!?」
「なに、不思議な女がいるときいて、来たまでよ。女、逆に問おう。なぜいる?」
「わ、私もその、白無垢の女を探してるので!」
「・・・ほう?」
興味深そうに私を見た彼は、ふん、と鼻で笑う。
「もし、化け物の類だったら、どうするのだ?その貧弱な身体で戦うか?それとも、その弱そうな足で逃げるのか?無理だろう。」
「なっ、貴方こそ!逃げれるんですか!?」
当たり前というような誇らしげな顔をするイケメン。なぜそんな顔をするのかわからず、首をかしげる。
「聞きたそうだな?なぜ・・・なぜなら、わたしはヨウコだからな・・・!」
「ヨウコさん?不思議なお名前ですね。え、もしかして、有名な方?」
ニタリと笑っていた彼は、今ではポカンとしている。
「いや、そうか・・・なんとも、世間知らずな・・・いや、可笑しな・・・不思議な娘だ。わたしはヨウコ、そうだ、ヨウコという。女、」
「私は・・・」
「いや、言わんでいい。名を呼ぶつもりはない。そもそも、知らぬ男に名を告げようとするな。拐かされるぞ?わたしが言いたかったのは、様をつけろと言うことだ。」
「・・・そうですか。でも嫌です。」
絶対お互いに自己紹介の流れだと思った。様をつけろとは、かなりのお坊っちゃんみたいだ。しかし、彼の風貌から見るに、お忍びだろう。ならば、様をつけてはバレるだろうし、そもそも相手のの名前を呼ばず偉ぶる男に、様をつける筋合いはない。な、と呆気にとられたようで、信じられないものを見る眼で私を見る。
「なんて、変な女だ・・・。」
「貴方に言われたくないです。って・・・!」
「そうだな・・・お出ましだ。静かにしておれ。」
物陰に隠れ、六道辻にでた、白無垢の女性を見る。顔は青白く、ひどくやつれていた。
「ごめんください。飴をください。・・・誰もいない?今日も貰っていきますね。」
そう言い、彼女はおぼつかない足取りで、墓へと向かっていく。
「ふむ。追いかけるのか?」
「えっ、それは・・・まぁ、ご近所さんの頼みですし。」
「?お前は、頼まれてきたのか?」
「ええ・・・って、あの人は・・・!?」
墓には誰の影もない。
「あの女は、本物の霊のようだな。」
「本物・・・!?え、どうすれば・・・。」
「今日はもう遅い、明日の・・・いや、そうだな・・・わたしが参ろう。店があったな?その前に行く。大体、鐘が8つなった頃に。それまでに、白無垢を着た女が出たことを近所に広めておけ。その老いぼれも、人手があった方がいいだろう。」
きょとんとした。この男に、そのような優しい心があったのかと。出会ってほんの少しだが、最低だと思っていたので、見直した。店まで送ってくれる。私は、人って第一印象で性格が決まるわけでははないんだなと思った。
翌朝、私は言われたとおりに広めた。白無垢を着た、女の幽霊が出ることを、六道辻にでて、飴を貰いに来るらしいことを。八百屋さんは、最近女房に逃げられた男がいるだとか、近所のおばさんは女性に子供を望まない男がいて女房と喧嘩した男がいただとか言っていた。どうやら、男を恨む女はたくさんいるらしい。そんなにこっちにきて
大丈夫かといわれても、大丈夫である。なぜなら、今はゴールデンウィークであるからだ。しかも、二日目である。しばらく休みだ。
ついでに、昨日調べたことだが、鐘が8つなるときとは、午後2時のことらしい。まさに、おやつの時間だ。どうやら、このおやつという言葉も、鐘が、8つなったときという意味でお八つ時というらしい。私の店には、時計が飾られているため、鐘はいちいち数えはしないが。そんなことを思っていると、金が鳴り響いた。時計の針は、2時を指している。
「来たぞ。どうだった?」
「わあ、ぴったりですね。なんだか、皆さん知らなそうでしたよ。女房に逃げられたとか、子供を望まない男がいたとかの噂話は聞きましたけど。」
「ぴった・・・つくづく意味がわからぬな。まぁ、いい。そうとは思っていた。ん?その三角の黒いかたまりはなんだ?」
「これですか?ショコラケーキです。甘いお菓子ですよ。」
「ほう。ならばこれを・・・。」
「お嬢ちゃん、本当に幽霊を見たんだって!?」
驚いた顔で、店に来た孝太さんは、私たちにつめよった。
「ほ、本当に幽霊だったのか!?」
「は、はい。そうです。」
「本当か!?」
「だから、本当ですって!ねぇ、ヨウコさん!」
「ん?ああ。」
コクりと頷いたヨウコさんを見て、ですよねと首をふる。
「そうか・・・。」
なんだか、表情が暗くなっている気がした。私は、何を言えばいいのかわからず、口をつぐむ。
「・・・ところで、最近、女房にでも逃げられた話を聞かなかったか?」
「・・・まぁ、よくある話だな。」
「ついこの間、わたしの兄も逃げられましてな。どうやら、女房が、妊娠してまして。兄は望んでいないと知っていた女房は、実家に逃げ帰ったそうです。」
「・・・!そういうことか!!」
納得したような、スッキリしたような顔で、孝太さんは帰っていった。私には訳がわからず、首をかしげるばかりだ。
「やはり人間とは愚かだな。」
「ちょ、ちょっと、どういうこと!?というか、お兄さんがいたの!?」
「いるわけなかろう。それにしても・・・ほう。聞きたいのか?」
ニヤリと笑い、いいだろうという。しかし、期待の眼差しを向けると、首をふられた。
「まずは、あのしょこらけえきとやらを貰ってからだな。」
「美味であった。」
ほくほく顔で、ケーキを2つも食べたヨウコさん。
「いい加減教えてください。どういうことなんですか?」
「ああ。そうだな。それは・・・。」
ごくりと唾を飲む。一体どうして、何がわかったのだろうか。
「今夜の楽しみにとっておけ。」
「はい!?」
すぐ教えてくれるんじゃと目を向けると、くく、と笑われる。
「だれもけえきを食べたらすぐに教えるなんて言ってないだろう?」
「そんな!?騙したんですか!?」
「わたしは人を騙すのがすきだからな。」
・・・と、ちょっと失礼なご近所さんは言っていた。つい最近、ショコラケーキを食べに来る、お爺さんのお客さんだ。名前は、孝太さん。初めは、疑心暗鬼にケーキを見つめていたが、一口食べたらその美味しさと柔らかさに虜になったそうだ。正直、この時代のお金を渡されてもと思ったが、現代に戻ると換金されるらしい。勝手に増えるケーキといい、不思議すぎる。ご近所さんは、頼んだよと言い、お金を置いて出ていってしまった。ご近所さんには、たまに野菜などを貰っているため、断るに断りきれなかった。
「なぜいる?」
「私のセリフです!!」
「セリ・・・は?」
夜中の12時に、聞いた六道辻(辻とは、十字路や丁字路のこと。)に行くと、この前の黒髪のイケメンがいた。
「なんでいるんですか・・・!?」
「なに、不思議な女がいるときいて、来たまでよ。女、逆に問おう。なぜいる?」
「わ、私もその、白無垢の女を探してるので!」
「・・・ほう?」
興味深そうに私を見た彼は、ふん、と鼻で笑う。
「もし、化け物の類だったら、どうするのだ?その貧弱な身体で戦うか?それとも、その弱そうな足で逃げるのか?無理だろう。」
「なっ、貴方こそ!逃げれるんですか!?」
当たり前というような誇らしげな顔をするイケメン。なぜそんな顔をするのかわからず、首をかしげる。
「聞きたそうだな?なぜ・・・なぜなら、わたしはヨウコだからな・・・!」
「ヨウコさん?不思議なお名前ですね。え、もしかして、有名な方?」
ニタリと笑っていた彼は、今ではポカンとしている。
「いや、そうか・・・なんとも、世間知らずな・・・いや、可笑しな・・・不思議な娘だ。わたしはヨウコ、そうだ、ヨウコという。女、」
「私は・・・」
「いや、言わんでいい。名を呼ぶつもりはない。そもそも、知らぬ男に名を告げようとするな。拐かされるぞ?わたしが言いたかったのは、様をつけろと言うことだ。」
「・・・そうですか。でも嫌です。」
絶対お互いに自己紹介の流れだと思った。様をつけろとは、かなりのお坊っちゃんみたいだ。しかし、彼の風貌から見るに、お忍びだろう。ならば、様をつけてはバレるだろうし、そもそも相手のの名前を呼ばず偉ぶる男に、様をつける筋合いはない。な、と呆気にとられたようで、信じられないものを見る眼で私を見る。
「なんて、変な女だ・・・。」
「貴方に言われたくないです。って・・・!」
「そうだな・・・お出ましだ。静かにしておれ。」
物陰に隠れ、六道辻にでた、白無垢の女性を見る。顔は青白く、ひどくやつれていた。
「ごめんください。飴をください。・・・誰もいない?今日も貰っていきますね。」
そう言い、彼女はおぼつかない足取りで、墓へと向かっていく。
「ふむ。追いかけるのか?」
「えっ、それは・・・まぁ、ご近所さんの頼みですし。」
「?お前は、頼まれてきたのか?」
「ええ・・・って、あの人は・・・!?」
墓には誰の影もない。
「あの女は、本物の霊のようだな。」
「本物・・・!?え、どうすれば・・・。」
「今日はもう遅い、明日の・・・いや、そうだな・・・わたしが参ろう。店があったな?その前に行く。大体、鐘が8つなった頃に。それまでに、白無垢を着た女が出たことを近所に広めておけ。その老いぼれも、人手があった方がいいだろう。」
きょとんとした。この男に、そのような優しい心があったのかと。出会ってほんの少しだが、最低だと思っていたので、見直した。店まで送ってくれる。私は、人って第一印象で性格が決まるわけでははないんだなと思った。
翌朝、私は言われたとおりに広めた。白無垢を着た、女の幽霊が出ることを、六道辻にでて、飴を貰いに来るらしいことを。八百屋さんは、最近女房に逃げられた男がいるだとか、近所のおばさんは女性に子供を望まない男がいて女房と喧嘩した男がいただとか言っていた。どうやら、男を恨む女はたくさんいるらしい。そんなにこっちにきて
大丈夫かといわれても、大丈夫である。なぜなら、今はゴールデンウィークであるからだ。しかも、二日目である。しばらく休みだ。
ついでに、昨日調べたことだが、鐘が8つなるときとは、午後2時のことらしい。まさに、おやつの時間だ。どうやら、このおやつという言葉も、鐘が、8つなったときという意味でお八つ時というらしい。私の店には、時計が飾られているため、鐘はいちいち数えはしないが。そんなことを思っていると、金が鳴り響いた。時計の針は、2時を指している。
「来たぞ。どうだった?」
「わあ、ぴったりですね。なんだか、皆さん知らなそうでしたよ。女房に逃げられたとか、子供を望まない男がいたとかの噂話は聞きましたけど。」
「ぴった・・・つくづく意味がわからぬな。まぁ、いい。そうとは思っていた。ん?その三角の黒いかたまりはなんだ?」
「これですか?ショコラケーキです。甘いお菓子ですよ。」
「ほう。ならばこれを・・・。」
「お嬢ちゃん、本当に幽霊を見たんだって!?」
驚いた顔で、店に来た孝太さんは、私たちにつめよった。
「ほ、本当に幽霊だったのか!?」
「は、はい。そうです。」
「本当か!?」
「だから、本当ですって!ねぇ、ヨウコさん!」
「ん?ああ。」
コクりと頷いたヨウコさんを見て、ですよねと首をふる。
「そうか・・・。」
なんだか、表情が暗くなっている気がした。私は、何を言えばいいのかわからず、口をつぐむ。
「・・・ところで、最近、女房にでも逃げられた話を聞かなかったか?」
「・・・まぁ、よくある話だな。」
「ついこの間、わたしの兄も逃げられましてな。どうやら、女房が、妊娠してまして。兄は望んでいないと知っていた女房は、実家に逃げ帰ったそうです。」
「・・・!そういうことか!!」
納得したような、スッキリしたような顔で、孝太さんは帰っていった。私には訳がわからず、首をかしげるばかりだ。
「やはり人間とは愚かだな。」
「ちょ、ちょっと、どういうこと!?というか、お兄さんがいたの!?」
「いるわけなかろう。それにしても・・・ほう。聞きたいのか?」
ニヤリと笑い、いいだろうという。しかし、期待の眼差しを向けると、首をふられた。
「まずは、あのしょこらけえきとやらを貰ってからだな。」
「美味であった。」
ほくほく顔で、ケーキを2つも食べたヨウコさん。
「いい加減教えてください。どういうことなんですか?」
「ああ。そうだな。それは・・・。」
ごくりと唾を飲む。一体どうして、何がわかったのだろうか。
「今夜の楽しみにとっておけ。」
「はい!?」
すぐ教えてくれるんじゃと目を向けると、くく、と笑われる。
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