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今日は楽しい(?)ハロウィン
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「ハッピーHALLOWEEN!!」
リビングのドアを開け、おはようといった瞬間私はそう叫んだ。そう、今日はめでたきHALLOWEEN。
だと言うのに驚いた雰囲気もなく、頭に矢が刺さったまま皿洗いを彼は続ける。
「頭に矢!?」
「カチューシャに決まってるだろう……ふっ、おまえがそう来るとはわかっていた。」
キラキラと玉藻前の洗っていたお皿が浮き、いつの間にか新品ほどの輝きを放つ。もう手で洗わなくてもいいのでは??
彼は食卓を指差す。そこには、マフィンやらケーキやらタルトやらパイやら……。
「どこからでたのよそのおかね!?」
「店から出してきた。安心しろ、さっき店を見に行ったら補充されていたからな。……本当に、おまえは人間か?」
「わたしの仕業じゃないのよねぇ……。」
だからそんな疑わしげな顔しないでくれるとありがたいわ。
「ところで、これ食べていいのよね?」
「ああ。まぁな。」
なんだか歯切れの悪い気もするが、店からと言っているし安心して食べる。
(……早まった気がするわ。)
玉藻前はこちらをみてにやにやとしている。そしてよくみれば彼のポケットにはスポイトらしきものが。
「……。」
にやにやとしている。無言の私を値踏みするように。
「……。」
どうやら、愉快でたまらないようで。当たってほしくない。そんな予想が頭をよぎる。しかし反応からして正しいのだと悟った。
「……なにか盛ったわねぇぇ!?」
「騙されるほうが悪い。さて、なんだと思う…?」
こういうときのお決まりは、だいたい媚薬だと決まっている。偏見?薬を盛る時点でそれしかないでしょ。
そういえばなんだか身体が火照っている気もする。体もだるい気がする。
ゆっくりと近づく彼の目は、獲物を見つけたような鋭さを放ち、チラリと見える歯は白く光っている。
「さぁ、この落武者のわたしを、満足させて見せろ。」
ゆっくりと、彼はわたしの体を手で這っていく。まずは、爪先。そして膝、太もも……。
さわさわとくすぐったいような感覚と共に羞恥に身体が震えた。
しかし、ろくに抵抗できないまま、彼の手は……
頭へと行きついた。
「やはり、熱が出ていたのか。ろくに水分や食事をとらないからだ。秋でも暑いからと言って飲んでないと風邪を引く。しかも乾燥している時期だからな。」
「なんってややこしいことを!!そもそもスタート遠すぎでしょ!?爪先から触る意味あったかしら!?」
「ふむ……あの栄養剤は速効性だったのか。今度からおまえが体調不良のときはあれを使うとしよう。やはり黄泉の国のものは使い勝手がいいな。」
(……栄養剤?)
そういえば、体が軽くなっている気がする。気がつかなかったけれど、私は体調を崩していたみたいね。
「……もうちょっとやり方なかったの??てっきり襲われるかと……冗談よ、貴方がそんなことするわけないものね??」
だからそんな冷めた目でみないでちょうだい。
「襲われたいのなら襲ってやるが。」
「……私痴女じゃないから遠慮するわ。」
でも、勘違いするのも仕方ないわよね。
よくみればケーキなどに空いた小さな穴。彼のポケットのスポイト。そのうえ動かせない体に怪しい手付き。……身体が動かなかったのは風邪だって自覚したからかもしれないけれど。
なんというか……解せぬ。
「店主殿!体調は大丈夫か!」
どこから聞いたのか、きっと玉藻前なのでしょう。午前ゆっくりと寝た私は、店にいた。そして男はドアを開け放ちそう言う。その出で立ちは、青い着物姿に包帯をトッピングしたような………。
「……ミイラ??いつのまにこの江戸時代にハロウィン文化が持ち込まれたんです??」
全身包帯でぐるぐる巻きの男は、声からしてかろうじて一郎さんだとわかる。
「えっ??本当に何があったんです!?」
「…………扉に、体をぶつけたのだ。」
無理がありすぎる。どうみても切られているような血が包帯に滲んでいる。打撲で血はでないし全身はやばすぎる。頭から爪先まで二度三度往復し、私は口を開けた。
「やばいマフィアにでも取材に行ったんですか??」
「まふぃ??」
包帯について聞けば、破顔したあと気まずそうに目をそらした。
「これは、だ……ちょっとしたごろつきに絡まれてしまってな。」
「斬ってくるのはちょっとしたじゃないです。怖すぎるごろつきです。いや、このご時世だし斬られるのは当たり前なのかしら……??そもそもさっきといってること違うじゃないですか??扉関係なくなっちゃってます、ごろつき出てきてますよ。」
というか、私の心配よりも自分のからだの心配をしてほしいわ。そう伝えれば、優しいなと微笑まれ、マンゴーケーキをかって帰っていった。
……ときどき、いたた、やら昨日の戦闘のあとが……などと聞こえたのだが。
どうやら、楽しくで元気なわたしの知り合いは、今日も暇で居させてくれないよう。
(さて、まずは一郎さんのとこへお見舞いかしら??それでそのあと玉藻前とお店のハロウィンキャンペーンの準備して……どうせなら子供を呼び込める感じのを準備しなくちゃね、それから……。)
そんなハロウィンを過ごした私でした。
リビングのドアを開け、おはようといった瞬間私はそう叫んだ。そう、今日はめでたきHALLOWEEN。
だと言うのに驚いた雰囲気もなく、頭に矢が刺さったまま皿洗いを彼は続ける。
「頭に矢!?」
「カチューシャに決まってるだろう……ふっ、おまえがそう来るとはわかっていた。」
キラキラと玉藻前の洗っていたお皿が浮き、いつの間にか新品ほどの輝きを放つ。もう手で洗わなくてもいいのでは??
彼は食卓を指差す。そこには、マフィンやらケーキやらタルトやらパイやら……。
「どこからでたのよそのおかね!?」
「店から出してきた。安心しろ、さっき店を見に行ったら補充されていたからな。……本当に、おまえは人間か?」
「わたしの仕業じゃないのよねぇ……。」
だからそんな疑わしげな顔しないでくれるとありがたいわ。
「ところで、これ食べていいのよね?」
「ああ。まぁな。」
なんだか歯切れの悪い気もするが、店からと言っているし安心して食べる。
(……早まった気がするわ。)
玉藻前はこちらをみてにやにやとしている。そしてよくみれば彼のポケットにはスポイトらしきものが。
「……。」
にやにやとしている。無言の私を値踏みするように。
「……。」
どうやら、愉快でたまらないようで。当たってほしくない。そんな予想が頭をよぎる。しかし反応からして正しいのだと悟った。
「……なにか盛ったわねぇぇ!?」
「騙されるほうが悪い。さて、なんだと思う…?」
こういうときのお決まりは、だいたい媚薬だと決まっている。偏見?薬を盛る時点でそれしかないでしょ。
そういえばなんだか身体が火照っている気もする。体もだるい気がする。
ゆっくりと近づく彼の目は、獲物を見つけたような鋭さを放ち、チラリと見える歯は白く光っている。
「さぁ、この落武者のわたしを、満足させて見せろ。」
ゆっくりと、彼はわたしの体を手で這っていく。まずは、爪先。そして膝、太もも……。
さわさわとくすぐったいような感覚と共に羞恥に身体が震えた。
しかし、ろくに抵抗できないまま、彼の手は……
頭へと行きついた。
「やはり、熱が出ていたのか。ろくに水分や食事をとらないからだ。秋でも暑いからと言って飲んでないと風邪を引く。しかも乾燥している時期だからな。」
「なんってややこしいことを!!そもそもスタート遠すぎでしょ!?爪先から触る意味あったかしら!?」
「ふむ……あの栄養剤は速効性だったのか。今度からおまえが体調不良のときはあれを使うとしよう。やはり黄泉の国のものは使い勝手がいいな。」
(……栄養剤?)
そういえば、体が軽くなっている気がする。気がつかなかったけれど、私は体調を崩していたみたいね。
「……もうちょっとやり方なかったの??てっきり襲われるかと……冗談よ、貴方がそんなことするわけないものね??」
だからそんな冷めた目でみないでちょうだい。
「襲われたいのなら襲ってやるが。」
「……私痴女じゃないから遠慮するわ。」
でも、勘違いするのも仕方ないわよね。
よくみればケーキなどに空いた小さな穴。彼のポケットのスポイト。そのうえ動かせない体に怪しい手付き。……身体が動かなかったのは風邪だって自覚したからかもしれないけれど。
なんというか……解せぬ。
「店主殿!体調は大丈夫か!」
どこから聞いたのか、きっと玉藻前なのでしょう。午前ゆっくりと寝た私は、店にいた。そして男はドアを開け放ちそう言う。その出で立ちは、青い着物姿に包帯をトッピングしたような………。
「……ミイラ??いつのまにこの江戸時代にハロウィン文化が持ち込まれたんです??」
全身包帯でぐるぐる巻きの男は、声からしてかろうじて一郎さんだとわかる。
「えっ??本当に何があったんです!?」
「…………扉に、体をぶつけたのだ。」
無理がありすぎる。どうみても切られているような血が包帯に滲んでいる。打撲で血はでないし全身はやばすぎる。頭から爪先まで二度三度往復し、私は口を開けた。
「やばいマフィアにでも取材に行ったんですか??」
「まふぃ??」
包帯について聞けば、破顔したあと気まずそうに目をそらした。
「これは、だ……ちょっとしたごろつきに絡まれてしまってな。」
「斬ってくるのはちょっとしたじゃないです。怖すぎるごろつきです。いや、このご時世だし斬られるのは当たり前なのかしら……??そもそもさっきといってること違うじゃないですか??扉関係なくなっちゃってます、ごろつき出てきてますよ。」
というか、私の心配よりも自分のからだの心配をしてほしいわ。そう伝えれば、優しいなと微笑まれ、マンゴーケーキをかって帰っていった。
……ときどき、いたた、やら昨日の戦闘のあとが……などと聞こえたのだが。
どうやら、楽しくで元気なわたしの知り合いは、今日も暇で居させてくれないよう。
(さて、まずは一郎さんのとこへお見舞いかしら??それでそのあと玉藻前とお店のハロウィンキャンペーンの準備して……どうせなら子供を呼び込める感じのを準備しなくちゃね、それから……。)
そんなハロウィンを過ごした私でした。
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