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第一章:馬鹿神のミスから始まる生活。
人間は嫌いと、そんな悲しい笑顔なら…
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ラークは優しいんだと判ってるのもある。
不思議な目を、私には…
まだ判らないけど…
でも…
やっぱりだった。
私は人間なんか大嫌いだ!!
もう私は…
**************************
とある日。
どうにか私は本と薬草を見比べながらと。
家の中で覚えてる時、急にラークが言った。
「誰か森に入って来た様だ。
ネオは俺から離れずにな。」
私は疑問になって聞いた。
「ラーク?
どうして判るの?
それに…
誰が…」
ラークは外を見ながら簡単に言った。
「異能の一つでもあるな。
この森でも、一応、それなりに縄張りもある。
入ってくれば俺にも判るだけか。
簡単に普通、この家にも来れない様にもしてる。
入ってくるとしたら、まぁ、商売人だろう。」
商売人…
私は帝国の事を思い出す。
まさか…
私が立ち上がるとすぐだった。
ラークが側にと引き寄せてきた。
「確かに人間だが、動物達は心配ない。
それも理解してる事だ。
俺にと、薬草関係を仕入れたいから来てるだけだろ。
まぁ、俺からも交渉は多少するが。」
薬草関係…
動物達じゃない…
私は少し、それは良かったけど。
人間だと思うと警戒心は高まった。
「ネオは何も言わず、側に居れば良い。
俺が話すだけだからな。
だがなぁ、俺の欲しいのは時期的に難しい。
持ってないだろう。
あれば買う程度だが、他は売るだけか。」
何も言わずに頷いた。
**************************
そうしてラークの後ろに私はどうにか。
背に隠れる様子でもあるけど…
玄関の扉を開けて、少し歩いた庭のテーブルの様な場所にと。
そこでしばらく待ってた。
その間もラークは私の頭を撫でて来るけど。
私は何も言わず…
警戒心だけを高めてた。
それから確かに一人の中年男性が来た。
私は良く見る。
45歳前後ぐらいだけど…
服装は帝国民でも一般かな?
普通でもある。
でも私と僅かに目が合うと変わった。
それも一切、見逃してなかった…
「アンタにしては珍しいな?
普段の薬草とも違うのか?」
ラークがいつもの口調と少し違うのにも気付く。
でも私は人間の方を優先して見てた。
男性はラークを見て、また目を変えた。
明らかに、この目は警戒も!?
私にとも違う!?
「ラークさんは商売が難しいからだよ。
だから最後にいつも周るだけさ。
ナヤクサを持ってたら仕入れたいんだ。
他の仕入れ先は全部、駄目でね。」
「なるほど。
確かにあるが、どれくらいだ?」
「1束だけで良いんだが。」
「1束だけでか…
なら4万パルぐらいか?」
私は商売人がだった。
明らかにまた警戒度を上げたのも見た。
でも溜息をして言った。
「ラークさん、またか!?
だが、1束でなら当たり前かぁ。
そうなんだよ。
一部足りないとかでか?
俺も難しいと断ったが…
お得意さんでなぁ。
せめて3万パルは?」
私は少しだけラークを見ると。
少し笑って言った。
「お得意さんでなら、前金ありだろ?
3万パルは安くないか?」
でもすぐに私は商売人を優先して見る。
それと聞いて判断もする。
前金、お得意さん…
でもあの目はまだ…
「あぁ、やっぱりか。
バレバレだ。
ラークさん程、商売人泣かせは居ないぞ?」
「当たり前だ。
俺も商売人だぞ?」
「なら、3万5千で頼むよ。
流石に4万じゃ手元になくなる。」
「判った、それで良いか。
でも一つ、俺も欲しいのがあるんだが。
アンタが持ってたら…
2万パルにするが?」
「何!?
だが、ラークさんが言ったなら…」
私はまた見逃してなかった。
目が変わった事に。
警戒だけじゃない、あれは…
「そうだ。
俺が欲しいのはヤガラだ。
時期的にも難しいからな。
駄目元だ。
ないなら最初の値段で良いだろう?」
私は薬草の価値は判らない。
でも見逃してもいなかった。
「悪いが持ってないからなぁ。
最初の値段で頼めるか?」
「そうか。
なら、俺はまぁ、構わないが。
他の情報は?」
「いや…
俺の常連や仲間でも、今は難しいだろう。
時期もだが、今年は更に少ない。
それもある。」
「まぁ、そうなるよな。
なら、最初のままで良いか。」
私はもう我慢が出来なくなった。
**************************
「ねぇ。
貴方はどうして…
嘘を付くの?」
私は睨みながら商売人に言った。
僅かな動揺もだった。
商売人が私を見た目にも…
更に僅かな視線の動きにも私は気付く。
でも…
すぐに作り笑いで私にと向いた。
「お嬢さん。
商売人同士のやり取りだよ?
嘘は付いたら、上手くいかないんだ。」
「ネオ?
今はまだ…」
私はラークを僅かに見るだけで、すぐに商売人を睨んだ。
「持ってるでしょう?
ヤガラ。
それなのにラークへと、嘘を付いて断ってたよね?
私には価値は判らないけど。
でも、今のやり取りなら…
もっとヤガラが高いのでしょう?
すぐに買い手が出してる値段とも…
比較した様子だったけど?
それでラークには売らないの?
いくらなの?」
商売人は明らかに動揺もした。
「いや、お嬢さん?
本当に、持ってないんだよ。
ラークさんに売らなかった訳じゃない。」
私は最後にと思って言った。
「ねぇ…
私の質問にも、何も答えてくれないけど…
いくらなの?
本当に持ってないなら…
貴方の腰にある小袋を見せてくれる?
嘘を付いてないなら、見せれるよね?」
「ネオ?」
私はラークを見ずに商売人を睨みながら見てた。
商売人は慌てて言った。
「こ、これは、別の…
大切な物が入ってるんだ。
だから、見せられないが。
持ってないんだ!!
それに嘘だと、勝手に決めつけてるぞ!?
お嬢さんの方が変だ!?
どうかしてる!!」
私は大きな溜息をした。
手を翳す。
「やっぱりかぁ。
会話が成り立たない…
本当に…
馬鹿馬鹿しい。」
「ネオ!?
まさか…
ネオ、止めるんだ!!」
私は商売人しか見てなかった。
怒りが湧き上がる。
ラークを騙して…
更に嘘すら誤魔化す。
会話すら成り立たない…
「腰にある小袋以外『消えろ』。」
私が言った瞬間に小袋だけが残った。
**************************
ラークがすぐだった。
もう驚く様子だけでもなく…
慌てる感じでもあった。
「な…
まさか、これが…
行方不明の…
ネオは…
殺してるよりも、これは…
消してるのか!?
ネオ!?
なぜだ!!
あんな事をしたら、もう商売人は消滅だ!!
これだと、殺した事と同じなんだぞ?
判ってるのか!?」
私はラークを少し見て言う。
「今の話を…
ラークも聞いてたでしょう?
私の質問に、あの人間は何も答えない…
最初から私にも、疑惑の目。
更にラークには、警戒の目。
商売の話をしてる中は常に、我欲の目のみ。
疑いがバレそうになれば、逆に私への敵意の目。
会話すら成り立たない…
馬鹿馬鹿しい…」
ラークも目を閉じて僅かに言う。
「それは…
確かに、あんな会話で。
更にあれだと…
だが、もしヤガラを持ってなければ…」
私は商売人の小袋を取りに動いて中を見る。
確かに私にはヤガラか判らない…
そのまま持ってからラークにと小袋を渡す。
ラークはそれもあって目を開けた。
そして渡された小袋の中を見てだった。
驚く様子をしたのは気付いた。
それも見て、確信もあった私はラークを見て言う。
「それがヤガラなんだよね?
最初から私は言った。
でも嘘を付いて、ラークを騙して?
更にあんな会話すらも成り立たない。
私が最初に、言った時にだけど?
あの人間は視線だけ僅かに動かした。
持ってるからこそ、無意識にとする…
でも、私が最後の確認する為にと。
小袋を指摘したら…
あの人間は、どう動いたの?
あんなクズみたいな人間ばかり…
それで得をする為だけにと商売を?
馬鹿馬鹿しい…」
ラークは目を閉じて、少し首を振る。
「こう言う事か…
今まで会話をしてもと。
成り立たない理由も、同じか。
だが、ネオは嘘を付いてないなら…
しなかった理由もか。
確か王城内部に来る前にと、一人だけと。
その女性は嘘を付かなかったとも言ったな。」
「あぁ、あの女性かぁ。
そうだよ、理由は同じ…
確かに金しか見てなくても…
あの女性が言った言葉も、良く覚えてる。」
「良く、覚えてると?
ネオに言った言葉を?」
私はラークから視線を外した。
空にと上を向いて、思い出しながら言う。
「うん、かなり稀だからね…
確かに金を見せた時にも、すぐだった。
普通はもっと安いですよと。
最初からだった…
それからも一切、その女性は嘘も付かなかった…
その後も全部、覚えてる…
女性が言った。
私の場合は稼げないので助かると。
だから私はそこでも疑問になって聞いた。
どこか悪いとかと。
そうしたら女性は、家の扉を更に開けてだった…
私が中を見ると、小さい子供達が居たんだぁ。
それを見せてから女性がだった。
子供達を見てないといけないので働けないと。
家で編み物ぐらいしかと。
夫をと。
何の嘘もない目で…
明らかに最近亡くなったんだろうって、判ったし…
だから私は、服も編み物も買うと。
それでもだった…
女性の方から言ったの。
本当にそんな高価な品ではと。
だから…
私は金なら困らないし、嘘も付かなかった女性にと渡した。
次の日に見送る時でも、本当に嘘を付かなかった…
私は女性が危ない事に気付いたから指摘も言った。
言うよりも、見つからない方がと。
でも女性の目で、判らない様だったからと再度教えた。
大金のある家、なら通報よりも簡単だと。
それは周りの人達に狙われたら…
子供達すらも危ないと。
その女性は理解した時にだったけど。
あの明らかに、真剣な目で言った言葉なぁ。
愛した夫以上、絶対に我が子を守りますと。
もう無理だと思ってたと。
でも生きれると。
子供達を育てられると。
更にだった…
だから私には何も出来なくても、我が子達だけでも必ずと。
私はあの女性を見た時なぁ。
本当に愛してた夫だったんだろうなぁって思ったよ。
それで子供達だけでもとする姿だった。
私には親が判らないけど…
これがきっと親なのかなぁって。
私には確認も出来ないし、判らないけど。
でも、あの目なら…
必ず女性は子供達の為に金を使うと、判るし?
私は別に金なんて、何にも、いくらでも出せる。
だから、子育ての方が大変だろうと思うし?
それなら、あの金は私より女性が使う方が絶対に良い…
あんな女性は極稀にしか居ないけど。
人間なんて…
さっきの商人みたいな馬鹿ばっかりのクズしか居ない。」
「ネオ…
それは、やはり。
金だけじゃないのに、気付いてるのか?
女性はネオを、今でも忘れてないぞ?」
私はでも…
そのまま言った。
「今なら、そうかもだけどなぁ。
でも…
あの女性は金があったから、私にとした。
それに…
あの女性が本当に欲しいのは…
違うし…」
「違うと?
それが、ネオには判るのか?」
私はラークを見て、少し笑って言う。
「当たり前な答えだよ。
彼女が本当に欲しいのは、金じゃないでしょ?
それは二度と戻って来ない…
愛した夫だよ。」
ラークは凄く驚いた顔をした様子だった。
「それは…
でも、それがネオにも判るなら…
なぜだ…」
私は不思議に思う。
ラークの目は判らない、そのまま言った。
「なぜって…
何が?」
ラークは首を横に振ってから私を見て言ってきた。
「今の商売人でも良いが。
その商売人にすらもだとだ。
愛してた者が居たかも知れないだろう!?
なぜ、そこは思わない!?」
私は少し考える。
「ラーク?
それも、違う…」
「な、何が…」
「私は多くの人間を見てきたからなぁ…
そういう稀な人間がだけど…
愛する人間も同じだと知ってる…
その人間もなんだって事だよ?
嘘も付かず、でも…
もしだけど…
嘘を付いたとしても、目が違うんだ。
そういう人達の目は、本当に珍しいけどなぁ…
大切な者をと、自分の為に付く嘘じゃないんだよ。
金でもなく、欲でもなく、必死に守り抜こうとする様な…
決意の目をするんだ…
さっきの商売人、あの嘘の目は全てが我欲だった。
最初からずっと変わってない…
疑念も、警戒も、更に騙すのもそう。
全て我欲からだしなぁ?」
ラークは急に目を閉じて、考える様な仕草もした。
「ネオは…
優しいのもあるが、それすら見て判るから余計に…
それなのに、愛されてないなど…
俺には、どうしても理解出来ん。」
愛されて?
そうだなぁ。
**************************
私は…
「ラーク…
少し不思議なんだけど。
聞いても、いや、判らないかぁ。」
ラークは目を開けて私を見るけど。
その複雑な目は…
やっぱり判らないなぁ。
だから少し笑って私は、そのまま言う。
「私は…
愛して貰えない理由が、あったのかなぁ?
でもなぁ、私も愛した事もないから。
もう何も判らないけど。」
驚く様に、でもラークはすぐにだった。
「ネオは何も悪くない!!」
そんなラークを見てだった。
少し笑う。
「ラークは『提案』としてだけどなぁ。
私はやっぱり…
『誰かを愛せる』気すらない。
でもラークは裏切らないからと。
私は居るけどなぁ…
ラークは良く、判らないのもあるけど…
人間でもないし、動物でもない目…
どうして…
あんな『提案』を、私にしたのかも。
私を見てくれる、話してくれる。
そんな人間が居る訳もない…
今更、提案を反故にする気はないけど。
少しだけ、ラークにと私は後悔してる…
私が居たら…
ラークの邪魔にしか、ならない気もするんだよ。
ラークが普段から、どんな生活かも判らない。
それに…
さっきの口調も、仕事だからかも知れないし。
初めて私は聞いた…
本当はラークが優しいと、私にもだけど。
もう判ってるからなぁ。
だから本当は…
ラークは、『ラークの愛する者』を探した方が良い。
私は邪魔でしかないんだ…」
ラークはまた驚く様子もしながらすぐだった。
「違うっ!!
俺はネオを邪魔だと、思った事すらないぞ!!」
私は首を横に振る。
少し、また笑ってラークを見るけど。
「私には判らない…
でも…
私は人間なんか、『愛せる』気がしない…」
**************************
ラークは急に首を横に振ってだった。
「そんな…
そんな悲しい笑顔なんて違う!!
ネオが嬉しそうに笑う時の…
本当の笑顔を俺は知ってるんだ!!
その悲しい笑顔は…
もう…
痛みも、悲しみすらも、全部を隠す様にと…
ネオ自身の心すらも、誤魔化す為の笑顔なんだ!!」
私は少し驚く。
私が誤魔化してる?
「私はでも…
別に痛くは…」
ラークが急に動いて私を抱き寄せた。
それにもまた驚く。
私にとラークが目を見てだった。
「これ以上、もう駄目だ!!
そんな悲しい笑顔なんてさせたくもない!!
もし、ネオがどうしても…
どうしても『人間を愛せる』気がしないと言うならば。
『俺がネオを』愛する!!
『ネオも俺を』愛してくれ!!
これ以上…
もう傷だらけで、泣く事すらも出来なく、そんなにも悲しい笑顔を…
そんな顔で笑うぐらいならばだ。
提案には『誰かを愛せる』までと俺は言った!!
だから俺も裏切らない!!
もう人間に限らない、俺はネオを愛するとも決めた。
でも『ネオが愛する』者は自由だ。
俺は『ネオが愛する』までは、絶対に傷付ける事もしない。
そして傷付けさせたりもしない。」
私はもう…
どう答えて良いかも判らないけど…
ラークを…
そしてラークが私を?
「でも、それはラークには…
判らないけど…
だって、ラークは私を?
愛しても何も…」
ラークは首を横に振ってから強く言った。
「それも違う。
愛する事にも、愛する者にもだ。
理由なんて、本来ないんだ!!
一緒に居てもそうだ。
ネオが痛くないと。
ネオが楽しいと。
ネオが嬉しいと。
そう思える時間を与えてくれる者がだ!!
それが『愛する者』にとする事が普通なんだ!!
俺はもう、ネオがそんなにも痛そうな…
悲しい笑顔なんて見たくない!!
ネオが笑って、嬉しそうにと。
動物達と楽しそうに遊んでる姿だって同じだ!!
あの本当に嬉しそうに笑ってる笑顔を見てると。
俺だって嬉しいんだ!!
そんなネオを俺は大事だ。
ネオがどれだけ優しいかも俺は知ってるからこそ。
俺はネオを愛せると言える。
でも、ネオが愛する者に関しては自由なんだ。」
私は僅かにしか言えなかった。
「自由と…?
愛する事も…?
でも、判らない…」
でも…
私はスッとラークの頬にと手を伸ばして触れる。
ラークは何も動かなかった。
「ラークが私を?
でも、私はどうすれば…」
少しラークが笑って言う。
「今は判らなくて良い。
それもすぐに何て俺は考えてない。
急がなくて良いんだ。
ネオが困るのも見たくない。
愛し方が判らないのは、簡単だ。
愛された事がないからだとも俺は知ってる。
だったら、俺がネオを愛するだけだ。
それにネオが気にする事もない。
ネオが自然に笑って、嬉しそうにするのなら。
俺はそれだけで充分なんだ。
だからもう、あんな悲しい笑顔はしないでくれ…
俺はネオを愛してる。
でもネオは、そのままで充分だ。
いつも通りにと、普通に過ごせば良い。
俺の提案すらも変わらない。
ネオが『誰かを愛せるまで、俺と一緒に居る事』は変えない。」
私は、どうにか考える。
『提案』も変えないと?
『誰かを愛せる』までと?
『ラーク』と一緒に居る事をと?
そして、『ラークが私を愛する』と?
それは…
「私は、まだ、判らないけど…
それでラークは、良いの?
だって、ラークなら他にも…」
スッと動いたラークが抱き締めてからだった。
それに私は少しビクリとする。
「大丈夫だ、ネオ…
俺はネオが痛い事も絶対にしない。
ネオが安心する様にと。
必ず守りたいと、俺は思ってる。
それにネオも言っただろう?」
「私が…?」
私は驚きながらも声を聞く…
「あぁ、そうだ。
ネオが言ったんだぞ?
まぁ、少し微妙な感覚だったが…
俺は『新種』なんだろう?
『俺だけ』は違うと言ってたからな。
確かに人間でもない。
それに動物でもない。
だけど、俺にとっても『ネオだけ』だ。
良いんだ、俺は『ネオだけ』をと。
大切に愛したいだけなんだから…」
私はふと思い出す。
確かにそれは…
私が言った事でもあるけど…
でも…
「そうだなぁ。
ラークだけは…
温かいのも、あるんだよなぁ…
この感覚が…
ハッキリとしないけど…」
少し腕を緩めて、ラークが支えながらも。
私にと笑ってくる。
「良いんだ、ネオ!!
ネオは、もう痛い事も勿論だが。
ネオが、そのままでも嬉しそうにと。
楽しそうにする姿を、俺が見てたいだけだ!!
今までとも変わらん。
それにもし『ネオが俺を』愛してくれたら。
それはただ、俺には嬉しいだけだ!!」
私はもう、どうにか。
そのまま言った。
「ラークなら…
そうだなぁ。
この温かい理由も判るかもしれないなぁ。」
ラークが少し嬉しそうにまた笑った。
「急がなくて良いぞ?
俺はゴミとは違うからな?
そんな馬鹿しないぞ?」
私はふと思い出して笑った。
「あはははは!!
それを…
気に、してた!?
あはははは!!
あんな…
人間のクズと…
あははははっ!!
最初からラークだけは…
なぜか、違うし?
あははははっ!!
会話すら出来ない…
あんなのと?
比べたら…
あははははっ!!
ラークが!?
可哀想過ぎるだけ…
あははは!!」
「そうだぞ。
俺をあんなゴミ扱いは勘弁しろ?
それに、そうやってだ。
ネオが本当の笑顔でだな!!
そうやって笑ってくれるのが、俺は嬉しいぞ!!
まぁ、俺もゴミになる気なんてない。
だから、大丈夫だ。
心配するな?」
私はもう、こんなに笑ったのが久々過ぎて。
思い出せないけど…
でも私は一つだけは思った事があった。
『ラークだけ』はやっぱり違うなぁ。
**************************
私とラークはまた…
一緒に暮らすのもあるけど。
私は初めてだった。
本当の私を見て言われた初めての言葉…
『俺はネオを愛してる』と。
何だかとても。
前とも違う不思議な感覚は残った…
それでもやっぱりラークだけは違うと。
安心すら出来た。
不思議な目を、私には…
まだ判らないけど…
でも…
やっぱりだった。
私は人間なんか大嫌いだ!!
もう私は…
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とある日。
どうにか私は本と薬草を見比べながらと。
家の中で覚えてる時、急にラークが言った。
「誰か森に入って来た様だ。
ネオは俺から離れずにな。」
私は疑問になって聞いた。
「ラーク?
どうして判るの?
それに…
誰が…」
ラークは外を見ながら簡単に言った。
「異能の一つでもあるな。
この森でも、一応、それなりに縄張りもある。
入ってくれば俺にも判るだけか。
簡単に普通、この家にも来れない様にもしてる。
入ってくるとしたら、まぁ、商売人だろう。」
商売人…
私は帝国の事を思い出す。
まさか…
私が立ち上がるとすぐだった。
ラークが側にと引き寄せてきた。
「確かに人間だが、動物達は心配ない。
それも理解してる事だ。
俺にと、薬草関係を仕入れたいから来てるだけだろ。
まぁ、俺からも交渉は多少するが。」
薬草関係…
動物達じゃない…
私は少し、それは良かったけど。
人間だと思うと警戒心は高まった。
「ネオは何も言わず、側に居れば良い。
俺が話すだけだからな。
だがなぁ、俺の欲しいのは時期的に難しい。
持ってないだろう。
あれば買う程度だが、他は売るだけか。」
何も言わずに頷いた。
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そうしてラークの後ろに私はどうにか。
背に隠れる様子でもあるけど…
玄関の扉を開けて、少し歩いた庭のテーブルの様な場所にと。
そこでしばらく待ってた。
その間もラークは私の頭を撫でて来るけど。
私は何も言わず…
警戒心だけを高めてた。
それから確かに一人の中年男性が来た。
私は良く見る。
45歳前後ぐらいだけど…
服装は帝国民でも一般かな?
普通でもある。
でも私と僅かに目が合うと変わった。
それも一切、見逃してなかった…
「アンタにしては珍しいな?
普段の薬草とも違うのか?」
ラークがいつもの口調と少し違うのにも気付く。
でも私は人間の方を優先して見てた。
男性はラークを見て、また目を変えた。
明らかに、この目は警戒も!?
私にとも違う!?
「ラークさんは商売が難しいからだよ。
だから最後にいつも周るだけさ。
ナヤクサを持ってたら仕入れたいんだ。
他の仕入れ先は全部、駄目でね。」
「なるほど。
確かにあるが、どれくらいだ?」
「1束だけで良いんだが。」
「1束だけでか…
なら4万パルぐらいか?」
私は商売人がだった。
明らかにまた警戒度を上げたのも見た。
でも溜息をして言った。
「ラークさん、またか!?
だが、1束でなら当たり前かぁ。
そうなんだよ。
一部足りないとかでか?
俺も難しいと断ったが…
お得意さんでなぁ。
せめて3万パルは?」
私は少しだけラークを見ると。
少し笑って言った。
「お得意さんでなら、前金ありだろ?
3万パルは安くないか?」
でもすぐに私は商売人を優先して見る。
それと聞いて判断もする。
前金、お得意さん…
でもあの目はまだ…
「あぁ、やっぱりか。
バレバレだ。
ラークさん程、商売人泣かせは居ないぞ?」
「当たり前だ。
俺も商売人だぞ?」
「なら、3万5千で頼むよ。
流石に4万じゃ手元になくなる。」
「判った、それで良いか。
でも一つ、俺も欲しいのがあるんだが。
アンタが持ってたら…
2万パルにするが?」
「何!?
だが、ラークさんが言ったなら…」
私はまた見逃してなかった。
目が変わった事に。
警戒だけじゃない、あれは…
「そうだ。
俺が欲しいのはヤガラだ。
時期的にも難しいからな。
駄目元だ。
ないなら最初の値段で良いだろう?」
私は薬草の価値は判らない。
でも見逃してもいなかった。
「悪いが持ってないからなぁ。
最初の値段で頼めるか?」
「そうか。
なら、俺はまぁ、構わないが。
他の情報は?」
「いや…
俺の常連や仲間でも、今は難しいだろう。
時期もだが、今年は更に少ない。
それもある。」
「まぁ、そうなるよな。
なら、最初のままで良いか。」
私はもう我慢が出来なくなった。
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「ねぇ。
貴方はどうして…
嘘を付くの?」
私は睨みながら商売人に言った。
僅かな動揺もだった。
商売人が私を見た目にも…
更に僅かな視線の動きにも私は気付く。
でも…
すぐに作り笑いで私にと向いた。
「お嬢さん。
商売人同士のやり取りだよ?
嘘は付いたら、上手くいかないんだ。」
「ネオ?
今はまだ…」
私はラークを僅かに見るだけで、すぐに商売人を睨んだ。
「持ってるでしょう?
ヤガラ。
それなのにラークへと、嘘を付いて断ってたよね?
私には価値は判らないけど。
でも、今のやり取りなら…
もっとヤガラが高いのでしょう?
すぐに買い手が出してる値段とも…
比較した様子だったけど?
それでラークには売らないの?
いくらなの?」
商売人は明らかに動揺もした。
「いや、お嬢さん?
本当に、持ってないんだよ。
ラークさんに売らなかった訳じゃない。」
私は最後にと思って言った。
「ねぇ…
私の質問にも、何も答えてくれないけど…
いくらなの?
本当に持ってないなら…
貴方の腰にある小袋を見せてくれる?
嘘を付いてないなら、見せれるよね?」
「ネオ?」
私はラークを見ずに商売人を睨みながら見てた。
商売人は慌てて言った。
「こ、これは、別の…
大切な物が入ってるんだ。
だから、見せられないが。
持ってないんだ!!
それに嘘だと、勝手に決めつけてるぞ!?
お嬢さんの方が変だ!?
どうかしてる!!」
私は大きな溜息をした。
手を翳す。
「やっぱりかぁ。
会話が成り立たない…
本当に…
馬鹿馬鹿しい。」
「ネオ!?
まさか…
ネオ、止めるんだ!!」
私は商売人しか見てなかった。
怒りが湧き上がる。
ラークを騙して…
更に嘘すら誤魔化す。
会話すら成り立たない…
「腰にある小袋以外『消えろ』。」
私が言った瞬間に小袋だけが残った。
**************************
ラークがすぐだった。
もう驚く様子だけでもなく…
慌てる感じでもあった。
「な…
まさか、これが…
行方不明の…
ネオは…
殺してるよりも、これは…
消してるのか!?
ネオ!?
なぜだ!!
あんな事をしたら、もう商売人は消滅だ!!
これだと、殺した事と同じなんだぞ?
判ってるのか!?」
私はラークを少し見て言う。
「今の話を…
ラークも聞いてたでしょう?
私の質問に、あの人間は何も答えない…
最初から私にも、疑惑の目。
更にラークには、警戒の目。
商売の話をしてる中は常に、我欲の目のみ。
疑いがバレそうになれば、逆に私への敵意の目。
会話すら成り立たない…
馬鹿馬鹿しい…」
ラークも目を閉じて僅かに言う。
「それは…
確かに、あんな会話で。
更にあれだと…
だが、もしヤガラを持ってなければ…」
私は商売人の小袋を取りに動いて中を見る。
確かに私にはヤガラか判らない…
そのまま持ってからラークにと小袋を渡す。
ラークはそれもあって目を開けた。
そして渡された小袋の中を見てだった。
驚く様子をしたのは気付いた。
それも見て、確信もあった私はラークを見て言う。
「それがヤガラなんだよね?
最初から私は言った。
でも嘘を付いて、ラークを騙して?
更にあんな会話すらも成り立たない。
私が最初に、言った時にだけど?
あの人間は視線だけ僅かに動かした。
持ってるからこそ、無意識にとする…
でも、私が最後の確認する為にと。
小袋を指摘したら…
あの人間は、どう動いたの?
あんなクズみたいな人間ばかり…
それで得をする為だけにと商売を?
馬鹿馬鹿しい…」
ラークは目を閉じて、少し首を振る。
「こう言う事か…
今まで会話をしてもと。
成り立たない理由も、同じか。
だが、ネオは嘘を付いてないなら…
しなかった理由もか。
確か王城内部に来る前にと、一人だけと。
その女性は嘘を付かなかったとも言ったな。」
「あぁ、あの女性かぁ。
そうだよ、理由は同じ…
確かに金しか見てなくても…
あの女性が言った言葉も、良く覚えてる。」
「良く、覚えてると?
ネオに言った言葉を?」
私はラークから視線を外した。
空にと上を向いて、思い出しながら言う。
「うん、かなり稀だからね…
確かに金を見せた時にも、すぐだった。
普通はもっと安いですよと。
最初からだった…
それからも一切、その女性は嘘も付かなかった…
その後も全部、覚えてる…
女性が言った。
私の場合は稼げないので助かると。
だから私はそこでも疑問になって聞いた。
どこか悪いとかと。
そうしたら女性は、家の扉を更に開けてだった…
私が中を見ると、小さい子供達が居たんだぁ。
それを見せてから女性がだった。
子供達を見てないといけないので働けないと。
家で編み物ぐらいしかと。
夫をと。
何の嘘もない目で…
明らかに最近亡くなったんだろうって、判ったし…
だから私は、服も編み物も買うと。
それでもだった…
女性の方から言ったの。
本当にそんな高価な品ではと。
だから…
私は金なら困らないし、嘘も付かなかった女性にと渡した。
次の日に見送る時でも、本当に嘘を付かなかった…
私は女性が危ない事に気付いたから指摘も言った。
言うよりも、見つからない方がと。
でも女性の目で、判らない様だったからと再度教えた。
大金のある家、なら通報よりも簡単だと。
それは周りの人達に狙われたら…
子供達すらも危ないと。
その女性は理解した時にだったけど。
あの明らかに、真剣な目で言った言葉なぁ。
愛した夫以上、絶対に我が子を守りますと。
もう無理だと思ってたと。
でも生きれると。
子供達を育てられると。
更にだった…
だから私には何も出来なくても、我が子達だけでも必ずと。
私はあの女性を見た時なぁ。
本当に愛してた夫だったんだろうなぁって思ったよ。
それで子供達だけでもとする姿だった。
私には親が判らないけど…
これがきっと親なのかなぁって。
私には確認も出来ないし、判らないけど。
でも、あの目なら…
必ず女性は子供達の為に金を使うと、判るし?
私は別に金なんて、何にも、いくらでも出せる。
だから、子育ての方が大変だろうと思うし?
それなら、あの金は私より女性が使う方が絶対に良い…
あんな女性は極稀にしか居ないけど。
人間なんて…
さっきの商人みたいな馬鹿ばっかりのクズしか居ない。」
「ネオ…
それは、やはり。
金だけじゃないのに、気付いてるのか?
女性はネオを、今でも忘れてないぞ?」
私はでも…
そのまま言った。
「今なら、そうかもだけどなぁ。
でも…
あの女性は金があったから、私にとした。
それに…
あの女性が本当に欲しいのは…
違うし…」
「違うと?
それが、ネオには判るのか?」
私はラークを見て、少し笑って言う。
「当たり前な答えだよ。
彼女が本当に欲しいのは、金じゃないでしょ?
それは二度と戻って来ない…
愛した夫だよ。」
ラークは凄く驚いた顔をした様子だった。
「それは…
でも、それがネオにも判るなら…
なぜだ…」
私は不思議に思う。
ラークの目は判らない、そのまま言った。
「なぜって…
何が?」
ラークは首を横に振ってから私を見て言ってきた。
「今の商売人でも良いが。
その商売人にすらもだとだ。
愛してた者が居たかも知れないだろう!?
なぜ、そこは思わない!?」
私は少し考える。
「ラーク?
それも、違う…」
「な、何が…」
「私は多くの人間を見てきたからなぁ…
そういう稀な人間がだけど…
愛する人間も同じだと知ってる…
その人間もなんだって事だよ?
嘘も付かず、でも…
もしだけど…
嘘を付いたとしても、目が違うんだ。
そういう人達の目は、本当に珍しいけどなぁ…
大切な者をと、自分の為に付く嘘じゃないんだよ。
金でもなく、欲でもなく、必死に守り抜こうとする様な…
決意の目をするんだ…
さっきの商売人、あの嘘の目は全てが我欲だった。
最初からずっと変わってない…
疑念も、警戒も、更に騙すのもそう。
全て我欲からだしなぁ?」
ラークは急に目を閉じて、考える様な仕草もした。
「ネオは…
優しいのもあるが、それすら見て判るから余計に…
それなのに、愛されてないなど…
俺には、どうしても理解出来ん。」
愛されて?
そうだなぁ。
**************************
私は…
「ラーク…
少し不思議なんだけど。
聞いても、いや、判らないかぁ。」
ラークは目を開けて私を見るけど。
その複雑な目は…
やっぱり判らないなぁ。
だから少し笑って私は、そのまま言う。
「私は…
愛して貰えない理由が、あったのかなぁ?
でもなぁ、私も愛した事もないから。
もう何も判らないけど。」
驚く様に、でもラークはすぐにだった。
「ネオは何も悪くない!!」
そんなラークを見てだった。
少し笑う。
「ラークは『提案』としてだけどなぁ。
私はやっぱり…
『誰かを愛せる』気すらない。
でもラークは裏切らないからと。
私は居るけどなぁ…
ラークは良く、判らないのもあるけど…
人間でもないし、動物でもない目…
どうして…
あんな『提案』を、私にしたのかも。
私を見てくれる、話してくれる。
そんな人間が居る訳もない…
今更、提案を反故にする気はないけど。
少しだけ、ラークにと私は後悔してる…
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ラークが普段から、どんな生活かも判らない。
それに…
さっきの口調も、仕事だからかも知れないし。
初めて私は聞いた…
本当はラークが優しいと、私にもだけど。
もう判ってるからなぁ。
だから本当は…
ラークは、『ラークの愛する者』を探した方が良い。
私は邪魔でしかないんだ…」
ラークはまた驚く様子もしながらすぐだった。
「違うっ!!
俺はネオを邪魔だと、思った事すらないぞ!!」
私は首を横に振る。
少し、また笑ってラークを見るけど。
「私には判らない…
でも…
私は人間なんか、『愛せる』気がしない…」
**************************
ラークは急に首を横に振ってだった。
「そんな…
そんな悲しい笑顔なんて違う!!
ネオが嬉しそうに笑う時の…
本当の笑顔を俺は知ってるんだ!!
その悲しい笑顔は…
もう…
痛みも、悲しみすらも、全部を隠す様にと…
ネオ自身の心すらも、誤魔化す為の笑顔なんだ!!」
私は少し驚く。
私が誤魔化してる?
「私はでも…
別に痛くは…」
ラークが急に動いて私を抱き寄せた。
それにもまた驚く。
私にとラークが目を見てだった。
「これ以上、もう駄目だ!!
そんな悲しい笑顔なんてさせたくもない!!
もし、ネオがどうしても…
どうしても『人間を愛せる』気がしないと言うならば。
『俺がネオを』愛する!!
『ネオも俺を』愛してくれ!!
これ以上…
もう傷だらけで、泣く事すらも出来なく、そんなにも悲しい笑顔を…
そんな顔で笑うぐらいならばだ。
提案には『誰かを愛せる』までと俺は言った!!
だから俺も裏切らない!!
もう人間に限らない、俺はネオを愛するとも決めた。
でも『ネオが愛する』者は自由だ。
俺は『ネオが愛する』までは、絶対に傷付ける事もしない。
そして傷付けさせたりもしない。」
私はもう…
どう答えて良いかも判らないけど…
ラークを…
そしてラークが私を?
「でも、それはラークには…
判らないけど…
だって、ラークは私を?
愛しても何も…」
ラークは首を横に振ってから強く言った。
「それも違う。
愛する事にも、愛する者にもだ。
理由なんて、本来ないんだ!!
一緒に居てもそうだ。
ネオが痛くないと。
ネオが楽しいと。
ネオが嬉しいと。
そう思える時間を与えてくれる者がだ!!
それが『愛する者』にとする事が普通なんだ!!
俺はもう、ネオがそんなにも痛そうな…
悲しい笑顔なんて見たくない!!
ネオが笑って、嬉しそうにと。
動物達と楽しそうに遊んでる姿だって同じだ!!
あの本当に嬉しそうに笑ってる笑顔を見てると。
俺だって嬉しいんだ!!
そんなネオを俺は大事だ。
ネオがどれだけ優しいかも俺は知ってるからこそ。
俺はネオを愛せると言える。
でも、ネオが愛する者に関しては自由なんだ。」
私は僅かにしか言えなかった。
「自由と…?
愛する事も…?
でも、判らない…」
でも…
私はスッとラークの頬にと手を伸ばして触れる。
ラークは何も動かなかった。
「ラークが私を?
でも、私はどうすれば…」
少しラークが笑って言う。
「今は判らなくて良い。
それもすぐに何て俺は考えてない。
急がなくて良いんだ。
ネオが困るのも見たくない。
愛し方が判らないのは、簡単だ。
愛された事がないからだとも俺は知ってる。
だったら、俺がネオを愛するだけだ。
それにネオが気にする事もない。
ネオが自然に笑って、嬉しそうにするのなら。
俺はそれだけで充分なんだ。
だからもう、あんな悲しい笑顔はしないでくれ…
俺はネオを愛してる。
でもネオは、そのままで充分だ。
いつも通りにと、普通に過ごせば良い。
俺の提案すらも変わらない。
ネオが『誰かを愛せるまで、俺と一緒に居る事』は変えない。」
私は、どうにか考える。
『提案』も変えないと?
『誰かを愛せる』までと?
『ラーク』と一緒に居る事をと?
そして、『ラークが私を愛する』と?
それは…
「私は、まだ、判らないけど…
それでラークは、良いの?
だって、ラークなら他にも…」
スッと動いたラークが抱き締めてからだった。
それに私は少しビクリとする。
「大丈夫だ、ネオ…
俺はネオが痛い事も絶対にしない。
ネオが安心する様にと。
必ず守りたいと、俺は思ってる。
それにネオも言っただろう?」
「私が…?」
私は驚きながらも声を聞く…
「あぁ、そうだ。
ネオが言ったんだぞ?
まぁ、少し微妙な感覚だったが…
俺は『新種』なんだろう?
『俺だけ』は違うと言ってたからな。
確かに人間でもない。
それに動物でもない。
だけど、俺にとっても『ネオだけ』だ。
良いんだ、俺は『ネオだけ』をと。
大切に愛したいだけなんだから…」
私はふと思い出す。
確かにそれは…
私が言った事でもあるけど…
でも…
「そうだなぁ。
ラークだけは…
温かいのも、あるんだよなぁ…
この感覚が…
ハッキリとしないけど…」
少し腕を緩めて、ラークが支えながらも。
私にと笑ってくる。
「良いんだ、ネオ!!
ネオは、もう痛い事も勿論だが。
ネオが、そのままでも嬉しそうにと。
楽しそうにする姿を、俺が見てたいだけだ!!
今までとも変わらん。
それにもし『ネオが俺を』愛してくれたら。
それはただ、俺には嬉しいだけだ!!」
私はもう、どうにか。
そのまま言った。
「ラークなら…
そうだなぁ。
この温かい理由も判るかもしれないなぁ。」
ラークが少し嬉しそうにまた笑った。
「急がなくて良いぞ?
俺はゴミとは違うからな?
そんな馬鹿しないぞ?」
私はふと思い出して笑った。
「あはははは!!
それを…
気に、してた!?
あはははは!!
あんな…
人間のクズと…
あははははっ!!
最初からラークだけは…
なぜか、違うし?
あははははっ!!
会話すら出来ない…
あんなのと?
比べたら…
あははははっ!!
ラークが!?
可哀想過ぎるだけ…
あははは!!」
「そうだぞ。
俺をあんなゴミ扱いは勘弁しろ?
それに、そうやってだ。
ネオが本当の笑顔でだな!!
そうやって笑ってくれるのが、俺は嬉しいぞ!!
まぁ、俺もゴミになる気なんてない。
だから、大丈夫だ。
心配するな?」
私はもう、こんなに笑ったのが久々過ぎて。
思い出せないけど…
でも私は一つだけは思った事があった。
『ラークだけ』はやっぱり違うなぁ。
**************************
私とラークはまた…
一緒に暮らすのもあるけど。
私は初めてだった。
本当の私を見て言われた初めての言葉…
『俺はネオを愛してる』と。
何だかとても。
前とも違う不思議な感覚は残った…
それでもやっぱりラークだけは違うと。
安心すら出来た。
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