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第四章 第三部
15 ミーヤの位置
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なんとなく場の雰囲気が変わった。これまではトーヤが代表するように光と話をし、それに時々他の者が何かを発言するという形になっていた。
これはトーヤが八年前からのことを含め、このような事態に一番慣れていること、それから何か行動する時にリーダーの位置にいることから自然とそうなったと言えるだろう。
こんな不思議な出来事にすんなりと慣れる、馴染める人などそうはいない。神と思われる光に不思議な空間に呼び集められ、そしてこの世の成り立ち、神の理、普通の人として生きていれば知るはずのないこと、知る必要のないことを知ることになる。今回で四度目とはいえ、慣れるなどなかなかできることではない。
ミーヤ、ダル、リルの八年前のことを知る3人と、同じくおぼろに関わりのあったカースの村長夫婦、それに船の中でシャンタルの神聖を垣間見たディレンはまだしも、いきなり分けの分からない状況に引っ張り込まれた形のアーダとハリオは今だに戸惑う部分が多く、その中でなんとか自分の役割を探して果たそうとしている。
サディとナスタ、そしてダリオは状況はよく分からないながら、身近にいる村長夫婦とダルが八年前から関わっていると知ったこと、そしてトーヤを家族のように受け入れていることから、「家族の問題」として受け入れているようだ。
それぞれが違う立場から、トーヤが光と対話するのを見つめるという形で集まっていたこの場、それがベルとフェイが「童子」であると分かったこと、トーヤたち4人の結束の強さを目にしたことで、自分もその一員であるとの意識が強くなったような感じだった。
その中でただ一人、少し違う位置にいたのがミーヤだ。八年前、ミーヤはトーヤと同じく当事者のような立場にいた。眠っていたシャンタルを目覚めさせ、成長させる手助けをした。ある部分ではトーヤよりも深くシャンタルと関わりを持っている。
『このオレンジ色の侍女をカースへ同行します』
全てはマユリアのこの一言から始まった。あの日、廊下の片隅でマユリアがお通りになられるのを頭を下げて見送っていたミーヤにかけられたこの一言、この日からミーヤの運命は嵐に巻き込まれた小舟のように激しくゆさぶられることになったのだ。
その結果、ミーヤの心は変わってしまった。ただ一筋に、宮に、神に、その身も心も捧げると誓っていたその心に、ある人の面影が深く刻まれることとなったのだ。
八年の間、ずっと心の奥深くに封印し、考えぬように努めていたその人は今、その役目の続きを果たすためにここに戻ってきた。
会えた時は素直にうれしかった。一度は勘違いからこじれたものの、相手も自分との再会を待っていてくれた、そう知って本当にうれしかった。
だが、さっきのような「仲間」との結束の強さを見てしまい、「家族」として一緒にいたというこの三年の月日のこと、きっとお互いに命を預け合って暮らしてきたのであろう日々のことを思うと、なんとも言えない感情が心の奥から湧き上がってくるのを感じた。
ミーヤはその感情の正体を知っていると思った。
嫉妬だ。
自分は自分の知らないトーヤのことを知っている仲間たちに嫉妬をしている。
この気持ちはさっきベルが言っていたのと同じ、あの感情なのだと分かった。
そんなことを思っている場合ではない。頭ではそう分かっているのに、心が思う通りに動いてはくれない。自分でどうしようもない。
この不思議な空間に呼ばれ、遠く離れているはずの人と同じ場にいること、そのような非現実の出来事ですらうれしく感じている。そして本当は離れた場所にいることが苦しいと思っている。
シャンタルは、「黒のシャンタル」は自分の主でありながらトーヤの仲間でもある。交代の後、人に戻った後、その先がどうなろうともシャンタルはトーヤの仲間であり家族でもある。その後の予定を聞いた時、はっきりとトーヤはそう言っていた。
もちろんアランとベルも同じだ。シャンタルとその家族をこの国から連れ出した後、一時的にリル島に隠し、そうして家族が落ち着いて生活ができるように考えてやるつもりだと聞いた。その時にアランとベルも一緒に家族のため、仲間のため、そしてその家族の家族のためにできることをやると言っていた。
ダルとリルはトーヤの友人だ。それは互いに認め合っていることで、これから先も変わることはないだろう。同じようにダルの家族はトーヤを家族同然に思って受け入れている。だからこそ、宮から逃げ出した後、トーヤもカースを訪ねてダルの家族を頼ったのだ。
ディレンは話を聞くとそれこそまさにトーヤの父のような存在だった。トーヤの育ての親の大事な人。幼い頃からのトーヤを知り、見守ってきた人。
アーダとハリオについてはこれからどうなるかは全く分からないが、それでもやはりダルやリルと同じような関係になるように思えた。
では自分は、トーヤにとって一体どのような存在だと考えればいいのだろう。
これからも宮にこの身を捧げると決め、自分の道を進むと決めている自分は。
ミーヤは自分の立ち位置が今の空間のように見えぬ地面の上にあるように、ぐらぐらと頼りなく揺れているように思えた。
これはトーヤが八年前からのことを含め、このような事態に一番慣れていること、それから何か行動する時にリーダーの位置にいることから自然とそうなったと言えるだろう。
こんな不思議な出来事にすんなりと慣れる、馴染める人などそうはいない。神と思われる光に不思議な空間に呼び集められ、そしてこの世の成り立ち、神の理、普通の人として生きていれば知るはずのないこと、知る必要のないことを知ることになる。今回で四度目とはいえ、慣れるなどなかなかできることではない。
ミーヤ、ダル、リルの八年前のことを知る3人と、同じくおぼろに関わりのあったカースの村長夫婦、それに船の中でシャンタルの神聖を垣間見たディレンはまだしも、いきなり分けの分からない状況に引っ張り込まれた形のアーダとハリオは今だに戸惑う部分が多く、その中でなんとか自分の役割を探して果たそうとしている。
サディとナスタ、そしてダリオは状況はよく分からないながら、身近にいる村長夫婦とダルが八年前から関わっていると知ったこと、そしてトーヤを家族のように受け入れていることから、「家族の問題」として受け入れているようだ。
それぞれが違う立場から、トーヤが光と対話するのを見つめるという形で集まっていたこの場、それがベルとフェイが「童子」であると分かったこと、トーヤたち4人の結束の強さを目にしたことで、自分もその一員であるとの意識が強くなったような感じだった。
その中でただ一人、少し違う位置にいたのがミーヤだ。八年前、ミーヤはトーヤと同じく当事者のような立場にいた。眠っていたシャンタルを目覚めさせ、成長させる手助けをした。ある部分ではトーヤよりも深くシャンタルと関わりを持っている。
『このオレンジ色の侍女をカースへ同行します』
全てはマユリアのこの一言から始まった。あの日、廊下の片隅でマユリアがお通りになられるのを頭を下げて見送っていたミーヤにかけられたこの一言、この日からミーヤの運命は嵐に巻き込まれた小舟のように激しくゆさぶられることになったのだ。
その結果、ミーヤの心は変わってしまった。ただ一筋に、宮に、神に、その身も心も捧げると誓っていたその心に、ある人の面影が深く刻まれることとなったのだ。
八年の間、ずっと心の奥深くに封印し、考えぬように努めていたその人は今、その役目の続きを果たすためにここに戻ってきた。
会えた時は素直にうれしかった。一度は勘違いからこじれたものの、相手も自分との再会を待っていてくれた、そう知って本当にうれしかった。
だが、さっきのような「仲間」との結束の強さを見てしまい、「家族」として一緒にいたというこの三年の月日のこと、きっとお互いに命を預け合って暮らしてきたのであろう日々のことを思うと、なんとも言えない感情が心の奥から湧き上がってくるのを感じた。
ミーヤはその感情の正体を知っていると思った。
嫉妬だ。
自分は自分の知らないトーヤのことを知っている仲間たちに嫉妬をしている。
この気持ちはさっきベルが言っていたのと同じ、あの感情なのだと分かった。
そんなことを思っている場合ではない。頭ではそう分かっているのに、心が思う通りに動いてはくれない。自分でどうしようもない。
この不思議な空間に呼ばれ、遠く離れているはずの人と同じ場にいること、そのような非現実の出来事ですらうれしく感じている。そして本当は離れた場所にいることが苦しいと思っている。
シャンタルは、「黒のシャンタル」は自分の主でありながらトーヤの仲間でもある。交代の後、人に戻った後、その先がどうなろうともシャンタルはトーヤの仲間であり家族でもある。その後の予定を聞いた時、はっきりとトーヤはそう言っていた。
もちろんアランとベルも同じだ。シャンタルとその家族をこの国から連れ出した後、一時的にリル島に隠し、そうして家族が落ち着いて生活ができるように考えてやるつもりだと聞いた。その時にアランとベルも一緒に家族のため、仲間のため、そしてその家族の家族のためにできることをやると言っていた。
ダルとリルはトーヤの友人だ。それは互いに認め合っていることで、これから先も変わることはないだろう。同じようにダルの家族はトーヤを家族同然に思って受け入れている。だからこそ、宮から逃げ出した後、トーヤもカースを訪ねてダルの家族を頼ったのだ。
ディレンは話を聞くとそれこそまさにトーヤの父のような存在だった。トーヤの育ての親の大事な人。幼い頃からのトーヤを知り、見守ってきた人。
アーダとハリオについてはこれからどうなるかは全く分からないが、それでもやはりダルやリルと同じような関係になるように思えた。
では自分は、トーヤにとって一体どのような存在だと考えればいいのだろう。
これからも宮にこの身を捧げると決め、自分の道を進むと決めている自分は。
ミーヤは自分の立ち位置が今の空間のように見えぬ地面の上にあるように、ぐらぐらと頼りなく揺れているように思えた。
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