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第三章 第ニ部 助け手の秘密

11 関わる者たち

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 ミーヤは以前通りにアーダと共に月虹兵付きに復帰をしたが、エリス様たちご一行の世話係は今だけ、この宮に滞在している間だけの期間限定の職務である。つまり、本来は月虹兵付き専任ということになる。
 今はそこにセルマの世話役という、これもおそらくは今だけの職務も付いた。

「ですので、夜はこの部屋に戻って一緒にお世話をさせていただくことになりますが、お昼は離れることも多くなると思います。何か御用がございましたら、衛士を通して連絡をなさってくださいね」

 今まで通りミーヤが相部屋ということで、セルマは少しホッとしているようだった。
 口には出さないが、ミーヤが自分を気づかってくれてのことだとセルマにもちゃんと分かっている。

 そうしてミーヤは月虹兵の控室へ出向き、また元通りに職務に就くことを報告した。

「ダル隊長にもご挨拶をして参ります」

 その足でダルの部屋へと向かう。
 もうダルもキリエから事の顛末を聞いていて、ミーヤの姿を見ると喜んでくれた。

「よかったね、って言っていいのかどうか分からないけど、まあ一つ安心したよ」
「ありがとう。それでね、この子をリルに返してほしいのだけれど」

 ミーヤが「アベル」が作った青い小鳥をダルに見せる。

「あれっ、それって」

 ダルももちろんこの小鳥のことは知っている。
 
「少し訳があって、キリエ様がリルから借りてきてくださっていたの。それで、落ち着いたのでリルに返してきてもらいたいのだけれど、お願いできるかしら」

 ダルとリルには例の水音のことは説明はしていない。

「そうか分かったよ。今日は宮泊まりになるけど、明日でもいいかな」
「ダルの予定がそうなっているのならば、きっとそれでいいということだと思うわ」
「そうだね」

 ダルも何があったかも聞かず、ミーヤもそれ以上の説明もしない。
 リルがラデルに語ったように、2人も知ることも知らぬことも「時が満ちるまでのこと」と思っているからだ。

「そういやアランがさあ、ハリオさんがいるから話をしにくいことがあるって言ってたんだけど、なんか思い出さない?」
「そうね、あったわね、そんなことが」

 ミーヤが聞いてクスリと笑う。
 八年前、まだ何も知らないリルに知られないように、色々と気をつかっていた時期のことを言っているのだ。

「本当に繰り返しね」
「そうなんだよなあ」

 ダルも思い出したように、ちょっとだけ困ったようにそう言って笑う。

「それで、アランと船長と色々な話をする時に、ハリオさんとアーダを巻き込まないようにしたいと思ってたんだ。ミーヤが戻ってきてくれてやりやすくなるかも」
「アーダ様にハリオさん専属になってもらう、というわけにもいかないでしょうし、どうしたらいいのかしら」
「あの時はリルが俺の専属だったもんねえ」
「そうだったわよね」

 そう言って、ミーヤがふっと何かを思いついた顔になった。

「なに? どうしたの?」
「いえ、あの時、一生懸命リルを巻き込まないようにしていたつもりだったけれど、結局はこうなってしまったでしょう?」
「ああ、そういやそうか」

 本当に色々なことがあった上でのことではあったが、結局はリルが関わってきたことで大きく事が動いたのだ。

「それと同じように、ハリオさんやアーダ様ももしかして、同じように関わるために今こうなっているのではないのかとちょっと思ってしまって」
「それって……」

 ダルも、ミーヤの意見になんとなく同意する顔になるが、

「でも、勝手にそう決めて、先走って言ってしまうというわけにもいかないよね」
「ええ、そう思うわ」

 2人とも同じ結論にたどり着く。

「だとしたら、やっぱりリルの時と同じく、普通に関係ない人を巻き込まないように気をつけるしかないんだろうね」
「ええ、その上で、もしも必要ならばそういうことになるのでしょう」
「もしも関係なかったら、まあそれはそれってことか。はあ、トーヤがぼやいていたことがよく分かるよ」
「トーヤが何を?」
「いや、後になって間違ってなかったって教えてくれる、不親切だ、みたいに言ってたじゃない?」
「ああ」
 
 ミーヤも思い出す。

 トーヤがラーラ様に言われたこと。

『運命とは、そのどこにあるのか分からない場所のようなものです。その場所へ至る道をご存知なのは天だけ、みんな知らないままにその道を進みます。先に何があるか分からぬまま』

 そう、先のことは見えない、分からないから手探りで進むしかないのだ。
 その途中の道で悩み苦しみ、その先にある正しい道を探すこと、それもまた運命なのだ。

「本当、めんどくさいよな」
「まあ。なんだかトーヤに似てきたのではない?」
「そりゃ多少は似てきても仕方ないよ、これだけ運命を共にしてきたらさ」
「それもそうね」

 八年の間にすっかり分かり合っているいい友人だからこその軽口。
 ダルとリルがいてくれたから、ミーヤはトーヤがいない年月を耐えて過ごしてくることができたのかも知れないと思った。

「とりあえず明日この子を連れてリルのところに行ってくる。ミーヤが開放されたって聞いたらリルもきっと喜ぶよ」
「ええ、お願いします」

 ハリオとアーダのことは歩みながら見守るしかないだろう。
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