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第二章 第四部 おかえり、ただいま
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「あー、あのだな」
トーヤが「コホン」と一つ咳をしてから話を変える。
「あんまり時間なかったんであれなんだが、あいつと……ミーヤとちょっと話してな、そのこと言っておこうと思う」
そう言ってそのままベルの横に座って話をしようとするのに、
「だから上着着て来いって」
アランにもう一度そう言われて、一度部屋に戻ってシャツを着てからあらためてベルの横に座る。
アランとシャンタルも2人の近くに座って話を聞く用意をする。
「ミーヤは色々と手伝ってくれそうだ」
まず一言、そうとだけ言う。
「だけど、色々あって表立って俺らと接触することは難しそうだ」
「なんでだ?」
もういつものようにベルが聞く。
「俺もどうしてだか分かったような分かってないようなだが、キリエさんの行動でそうしろと言ってるみたいだと気がついた」
そうして、ミーヤに話したのと同じ内容のことを説明する。
「ってことはさ、あのおばはん」
「おばはんはやめてやれ」
「えっと、侍女頭のおばはん」
ベルがアランに軽く頭を叩かれる。
「キリエさん……」
「そうだ」
「そのキリエさんが、わざとミーヤさんを引き離したってこと?」
「そうじゃないかと俺は思ってる」
トーヤが言う。
「何かあった時に動ける人を作ってくれてるってことなんじゃねえかな」
「そんでミーヤさんは? 手伝ってくれるって?」
「ああ、えっと……」
少し言いよどんでからトーヤが続ける。
「まあ、そんなことは言ってた」
「なんだよ、たよんねえなあ」
ベルが呆れたように言う。
「しょうがねえだろうが、時間もなくてあんまり話せなかったんだからよ」
トーヤがちょっとすねたように言った。
「なんにしろ、俺らと接触があると思われたらミーヤもやばい。だから連絡のとり方は決めといた」
「鍵穴」の話をする。
「それとな、ダルとつなぎを取りたいと思う」
「ダルと?」
「あいつは変わってねえらしい。今でも俺のこと信じて待っててくれてるらしい」
「副隊長」の話もする。
「副隊長」
ベルがプッと吹き出す。
なんとなくルギが隊長と呼ばれたのを見た時の自分のようでトーヤがムッとして、今度はいつものように頭をはたいた。
「ミーヤと接触しやすいのはベルで、ダルとはアランだ。俺とシャンタルは出るわけにいかねえからな」
「そうだな」
アランが同意する。
「それと、この部屋に自然に出入りできる可能性があるのはリルなんだが、これはどうしたもんかと考えてる」
リルはアロの娘であり、「外の侍女」でもある。父親の使いでやってきたとしても、何も不思議には思われない。
「けどな、結婚して今はどうなってるか、相手がどんなやつなのかが分からん。だからこっちはちと保留だ」
「けどな、トーヤ」
ベルが普通に話しかける。
「トーヤさ、何をどうしようっての? おれにはそれが全然見えねえんで、ちょっと困ってる」
「ベルの言う通りだな」
アランもそう言う。
「一番の目的は、交代の時にシャンタルをそこに割り込ませることってのは分かってるよな」
「ああ」
「うん」
通常なら、生まれた次代様に当代シャンタルが中の神を移し、次にマユリアを受け継いでマユリアが人に戻る。そのつながりの中に先代であるシャンタルを割り込ませ、マユリアと一緒にシャンタルも人に戻すのが目的だ。
「八年前と同じ人間関係ならごく簡単だったと思う。俺も、来るまではそういくんじゃねえかなと思わないこともなかった。だがな、宮の中は変わった。うかつに近寄れねえ。今はようやく情報収集がなんとなくできてるぐらい、だ」
アランとベル、シャンタルもじっと黙って聞いている。
「目的は変わんねえ、シャンタルとマユリアを人に戻し、そして必要ならこの国から連れて出る。八年前と同じようにな」
そう言ったトーヤの顔は何を考えているのかは読めなかった。
「よう」
ベルが言いにくそうに言い出した。
「トーヤはそれでいいのか?」
「え?」
「いや、八年前と同じってさ」
「何がだ」
「いや……」
そのまま八年もミーヤと離れ離れになったのだ。今度もそれでいいのか? そう聞きたかった。
「まあ、前は戻るの前提だったしな」
分かっているのかどうか、トーヤがそう言う。
「今度は連れて戻らねえのなら、まあ、色々とやり方はある」
そうだ、ミーヤも連れて行けばいい。
望むならマユリアもラーラ様も。
なんだったら身の置き場所がなくなるというのなら、キリエも連れて行けばいい。
「そうだよ、今度はそういうことできんだよ、な!」
自分で言った言葉に自分で納得するようにそう言った。
「全部終わったらみんなでアルロス号に乗ってここから出ていきゃいいじゃねえか」
「なるほど!」
ベルもうれしそうに言う。
「そんで全部丸く収まるな!」
「だよな」
ベルとトーヤが楽しそうに話を合わせる横で、アランは難しい顔をして黙っている。
「なんだよ、アランはそうは思わねえのかよ」
「いや、それはそれでいいとは思う」
そう言って頷く。
「けどな、その場合シャンタルはどうなる?」
「どうって、一緒だっつーてるだろ」
「そうだよ兄貴、話聞いてたか?」
「違うよ」
表情を曇らせる。
「小さい方のシャンタルだよ、一人でここに置いていくのかよ……」
トーヤが「コホン」と一つ咳をしてから話を変える。
「あんまり時間なかったんであれなんだが、あいつと……ミーヤとちょっと話してな、そのこと言っておこうと思う」
そう言ってそのままベルの横に座って話をしようとするのに、
「だから上着着て来いって」
アランにもう一度そう言われて、一度部屋に戻ってシャツを着てからあらためてベルの横に座る。
アランとシャンタルも2人の近くに座って話を聞く用意をする。
「ミーヤは色々と手伝ってくれそうだ」
まず一言、そうとだけ言う。
「だけど、色々あって表立って俺らと接触することは難しそうだ」
「なんでだ?」
もういつものようにベルが聞く。
「俺もどうしてだか分かったような分かってないようなだが、キリエさんの行動でそうしろと言ってるみたいだと気がついた」
そうして、ミーヤに話したのと同じ内容のことを説明する。
「ってことはさ、あのおばはん」
「おばはんはやめてやれ」
「えっと、侍女頭のおばはん」
ベルがアランに軽く頭を叩かれる。
「キリエさん……」
「そうだ」
「そのキリエさんが、わざとミーヤさんを引き離したってこと?」
「そうじゃないかと俺は思ってる」
トーヤが言う。
「何かあった時に動ける人を作ってくれてるってことなんじゃねえかな」
「そんでミーヤさんは? 手伝ってくれるって?」
「ああ、えっと……」
少し言いよどんでからトーヤが続ける。
「まあ、そんなことは言ってた」
「なんだよ、たよんねえなあ」
ベルが呆れたように言う。
「しょうがねえだろうが、時間もなくてあんまり話せなかったんだからよ」
トーヤがちょっとすねたように言った。
「なんにしろ、俺らと接触があると思われたらミーヤもやばい。だから連絡のとり方は決めといた」
「鍵穴」の話をする。
「それとな、ダルとつなぎを取りたいと思う」
「ダルと?」
「あいつは変わってねえらしい。今でも俺のこと信じて待っててくれてるらしい」
「副隊長」の話もする。
「副隊長」
ベルがプッと吹き出す。
なんとなくルギが隊長と呼ばれたのを見た時の自分のようでトーヤがムッとして、今度はいつものように頭をはたいた。
「ミーヤと接触しやすいのはベルで、ダルとはアランだ。俺とシャンタルは出るわけにいかねえからな」
「そうだな」
アランが同意する。
「それと、この部屋に自然に出入りできる可能性があるのはリルなんだが、これはどうしたもんかと考えてる」
リルはアロの娘であり、「外の侍女」でもある。父親の使いでやってきたとしても、何も不思議には思われない。
「けどな、結婚して今はどうなってるか、相手がどんなやつなのかが分からん。だからこっちはちと保留だ」
「けどな、トーヤ」
ベルが普通に話しかける。
「トーヤさ、何をどうしようっての? おれにはそれが全然見えねえんで、ちょっと困ってる」
「ベルの言う通りだな」
アランもそう言う。
「一番の目的は、交代の時にシャンタルをそこに割り込ませることってのは分かってるよな」
「ああ」
「うん」
通常なら、生まれた次代様に当代シャンタルが中の神を移し、次にマユリアを受け継いでマユリアが人に戻る。そのつながりの中に先代であるシャンタルを割り込ませ、マユリアと一緒にシャンタルも人に戻すのが目的だ。
「八年前と同じ人間関係ならごく簡単だったと思う。俺も、来るまではそういくんじゃねえかなと思わないこともなかった。だがな、宮の中は変わった。うかつに近寄れねえ。今はようやく情報収集がなんとなくできてるぐらい、だ」
アランとベル、シャンタルもじっと黙って聞いている。
「目的は変わんねえ、シャンタルとマユリアを人に戻し、そして必要ならこの国から連れて出る。八年前と同じようにな」
そう言ったトーヤの顔は何を考えているのかは読めなかった。
「よう」
ベルが言いにくそうに言い出した。
「トーヤはそれでいいのか?」
「え?」
「いや、八年前と同じってさ」
「何がだ」
「いや……」
そのまま八年もミーヤと離れ離れになったのだ。今度もそれでいいのか? そう聞きたかった。
「まあ、前は戻るの前提だったしな」
分かっているのかどうか、トーヤがそう言う。
「今度は連れて戻らねえのなら、まあ、色々とやり方はある」
そうだ、ミーヤも連れて行けばいい。
望むならマユリアもラーラ様も。
なんだったら身の置き場所がなくなるというのなら、キリエも連れて行けばいい。
「そうだよ、今度はそういうことできんだよ、な!」
自分で言った言葉に自分で納得するようにそう言った。
「全部終わったらみんなでアルロス号に乗ってここから出ていきゃいいじゃねえか」
「なるほど!」
ベルもうれしそうに言う。
「そんで全部丸く収まるな!」
「だよな」
ベルとトーヤが楽しそうに話を合わせる横で、アランは難しい顔をして黙っている。
「なんだよ、アランはそうは思わねえのかよ」
「いや、それはそれでいいとは思う」
そう言って頷く。
「けどな、その場合シャンタルはどうなる?」
「どうって、一緒だっつーてるだろ」
「そうだよ兄貴、話聞いてたか?」
「違うよ」
表情を曇らせる。
「小さい方のシャンタルだよ、一人でここに置いていくのかよ……」
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