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告白
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手洗い場で日光を背中にさんさんと受けながらハンカチを洗い流す。
力いっぱいに絞ったら、ポッケに入れてもまあいいかと思うくらいには水が切れた。
「深月。ごめんね、ありがとう」
「あー、ゆり。いいっていいって。ハンカチくらい」
「私、ちょっとおっちょこちょいだから」
「ちょっと? 俺はかなりのドジっ子だと認識してたわ」
「いや、あの」
焦ってる焦ってる。おもしれー。
「いいんじゃねえの。かわいげがあって」
「かわいげ……」
パンッとハンカチを広げてみて、ポケットへイン。
「あの……」
「ん?」
いつもワーキャーやかましいゆりが妙にしおらしい。
何じゃ、気持ち悪い。
「深月……好きです」
ゆりが顔を上げて言う。
目が合うと、爽やかな秋の風が二人の間を吹き抜けた。
「知ってる。お前態度でバレバレじゃん」
「えっ、そ、そうなの?!」
「逆になんで今頃んなって言おうと思ったの。お前、中学の時からだろ」
ゆりとは中3の時に同じクラスになった。
1年間、同じ委員会だったからたぶんその活動かなんかで惚れられたんだろう。
「さっき、深月がおもしろいって笑ったの見たら、どうしても言いたくなったの。友達じゃなくて、彼女として深月といられたら、って……」
彼女として……。
「ごめん、それは無理。俺、好きな子がいるから付き合えない」
「え?! 好きな子?!」
「うん。すげー好きなの」
「……そっか……」
キッパリ言い過ぎたかな。
ゆりが半笑いでうつむいてしまった。
「初めてだよね。彼女いないのに断ったの」
「え?」
「深月、彼女がいる時に告られたら秒殺だけど、いない時なら断ったことなかったでしょ」
あー、たしかに。
ろくに顔も見ずにOKしてた。彼女がいるっていうのは、俺にとっても悪いことじゃなかったし。
……俺、もしかしたら今初めて女子とちゃんと向き合ってるかもしれない。
タカトゥー以上に最低だった。
相手がどんな子なのかも知らずに、どうでもよくて、興味なくて。
「勘違いすんなよ、ゆりだから断ったんじゃねえよ。俺今、友達と遊ぶのが楽しいから彼女いらねってか」
「だから好きな子がいるのに告白してないの?」
「うー、まあ、親友が大事だからとゆうか」
「高崎くん? ほんと、高崎くん大好きだよね」
「うん。俺明翔大好きなの」
「高崎くんの好きは違うっぽいけどね」
俺の好きも違うんだわ。
だが、笑ったゆりが食いついてきそうだから絶対言わない。
「なんかスッキリしたー。ずっと、長いこと言えなかったからこのまま言わないでおこうかとも思ってたけど、言って良かった」
「ずっと?」
「うん。私、中学の入学式の時から深月のこと好きだったから」
「入学式?!」
ゆりとしゃべった記憶なんか全然ない。
忘れてる? いや、小学校同じだったヤツとしかしゃべってない。
「なんで? 接点なかったよね?」
「入学式で、みんな浮かれてる中で、深月だけが異質だったんだよね。クールで落ち着いてて大人びてて、カッコ良かったの」
それ、一条が引越したって知って俺ひとりへこんでただけだわ。
くっだらないきっかけで何年も俺のこと好きだったのかよ……不憫なヤツだな。
「あのさ。ゆりさえ良かったら、引き続き友達でいてくんね」
顔もおぼろげなモブ女生徒から、ゆりという友達になる。
「喜んで!」
「良かった」
「こちらこそ!」
笑ったゆりが手を振って、小走りに去って行く。
ありがとな、ゆり。
こんな俺のことを好きになってくれて。友達でいてくれて。
俺なんかより、ずっといい男がお前を待ってると思う。
サッとタカトゥーが現れ、ゆりの肩を抱き、並んで歩いていく。
あいつ、ハイエナセンサー冴え渡っとんな。
……元気付けてやってくれ、タカトゥー。
俺にはできない。
「深月! 好きな子って俺?! 俺だよね?!」
「もー、明翔、もうちょっと我慢してほしかった」
唐突に明翔が抱きついてきて声も出ないくらいびっくりした。
続いて涼しい顔した一条。
……おい。
「まさか、ずっと見てたのか。二人して」
「優が出てくなって離してくんなくて」
「受けのためにキッパリ断る攻め、いただきました!」
……マジかぁー……最低な自分に気付いた瞬間見られてたんキツい。
俺、明翔に言ってないことがあるんだよ。引かれたくなくて。
期待と不安が入り交じったような微妙な顔してすがり付く明翔。
お前だよ。お前しかねえよ。
「颯太は?」
「深月をフッた子と言い合ってる」
「は? さつき?」
「深月はバカだけどバカにするなって叫んでね。ショタはずいぶん呂久村を推してるみたいだね」
……颯太が、俺のために……?
感動半分、一条がいい笑顔なもんだから一条の好感度ゲットのため?
と思っちゃう俺はやっぱりゆがみまくってるんだろうか。
力いっぱいに絞ったら、ポッケに入れてもまあいいかと思うくらいには水が切れた。
「深月。ごめんね、ありがとう」
「あー、ゆり。いいっていいって。ハンカチくらい」
「私、ちょっとおっちょこちょいだから」
「ちょっと? 俺はかなりのドジっ子だと認識してたわ」
「いや、あの」
焦ってる焦ってる。おもしれー。
「いいんじゃねえの。かわいげがあって」
「かわいげ……」
パンッとハンカチを広げてみて、ポケットへイン。
「あの……」
「ん?」
いつもワーキャーやかましいゆりが妙にしおらしい。
何じゃ、気持ち悪い。
「深月……好きです」
ゆりが顔を上げて言う。
目が合うと、爽やかな秋の風が二人の間を吹き抜けた。
「知ってる。お前態度でバレバレじゃん」
「えっ、そ、そうなの?!」
「逆になんで今頃んなって言おうと思ったの。お前、中学の時からだろ」
ゆりとは中3の時に同じクラスになった。
1年間、同じ委員会だったからたぶんその活動かなんかで惚れられたんだろう。
「さっき、深月がおもしろいって笑ったの見たら、どうしても言いたくなったの。友達じゃなくて、彼女として深月といられたら、って……」
彼女として……。
「ごめん、それは無理。俺、好きな子がいるから付き合えない」
「え?! 好きな子?!」
「うん。すげー好きなの」
「……そっか……」
キッパリ言い過ぎたかな。
ゆりが半笑いでうつむいてしまった。
「初めてだよね。彼女いないのに断ったの」
「え?」
「深月、彼女がいる時に告られたら秒殺だけど、いない時なら断ったことなかったでしょ」
あー、たしかに。
ろくに顔も見ずにOKしてた。彼女がいるっていうのは、俺にとっても悪いことじゃなかったし。
……俺、もしかしたら今初めて女子とちゃんと向き合ってるかもしれない。
タカトゥー以上に最低だった。
相手がどんな子なのかも知らずに、どうでもよくて、興味なくて。
「勘違いすんなよ、ゆりだから断ったんじゃねえよ。俺今、友達と遊ぶのが楽しいから彼女いらねってか」
「だから好きな子がいるのに告白してないの?」
「うー、まあ、親友が大事だからとゆうか」
「高崎くん? ほんと、高崎くん大好きだよね」
「うん。俺明翔大好きなの」
「高崎くんの好きは違うっぽいけどね」
俺の好きも違うんだわ。
だが、笑ったゆりが食いついてきそうだから絶対言わない。
「なんかスッキリしたー。ずっと、長いこと言えなかったからこのまま言わないでおこうかとも思ってたけど、言って良かった」
「ずっと?」
「うん。私、中学の入学式の時から深月のこと好きだったから」
「入学式?!」
ゆりとしゃべった記憶なんか全然ない。
忘れてる? いや、小学校同じだったヤツとしかしゃべってない。
「なんで? 接点なかったよね?」
「入学式で、みんな浮かれてる中で、深月だけが異質だったんだよね。クールで落ち着いてて大人びてて、カッコ良かったの」
それ、一条が引越したって知って俺ひとりへこんでただけだわ。
くっだらないきっかけで何年も俺のこと好きだったのかよ……不憫なヤツだな。
「あのさ。ゆりさえ良かったら、引き続き友達でいてくんね」
顔もおぼろげなモブ女生徒から、ゆりという友達になる。
「喜んで!」
「良かった」
「こちらこそ!」
笑ったゆりが手を振って、小走りに去って行く。
ありがとな、ゆり。
こんな俺のことを好きになってくれて。友達でいてくれて。
俺なんかより、ずっといい男がお前を待ってると思う。
サッとタカトゥーが現れ、ゆりの肩を抱き、並んで歩いていく。
あいつ、ハイエナセンサー冴え渡っとんな。
……元気付けてやってくれ、タカトゥー。
俺にはできない。
「深月! 好きな子って俺?! 俺だよね?!」
「もー、明翔、もうちょっと我慢してほしかった」
唐突に明翔が抱きついてきて声も出ないくらいびっくりした。
続いて涼しい顔した一条。
……おい。
「まさか、ずっと見てたのか。二人して」
「優が出てくなって離してくんなくて」
「受けのためにキッパリ断る攻め、いただきました!」
……マジかぁー……最低な自分に気付いた瞬間見られてたんキツい。
俺、明翔に言ってないことがあるんだよ。引かれたくなくて。
期待と不安が入り交じったような微妙な顔してすがり付く明翔。
お前だよ。お前しかねえよ。
「颯太は?」
「深月をフッた子と言い合ってる」
「は? さつき?」
「深月はバカだけどバカにするなって叫んでね。ショタはずいぶん呂久村を推してるみたいだね」
……颯太が、俺のために……?
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