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佐藤颯太のショタショッピング
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休日のショッピングセンターは当然のように人が多い。
だろうと思ってせっかく朝から来たのに。
「腹減っちゃったよ。10時のおやつにちょっとラーメン食ってきていい?」
「明翔、おやつに食うもんじゃねえんだわ、ラーメンは」
「だから、みんな食えないかと思って」
「フードコートに行ったらどうだい。僕も喉が渇いたからアイス食べたい」
「柳ってアイスで水分補給するんだ」
フードコートで明翔はラーメンをすすり、颯太はかわいらしくドーナツをかじり、一条はカフェラテを飲んで、柳と俺はアイスを食べる。
「さっみ。体冷えちゃったよ」
「スープ飲む? あったまるよ」
「んじゃ、アイスひと口やる」
アイスを差し出すと、明翔のひと口はデカい。
おい……と思うが、おいしい! と笑う様子が大変好ましい。
レンゲですくわれた目の前のスープに口をつける。
「うわ、うめえ。なんか魚のダシ使ってそう」
「深月、全然料理しないのに舌は肥えてんだね」
当たってたらしいな。
へへん、とドヤると一条が拍手した。
「補給した」
「何をだよ」
国宝級腐女子の言うことはワケが分からん。
「俺も服買っちゃおうかなー」
ファミリー向けの服屋に入ると、明翔が平置きされてるロンTを次々広げる。
「こらこら、たたみなさい」
「店員さんがやってくれるかと思って」
店員さんの仕事ではあるんだろうけど、そこまで広げっぱなしはどうなんだ。
明翔が広げた服を手に取る。お、コレかっけえ。
「俺も試着だけしようかな。着るだけならタダだし」
「金曜に生活費振り込まれたところでしょ。気に入ったんなら買ったら?」
「明翔くん、俺は学んだ。気に入ったからって買ってたら金ってすぐなくなる」
「おお! 賢くなったね、深月!」
俺は両親と離れて暮らしているため、それぞれから毎週生活費が振り込まれるのだ。
毎月じゃない辺り、察せ。
「着るだけなら値段気にしなくていいから、みんなそれぞれ俺の一番を試着しようや」
「いいねー。俺のファッションセンスを見せてやんよ」
「深月には負ける気しないなあ」
「じゃあ、一条に審査員になってもらおうよっ。一番センスありそう」
とかなんとか言いながら一条の好みを探る気だな、颯太。
好きだと気付いた颯太はなかなか積極的である。意外。
「いいよ。ボクが君たちのセンスを的確に審査してやろう」
「絶対毒舌じゃん」
実際、この5人の中で一番オシャレ感あるのは一条だ。
細身の体に適度にフィットしたズボンが足を長く見せ、身長は168しかないのにスタイル抜群。
「優でも文句のつけようのない一着を見つけてやる! 勝負だ!」
「楽しみにしてるよ、明翔」
あーもう、このいとこ同士はすーぐバチバチするんだから……。
「ファッションセンス対決、スタート!」
一条がパン! と手を叩く。
俺は勝負など興味はないが、ダサいと思われるのだけは嫌だ。
「深月、サイズは?」
「俺は2L」
「俺でLなのに2Lで袖とか足りるの?」
「Lと2Lの間には大きな隔たりがあるのだよ」
俺と明翔がハンガーで吊り下げられているシャツをシャッシャしながら進んでいくと、真剣な表情の颯太がいた。
「チビッ子はSサイズかな?」
「カワイ子ちゃん、レディースはあっちだよっ」
明翔と颯太がにらみ合う。
もー、ほんと、お前ら仲良しな。
「颯太、それLからしかないよ」
「俺、いつもL着てるから大丈夫」
「なんでその体でL?」
野暮な質問をするんじゃない。
大きい服をダボッと着た方がかわいらしいからだ。
颯太がいけ! 深月! と手に持った服の陰から目で威圧してくる。
「颯太はピッタリした服苦手なんだよね。ゆったり着たい派なの」
「なるほどー。俺は逆かな。ピッタリしてる方が動きやすい」
素直な明翔はあっさり納得してくれる。
「俺これに決ーめたっ」
「俺はこれー」
「俺はこれかね」
試着室前の椅子に優雅に座る一条、その隣に服を手にした柳がいる。
「やっと来た。パッと見てのインスピレーションで選ぶのかと思ったから、一条くんと2人きりで随分待ったよ」
「てめえ、2人きりだと? ぶっ殺――俺から試着するねっ」
途中で我に返った颯太が試着室に消える。
おい。残される俺らの空気考えてください。
シーンと静まり返る我らの前に、シャッと試着室のカーテンが開いた。
颯太が選んだのは、颯太の色白の肌に似合う若草色とモスグリーンのコントラストが効いたゆったりした透け感あるローゲージのセーターだった。
「どうかなあ?」
颯太があざとく萌え袖で招き猫のように手首を曲げ、首をかしげる。
「かわいい……」
これには俺も思わずホッコリである。
だが、一度は目がなくなった一条がゆっくりと颯太を360度から見た。
「文句ナシにかわいいけど、ショタ制服でもパーカー着てるしいつもゆるっとしたシルエットだよね。ピッタリしてる方が小柄が際立ってかわいいかも」
颯太がカッと目を見開いた。
「勝負の場を変える! ついて来い!」
「颯太! 服!」
売り物を試着したまま店を出ようとするから、慌てて脱がせる。
てか、俺たちが一生懸命選んだ服は試着させてもらえないんかい!
颯太はマネキンが赤や青など原色を多用したカラフルなジャケットとハーフパンツのコーデを着ているショップに入って行った。
たしかにかわいい服ありそうだけど、なんだろう、この違和感……キョロキョロと見回すと、棚にカタログがあった。
手に取り数ページめくった俺は、慌てて颯太を追った。
ちょうど、一条がベストとハーフパンツのセットアップを手に取る。
「これなんかショタに似合いそうだ。いかにもショタっぽい」
と掲げるから慌ててすぐ隣で軽く背伸びをしてのぞき込む。
「うん、コレ颯太に似合いそうね。颯太! 一条チョイスだ! 着てみろ!」
「うんっ」
颯太が試着室へと消える。
頼むからさっさと着替えて出てこいよ、颯太!
「この制服っぽいのも良かったんじゃね? 優、学生ものばっか読んでんじゃん」
「へえ、まんまブレザーだ。うちの制服は詰襟だからブレザーショタいいね。次はコレを着てもらおう」
「こら、颯太は着せ替え人形じゃねーんだよ! 先着1着のみ!」
「えぇ~」
明翔と一条はブレザーと詰襟について議論を交わしだしている。
周りを見てはいない。ほっといても大丈夫か。
柳は……うわ、やっべ。
「柳! 何見てんの」
「呂久村くん。見てよ、コレ。服屋なのになぜか食器のギフトがある」
「へ……へえ~、ほんとだあ~。めっちゃ品ぞろえのいい店だなあ」
「品ぞろえ……そうだね。カラフルでかわいい皿とコップでこの店の服とも合いそうだ」
柳には年子の兄がいる。明翔と一条は兄弟のように育ったひとりっ子。
俺もひとりっ子だけど、母親がこのブランドが好きで家に洋服やグッズがたくさんあったのを思い出したのである。
シャッと音がして見ると、颯太が白いシャツ、ブルーのチェックのベストとおそろいのハーフパンツを履いて立っている。
襟元には色味がそろった蝶ネクタイ。
「かわいい! めっちゃくちゃかわいいよ! ショタ!」
「うん、かわいいね。まるで七五三だね」
似合ってるけど、さすがに子供っぽさが過ぎて俺は引いたが、一条は嬉しそうに颯太の前にしゃがみ込んだ。
「うわあ、本当にかわいい! これほどまでに完成されたショタをボクは見たことがない」
「ほんと?! 俺、コレ買う!」
「待てよ、颯太。値段見てみ。全部買ったら3万超えるよ」
「大丈夫だ、明翔。俺はプレゼントでもするチャンスがあるかもと5万財布に入れてある」
いいなー。
颯太は3人の元ヤンの兄、1人の元ヤンの姉がいる末っ子。しかも、颯太だけ年が離れているからみんな社会人でじゃんじゃん小遣いをくれるらしい。
会計を済ませ、着ていた服をブランドの紙バッグに入れてもらって颯太が受け取り、店を出る。
振り返って、俺のため息も出る。
超有名こども服ブランドショップ。マネキンが異様に背が低い。
いやいや、高2にもなって子供服に手を出すとか、「かわいい」ために男のプライド捨ててるだろ?!
「弟ができたみたいだ! ショタ、手をつないでもいい?」
「いっ……いいよっ」
ニコニコと笑い合いながら手をつないで歩く颯太と一条は、まるで兄と弟にしか見えない。
いや……思いっきり真正面から弟ポジを取りに行ってるけど、颯太よ、それでいいのか?
だろうと思ってせっかく朝から来たのに。
「腹減っちゃったよ。10時のおやつにちょっとラーメン食ってきていい?」
「明翔、おやつに食うもんじゃねえんだわ、ラーメンは」
「だから、みんな食えないかと思って」
「フードコートに行ったらどうだい。僕も喉が渇いたからアイス食べたい」
「柳ってアイスで水分補給するんだ」
フードコートで明翔はラーメンをすすり、颯太はかわいらしくドーナツをかじり、一条はカフェラテを飲んで、柳と俺はアイスを食べる。
「さっみ。体冷えちゃったよ」
「スープ飲む? あったまるよ」
「んじゃ、アイスひと口やる」
アイスを差し出すと、明翔のひと口はデカい。
おい……と思うが、おいしい! と笑う様子が大変好ましい。
レンゲですくわれた目の前のスープに口をつける。
「うわ、うめえ。なんか魚のダシ使ってそう」
「深月、全然料理しないのに舌は肥えてんだね」
当たってたらしいな。
へへん、とドヤると一条が拍手した。
「補給した」
「何をだよ」
国宝級腐女子の言うことはワケが分からん。
「俺も服買っちゃおうかなー」
ファミリー向けの服屋に入ると、明翔が平置きされてるロンTを次々広げる。
「こらこら、たたみなさい」
「店員さんがやってくれるかと思って」
店員さんの仕事ではあるんだろうけど、そこまで広げっぱなしはどうなんだ。
明翔が広げた服を手に取る。お、コレかっけえ。
「俺も試着だけしようかな。着るだけならタダだし」
「金曜に生活費振り込まれたところでしょ。気に入ったんなら買ったら?」
「明翔くん、俺は学んだ。気に入ったからって買ってたら金ってすぐなくなる」
「おお! 賢くなったね、深月!」
俺は両親と離れて暮らしているため、それぞれから毎週生活費が振り込まれるのだ。
毎月じゃない辺り、察せ。
「着るだけなら値段気にしなくていいから、みんなそれぞれ俺の一番を試着しようや」
「いいねー。俺のファッションセンスを見せてやんよ」
「深月には負ける気しないなあ」
「じゃあ、一条に審査員になってもらおうよっ。一番センスありそう」
とかなんとか言いながら一条の好みを探る気だな、颯太。
好きだと気付いた颯太はなかなか積極的である。意外。
「いいよ。ボクが君たちのセンスを的確に審査してやろう」
「絶対毒舌じゃん」
実際、この5人の中で一番オシャレ感あるのは一条だ。
細身の体に適度にフィットしたズボンが足を長く見せ、身長は168しかないのにスタイル抜群。
「優でも文句のつけようのない一着を見つけてやる! 勝負だ!」
「楽しみにしてるよ、明翔」
あーもう、このいとこ同士はすーぐバチバチするんだから……。
「ファッションセンス対決、スタート!」
一条がパン! と手を叩く。
俺は勝負など興味はないが、ダサいと思われるのだけは嫌だ。
「深月、サイズは?」
「俺は2L」
「俺でLなのに2Lで袖とか足りるの?」
「Lと2Lの間には大きな隔たりがあるのだよ」
俺と明翔がハンガーで吊り下げられているシャツをシャッシャしながら進んでいくと、真剣な表情の颯太がいた。
「チビッ子はSサイズかな?」
「カワイ子ちゃん、レディースはあっちだよっ」
明翔と颯太がにらみ合う。
もー、ほんと、お前ら仲良しな。
「颯太、それLからしかないよ」
「俺、いつもL着てるから大丈夫」
「なんでその体でL?」
野暮な質問をするんじゃない。
大きい服をダボッと着た方がかわいらしいからだ。
颯太がいけ! 深月! と手に持った服の陰から目で威圧してくる。
「颯太はピッタリした服苦手なんだよね。ゆったり着たい派なの」
「なるほどー。俺は逆かな。ピッタリしてる方が動きやすい」
素直な明翔はあっさり納得してくれる。
「俺これに決ーめたっ」
「俺はこれー」
「俺はこれかね」
試着室前の椅子に優雅に座る一条、その隣に服を手にした柳がいる。
「やっと来た。パッと見てのインスピレーションで選ぶのかと思ったから、一条くんと2人きりで随分待ったよ」
「てめえ、2人きりだと? ぶっ殺――俺から試着するねっ」
途中で我に返った颯太が試着室に消える。
おい。残される俺らの空気考えてください。
シーンと静まり返る我らの前に、シャッと試着室のカーテンが開いた。
颯太が選んだのは、颯太の色白の肌に似合う若草色とモスグリーンのコントラストが効いたゆったりした透け感あるローゲージのセーターだった。
「どうかなあ?」
颯太があざとく萌え袖で招き猫のように手首を曲げ、首をかしげる。
「かわいい……」
これには俺も思わずホッコリである。
だが、一度は目がなくなった一条がゆっくりと颯太を360度から見た。
「文句ナシにかわいいけど、ショタ制服でもパーカー着てるしいつもゆるっとしたシルエットだよね。ピッタリしてる方が小柄が際立ってかわいいかも」
颯太がカッと目を見開いた。
「勝負の場を変える! ついて来い!」
「颯太! 服!」
売り物を試着したまま店を出ようとするから、慌てて脱がせる。
てか、俺たちが一生懸命選んだ服は試着させてもらえないんかい!
颯太はマネキンが赤や青など原色を多用したカラフルなジャケットとハーフパンツのコーデを着ているショップに入って行った。
たしかにかわいい服ありそうだけど、なんだろう、この違和感……キョロキョロと見回すと、棚にカタログがあった。
手に取り数ページめくった俺は、慌てて颯太を追った。
ちょうど、一条がベストとハーフパンツのセットアップを手に取る。
「これなんかショタに似合いそうだ。いかにもショタっぽい」
と掲げるから慌ててすぐ隣で軽く背伸びをしてのぞき込む。
「うん、コレ颯太に似合いそうね。颯太! 一条チョイスだ! 着てみろ!」
「うんっ」
颯太が試着室へと消える。
頼むからさっさと着替えて出てこいよ、颯太!
「この制服っぽいのも良かったんじゃね? 優、学生ものばっか読んでんじゃん」
「へえ、まんまブレザーだ。うちの制服は詰襟だからブレザーショタいいね。次はコレを着てもらおう」
「こら、颯太は着せ替え人形じゃねーんだよ! 先着1着のみ!」
「えぇ~」
明翔と一条はブレザーと詰襟について議論を交わしだしている。
周りを見てはいない。ほっといても大丈夫か。
柳は……うわ、やっべ。
「柳! 何見てんの」
「呂久村くん。見てよ、コレ。服屋なのになぜか食器のギフトがある」
「へ……へえ~、ほんとだあ~。めっちゃ品ぞろえのいい店だなあ」
「品ぞろえ……そうだね。カラフルでかわいい皿とコップでこの店の服とも合いそうだ」
柳には年子の兄がいる。明翔と一条は兄弟のように育ったひとりっ子。
俺もひとりっ子だけど、母親がこのブランドが好きで家に洋服やグッズがたくさんあったのを思い出したのである。
シャッと音がして見ると、颯太が白いシャツ、ブルーのチェックのベストとおそろいのハーフパンツを履いて立っている。
襟元には色味がそろった蝶ネクタイ。
「かわいい! めっちゃくちゃかわいいよ! ショタ!」
「うん、かわいいね。まるで七五三だね」
似合ってるけど、さすがに子供っぽさが過ぎて俺は引いたが、一条は嬉しそうに颯太の前にしゃがみ込んだ。
「うわあ、本当にかわいい! これほどまでに完成されたショタをボクは見たことがない」
「ほんと?! 俺、コレ買う!」
「待てよ、颯太。値段見てみ。全部買ったら3万超えるよ」
「大丈夫だ、明翔。俺はプレゼントでもするチャンスがあるかもと5万財布に入れてある」
いいなー。
颯太は3人の元ヤンの兄、1人の元ヤンの姉がいる末っ子。しかも、颯太だけ年が離れているからみんな社会人でじゃんじゃん小遣いをくれるらしい。
会計を済ませ、着ていた服をブランドの紙バッグに入れてもらって颯太が受け取り、店を出る。
振り返って、俺のため息も出る。
超有名こども服ブランドショップ。マネキンが異様に背が低い。
いやいや、高2にもなって子供服に手を出すとか、「かわいい」ために男のプライド捨ててるだろ?!
「弟ができたみたいだ! ショタ、手をつないでもいい?」
「いっ……いいよっ」
ニコニコと笑い合いながら手をつないで歩く颯太と一条は、まるで兄と弟にしか見えない。
いや……思いっきり真正面から弟ポジを取りに行ってるけど、颯太よ、それでいいのか?
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