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ダブル高崎
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高崎明翔が体操服を忘れた。
3組のヤツに借りに行くと言うので、意味もなくついて行く。
「ありがと!」
「いつでも頼ってなー、タカアス!」
んだよ、タカアスって。
「タカアスって何」
「いきなり何」
身長155センチ、丸顔にクリクリお目目のかわいい佐藤颯太をちょいちょい、と教室の端に呼ぶ。
「高崎明翔を略してタカアス。高崎明翔と高崎塔夜が同じクラスだったから」
「なるほど、同じ苗字だから差別化しただけね」
なんだ、そーゆーことか。
たいした意味ねえんだ。
壁にくっついてしゃがみこんでいたから足が痛い。立ち上がる。
「聞いたことくらいねえか? 結構有名コンビだったぜ」
「は? コンビ?」
「タカトゥーとタカアスのダブル高崎」
「何者、タカトゥーって」
「深月、その目したら明翔と付き合ってんの秒でバレるぞ」
「あ? 今問題は、んなことじゃねーんだわ」
妙な胸騒ぎ。
BL好き腐女子が複数いるこのクラスで明翔と俺が付き合ってるのは絶対的秘密。
けど、俺の知らねえ男が明翔にいたとあっちゃあ大問題なんだよ。
「俺に聞かずに明翔に聞け、深月」
颯太も立ち上がり、大きな目で男らしく俺を見上げる。
「佐藤くん。ちょっといいかな」
「うんっ。なあに?」
学級委員長、柳龍二に呼ばれた颯太は慌ててかわいらしく笑い、ててっと小走っていく。
むしゃくしゃして廊下に出ると、身長175センチの小柄とは言えない体をコンパクトにたたんでしゃがんでいた明翔が笑顔で立ち上がった。
クッソかわいい。
何なの、俺を殺しに来てんの。
「何してんの、タカアス」
「えー! 深月、1年のクラスの俺のあだ名知ってたんだ?!」
「知らねえよ」
「へ? じゃあなんで?」
お前が俺の知らない呼び方されてたのが気に入らないから呼んだ。
俺、お前の全部知ってたいから。
「……今、颯太に聞いた」
「颯太? 俺、颯太と1年の時絡みなかったのに」
1年の時……いい思い出ねえなあ。
2年になって明翔と親友になるまで、俺の高校生活カスだった。
体育終わりの後片付け。
呂久村な俺はカレンダーの31を超える出席番号のため、人手がいる時に
「じゃあー、呂久村ー」
と使われる。
俺が一番片付けやってんじゃねーかな。
体育倉庫を閉めて体育館から出ると、クラスメートのモブ女子二人が校舎を見上げていた。
「あー、柳様ガチ王子~。麗しい~。色気ヤバい~」
「メガネ復活しないかなあ。柳様、目を見て話してくださるからメガネに自分映るの萌えだよね」
「分かるー。柳様が私を見てるっ! ってなる」
柳か。
顔と頭と運動神経の良さは認めるが、あいつお気に入りのパンツと片時も離れたくないとか言って鑑賞用パンツ持ち歩いてる変態だぞ。
「あ! 優くん!」
「キャー! 優くん、こっちに手ぇ振ってない?!」
一条か。
この俺ですら、小学校の入学式で一目惚れした美少女。小学校の6年間、俺は一条を見つめ続けていた。
けどあいつ、高2にして歴10年以上の腐女子をこじらせたあまり自分自身が男になって男とBLしたい変人だぞ。
一条と明翔の顔がそっくりすぎるからみんなは明翔の顔は男だとインプットされていて、転校してきた一条が女だという情報は忘れ去られとる。
「佐藤くんだ! かっわいい~」
「男子高校生であのかわいさ、エグいよね」
「佐藤くんの声としゃべり方も好き!」
だまされとるだまされとる。
颯太のケンカなんか見てみ? かわいいなんて一生言えなくなるぞ。
あの顔で素のしゃべり方まんま漢だからな。違和感しかねえ。
「高崎くんもいる! ほんとあの辺のメンツ仲良いの謎だよね」
「あれはあれでいいんだけどさ、私はやっぱダブル高崎が好きー」
「分かる。タカトゥーまだ留学から帰って来ないのかなあ」
「タカトゥーとタカアスのコンビ見たいよね」
「顔面最強すぎ」
ダブル高崎!
へー、タカトゥーってヤツ、そんな人気あるんだ。
明翔と並べる顔面なんだ。
へー……さっさと教室行こ。急いで着替えねーと女子が入ってくる。
教室の後ろのドアから中をのぞいている不届き者がいる。男子の着替えは教室なので見ようと思えば見放題。マジ何なん。
隠れBL大好きさんモブ女生徒ゆりとそのお仲間、名も知らぬモブ女生徒。
「柳くんの取り巻き解散宣言は絶対あの中でカップリングが成立したからだよ」
「佐藤くんがいい~。身長差カプ推せる」
「王子攻めとわんこ受け、至高」
きっしょ。現実は変態と漢なんだよ。
想像しちゃうからやめてくれる?
「王道で柳くんと優くん見たい」
「それ二人とも攻めになるよ。優くんは絶対攻め!」
「あー、じゃあ、高崎くんだね。なんか高崎くんってテンションに落差あって陰を感じる時ある」
「いいじゃん、不憫受け最高」
不憫受けいいよねー。
俺は健気受けが好きー。
って、普通にコイツらの会話に混じれそうで怖いわ。
「呂久村くんはー?」
「深月は絶対ヘタレ攻め!」
「肝心なとこで決められないやつね」
「深月はそこがいいの。女ったらしのくせに不器用な感じ」
「お前、俺のことそんな風に思ってたんかい」
ゆりがすごい形相で振り返る。
「深月! いつからそこに?!」
「5分くらい前からかなあ」
「全部聞かれてたっ!!」
ゆりが壁を殴りながら崩れ落ちるのを尻目に教室に入る。
「深月! 結構時間かかったんだね」
「不届き者を成敗してたの」
俺を見つけて笑顔で駆け寄ってくる明翔がかわいい。
……そーいや、BLコンビは明翔にはタカトゥーとは言ってなかったな。
制服に着替えると、ポケットの中にまだ開けてない爽やかガムがあった。
「ゆり」
廊下で名も知らぬモブ女生徒に背中をさすられていたゆりが顔を上げる。
「やる」
「なんで?!」
ガムを手渡し、即教室に戻るとチャイムが鳴った。
3組のヤツに借りに行くと言うので、意味もなくついて行く。
「ありがと!」
「いつでも頼ってなー、タカアス!」
んだよ、タカアスって。
「タカアスって何」
「いきなり何」
身長155センチ、丸顔にクリクリお目目のかわいい佐藤颯太をちょいちょい、と教室の端に呼ぶ。
「高崎明翔を略してタカアス。高崎明翔と高崎塔夜が同じクラスだったから」
「なるほど、同じ苗字だから差別化しただけね」
なんだ、そーゆーことか。
たいした意味ねえんだ。
壁にくっついてしゃがみこんでいたから足が痛い。立ち上がる。
「聞いたことくらいねえか? 結構有名コンビだったぜ」
「は? コンビ?」
「タカトゥーとタカアスのダブル高崎」
「何者、タカトゥーって」
「深月、その目したら明翔と付き合ってんの秒でバレるぞ」
「あ? 今問題は、んなことじゃねーんだわ」
妙な胸騒ぎ。
BL好き腐女子が複数いるこのクラスで明翔と俺が付き合ってるのは絶対的秘密。
けど、俺の知らねえ男が明翔にいたとあっちゃあ大問題なんだよ。
「俺に聞かずに明翔に聞け、深月」
颯太も立ち上がり、大きな目で男らしく俺を見上げる。
「佐藤くん。ちょっといいかな」
「うんっ。なあに?」
学級委員長、柳龍二に呼ばれた颯太は慌ててかわいらしく笑い、ててっと小走っていく。
むしゃくしゃして廊下に出ると、身長175センチの小柄とは言えない体をコンパクトにたたんでしゃがんでいた明翔が笑顔で立ち上がった。
クッソかわいい。
何なの、俺を殺しに来てんの。
「何してんの、タカアス」
「えー! 深月、1年のクラスの俺のあだ名知ってたんだ?!」
「知らねえよ」
「へ? じゃあなんで?」
お前が俺の知らない呼び方されてたのが気に入らないから呼んだ。
俺、お前の全部知ってたいから。
「……今、颯太に聞いた」
「颯太? 俺、颯太と1年の時絡みなかったのに」
1年の時……いい思い出ねえなあ。
2年になって明翔と親友になるまで、俺の高校生活カスだった。
体育終わりの後片付け。
呂久村な俺はカレンダーの31を超える出席番号のため、人手がいる時に
「じゃあー、呂久村ー」
と使われる。
俺が一番片付けやってんじゃねーかな。
体育倉庫を閉めて体育館から出ると、クラスメートのモブ女子二人が校舎を見上げていた。
「あー、柳様ガチ王子~。麗しい~。色気ヤバい~」
「メガネ復活しないかなあ。柳様、目を見て話してくださるからメガネに自分映るの萌えだよね」
「分かるー。柳様が私を見てるっ! ってなる」
柳か。
顔と頭と運動神経の良さは認めるが、あいつお気に入りのパンツと片時も離れたくないとか言って鑑賞用パンツ持ち歩いてる変態だぞ。
「あ! 優くん!」
「キャー! 優くん、こっちに手ぇ振ってない?!」
一条か。
この俺ですら、小学校の入学式で一目惚れした美少女。小学校の6年間、俺は一条を見つめ続けていた。
けどあいつ、高2にして歴10年以上の腐女子をこじらせたあまり自分自身が男になって男とBLしたい変人だぞ。
一条と明翔の顔がそっくりすぎるからみんなは明翔の顔は男だとインプットされていて、転校してきた一条が女だという情報は忘れ去られとる。
「佐藤くんだ! かっわいい~」
「男子高校生であのかわいさ、エグいよね」
「佐藤くんの声としゃべり方も好き!」
だまされとるだまされとる。
颯太のケンカなんか見てみ? かわいいなんて一生言えなくなるぞ。
あの顔で素のしゃべり方まんま漢だからな。違和感しかねえ。
「高崎くんもいる! ほんとあの辺のメンツ仲良いの謎だよね」
「あれはあれでいいんだけどさ、私はやっぱダブル高崎が好きー」
「分かる。タカトゥーまだ留学から帰って来ないのかなあ」
「タカトゥーとタカアスのコンビ見たいよね」
「顔面最強すぎ」
ダブル高崎!
へー、タカトゥーってヤツ、そんな人気あるんだ。
明翔と並べる顔面なんだ。
へー……さっさと教室行こ。急いで着替えねーと女子が入ってくる。
教室の後ろのドアから中をのぞいている不届き者がいる。男子の着替えは教室なので見ようと思えば見放題。マジ何なん。
隠れBL大好きさんモブ女生徒ゆりとそのお仲間、名も知らぬモブ女生徒。
「柳くんの取り巻き解散宣言は絶対あの中でカップリングが成立したからだよ」
「佐藤くんがいい~。身長差カプ推せる」
「王子攻めとわんこ受け、至高」
きっしょ。現実は変態と漢なんだよ。
想像しちゃうからやめてくれる?
「王道で柳くんと優くん見たい」
「それ二人とも攻めになるよ。優くんは絶対攻め!」
「あー、じゃあ、高崎くんだね。なんか高崎くんってテンションに落差あって陰を感じる時ある」
「いいじゃん、不憫受け最高」
不憫受けいいよねー。
俺は健気受けが好きー。
って、普通にコイツらの会話に混じれそうで怖いわ。
「呂久村くんはー?」
「深月は絶対ヘタレ攻め!」
「肝心なとこで決められないやつね」
「深月はそこがいいの。女ったらしのくせに不器用な感じ」
「お前、俺のことそんな風に思ってたんかい」
ゆりがすごい形相で振り返る。
「深月! いつからそこに?!」
「5分くらい前からかなあ」
「全部聞かれてたっ!!」
ゆりが壁を殴りながら崩れ落ちるのを尻目に教室に入る。
「深月! 結構時間かかったんだね」
「不届き者を成敗してたの」
俺を見つけて笑顔で駆け寄ってくる明翔がかわいい。
……そーいや、BLコンビは明翔にはタカトゥーとは言ってなかったな。
制服に着替えると、ポケットの中にまだ開けてない爽やかガムがあった。
「ゆり」
廊下で名も知らぬモブ女生徒に背中をさすられていたゆりが顔を上げる。
「やる」
「なんで?!」
ガムを手渡し、即教室に戻るとチャイムが鳴った。
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