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ふたり
04
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とりあえずは毎日使ってる物と秋物の服と調理器具や調味料を大きめのバッグや取っておいた紙袋に入れてまとめる。
「結構あるね」
「そうね、意外と」
「よし! 行こう俺ん家! 茉悠さん、これ持って」
「う、うん」
なんか、清水くんのキャラが違うなあ。いつもはおっとりしてると言うか、ずっとニコニコしてる印象なんだけど、今日の清水くんは表情がコロコロ変わるし、いつもよりテンションが高い。
今だって、私の荷物なのに私には小さな袋の荷物を渡して清水くんが大きなバッグをふたつ両手に持ってる。
あ、それに何か違和感あるなと思ったら敬語じゃないんだ。飲み会でも敬語だったのに、今日は飲んでもないのに敬語を聞いてない気がする。
またゴミを越えながら玄関を目指す。
「マジでこれ大変そうだな。やっぱり、今月での退去を目指そう! ダラダラ延ばしたって仕方ない。一気にケリを付けよう!」
「付けられるかしら」
「できるかどうかじゃなくて、やるの! 流れに身を任せるのがクセになってるんじゃないの? 自分の意思を持って行動しようよ」
自分の意思か。
たしかに私は、自分がどうしたいかで動くことはあまりないかもしれない。必要に迫られないと動けない。
その結果が今日までの私だわ。
その点清水くんは、自分が親に恩返ししたいと思えばあんなにもストイックに節約してお金貯めたり、そのお金を私なんかのために使おうと決断してしまったりする。
大人しそうに見えて、自分の意思のハッキリした子だわ。私も清水くんみたいになりたい。ちゃんと自分の意思を持って、自分のやりたいことをやる。
人生をやり直そう。清水くんの言う通り、まずは生活を立て直して、やり直そう。
清水くんの家に入ると、同じひとり暮らしとは思えない程にスッキリしていて物がない。
すごいな、清水くんは。
天井に貼り付けられているテレビのリモコンを仰ぎ見ようとして、見当たらないことに気付いた。
「清水くん、リモコンは?」
「テーブルに置いてあるよ」
「え? テレビ観るようになったの?」
「俺はもう観ない生活に慣れてるけど、茉悠さんは観たいかと思って」
私のために?
「でも、電気代かかっちゃうのに」
「すーぐ、でもって言うよね」
清水くんが笑った。
「いいの。俺が勝手に茉悠さんを連れて来たんだから、俺の生活に合わせろなんて言わない。電気代より快適に暮らせることの方が大事でしょ」
「勝手にって……私の方が助けてもらったのに」
「それより俺、まだ茉悠さんに言いたいことと聞きたいことがあるんだ」
「何?」
清水くんが近付いてきて、真正面に立った。
じっと見つめてくるけど、あの……と言いにくそうにしている。
どうしたのかしら?
「結構あるね」
「そうね、意外と」
「よし! 行こう俺ん家! 茉悠さん、これ持って」
「う、うん」
なんか、清水くんのキャラが違うなあ。いつもはおっとりしてると言うか、ずっとニコニコしてる印象なんだけど、今日の清水くんは表情がコロコロ変わるし、いつもよりテンションが高い。
今だって、私の荷物なのに私には小さな袋の荷物を渡して清水くんが大きなバッグをふたつ両手に持ってる。
あ、それに何か違和感あるなと思ったら敬語じゃないんだ。飲み会でも敬語だったのに、今日は飲んでもないのに敬語を聞いてない気がする。
またゴミを越えながら玄関を目指す。
「マジでこれ大変そうだな。やっぱり、今月での退去を目指そう! ダラダラ延ばしたって仕方ない。一気にケリを付けよう!」
「付けられるかしら」
「できるかどうかじゃなくて、やるの! 流れに身を任せるのがクセになってるんじゃないの? 自分の意思を持って行動しようよ」
自分の意思か。
たしかに私は、自分がどうしたいかで動くことはあまりないかもしれない。必要に迫られないと動けない。
その結果が今日までの私だわ。
その点清水くんは、自分が親に恩返ししたいと思えばあんなにもストイックに節約してお金貯めたり、そのお金を私なんかのために使おうと決断してしまったりする。
大人しそうに見えて、自分の意思のハッキリした子だわ。私も清水くんみたいになりたい。ちゃんと自分の意思を持って、自分のやりたいことをやる。
人生をやり直そう。清水くんの言う通り、まずは生活を立て直して、やり直そう。
清水くんの家に入ると、同じひとり暮らしとは思えない程にスッキリしていて物がない。
すごいな、清水くんは。
天井に貼り付けられているテレビのリモコンを仰ぎ見ようとして、見当たらないことに気付いた。
「清水くん、リモコンは?」
「テーブルに置いてあるよ」
「え? テレビ観るようになったの?」
「俺はもう観ない生活に慣れてるけど、茉悠さんは観たいかと思って」
私のために?
「でも、電気代かかっちゃうのに」
「すーぐ、でもって言うよね」
清水くんが笑った。
「いいの。俺が勝手に茉悠さんを連れて来たんだから、俺の生活に合わせろなんて言わない。電気代より快適に暮らせることの方が大事でしょ」
「勝手にって……私の方が助けてもらったのに」
「それより俺、まだ茉悠さんに言いたいことと聞きたいことがあるんだ」
「何?」
清水くんが近付いてきて、真正面に立った。
じっと見つめてくるけど、あの……と言いにくそうにしている。
どうしたのかしら?
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