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シュウと柊

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なんで、清水くんが? 昨日のことは完全に忘れてるはずなのに、どうしてここにいるの?

「茉……シュウさん、今どこから出て来たの? こっち?」

「あ、ううん、あっち」

と私が指差したドアへと清水くんは歩いて行き、部屋へと入って行く。

後から続いて私も中に入ると、清水くんが猫のように鋭い目で、無表情で私を見ている。

お酒飲んだ時の清水くんだ。まだお酒が残ってるのかしら? だから昨日のこともまだ覚えてるの? でも、だとしても何しに来たのかしら?

もしかして、私が昨日何もしてないことも覚えててサービスを受けに来たのかしら。それは困るわ。

「聞きたいことと言いたいことがたくさんある」

「え……」

私にとっては聞きたくも言いたくもないことそう……。

「いつからここで働いてるの?」

「……えっと……先月か先々月かくらい」

「最近か。あー、まだ良かった」

「え?」

「どうしてここで働いてるの? 正社員は副業禁止でしょ。総務なんだから当然知ってるよね」

……あ……分かってたけど、お金がないから副業するしかなかったんだもの……。

「ごめんなさい……」

「俺に謝ることじゃないけど。やりたくてやってるの? この仕事」

「そんなことない。お金が必要だからやってるだけで」

無表情だった清水くんが優しく笑った。……あれ? いつものワンコかわいい清水くんだ。え? どうなってるの?

「まだまだ聞きたいこともいっぱいあるんだけど、先に言いたいことを言うね」

「え? うん?」

清水くんが近付いて来たと思ったら、抱きしめられていた。細い腕の筋肉の硬さを感じる。ドキドキする……ドキドキする。

「今すぐこの店辞めて。俺と一緒にこの店出て」

「え? でも……」

「店の人とは俺が話してもいい。俺を最後の客にして、辞めてほしい」

「でも、プロに写真撮ってもらうの」

「へ? 写真?」

清水くんが驚いて体を離して私の顔を見る。

「ホームページ用の写真。指名のお客さんが終わったら、プロのヘアメイクしてもらってプロのカメラマンに撮ってもらうんだって」

「ホームページ? え、この店の?」

「そう。たぶん」

あ、この店のホームページ用かどうかって確認したかしら? でもまあ、たぶんこの店だと思うわ。他の店のホームページに載せると意味が分からない。

「ダメ! 絶対俺と一緒に帰ろう、茉悠さん。そんなに簡単に風俗店のホームページに載っちゃダメだよ。どうせプロに撮ってもらえるのが楽しみなだけでしょ? 俺がプロに撮ってもらえる写真屋さん探すから」

……ちょっと違うの。プロにヘアメイクしてもらってプロに写真撮ってもらえるのが楽しみなのはそうなんだけど、仕事上必要で撮ってもらうのと自ら撮ってって要求するのは違うの。後者は私にはなんか恥ずかしいの。
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