上 下
50 / 99
シュウと柊

19

しおりを挟む
終電を考慮すると、あと10分かしら。それくらいでお客さんにつかなきゃ終電に間に合わないかもしれなくなるわね。

指名で来てくれるお客さんはひとりしか期待できないからないだろうけど、写真指名でも入らないともう帰るだけかな。

土曜日の夜はお客さんも多いけど出勤してる女の子も多い。指名のないお客さんは、フロントで順番に割り当てられる。

今日は土曜日なのに私は暇だったなあ……。これじゃあ明日、ケイ様のご尊顔を拝見になんて行けない。明日もバイトだわ。女の子が少ないオープンから入ろ。

私は風俗店やんちゃなタイガーでお客さんが来るまでの待機時間を休憩室じゃなくて自分の個室で過ごす。休憩室で楽しそうにおしゃべりしてる女の子達は、私よりもかなり若そうなんだもの。

お客さんが順番を待つ部屋にある漫画をお客さんがいない隙にごっそり個室に持ち込んで読み続けてた。こち亀50巻越えたから、あと半分くらいなのかしら。100巻を越えてるのは知ってるけど、何巻あるんだろう? 延々読み続けられる巻数並んでたわ。

プルルル、と受話器が鳴る。あら、最後に稼ぎをもたらしてくれるかしら。

「シュウちゃん、モニター見てー」

「はーい」

私みたいな前職スナック程度で知り合いなんて来ない。だって、この店高いもの。一応形式としてモニターを見るだけで、知ってる人なんて映ったことがない。

と、思ってたのに。

「高橋?!」

高橋だ。かなり酔ってそうにフラフラしてるけど、高橋だわ。こんな高い店に来るんだ? 今週は大変だったから、自分へのご褒美って感じかしら。

「シュウちゃん、知り合い?」

「絶対写真見せないで下さい!」

入店してからさほど間もない上に週末だけの出勤の私は写真指名用の写真はポラロイドで簡易的に撮っている。絶対、見せないで!

モニターには、受付のフロントの様子が粗い盗撮レベルの画像ながら映っている。

「了解ですー、他の子についてもらうねー」

「お願いしま――清水くん?!」

フラフラ揺れる高橋の手前を、よろけたのか清水くんが横切った気がする。

「待って! この人の連れの人……」

「知り合い?」

画像が粗いけど、高橋が笑いながら支えてなんとか立ってる様子の人は、たぶん完全に清水くんだ。

「他の子についてもらうから大丈夫ー。シュウちゃん、もう上がっていいよー」

他の子?! え、他の女の子が清水くんにこの店のサービスを施すの?!

「ダメ! 私がつく! この連れの人、酔ってるように見えますか?」

「かーなーり酔ってるね。お断りしようか迷うレベル」

「じゃあ、私つきます!」

「先にもうひとりの人から案内するから、ちょっと待ってて」

「はい」

酔ってるなら、清水くんの記憶には残らない。明日目覚めたら全てを忘れてるはずだわ。

個室を暗めの照明にしてるけど、MAXまで明るくする。少しでも印象に残らないように、風俗店ぽさを消したい。

清水くん相手にサービスはできないし。恥ずかしい。たった30分だし、なんとかごまかそう。

プルルル、とまた鳴る。

「はい」

「シュウちゃん、お願いしまーす」

「はーい」

大丈夫だよね、高橋も片橋くんもさくらも、清水くんは酔うと完全に記憶失くすって言ってたもんね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。

雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎ ——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。 ※連載当時のものです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

処理中です...