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シュウと柊
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終電を考慮すると、あと10分かしら。それくらいでお客さんにつかなきゃ終電に間に合わないかもしれなくなるわね。
指名で来てくれるお客さんはひとりしか期待できないからないだろうけど、写真指名でも入らないともう帰るだけかな。
土曜日の夜はお客さんも多いけど出勤してる女の子も多い。指名のないお客さんは、フロントで順番に割り当てられる。
今日は土曜日なのに私は暇だったなあ……。これじゃあ明日、ケイ様のご尊顔を拝見になんて行けない。明日もバイトだわ。女の子が少ないオープンから入ろ。
私は風俗店やんちゃなタイガーでお客さんが来るまでの待機時間を休憩室じゃなくて自分の個室で過ごす。休憩室で楽しそうにおしゃべりしてる女の子達は、私よりもかなり若そうなんだもの。
お客さんが順番を待つ部屋にある漫画をお客さんがいない隙にごっそり個室に持ち込んで読み続けてた。こち亀50巻越えたから、あと半分くらいなのかしら。100巻を越えてるのは知ってるけど、何巻あるんだろう? 延々読み続けられる巻数並んでたわ。
プルルル、と受話器が鳴る。あら、最後に稼ぎをもたらしてくれるかしら。
「シュウちゃん、モニター見てー」
「はーい」
私みたいな前職スナック程度で知り合いなんて来ない。だって、この店高いもの。一応形式としてモニターを見るだけで、知ってる人なんて映ったことがない。
と、思ってたのに。
「高橋?!」
高橋だ。かなり酔ってそうにフラフラしてるけど、高橋だわ。こんな高い店に来るんだ? 今週は大変だったから、自分へのご褒美って感じかしら。
「シュウちゃん、知り合い?」
「絶対写真見せないで下さい!」
入店してからさほど間もない上に週末だけの出勤の私は写真指名用の写真はポラロイドで簡易的に撮っている。絶対、見せないで!
モニターには、受付のフロントの様子が粗い盗撮レベルの画像ながら映っている。
「了解ですー、他の子についてもらうねー」
「お願いしま――清水くん?!」
フラフラ揺れる高橋の手前を、よろけたのか清水くんが横切った気がする。
「待って! この人の連れの人……」
「知り合い?」
画像が粗いけど、高橋が笑いながら支えてなんとか立ってる様子の人は、たぶん完全に清水くんだ。
「他の子についてもらうから大丈夫ー。シュウちゃん、もう上がっていいよー」
他の子?! え、他の女の子が清水くんにこの店のサービスを施すの?!
「ダメ! 私がつく! この連れの人、酔ってるように見えますか?」
「かーなーり酔ってるね。お断りしようか迷うレベル」
「じゃあ、私つきます!」
「先にもうひとりの人から案内するから、ちょっと待ってて」
「はい」
酔ってるなら、清水くんの記憶には残らない。明日目覚めたら全てを忘れてるはずだわ。
個室を暗めの照明にしてるけど、MAXまで明るくする。少しでも印象に残らないように、風俗店ぽさを消したい。
清水くん相手にサービスはできないし。恥ずかしい。たった30分だし、なんとかごまかそう。
プルルル、とまた鳴る。
「はい」
「シュウちゃん、お願いしまーす」
「はーい」
大丈夫だよね、高橋も片橋くんもさくらも、清水くんは酔うと完全に記憶失くすって言ってたもんね。
指名で来てくれるお客さんはひとりしか期待できないからないだろうけど、写真指名でも入らないともう帰るだけかな。
土曜日の夜はお客さんも多いけど出勤してる女の子も多い。指名のないお客さんは、フロントで順番に割り当てられる。
今日は土曜日なのに私は暇だったなあ……。これじゃあ明日、ケイ様のご尊顔を拝見になんて行けない。明日もバイトだわ。女の子が少ないオープンから入ろ。
私は風俗店やんちゃなタイガーでお客さんが来るまでの待機時間を休憩室じゃなくて自分の個室で過ごす。休憩室で楽しそうにおしゃべりしてる女の子達は、私よりもかなり若そうなんだもの。
お客さんが順番を待つ部屋にある漫画をお客さんがいない隙にごっそり個室に持ち込んで読み続けてた。こち亀50巻越えたから、あと半分くらいなのかしら。100巻を越えてるのは知ってるけど、何巻あるんだろう? 延々読み続けられる巻数並んでたわ。
プルルル、と受話器が鳴る。あら、最後に稼ぎをもたらしてくれるかしら。
「シュウちゃん、モニター見てー」
「はーい」
私みたいな前職スナック程度で知り合いなんて来ない。だって、この店高いもの。一応形式としてモニターを見るだけで、知ってる人なんて映ったことがない。
と、思ってたのに。
「高橋?!」
高橋だ。かなり酔ってそうにフラフラしてるけど、高橋だわ。こんな高い店に来るんだ? 今週は大変だったから、自分へのご褒美って感じかしら。
「シュウちゃん、知り合い?」
「絶対写真見せないで下さい!」
入店してからさほど間もない上に週末だけの出勤の私は写真指名用の写真はポラロイドで簡易的に撮っている。絶対、見せないで!
モニターには、受付のフロントの様子が粗い盗撮レベルの画像ながら映っている。
「了解ですー、他の子についてもらうねー」
「お願いしま――清水くん?!」
フラフラ揺れる高橋の手前を、よろけたのか清水くんが横切った気がする。
「待って! この人の連れの人……」
「知り合い?」
画像が粗いけど、高橋が笑いながら支えてなんとか立ってる様子の人は、たぶん完全に清水くんだ。
「他の子についてもらうから大丈夫ー。シュウちゃん、もう上がっていいよー」
他の子?! え、他の女の子が清水くんにこの店のサービスを施すの?!
「ダメ! 私がつく! この連れの人、酔ってるように見えますか?」
「かーなーり酔ってるね。お断りしようか迷うレベル」
「じゃあ、私つきます!」
「先にもうひとりの人から案内するから、ちょっと待ってて」
「はい」
酔ってるなら、清水くんの記憶には残らない。明日目覚めたら全てを忘れてるはずだわ。
個室を暗めの照明にしてるけど、MAXまで明るくする。少しでも印象に残らないように、風俗店ぽさを消したい。
清水くん相手にサービスはできないし。恥ずかしい。たった30分だし、なんとかごまかそう。
プルルル、とまた鳴る。
「はい」
「シュウちゃん、お願いしまーす」
「はーい」
大丈夫だよね、高橋も片橋くんもさくらも、清水くんは酔うと完全に記憶失くすって言ってたもんね。
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