36 / 99
シュウと柊
05
しおりを挟む
おなか空いたなあ、と思ったら、注文してたシーザーサラダとお刺身盛り合わせが来た。冷メニューはやっぱり早いわね。テーブルの真ん中に置かれたから、何となく私がサラダを取り分けていく。まずは、部長の頼野さんへ。あとは似たり寄ったりだから、そのまま流れで片橋くん、さくら、高橋、清水くん……。
あ。卵崩すの忘れてた。シーザーサラダと言えば温玉なのに、ここまでよそってきたけどみんなシーザードレッシングがかかってるだけのただのサラダだわ。
手に持ってる清水くんの取り皿に温泉卵を入れる。従順でワンコかわいい清水くんのことだから、彼女が卵好きなら卵を譲ってあげてたんじゃないかしら。
「はい、清水くん」
「ありがとうございます」
「茉悠ちゃん、入れてもらって文句言うのもアレなんだけどさ、これシーザードレッシングかかってるだけのただのサラダなんだけど」
あ、さくらに気付かれた。
「私もだよ。あ、クルトンも入ってる。シーザーサラダっぽいよね」
清水くんが戸惑った様子で二口三口くらい食べた自分の取り皿を「あの」と見せて来る。
「彼女と別れていいこともあるよ。シーザーサラダの温玉食べられるし」
シーザーサラダには温玉だよ。
「あ……はい、すごく美味しいです。ありがとうございます」
良かった。清水くんが嬉しそうに笑った。ね、美味しいでしょう。シーザーサラダにはやっぱり温玉だよ。
「もしかしてお前ずっと清水を励ましてるつもりだったの? 励まし方が独特過ぎるんだよ。気ぃ悪くしないでやってくれな、清水。水城も悪気はねえんだよ」
さっきから何なのかしら高橋め。私の保護者気取りか。私に保護者なんていないのに。
「茉悠ちゃん、そんなに心配しなくても清水案外ケロッとしたものだよ。付き合い長かったから私達も心配になってこの間飲みに行ったんだけどさ。いつも通り名前の話してたよ」
「いつも通り?」
「あー、俺も何度も聞いた。水城の名前天然話だろ」
高橋が私の顔を見る。私の名前天然話? ……ああ、シミズって書いてキヨミズって読むなんて名前まで天然だねって言っちゃった話か。みんなも聞いてるんだ? ただ名前を間違えて覚えてたってだけの、そんな大した話でもないのに?
清水くんは、なんでそんな話をあちこちでしてるんだろう?
「あ、そうだ茉悠さん」
清水くんがお箸を置いてこちらを見る。何かしら。
「彼女彼女って言うけど、元彼女です」
と元を強調して言った。
「元……だと思ってるの?」
「事実、元ですから」
笑顔で清水くんは話してる。事実はそうかもしれないけど……
「清水くん、何かあったの?」
と頼野さんが尋ねると、
「長年付き合ってた彼女と別れちゃったんですよ。何年付き合ってたんだっけ?」
とさくらが清水くんに尋ねた。
「えーと……7~8年くらい」
「そんな長いこと付き合ってたの?!」
頼野さんが驚いた。
「長すぎる春ってやつかねえ。それだけ付き合い長いと、結婚とかって話出なかったの?」
「相手がまだ就職して間もなかったんで」
「まあ結婚はタイミングだからね。その人とはご縁がなかったってことだよ。若いんだから次行こ、次」
頼野さんが明るく笑い飛ばす。さすがは頼野さん、励ますのも上手いなあ。前向きなアドバイスよね。
次かあ……。考えられるようになったらいいな、清水くん。
あ。卵崩すの忘れてた。シーザーサラダと言えば温玉なのに、ここまでよそってきたけどみんなシーザードレッシングがかかってるだけのただのサラダだわ。
手に持ってる清水くんの取り皿に温泉卵を入れる。従順でワンコかわいい清水くんのことだから、彼女が卵好きなら卵を譲ってあげてたんじゃないかしら。
「はい、清水くん」
「ありがとうございます」
「茉悠ちゃん、入れてもらって文句言うのもアレなんだけどさ、これシーザードレッシングかかってるだけのただのサラダなんだけど」
あ、さくらに気付かれた。
「私もだよ。あ、クルトンも入ってる。シーザーサラダっぽいよね」
清水くんが戸惑った様子で二口三口くらい食べた自分の取り皿を「あの」と見せて来る。
「彼女と別れていいこともあるよ。シーザーサラダの温玉食べられるし」
シーザーサラダには温玉だよ。
「あ……はい、すごく美味しいです。ありがとうございます」
良かった。清水くんが嬉しそうに笑った。ね、美味しいでしょう。シーザーサラダにはやっぱり温玉だよ。
「もしかしてお前ずっと清水を励ましてるつもりだったの? 励まし方が独特過ぎるんだよ。気ぃ悪くしないでやってくれな、清水。水城も悪気はねえんだよ」
さっきから何なのかしら高橋め。私の保護者気取りか。私に保護者なんていないのに。
「茉悠ちゃん、そんなに心配しなくても清水案外ケロッとしたものだよ。付き合い長かったから私達も心配になってこの間飲みに行ったんだけどさ。いつも通り名前の話してたよ」
「いつも通り?」
「あー、俺も何度も聞いた。水城の名前天然話だろ」
高橋が私の顔を見る。私の名前天然話? ……ああ、シミズって書いてキヨミズって読むなんて名前まで天然だねって言っちゃった話か。みんなも聞いてるんだ? ただ名前を間違えて覚えてたってだけの、そんな大した話でもないのに?
清水くんは、なんでそんな話をあちこちでしてるんだろう?
「あ、そうだ茉悠さん」
清水くんがお箸を置いてこちらを見る。何かしら。
「彼女彼女って言うけど、元彼女です」
と元を強調して言った。
「元……だと思ってるの?」
「事実、元ですから」
笑顔で清水くんは話してる。事実はそうかもしれないけど……
「清水くん、何かあったの?」
と頼野さんが尋ねると、
「長年付き合ってた彼女と別れちゃったんですよ。何年付き合ってたんだっけ?」
とさくらが清水くんに尋ねた。
「えーと……7~8年くらい」
「そんな長いこと付き合ってたの?!」
頼野さんが驚いた。
「長すぎる春ってやつかねえ。それだけ付き合い長いと、結婚とかって話出なかったの?」
「相手がまだ就職して間もなかったんで」
「まあ結婚はタイミングだからね。その人とはご縁がなかったってことだよ。若いんだから次行こ、次」
頼野さんが明るく笑い飛ばす。さすがは頼野さん、励ますのも上手いなあ。前向きなアドバイスよね。
次かあ……。考えられるようになったらいいな、清水くん。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
推活♡指南〜秘密持ちVtuberはスパダリ社長の溺愛にほだされる〜
湊未来
恋愛
「同じファンとして、推し活に協力してくれ!」
「はっ?」
突然呼び出された社長室。総務課の地味メガネこと『清瀬穂花(きよせほのか)』は、困惑していた。今朝落とした自分のマスコットを握りしめ、頭を下げる美丈夫『一色颯真(いっしきそうま)』からの突然の申し出に。
しかも、彼は穂花の分身『Vチューバー花音』のコアなファンだった。
モデル顔負けのイケメン社長がヲタクで、自分のファン!?
素性がバレる訳にはいかない。絶対に……
自分の分身であるVチューバーを推すファンに、推し活指南しなければならなくなった地味メガネOLと、並々ならぬ愛を『推し』に注ぐイケメンヲタク社長とのハートフルラブコメディ。
果たして、イケメンヲタク社長は無事に『推し』を手に入れる事が出来るのか。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる