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ミズキさんに覚えてほしい

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やっと長かった机上講習を終えた。高橋さんと客先に顔見せのあいさつに回る。

「新しく営業担当となります、清水です。よろしくお願いします」

横溝ヨコミゾです。よろしくお願いします」

ほおー、これが、名刺交換! 社会人って感じするなあ。働く男だー。

客先を出たら、同行してくれている高橋さんに

「清水やっぱ、名刺にフリガナ入れた方がいいな。忘れないうちに頼野さんに電話して頼んどけ」

と言われた。

「あ、はい」

キヨミズですって言って名刺を渡したのに、横溝さんは名刺の清水 柊の文字を見て

「シミズ……シュウかな? 若い子の名前って感じだねえ」

と優しく微笑んでいた。悪気のない間違いを産んでしまうな、たしかに。とても気まずかった。

総務の番号に電話を掛ける。出先から連絡するのも初めてだ。清水ですって言って分かるかな? 電話に出た人が新人の俺の事を覚えているだろうか。あ、出た。

「お疲れ様です、清水です。頼野さん、お手隙ですか?」

「も―――し訳ございません、ただ今席を外しておりまして」

すんげー申し訳なさそうに言うな、この人! 逆にびっくりした!

「あ、いえ、じゃあいいです」

「戻りましたら折り返し電話してもらいましょうか?」

「ああ……じゃあ、お願いします」

「かしこまりました。承りましたー」

「よろしくお願いします。失礼ですがお名前を伺ってもよろしいですか」

「あ、はい。水城と申します」

「あ。あ、よろしくお願いします。失礼します」

「失礼します」

……そうだ、俺自社に掛けてたんだった。余りの丁寧さに客先かと錯覚して名前確認しちゃったよ。

水城さん……俺みたいな新人にも、あんなにも丁寧に対応してくれるんだ。いい人だなあ。
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