キヨミズくんを酔わせたい

ミズキさんに覚えてほしい

03

水城さんについて行って、広い会議室のような部屋に通された。長いテーブルを端に寄せてスペースを確保したようだ。すでに20人くらいのスーツの人や事務服を着てる人、私服っぽい人もいる。何人かずつ固まってグループになってるっぽい。

うわ……緊張してきた。

「ちょっと早いけど、揃ったから始める？」

と50代くらいかな？ そこそこ年いってそうな男性が少し離れた所に立つやや中年太りなようで筋肉質なのかもしれない髭を整えた風格あるおじさんに尋ねる。

「そうだねー。ただ時間来るまで待つのも時間の無駄だよね」

風格あるおじさんの話し方と声には風格ないな。見た目にはあの人が社長かな？ と思ったんだけど。

「じゃあ、3人こっちに来てくれる？ 申し訳ないけどこの時期って繁忙期でみんな仕事しないといけないから、簡単に紹介させてね」

「あ、はい」

この人が社長なのかな？ 穏やかで優しそうながら、この人について行きたい！ と思わせるカリスマ性があるような気がする。見た目にも小柄ながら引き締まった体に若い頃はイケメンだったんだろうけど今は大人の渋さを感じさせる顔。声が渋くてかっこいいのもいいな。好きな声だ。どうせ年取るならこんなおじさんになりたいもんだねえ。

カリスマおじさんと風格あるおじさんの間に我ら新入社員が挟まれた形になる。

「頼野ヨリノくーん。よろしくー」

とカリスマおじさんが水城さんのいるグループに向かって呼び掛けた。

「あ！ はーい！ じゃあ、よろしくね」

とこれまた50代くらいそうな体の大きなおじさんが水城さんに言って、カリスマおじさんの隣に立った。俺もしかするとおじさんはみんな50代くらいに見えるのかもしれないな。水城さんは会議室を出て行ってしまう。

あ……出てっちゃうんだ。俺の名前、ちゃんと聞いてほしかったな。