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キヨミズくんを酔わせたい

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「私こんな高いお店で働けないです。クレーム来そうで怖いし、リアちゃんみたいな子の後で私なんかが出てきたら100%クレームだし」

高収入バイト専門サイトをめちゃくちゃ読み込んで来た私は、いくら風俗と言えどもこのお店の値段が高いのは察する。いくら日本有数の歓楽街である天神森でも、もっと安いお店はいくらでもあった。私なんて、最安値のお店じゃなきゃクレームが来そうで怖い。

「風俗初めてなんでしょ? うちみたいな高い店の方が安心だよ。安い店は客層が悪いし若い客も多いから度を超えた要求して来る客もうちより多いよ。そんな女の子を使い捨てする勢いの安い店じゃ守ってもらえないよ。うちはうちのルールを守れないなら来てもらわなくて構わないって強気でやってるから」

……使い捨て?! なんて怖い響き……!

「シュウちゃん、いいよー。出て来てー」

と健太さんの声がした。はい、と出て行こうとしたら、

「うち、今大学生に偏ってるから社会人貴重なんだよね」

と、中條さんが言った。本当に、私みたいな普通の社会人が必要とされるのかしら? あんなにかわいい子のいる店で。

「そんなに心配しなくてもさ、リアは予約で即埋まるからフリーの客につくことなんてないよ。リアの客につくことがあったらリアが好みじゃない客だったってことだし」

あのリアちゃんが好みじゃない人なんているの? もしもいるなら、それなら対極にいる私でもいいのかもしれない。

バイトしなければ今の生活を維持できない……私は、その言葉を信じて入店を決めた。



翌日―――眠い。超眠い。平日に夜中まで風俗なんて働くものじゃない。これ、もう無理。一旦、寝た方が後のパフォーマンスが上がるな。

仕事してても驚く程のパワーで睡魔が襲って来る。トイレに行き、便座の蓋を下ろしたまま座りスマホで10分タイマーを仕掛ける。10分寝たら、きっとスッキリ爽やかに仕事できるだろう。あー、気兼ねなく目を閉じられる個室にいるのに、それはそれでなぜか入眠できない。

でも、まだマシに違いない。この、超眠いだけの今よりは確実に。

10分だけ、寝よう―――
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