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誕生日プレゼント

眠れない夜に

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暗い部屋の中、魁十が手を伸ばすから脇に挟んでいた手が温もりを失って薄っすら寒く感じる。

「マジか。もうすぐ12時だよ」

まだ頭がボーッとしてる……。

スマホを置いて肩まで布団を引き上げた魁十が寝返りを打つように反転するから、ベッドがギシッと鳴る。
魁十の腕が私の背中へと回ってくる。

「痛い所ない?」
「大丈夫。心配しすぎ」
「そりゃ心配だよ。俺の体じゃねえんだもん」

ふふっと笑ってしまう。
心配だからものすごく時間かけてくれたんだ。感動。

めちゃくちゃ優しくて、愛されてる実感……河合さんのお母さんが感じた幸せって、きっとこれのことなんだと思う。

「ん? 12時? あ! カイ、お誕生日おめでとう!」
「滑り込みセ――フ」
「あっぶない。言い忘れるところだった」
「ひでえ話」

朝も寝坊しちゃってバタバタしてて、昨日まであんなに魁十の誕生日誕生日って考えてたのにすっかり忘れて家を出てしまった。
魁十も言ってくれたらいいのに言わないし。

帰って来てからはコース料理作りに夢中で、そう言えばおめでとうを言ってなかった。
ほんと、ひどい話。

「ママにはどうする? いつ付き合ってるって言う?」
「明日メシ行くじゃん。その時に言おうと思ってる」
「すぐ言うね」
「言いたくてしょうがないんだもん。俺今めっちゃ幸せ。大好き」

かわいい!
オオカミどころか犬がじゃれつくみたいに嬉しそうに抱きついてくる魁十がかわいすぎる!

「散々父さんとイチャついてんの見せつけられたから、今度は見せつけてやろうと思って」
「ビックリするだろうね。反対されたりしないかな」
「あの母さんがしないと思うよ。それに婚約済だから反対しても無駄」

私の左手に指を絡ませて微笑む。
魁十、暗いから電気付けてもう1回笑ってもらっていいかな。

「ゆうて現実、結婚できるのはだいぶ先だけど」
「学生さんだもんね」
「他の男に取られるの嫌だから、公式予約」
「公式?」
「だろ? 婚約って」

なるほど、婚約の約は予約の約。

「指輪買いに行った時にさ、隣にこのブランドあったわ」

腕を伸ばして、大輝くんからもらったブレスレットをシャラシャラと鳴らす。
カッコいいー。上裸にアクセ、エロい。

「婚約指輪よりかなりハイブランド贈ってくるとかあいつマジキモい」
「謎の対抗意識かな」
「金持ってる自慢じゃね」
「あの人お金ないよ」

これ買ったお金もきっとちょうだいってもらったお金だよ。

「思い出さないで。俺のことだけ考えててよ」
「かっ……カイが話振ったんじゃない」

かわいい! 至近距離の上目遣いヤバい。かわって叫びそうになった。

「おやすみ」
「おやすみ……」

魁十の寝息がスゥスゥと聞こえ始めても、私は目が冴えていた。
寝息を感じるこの距離。

明日の朝のことを思うと……目覚めたら魁十がいる。信じられない、何その幸せ。即テンション上がって抜群にいい目覚めになる。
絶対に先に起きたいと思えば思うほど、ギラギラに眠れなくなってしまった。
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