76 / 86
誕生日プレゼント
婚約発表
しおりを挟む
食堂にて、なっちゃんが芸能人の結婚会見かのように左手を見せた。
その薬指には、緩やかな流線型に並んだ小さな石が輝くリング……?
「わたくし厚木夏菜は、遠藤智樹さんと婚約いたしました」
「ええええええええええ」
「この度新しい命を授かり」
「ええええええええええ」
「彼に婿養子に入ってもらうので苗字は変わりませんが」
「ええええええええええ」
「産休育休後も変わらずご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
「ぎゃああああああああ」
まじでか?!
なっちゃん?!
私だけでなく、朝倉さんと河合さんもキャラにない奇声を上げる。
今私たち3人の一体感は野外ライブ級。ここ会社3階の食堂だけど。
「赤ちゃん……いるの? おなかに?」
「はい。まだ2ヵ月なんで産休の手続きするには早すぎるらしいんですけど、みんなには先にご報告いたしたくて」
語尾にハート付いてそうな言い方。
「展開早っや。避妊はしなさい」
「ごめんなさい、つい。だってムード壊したくないんだもん」
「元は男友達だから言いたいこと言えて楽なんじゃなかったの」
「それとこれは別だよ。友達の時はそんなムードになることないじゃないですか」
「なるほど」
妙に納得してしまった。
「でも、望まない妊娠じゃないんで。子供3人は欲しいねって話してたし」
「同級生だったら相手もハタチでしょ? 彼、なっちゃんと子供養えるの?」
「婿養子に入って同居するなら親が面倒見てくれるって」
「ええええええええええ」
一番ビックリしたかもしれない。
新婚スタートから相手の親と同居って、彼はそれでいいのだろうか。
「だって、私料理できないし掃除もママ任せだし早起きできないからお見送りもできないだろうし、私と二人で暮らすより同居の方がいいと思う」
「できるようになろうとは思わないんだ」
ニコッと笑顔でなっちゃんがうなずく。いっそ潔し。
「朝倉さんは料理で年下男子の胃袋掴むところからがスタートですもんね」
「むしろ料理振舞えばゴールね。100落ちる」
「100! 何作るの?」
「チョロいところもかわいいの。10代には肉じゃがよりカレーとかオムライスだね」
「なんかカワイイ~」
「彼氏ちゃんにはお弁当作ったら感動された」
「20代は?! 大人には何を作れば100落ちますか?!」
「専門外」
河合さんがションボリしてしまう。
年下男子専門家朝倉さんは優雅にお茶を飲みなさる。
「大学生もカレーとかオムライス喜びますかね」
「魁十くんの好き嫌いなんて一番把握してるんじゃないの?」
「してるけど、誕生日だから特別感ほしいかなって思ったら何作ったらいいのか」
「料理は愛情よ、遠山さん。卵かけごはんがいいんじゃないかな」
「そうだね。ケガするとしても卵の殻で指を刺す程度で済むし」
「せっかくの誕生日に流血騒ぎは萎えますもんね」
卵かけごはんは料理じゃない!
絶対みんなふざけてる……。
「盛り上がってるね。何の話?」
「難波さん! 誕生日に手料理作ってもらうなら何がいいですか?!」
なんちゅータイミングで現れるかな。
結構年上だけど、この際しょうがない、魁十と同じ20代の大輝くん浜崎さんの意見も聞いておくか。
「大輝、誕生日にコース料理作ってもらったことあったよな。インパクトあったから覚えてるわ。最後にデザートはわ・た・し、つって」
「あれは嬉しかった。感動した。22歳の誕生日だったかな」
クズの大輝くんでも感動?!
しかも、22歳の誕生日、おまけにスムーズに私という誕プレをあげる流れまで作れる!
「コース料理しかない!」
「やめときなよー。キッチンがぐちゃぐちゃになる未来しか見えないよ」
「料理は愛情でしょ? 愛情があれば、料理は生まれる!」
「作らなきゃ生まれないって」
ただ、コース料理を準備するには時間がない!
午後から私は、仕事そっちのけで必死にレシピ検索をし、買い物メモを作成した。
その薬指には、緩やかな流線型に並んだ小さな石が輝くリング……?
「わたくし厚木夏菜は、遠藤智樹さんと婚約いたしました」
「ええええええええええ」
「この度新しい命を授かり」
「ええええええええええ」
「彼に婿養子に入ってもらうので苗字は変わりませんが」
「ええええええええええ」
「産休育休後も変わらずご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
「ぎゃああああああああ」
まじでか?!
なっちゃん?!
私だけでなく、朝倉さんと河合さんもキャラにない奇声を上げる。
今私たち3人の一体感は野外ライブ級。ここ会社3階の食堂だけど。
「赤ちゃん……いるの? おなかに?」
「はい。まだ2ヵ月なんで産休の手続きするには早すぎるらしいんですけど、みんなには先にご報告いたしたくて」
語尾にハート付いてそうな言い方。
「展開早っや。避妊はしなさい」
「ごめんなさい、つい。だってムード壊したくないんだもん」
「元は男友達だから言いたいこと言えて楽なんじゃなかったの」
「それとこれは別だよ。友達の時はそんなムードになることないじゃないですか」
「なるほど」
妙に納得してしまった。
「でも、望まない妊娠じゃないんで。子供3人は欲しいねって話してたし」
「同級生だったら相手もハタチでしょ? 彼、なっちゃんと子供養えるの?」
「婿養子に入って同居するなら親が面倒見てくれるって」
「ええええええええええ」
一番ビックリしたかもしれない。
新婚スタートから相手の親と同居って、彼はそれでいいのだろうか。
「だって、私料理できないし掃除もママ任せだし早起きできないからお見送りもできないだろうし、私と二人で暮らすより同居の方がいいと思う」
「できるようになろうとは思わないんだ」
ニコッと笑顔でなっちゃんがうなずく。いっそ潔し。
「朝倉さんは料理で年下男子の胃袋掴むところからがスタートですもんね」
「むしろ料理振舞えばゴールね。100落ちる」
「100! 何作るの?」
「チョロいところもかわいいの。10代には肉じゃがよりカレーとかオムライスだね」
「なんかカワイイ~」
「彼氏ちゃんにはお弁当作ったら感動された」
「20代は?! 大人には何を作れば100落ちますか?!」
「専門外」
河合さんがションボリしてしまう。
年下男子専門家朝倉さんは優雅にお茶を飲みなさる。
「大学生もカレーとかオムライス喜びますかね」
「魁十くんの好き嫌いなんて一番把握してるんじゃないの?」
「してるけど、誕生日だから特別感ほしいかなって思ったら何作ったらいいのか」
「料理は愛情よ、遠山さん。卵かけごはんがいいんじゃないかな」
「そうだね。ケガするとしても卵の殻で指を刺す程度で済むし」
「せっかくの誕生日に流血騒ぎは萎えますもんね」
卵かけごはんは料理じゃない!
絶対みんなふざけてる……。
「盛り上がってるね。何の話?」
「難波さん! 誕生日に手料理作ってもらうなら何がいいですか?!」
なんちゅータイミングで現れるかな。
結構年上だけど、この際しょうがない、魁十と同じ20代の大輝くん浜崎さんの意見も聞いておくか。
「大輝、誕生日にコース料理作ってもらったことあったよな。インパクトあったから覚えてるわ。最後にデザートはわ・た・し、つって」
「あれは嬉しかった。感動した。22歳の誕生日だったかな」
クズの大輝くんでも感動?!
しかも、22歳の誕生日、おまけにスムーズに私という誕プレをあげる流れまで作れる!
「コース料理しかない!」
「やめときなよー。キッチンがぐちゃぐちゃになる未来しか見えないよ」
「料理は愛情でしょ? 愛情があれば、料理は生まれる!」
「作らなきゃ生まれないって」
ただ、コース料理を準備するには時間がない!
午後から私は、仕事そっちのけで必死にレシピ検索をし、買い物メモを作成した。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
私の好きなひとは、私の親友と付き合うそうです。失恋ついでにネイルサロンに行ってみたら、生まれ変わったみたいに幸せになりました。
石河 翠
恋愛
長年好きだった片思い相手を、あっさり親友にとられた主人公。
失恋して落ち込んでいた彼女は、偶然の出会いにより、ネイルサロンに足を踏み入れる。
ネイルの力により、前向きになる主人公。さらにイケメン店長とやりとりを重ねるうち、少しずつ自分の気持ちを周囲に伝えていけるようになる。やがて、親友との決別を経て、店長への気持ちを自覚する。
店長との約束を守るためにも、自分の気持ちに正直でありたい。フラれる覚悟で店長に告白をすると、思いがけず甘いキスが返ってきて……。
自分に自信が持てない不器用で真面目なヒロインと、ヒロインに一目惚れしていた、実は執着心の高いヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、エブリスタ及び小説家になろうにも投稿しております。
扉絵はphoto ACさまよりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる