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誕生日プレゼント

誕生日前夜

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明日は遠山魁十22歳の誕生日。

そして、誕生日プレゼントにリクエストされたのは、遠山紗夜。

……それって、そういうことだよね。
いくらかわいくたって魁十だって男の子だもん。

私の誕生日にプレゼントは僕だよ
より100倍理解できる。

魁十がお風呂から上がり、上裸の肩にタオルを掛けてリビングに入ってくる。

「カイ、シャツくらい着たら」
「まだ暑ちい」

いつもそう。魁十はお風呂上りはしばらく上裸。
しばらくしたら部屋着を着る。

いつもそうなのに、なんでドキドキしちゃうかなあ。
意識しすぎて私がヤバい人じゃん。

「ねえ、明日本当に外食じゃなくていいの? クラシックの生演奏聴きながらおいしいごはん食べられるレストランもあるんだよ」
「紗夜の誕生日に大輝に連れてかれたレストランの話じゃねえよな」
「うん、そう」

やっとシャツを着たから魁十を直視できる。
彼は何やら不満げなジト目で睨んでくる。

「デリカシーねえよな。俺、大輝どころか未だに高鷺にも嫉妬してるのに」
「嫉妬?! カイが?!」

自分で言っておいてカーッと赤くなる魁十がブラックホール級にかわいい。

「高鷺なんて嫉妬要素ゼロじゃない?! 1回だけ映画デートした程度だよ?」
「紗夜の最初の彼氏にはもう俺なれないじゃん」

あの魁十がこんなこと言うなんて……かわいい見た目とは正反対の塩対応に慣れすぎていた私には最早、毒。

「最後の彼氏にはなれるよ。てゆうか、絶対に魁十が最後の彼氏」
「やったあ、マジで?」
「マジで!」
「明日、紗夜がごはん作ってくれる?」
「う……うん、作るよ……」

このタイミングで、しかも破壊力鬼な笑顔でぶっこむかー……。
うん、としか言えないじゃん。

私が料理苦手なのを誰よりも知っていて、よりによって魁十の誕生日におうちデートで手作りごはん。
魁十こそ真正のドSじゃないかと思えてくる。

ずっとおうちでまったりか……カレンダーを確認すると、10月20日は夜の字を〇で囲まれている。

「母さんは夜勤だね」
「べっ、別に夜勤の確認をしたわけでは」
「紗夜。忘れられない誕生日にしてね」
「が……がんばります!」
「何を?」
「えっ……」
「メシ作りじゃねえの」
「そっ……そうだよ! 料理をがんばる! お風呂行ってくる!」

もー、魁十のからかいムーブさっさと終わって!

魁十の誕生日は明日なのに、明日だけじゃ洗いもれがあるかもとか心配になっちゃってめちゃくちゃ丁寧に髪も体も洗ってしまう。
期待してるみたいで嫌だこれもう恥ずかし……。
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