うちの弟がかわいすぎてヤバい無理！

人の恋路を邪魔するやつは

反省。やらかしました。

ニットでひらめいた。
クローゼットをあさり、失敗した買い物を探し出して青い紙袋に入れる。


「遠山さん……これは、どういう……？」

戸惑う河合さんにプレゼントフォーユー。
Vネックニットが欲しくて買ったけど、私にはVが深すぎてまるで痴女みたいになってしまった白いニットをブラウスの上からかぶせてみた。
ブラウスが見えないように、ニットの中に折り込む。

「かわいい！　いいよ、セクシー」
「セクシー通り越してこれじゃ痴女です」

背は私よりも高いけれど、スレンダーな河合さんが着たら肩までずり落ちそう。
胸まで華奢な河合さんだけど、ここまでVが深ければ胸の存在を確認できる。

河合さんが所属する経営本部は総務部と同じ部屋。
ちょうど大輝くんがやってきた。

「おはよう。紗夜ちゃん何してるの？」
「おはよう、かわいいでしょ！」

河合さんが懸命に胸元を隠しながら真っ赤になる。
うん、リアクションまでかわいいかわいい。

「かわいいね。お母さんの服着た小学生みたいで」

……何か違う。

笑顔で大輝くんが自分の席へと去ると河合さんはニットを脱いで机にバシッと叩きつけた。

「難波さんとはもう別れたんですよね？！　どうして私の邪魔するんですか？！」
「邪魔？　とんでもない、逆だよ。私は応援したくて」
「余計なことしないでください！」

……余計なこと……。

完全に善意だったから、衝撃を受けてしまった。
ケダモノにはセクシーが効くだろうと思っただけなのに……。



「へこんでる人に言うのは適切じゃないとは思うけど、それは大きなお世話だね」
「自分が幸せだからって舞い上がっちゃってるよ。ちゃんと河合さんに謝りなさい」
「はい……」

朝倉さんとなっちゃんからも全否定。
完全に私やっちゃったなあ……。

「だいたいさ、セクシーで攻めるのは難波さんの場合意味ないよ。こっちから攻めなくても好意があると見たら向こうから行為に持ってく人だもん」
「たぶん河合さんにもその打診は絶対あったよね」
「すでにそういう関係ではある可能性もあるし」
「河合さんはそうじゃなくて、本命彼女になりたくてがんばってるわけでしょ」

そっか、手っ取り早く効く方法なんかじゃ、大輝くんの本命にはなれない。
女性の真剣な気持ちすら簡単に容赦なく踏みにじる人だもの。

「私が間違っていました。ごめんなさい」
「改めて、河合さんは難波くんのどこがそんなに好きなんだろうね」
「うん、私なら本命になんてなりたくない」

そうなんだよね。
あんな若くてかわいいだいぶドジっ子だけど性格まで良い子が、なぜ？