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ごまかしはきかない
魅力的なプレゼン
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魁十の鼓動の速さにつられるように私の心臓の音まで速く爆音になっていく。
抱きしめられて、改めて小さかった魁十が大きくなったと感じる。
「……紗夜が幸せなら、俺は弟として見守れればいいと思ってた。だけど、男見る目なさすぎるんだよ。高鷺とは意味分かんないくらいあっさり別れたくせに、あんな男に惚れ込むんだから」
返す言葉がなさすぎて……何も言えない。
「紗夜があの男と別れるのが嬉しくてつい言っちゃって、からかってるフリしてごまかそうと思った。でも、俺もうごまかさない」
「え……何の話?」
「紗夜の周りろくな男いなさそうなんだもん。だから俺が幸せにする。紗夜が好きだって、もう隠さないから」
好きって言葉に心臓が跳ね上がる。
「か……からかって……」
「ない。マジで好き。めっちゃ好き」
「……カイ……」
顔を上げたら、淡々としゃべる魁十が真っ赤になっててビックリした。
……本気で言ってる……。
「で……でも、姉弟だし」
「法的には何も問題ない」
「気持ちの、気持ちの問題。ずっと姉弟できたから」
「俺は父さんや母さんが喜ぶから姉ちゃんって呼んでただけ。家族で過ごす時間がすげえ好きだったから、喜んでほしくて」
魁十も私と同じ気持ちだったんだ。
私も大好きだった。あの幸せが凝縮されたような家族の空気感。
「ずっと心の中では紗夜って呼んでたし」
「たまに出てたよ」
「まじか」
「私も好きだった。家族の時間。あんな空気感の家庭を築くのが夢」
「その夢を叶えるのに俺以上の適任はいないじゃん。俺その空気感知ってるもん」
すごい魅力的なプレゼンに思わず魁十の目を見てしまう。
「お。これ来ただろ、絶対」
「や、あの、でも、気持ち悪くない? 姉弟なのに」
「人にどう思われてもいい。俺は紗夜が好きなの。姉だけど、姉とは思ってない」
「ややこしい……」
「ややこしくしてるのは紗夜だよ。シンプルでいいじゃん。俺のこと好き?」
「大好き」
「でしょ」
真っ赤になりながら嬉しそうに笑う魁十がかわいすぎる。無理。
照れてんのめっちゃかわいい。無理。息するのも忘れる。
「はあっ。死ぬかと思った」
「なんでだよ。今日はまだ帰ってくんの早かったな。また呼び出されるかと思ってた」
「魁十と血が繋がってないって話したら二人とも羨ましがってやさぐれちゃって」
「へ? 羨ましがって? なんで?」
なんか、本人に言うのは恥ずかしい……。
「俺には何でも話す約束だろ」
「あれは姉と弟の約束だから……」
「話してよ、姉ちゃん」
「都合のいい弟だな」
なるべく意識しないように、サラッと、弟に話すだけ、弟に話すだけ。
「義理の弟なんて、絶対最後にはくっつくからイケメンの義理の弟が欲しかったって」
「ナイスアシスト。大好きって言っといて」
「やだ」
朝倉さんもなっちゃんも大喜びするのが目に見えてる。
魁十の好きは私だけのもの。
「紗夜、先風呂入る?」
「うん。なんか変な汗かいちゃったし」
「一緒に入っていい?」
「えっ……ダメ!」
「あはは! なんでー、お姉ちゃあん」
もうごまかさないんなら、からかう必要なくない?!
万が一の時のために、普段はかけない鍵をかけてお風呂に入った。
魁十は来なかったから意味などない。
お風呂……小さい頃に私とママがお風呂に行こうとした時、パパはいなくて、ひとりになりたくないって魁十が泣いたのを思い出す。
その時は魁十の虐待を知らなかったけど、ママに抱きしめられて泣く魁十を見ながら、私が一生この子のそばにいるって決めた。
抱きしめられて、改めて小さかった魁十が大きくなったと感じる。
「……紗夜が幸せなら、俺は弟として見守れればいいと思ってた。だけど、男見る目なさすぎるんだよ。高鷺とは意味分かんないくらいあっさり別れたくせに、あんな男に惚れ込むんだから」
返す言葉がなさすぎて……何も言えない。
「紗夜があの男と別れるのが嬉しくてつい言っちゃって、からかってるフリしてごまかそうと思った。でも、俺もうごまかさない」
「え……何の話?」
「紗夜の周りろくな男いなさそうなんだもん。だから俺が幸せにする。紗夜が好きだって、もう隠さないから」
好きって言葉に心臓が跳ね上がる。
「か……からかって……」
「ない。マジで好き。めっちゃ好き」
「……カイ……」
顔を上げたら、淡々としゃべる魁十が真っ赤になっててビックリした。
……本気で言ってる……。
「で……でも、姉弟だし」
「法的には何も問題ない」
「気持ちの、気持ちの問題。ずっと姉弟できたから」
「俺は父さんや母さんが喜ぶから姉ちゃんって呼んでただけ。家族で過ごす時間がすげえ好きだったから、喜んでほしくて」
魁十も私と同じ気持ちだったんだ。
私も大好きだった。あの幸せが凝縮されたような家族の空気感。
「ずっと心の中では紗夜って呼んでたし」
「たまに出てたよ」
「まじか」
「私も好きだった。家族の時間。あんな空気感の家庭を築くのが夢」
「その夢を叶えるのに俺以上の適任はいないじゃん。俺その空気感知ってるもん」
すごい魅力的なプレゼンに思わず魁十の目を見てしまう。
「お。これ来ただろ、絶対」
「や、あの、でも、気持ち悪くない? 姉弟なのに」
「人にどう思われてもいい。俺は紗夜が好きなの。姉だけど、姉とは思ってない」
「ややこしい……」
「ややこしくしてるのは紗夜だよ。シンプルでいいじゃん。俺のこと好き?」
「大好き」
「でしょ」
真っ赤になりながら嬉しそうに笑う魁十がかわいすぎる。無理。
照れてんのめっちゃかわいい。無理。息するのも忘れる。
「はあっ。死ぬかと思った」
「なんでだよ。今日はまだ帰ってくんの早かったな。また呼び出されるかと思ってた」
「魁十と血が繋がってないって話したら二人とも羨ましがってやさぐれちゃって」
「へ? 羨ましがって? なんで?」
なんか、本人に言うのは恥ずかしい……。
「俺には何でも話す約束だろ」
「あれは姉と弟の約束だから……」
「話してよ、姉ちゃん」
「都合のいい弟だな」
なるべく意識しないように、サラッと、弟に話すだけ、弟に話すだけ。
「義理の弟なんて、絶対最後にはくっつくからイケメンの義理の弟が欲しかったって」
「ナイスアシスト。大好きって言っといて」
「やだ」
朝倉さんもなっちゃんも大喜びするのが目に見えてる。
魁十の好きは私だけのもの。
「紗夜、先風呂入る?」
「うん。なんか変な汗かいちゃったし」
「一緒に入っていい?」
「えっ……ダメ!」
「あはは! なんでー、お姉ちゃあん」
もうごまかさないんなら、からかう必要なくない?!
万が一の時のために、普段はかけない鍵をかけてお風呂に入った。
魁十は来なかったから意味などない。
お風呂……小さい頃に私とママがお風呂に行こうとした時、パパはいなくて、ひとりになりたくないって魁十が泣いたのを思い出す。
その時は魁十の虐待を知らなかったけど、ママに抱きしめられて泣く魁十を見ながら、私が一生この子のそばにいるって決めた。
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