25 / 86
告白バーベキュー
だって弟だから
しおりを挟む
晴れ渡る青空。山の上は空気がいい。
基本的に長袖が好きな魁十は薄手の長袖シャツを着ているけど、袖まくりしている。
なぜか半袖より袖まくりの方が萌える。
「夏菜さん、どうぞ」
「ありがとうございます!」
魁十が肉挟むカチカチさせるやつで肉を紙皿に乗せ、なっちゃん、朝倉さんに手渡す。
「なっちゃんの練習になってなくない? 全部カイがやってる気がする」
「だって、こんなイケメンに肉焼いてもらう機会なんて私の人生で二度とない気がする……」
「こんな奇跡が起こっちゃったら、帰り道で事故って人生終了しそうな気がする……」
「気を引き締めて運転します。はい、姉ちゃん」
「カイの分は私が入れる! それ貸して」
「焼いてる最中にも貸して言えよ。トングな」
炭火焼の肉ってめちゃくちゃおいしい。
すごい、バーベキュー大好き。
「おいしい! カイ、バーベキューも上手いね」
「毎年バイト先でやってるから。しかも毎年ここで」
「私がバイトしてた時は学校の行事と重なっちゃって行けなかったんだよね」
「行事じゃねえ。補習」
「さすが、よく覚えてるね」
「5教科赤点取っといて忘れる姉ちゃんがすげえ」
ほお――……と朝倉さんとなっちゃんが食べるのも忘れて魁十に見入る。
ふふん、うちの弟、最強にかわいいでしょお。
「ジロジロ見ないでください。カイが減る」
「減らないよ! 見るくらい見させてください」
「ほんっとにかわいい……大学生でも全然いける」
「やめて! カイに指一本でも触れたら警察呼びますよ!」
スマホにキーパッドで119と打って見せる。
私は本気ですから!
「こんなにイケメンな弟さんだったら、もういっそ弟と付き合いたくならないものなの?」
付き合う?
弟と?
「朝倉さんの年下好きとは種類が違いますよ。カイは全脊椎動物の中で一番かわいいけど、弟ですから付き合うなんて考えたことないです」
「そうなんだ……ある意味一番可能性ないんだね」
「私たちの方がまだ可能性ありますよ。朝倉さん、どうしましょう」
「ダメ! どうもしません!」
まったく……二人とも好きな人がいるくせに、油断も隙もない。
「この辺でいいんじゃないー」
「焼けたら呼んでー」
この三多良山のバーベキュー場は、山の中腹にある。
ブースに分かれ、肉や野菜などの食材を用意して利用料金を支払うだけで本格炭火バーベキューが楽しめるの人気スポット。
私たちがバーベキューを楽しむすぐ隣に男女のグループがアウトドアベッドを広げだした。
「あんなハレンチなバーベキュー異次元」
「あの人の服、遠山さんが着たら悩殺だね」
アウトドアベッドにショートパンツを履いた二人の女性がビール片手に横たわる。
ひとりはダッフルコートみたいにトグル的な部品ひとつで左右の布地が繋がれている。
胸の谷間から下乳まで丸見えのすごい服。ブラジャーどうなってんだろ。
なっちゃんが言ったのはこの服だろうけど、背中まで肉厚な私が着たらそもそもトグルが届かないから服じゃなく布になる。
ブロロロロロと凄まじい音を立てながら二人乗りのバイクが山道を走り、隣のブースで止まった。
この夏日に革のジャケットで後ろに乗っていた男性がバイクから降りるなり上着を脱いで上裸になる。
革ジャンの下、裸なの?!
背を向けたその人の背中いっぱいに「龍」の字のタトゥー。
漢字……タトゥーって、イラスト? が多いイメージだった。
前で運転していた高身長の男性がフルフェイスのヘルメットを外し、潰れた髪を再生するかのように頭を振った。
基本的に長袖が好きな魁十は薄手の長袖シャツを着ているけど、袖まくりしている。
なぜか半袖より袖まくりの方が萌える。
「夏菜さん、どうぞ」
「ありがとうございます!」
魁十が肉挟むカチカチさせるやつで肉を紙皿に乗せ、なっちゃん、朝倉さんに手渡す。
「なっちゃんの練習になってなくない? 全部カイがやってる気がする」
「だって、こんなイケメンに肉焼いてもらう機会なんて私の人生で二度とない気がする……」
「こんな奇跡が起こっちゃったら、帰り道で事故って人生終了しそうな気がする……」
「気を引き締めて運転します。はい、姉ちゃん」
「カイの分は私が入れる! それ貸して」
「焼いてる最中にも貸して言えよ。トングな」
炭火焼の肉ってめちゃくちゃおいしい。
すごい、バーベキュー大好き。
「おいしい! カイ、バーベキューも上手いね」
「毎年バイト先でやってるから。しかも毎年ここで」
「私がバイトしてた時は学校の行事と重なっちゃって行けなかったんだよね」
「行事じゃねえ。補習」
「さすが、よく覚えてるね」
「5教科赤点取っといて忘れる姉ちゃんがすげえ」
ほお――……と朝倉さんとなっちゃんが食べるのも忘れて魁十に見入る。
ふふん、うちの弟、最強にかわいいでしょお。
「ジロジロ見ないでください。カイが減る」
「減らないよ! 見るくらい見させてください」
「ほんっとにかわいい……大学生でも全然いける」
「やめて! カイに指一本でも触れたら警察呼びますよ!」
スマホにキーパッドで119と打って見せる。
私は本気ですから!
「こんなにイケメンな弟さんだったら、もういっそ弟と付き合いたくならないものなの?」
付き合う?
弟と?
「朝倉さんの年下好きとは種類が違いますよ。カイは全脊椎動物の中で一番かわいいけど、弟ですから付き合うなんて考えたことないです」
「そうなんだ……ある意味一番可能性ないんだね」
「私たちの方がまだ可能性ありますよ。朝倉さん、どうしましょう」
「ダメ! どうもしません!」
まったく……二人とも好きな人がいるくせに、油断も隙もない。
「この辺でいいんじゃないー」
「焼けたら呼んでー」
この三多良山のバーベキュー場は、山の中腹にある。
ブースに分かれ、肉や野菜などの食材を用意して利用料金を支払うだけで本格炭火バーベキューが楽しめるの人気スポット。
私たちがバーベキューを楽しむすぐ隣に男女のグループがアウトドアベッドを広げだした。
「あんなハレンチなバーベキュー異次元」
「あの人の服、遠山さんが着たら悩殺だね」
アウトドアベッドにショートパンツを履いた二人の女性がビール片手に横たわる。
ひとりはダッフルコートみたいにトグル的な部品ひとつで左右の布地が繋がれている。
胸の谷間から下乳まで丸見えのすごい服。ブラジャーどうなってんだろ。
なっちゃんが言ったのはこの服だろうけど、背中まで肉厚な私が着たらそもそもトグルが届かないから服じゃなく布になる。
ブロロロロロと凄まじい音を立てながら二人乗りのバイクが山道を走り、隣のブースで止まった。
この夏日に革のジャケットで後ろに乗っていた男性がバイクから降りるなり上着を脱いで上裸になる。
革ジャンの下、裸なの?!
背を向けたその人の背中いっぱいに「龍」の字のタトゥー。
漢字……タトゥーって、イラスト? が多いイメージだった。
前で運転していた高身長の男性がフルフェイスのヘルメットを外し、潰れた髪を再生するかのように頭を振った。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる