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告白バーベキュー

好きって言ってよ

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はい、やって参りました毎月のお楽しみ、お給料日!
今日はお給料日を祝って、海鮮ものがおいしいと高評価のこじゃれた居酒屋さんにやって来た。

「おいしいー。いくらでも食べられちゃう。いくらだけに」
「ほっぺがトロトロになって落ちそう。トロだけに」
「酒がおいしくて鮭もおいしい。サケだけに」
「できてない、できてない」

あれ? 上手くない?
サーモンのお刺身を食べて、チューハイを飲む。うん、おいしい。

「私がお刺身好きだからって、彼氏ちゃんがこの店見つけてくれたの」
「優しいー。彼氏ちゃんまだ高校生なのにできる男ですねえ」
「高校生にお酒飲ませちゃダメですよ、朝倉さん」
「飲ませてないよ。彼氏ちゃんはジュース」
「朝倉さんは飲むの?」
「飲むよ」
「シラフの人いると飲みづらくない?」
「彼氏ちゃんにはそんな気使わないよー」

なぜか、あはは、と笑う朝倉さんがすごく幸せそうに見える。

「いいなあ。彼氏ちゃんって好きとかめっちゃ言いますよね」
「朝倉さんの捏造でなければ」
「捏造じゃないです!」
「私も好きって言われたい」
「もちろん難波さんにでしょ」
「もちろんですー」

うわあ、絶対今の語尾にハート付いてる。間違いない。

「素直に好きって言ってくれるのはすごく嬉しい。大人の男の人ってあまり言わないよね。私の元カレだけかな」
「成人男性と付き合ったことあるんだ」
「そりゃね。私にも年上がいいと思ってた時代がありました。でも、年上の男の人って絶対好きって言わなくなるの。言わなくても分かるのが美学、みたいな」
「分かるくらい態度で示すわけでもないくせにね。分かるかっての」
「不安になるだけ」

へえ……。
入っていけない会話になってきた。恋愛経験がなさすぎて、むり。

私が好きって言ってほしいのは魁十だもん。
私ばっかり好き好き言ってて、平等性に欠けてると思うの。でもかわいいからつい言っちゃうんだけど。

「変な話していいですか?」
「グロくなければ」

食事中にグロいのはパス。
グロい話なんてしませんよ、となっちゃんが上目遣いに私と朝倉さんを見る。

「好きって言葉にされるのと体を求められるの、本気度が高いのはどっちだと思いますか?」
「彼氏ちゃんはハイブリッド」
「理想。でもね、恥ずかしくって言えないってあると思うんです。それって本気だからこそでしょ。でもね、体って究極じゃないですか。本気じゃないと絶対しないじゃないですか」

うわあ、大人の会話……。
って、私も大人だった。経験値がないだけで。

「んー、どうだろ。少なくとも、欲を満たすために体を求めて好きって口先だけで言える男は実在するよ」
「そんな男いるんですか?!」
「いるいる。まだまだ若いなあ、なっちゃん」

そんな男いるんですか?!
私もまだ若いってことだな。

魁十をずっとそばで見てきた私にはそんな男想像つかない。

うちの弟はどんなにかわいい子やモテる子に告白されても、「好きじゃないから」の一言で断ってしまうらしい。

姉だからと、魁十にフラれた女の子に泣きつかれたり魁十には好きな子がいるのかとしつこく絡まれたこともある。

そういう子は魁十の逆鱗に触れて、無視を決め込まれる。

泣いてる子もいて、さすがにかわいそうで

「もう少し優しくしてあげられない?」

と魁十に聞いたことがある。

「好きでもない子に優しくしたいと思えない。なのに優しくしてあげるのが優しいとは思わない」

と禅問答みたいな返事をされた。続いて、

「優しくしたい子には優しくしてあげるなんて考えない」

と更に難問が飛び出した。

「どういう意味?」
「分かんないならいい」

泣きじゃくる子の相手をして心の底から疲れた私にプリンを差し出して、魁十はリビングを出て行った。
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