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強めドジっ子18歳
私も虜
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うちの会社は飲み会が多い。
新入歓迎会なんて、パートさんがひとり入ってもやる。
美人でスタイル良しの若い女性社員ともなれば、男性が多い我が社員たちは大はしゃぎである。
「河合さん、何飲む?」
「ウーロン茶お願いします」
「えー、酒飲まないんですか?」
「私まだ18歳なので、成人だけど飲めないんですー」
「18歳!」
私にもあったよ。18歳の時。
「私も入社した時は18歳だったもん」
「誰でも年取るんだよ、なっちゃん。今の年は問題じゃないんだよ」
「出たね、難波名言集」
男性社員が多いから、自然女子社員は同じテーブルに固まる。
中でも、数少ない若手、朝倉さん、私、なっちゃんは飲み会ではいつも一緒にいる気がする。
「お疲れ様です」
私と朝倉さんが隣同士に、なっちゃんは向かい側に座っていた。
私の隣に難波さん、なっちゃんの隣に浜崎さんが来た。
「朝倉さん、何飲んでるんですか?」
「梅酒です。ソーダ割」
「お酒苦手だったりします?」
「苦みが苦手で」
「じゃあ、ビールなんか論外だ」
「正直、何がおいしいのか分からないですね」
私越しにビールを手にした難波さんが朝倉さんに話しかける。
……ふーん。
難波さん、私が参加するなら参加する、みたいなことを言ってたのに……。
「今日はマッコリ飲まないんですか?」
「飲まないです」
「遠山さん、機嫌悪い?」
「別に」
「機嫌悪いな。厚木さん、遠山さん何かあったんですか?」
会社では温厚な良い人のフリして、プライベートはチャラい男に愛想振りまきたくないだけです。
まだ始まったばかりだし、おなかがすいてるから唐揚げとサイコロステーキを取り皿に取る。
「遠山さん、野菜も食べてー。サラダ強制的にみんなに入れちゃいます」
なっちゃんがシーザーサラダを取り分けてくれる。
ただのポイント稼ぎ女と違って、強制的とか言いながらやっちゃうとこ好き。
なっちゃんがかわいいからちょっとご機嫌が直って、5人で談笑しながら宴が進む。
「お疲れ様ですー」
かわいい声。
見ると、難波さん越しに河合さんが微笑んでいる。
「枝豆お待たせしましたー」
「私、お取り分けしますー。新人ですからー」
枝豆を取り分け?
河合さんがこんもり盛られた枝豆の中に手を突っ込み、ガシッとつかんで私たちの取り皿に次々と入れて行く。
えぇー……。
皮に口付けて食べるし、知らない人にぶんづかまれた枝豆とか嫌なんだけど……。
この場にいる女性の最年長、朝倉さんが優しく諭す。
「河合さん、取り分けてくれたのは嬉しいんですけど、素手はちょっと」
「え? だって、スプーンも何も付いてないから手しかないかなって」
「うん。だから、取り分けなくていいんだよ。枝豆はみんな勝手につまむものだから」
周りのテーブルを見た河合さんが赤くなってうつむいた。
「気にしないで。まだお酒飲めないから居酒屋なんて知らないものね」
「あ……はい、初めてで……」
「塩で手が荒れるといけないから、これどうぞ。僕が使ったおしぼりで申し訳ないけど」
「……ありがとうございます……」
笑顔の難波さんがおしぼりを手渡すと、難波さんのお顔に目が釘付けになりながら河合さんはおもむろに顔を拭いた。
「河合さん! 顔じゃなくて手!」
「あーあー、つけまつげ取れちゃったよ」
「え! ヤバい! メイク直してきます!」
バタバタと河合さんが走り去って行く。
ポカンとした空気が流れたものの、すぐ爆笑に変わった。
「見た目によらず、変わった子みたいだね」
「すっぴんの方が私は好きだなあ。ビックリした。あんな美少女見たことない」
それ私も思った。
メイクばっちしだと濃いめのクールビューティなんだけど、あれだけ塗ったら誰でもこうなるよねって感じ。実際は誰でもはなれないんだろうけど。
一方すっぴんは唯一無二の壮絶な美貌。18歳らしい透明感溢れる美女。
一瞬ですっかり心を奪われる美しさ。もう虜。
素の方がよほどかわいいのに、すっぴんを気にするのがまた若さを感じてかわいい。
みんな笑っている中、なっちゃんだけは渋い表情……。
……うん、明らかにあの子、難波さんにときめいちゃってたね。
優しくフォローされた上に間近で笑顔見ちゃったんだもん。惚れるなって方が無理。
「ん? 僕の顔にもつけまつげ付いてます?」
「いえ……河合さん、すごくおっちょこちょいそうですね」
「ですね。あんなドジっ子見たことないです」
楽しそうに難波さんが笑う。
18歳の河合さんと27歳の難波さん。
だけど、難波さんは年の差は気にしない……そして、難波さんは、ドジっ子が好み。
……胸がモヤモヤしてきた。
新入歓迎会なんて、パートさんがひとり入ってもやる。
美人でスタイル良しの若い女性社員ともなれば、男性が多い我が社員たちは大はしゃぎである。
「河合さん、何飲む?」
「ウーロン茶お願いします」
「えー、酒飲まないんですか?」
「私まだ18歳なので、成人だけど飲めないんですー」
「18歳!」
私にもあったよ。18歳の時。
「私も入社した時は18歳だったもん」
「誰でも年取るんだよ、なっちゃん。今の年は問題じゃないんだよ」
「出たね、難波名言集」
男性社員が多いから、自然女子社員は同じテーブルに固まる。
中でも、数少ない若手、朝倉さん、私、なっちゃんは飲み会ではいつも一緒にいる気がする。
「お疲れ様です」
私と朝倉さんが隣同士に、なっちゃんは向かい側に座っていた。
私の隣に難波さん、なっちゃんの隣に浜崎さんが来た。
「朝倉さん、何飲んでるんですか?」
「梅酒です。ソーダ割」
「お酒苦手だったりします?」
「苦みが苦手で」
「じゃあ、ビールなんか論外だ」
「正直、何がおいしいのか分からないですね」
私越しにビールを手にした難波さんが朝倉さんに話しかける。
……ふーん。
難波さん、私が参加するなら参加する、みたいなことを言ってたのに……。
「今日はマッコリ飲まないんですか?」
「飲まないです」
「遠山さん、機嫌悪い?」
「別に」
「機嫌悪いな。厚木さん、遠山さん何かあったんですか?」
会社では温厚な良い人のフリして、プライベートはチャラい男に愛想振りまきたくないだけです。
まだ始まったばかりだし、おなかがすいてるから唐揚げとサイコロステーキを取り皿に取る。
「遠山さん、野菜も食べてー。サラダ強制的にみんなに入れちゃいます」
なっちゃんがシーザーサラダを取り分けてくれる。
ただのポイント稼ぎ女と違って、強制的とか言いながらやっちゃうとこ好き。
なっちゃんがかわいいからちょっとご機嫌が直って、5人で談笑しながら宴が進む。
「お疲れ様ですー」
かわいい声。
見ると、難波さん越しに河合さんが微笑んでいる。
「枝豆お待たせしましたー」
「私、お取り分けしますー。新人ですからー」
枝豆を取り分け?
河合さんがこんもり盛られた枝豆の中に手を突っ込み、ガシッとつかんで私たちの取り皿に次々と入れて行く。
えぇー……。
皮に口付けて食べるし、知らない人にぶんづかまれた枝豆とか嫌なんだけど……。
この場にいる女性の最年長、朝倉さんが優しく諭す。
「河合さん、取り分けてくれたのは嬉しいんですけど、素手はちょっと」
「え? だって、スプーンも何も付いてないから手しかないかなって」
「うん。だから、取り分けなくていいんだよ。枝豆はみんな勝手につまむものだから」
周りのテーブルを見た河合さんが赤くなってうつむいた。
「気にしないで。まだお酒飲めないから居酒屋なんて知らないものね」
「あ……はい、初めてで……」
「塩で手が荒れるといけないから、これどうぞ。僕が使ったおしぼりで申し訳ないけど」
「……ありがとうございます……」
笑顔の難波さんがおしぼりを手渡すと、難波さんのお顔に目が釘付けになりながら河合さんはおもむろに顔を拭いた。
「河合さん! 顔じゃなくて手!」
「あーあー、つけまつげ取れちゃったよ」
「え! ヤバい! メイク直してきます!」
バタバタと河合さんが走り去って行く。
ポカンとした空気が流れたものの、すぐ爆笑に変わった。
「見た目によらず、変わった子みたいだね」
「すっぴんの方が私は好きだなあ。ビックリした。あんな美少女見たことない」
それ私も思った。
メイクばっちしだと濃いめのクールビューティなんだけど、あれだけ塗ったら誰でもこうなるよねって感じ。実際は誰でもはなれないんだろうけど。
一方すっぴんは唯一無二の壮絶な美貌。18歳らしい透明感溢れる美女。
一瞬ですっかり心を奪われる美しさ。もう虜。
素の方がよほどかわいいのに、すっぴんを気にするのがまた若さを感じてかわいい。
みんな笑っている中、なっちゃんだけは渋い表情……。
……うん、明らかにあの子、難波さんにときめいちゃってたね。
優しくフォローされた上に間近で笑顔見ちゃったんだもん。惚れるなって方が無理。
「ん? 僕の顔にもつけまつげ付いてます?」
「いえ……河合さん、すごくおっちょこちょいそうですね」
「ですね。あんなドジっ子見たことないです」
楽しそうに難波さんが笑う。
18歳の河合さんと27歳の難波さん。
だけど、難波さんは年の差は気にしない……そして、難波さんは、ドジっ子が好み。
……胸がモヤモヤしてきた。
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