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うちの弟はめちゃくちゃかわいい
弟の反抗期が終わらない
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そんな大人になった(はずの)弟が朝食の皿をテーブルに放置したまま黒いリュックを肩に掛ける。
高校の時から使ってるバッグを大学生の今でも愛用してる。
物持ち良くて、我が弟ながら尊い。
けど、それはそれ、これはこれ。
「魁十! 片付け!」
「姉ちゃんやっといて。俺、部屋の窓開けっぱなの思い出した」
「窓開けたまま寝てるの?! いくら暖かくなってきたからって風邪ひくよ!」
思わず立ち上がると、それはもう鬱陶しそうなジト目で魁十が振り向いた。
「うぜえ。心配すんな。俺はもうガキじゃねーんだよ」
かわいい……。
魁十が目を細めると、長いまつ毛が下まつ毛と相まってより濃く見える。
いいなあ、私もそのまつ毛欲しい。
「そうだ、私今日送別会で遅くなるからママに言っといて」
「送別会? 誰の」
「橋長さん」
「ああ、寿退社の」
「そうそう。カイが私の会社の人を覚えてくれてるなんて感動。私の話ちゃんと聞いてくれてるんだね。お姉ちゃん嬉しい」
「うっせえ。早よ会社行け。俺も1限から授業あんだよ」
魁十が階段を駆け上がって行く。
しょうがない、自分の皿と一緒に魁十の皿とコップも洗ってあげよう。
「紗夜、あんま遅くなんなよ」
タオルで手を拭いていた私は、弟の心配から発せられたであろう言葉に満面の笑みが隠せない。
思わず私より10センチ以上も大きくなった魁十の首に飛びつくと、秒で引きはがされてしまう。
「カイ、大好き!」
「勘違いすんなよ。別に心配してるわけじゃねえから」
「もー、カイってばいつまでも反抗期が終わらないんだからー。永遠の思春期さん」
「マジうぜえ」
「ママに伝言よろしくね」
「今日夜勤だから母さんの方が帰って来ねえよ」
カレンダーを見ると、たしかに夜の字が丸で囲まれている。
「さすがカイ! 記憶力すごい~! え! てことはカイひとりじゃん!」
「うるせえ。俺もバイトあるし」
「分かった、11時には帰ってくる!」
魁十のバイトは10時まで。
それから着替えたり帰り道でごはん食べたりするから家に着くのは11時頃。
うちの会社の飲み会は毎度御用達の居酒屋でダラダラ飲み続けるスタイル。
けどまあ、送別会は7時からだから10時までいれば十分だろう。
毎日通勤で使っているバッグを斜め掛けする。
「なあ姉ちゃん、その橋長さんの結婚相手ってどんな人?」
「あのね! 元は幼なじみの高校の同級生らしいんだけど卒業してからは会ってなくて、同窓会で再会してまた友達関係が復活したって人!」
「はしゃぐな。うぜえ。友達からパターンか」
「意味分かんないよね。長年ずーっと友達だと思ってた人と付き合うとか結婚とか考えらんない」
「自分だって初彼幼なじみだったくせに」
「そんな古い話覚えてるの?! 嬉しい~」
「くっつくな。早よ会社行けって!」
急かされて時計を見る。ヤバい、もう出ないと遅刻しちゃう!
「いってきます」
「やめろ!」
魁十のほっぺたにチュッと軽く口を付ける。
すぐさま押し返されてしまう。
「たまにはカイもしてよ」
「して当たり前みたいに言うな! 俺はもう大人なの!」
「だってカイかわいいんだもん」
「早く行け! 姉ちゃんに戸締り任せたらどっか電気つけっぱなしにすんだから!」
「魁十の反抗期が終わってまたチューしてくれるのを待ってるね」
「いいかげんにしろ! 俺まで遅刻する!」
魁十が本気で怒りだしている!
私は慌てて家を飛び出した。
高校の時から使ってるバッグを大学生の今でも愛用してる。
物持ち良くて、我が弟ながら尊い。
けど、それはそれ、これはこれ。
「魁十! 片付け!」
「姉ちゃんやっといて。俺、部屋の窓開けっぱなの思い出した」
「窓開けたまま寝てるの?! いくら暖かくなってきたからって風邪ひくよ!」
思わず立ち上がると、それはもう鬱陶しそうなジト目で魁十が振り向いた。
「うぜえ。心配すんな。俺はもうガキじゃねーんだよ」
かわいい……。
魁十が目を細めると、長いまつ毛が下まつ毛と相まってより濃く見える。
いいなあ、私もそのまつ毛欲しい。
「そうだ、私今日送別会で遅くなるからママに言っといて」
「送別会? 誰の」
「橋長さん」
「ああ、寿退社の」
「そうそう。カイが私の会社の人を覚えてくれてるなんて感動。私の話ちゃんと聞いてくれてるんだね。お姉ちゃん嬉しい」
「うっせえ。早よ会社行け。俺も1限から授業あんだよ」
魁十が階段を駆け上がって行く。
しょうがない、自分の皿と一緒に魁十の皿とコップも洗ってあげよう。
「紗夜、あんま遅くなんなよ」
タオルで手を拭いていた私は、弟の心配から発せられたであろう言葉に満面の笑みが隠せない。
思わず私より10センチ以上も大きくなった魁十の首に飛びつくと、秒で引きはがされてしまう。
「カイ、大好き!」
「勘違いすんなよ。別に心配してるわけじゃねえから」
「もー、カイってばいつまでも反抗期が終わらないんだからー。永遠の思春期さん」
「マジうぜえ」
「ママに伝言よろしくね」
「今日夜勤だから母さんの方が帰って来ねえよ」
カレンダーを見ると、たしかに夜の字が丸で囲まれている。
「さすがカイ! 記憶力すごい~! え! てことはカイひとりじゃん!」
「うるせえ。俺もバイトあるし」
「分かった、11時には帰ってくる!」
魁十のバイトは10時まで。
それから着替えたり帰り道でごはん食べたりするから家に着くのは11時頃。
うちの会社の飲み会は毎度御用達の居酒屋でダラダラ飲み続けるスタイル。
けどまあ、送別会は7時からだから10時までいれば十分だろう。
毎日通勤で使っているバッグを斜め掛けする。
「なあ姉ちゃん、その橋長さんの結婚相手ってどんな人?」
「あのね! 元は幼なじみの高校の同級生らしいんだけど卒業してからは会ってなくて、同窓会で再会してまた友達関係が復活したって人!」
「はしゃぐな。うぜえ。友達からパターンか」
「意味分かんないよね。長年ずーっと友達だと思ってた人と付き合うとか結婚とか考えらんない」
「自分だって初彼幼なじみだったくせに」
「そんな古い話覚えてるの?! 嬉しい~」
「くっつくな。早よ会社行けって!」
急かされて時計を見る。ヤバい、もう出ないと遅刻しちゃう!
「いってきます」
「やめろ!」
魁十のほっぺたにチュッと軽く口を付ける。
すぐさま押し返されてしまう。
「たまにはカイもしてよ」
「して当たり前みたいに言うな! 俺はもう大人なの!」
「だってカイかわいいんだもん」
「早く行け! 姉ちゃんに戸締り任せたらどっか電気つけっぱなしにすんだから!」
「魁十の反抗期が終わってまたチューしてくれるのを待ってるね」
「いいかげんにしろ! 俺まで遅刻する!」
魁十が本気で怒りだしている!
私は慌てて家を飛び出した。
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