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学園4年生編
sideエリゼ
しおりを挟む「皆さん、いらっしゃいませ~!休暇は楽しんでいますか?課題をきちんとこなしてますか?最終日に纏めてやろう!は駄目ですよ~」
「なんでタオフィ先生が出迎えるんですかーーー!!!ここは公爵家でしょうが!!」
「はっはっはっ、此方も休暇ですもん、弟に会いに来てるんでーす。いえい!!」
「そういやそうでしたね…!その弟さんとやらは、俺まだ顔合わせしてませんけど!?」
うわ、勢揃いしてやがる。
現在ラウルスペード本邸の玄関に…パスカル、ルシアン、スクナ殿下、姫様、マキナ、タキが到着。あと護衛が何人か。
オレはジスランと一足先に来ていたんだが…他の皆が着いたとモニクが知らせてくれたので、玄関まで見に来た。
ちなみにジスランはシャルロットの部屋。バジルも一緒にいるが…最近あの2人、やけに仲良くなってんだよな。
最近まで…婚約者ではあったものの、互いに遠慮があったように見えた。なんつーか「好きになってはいけない」って感じに。それが無くなったのは、いい事だよな。
そんでオレは1人、玄関の階段上からパスカルがタオフィ先生に噛み付いているのを見物中。タオフィ先生は何故か使用人の服を着て、ダブルピースでパスカルを煽る煽る。
それにまんまと乗るパスカル。あいつはタオフィ先生を敵視してるから…仕方ないよな。
オレも最初は、先生が公爵邸にいる事にびっくりしたが。オレはここ数年、長期休暇はこの屋敷で過ごすのが当たり前になっていた。もちろん、フルーラとの時間は確保した上でな。なので今年も入り浸っていたら…数日前、突然先生が現れたんだ。
事情を聞けば、最近紹介されたテオファと兄弟だとか。なるほど…それで我が物顔で屋敷内を闊歩しているのか。
って、パスカルはテオファを知らないのか?
そういや…パスカルは今年の休暇中では、初めてここに来たのか。オレはセレスがいなくても来るけど、あいつはセレス目当てだもんな。今年は温泉旅行とかヴィヴィエ家の別荘、ルネ嬢の見合い…セレスは屋敷にいない事が多かった。だからか。
パスカル達の出迎えは、きちんとファロとフェイテがやっていた。そこに…タオフィ先生が参加したのだ。そもそも、今日はなんで集まってんだ…?
「おー、皆いらっしゃい!先生、なんか失礼してないよね!?」
「してませんって!此方は教師として挨拶したまでです…っていたたたた!!」
「シャーリィ!抱っこだぞ」
そこにセレスも登場。彼女は先に来ていたルネ嬢と、その婚約者の相手をサロンでしていた。オレはセレスの部屋で寛いでいたが。
セレスの姿を確認すると、セレネが先生の頭を齧ってから…彼女の腕の中に飛び込んだ。一度先生を挟む意味、あったか?
そうそう、最初はオレもサロンにいたんだがな。だがそこで、テオファとファルギエールの会話が…
「…うーん。やはり、男性にドレスメーカーは厳しいんだよ」
「そうなんですか!?」
「うん。女性の身体に触れる事が多いからね、嫌がる方は多いと思うよ。
採寸や仮縫いとかもあるし…全てこなせないと、一人前とは言えないし」
「うう…」
テオファは将来好きなドレスを作る仕事がしたい!と、オレも聞いた事がある。コイツは今は女っぽいけど…いつかは男らしく成長するだろう。オレも数年前までは女に間違われる事も多かったが…今は全然。
やはり女性は、伴侶以外の男に触れられたくないと思うんだろうな。オレだってフルーラに他の男が触れるなど…許さん。
ドレスメーカーは絶望的と言われ膝から崩れ落ちるテオファ。ファルギエールは、慌てたように声を掛ける。
「ほ、ほら!他にもデザイナーとかコーディネーターとか、ドレスに携わる仕事はいっぱいあるし!
それに趣味で作る事も出来るし?諦めるのはまだ早い!」
「ううう…ありがとうございますぅ…」
こうして別の道を志すと決めたテオファ。その後、ルネ嬢がはめている手袋に話題が移った。
「えーーー!!ルネ様のレースの手袋、オスワルド様のお手製ですか!?糸から作ったんですか!?」
「ええ、そうらしいのです。お見合いの日に頂きましたの」
「す、すごい…!高級品と遜色ない、趣味の範疇超えてませんか!?」
「ねー、すごいよね。そうだ!2人の結婚パーティーでさ、オスワルドさんが衣装にお揃いの刺繍とかしてみたら素敵じゃない!?」
「嫌ですわセレスちゃん、気が早い!!」
「ドポッシュ!!」
ルネ嬢がセレスの言葉に照れて…きゃーきゃー言いながら、隣に座るファルギエールの背中を全力でぶっ叩いた。哀れにもそのままテーブルに突っ伏し…向かいに座るオレが、直前でカップだけは救ってやった。
で、ヨロヨロと体を起こすファルギエール。そのまま…男2人、女2人でファッショントークが始まってしまった。
オレはとてもついて行けず…セレスに断りを入れてから、彼女の部屋に避難したのだった。
で、現在。呆れるオレに、シャルロットとバジルが近付いて来た。
「あら、全員揃ったのね」
「ん?ジスランは?」
「騎士団のほうに行ったわ。私も、お客様を放っておく訳にはいかないでしょう?」
どうやらこの家において、オレとジスランは客じゃないらしい。まあ、いいけど。
そんで、シャルロットは玄関の面々に挨拶をしに行く。オレもついて行くか…っと。
シャルロットはそのままルネ嬢に合流する予定だと。他に誰か行く?という問いに…姫様が手を挙げた。テオファもいると言えば、タオフィ先生と…パスカルも一旦そっちに行くようだ。
以上の面々はサロンに向かう。ファロは自分の仕事に戻り、客人の案内はセレスとフェイテでするらしい。
「そうだ。僕折角だから、飛白師匠呼んでくるよー。フェイテ、皆を僕の部屋に案内しといてね」
「かしこまりました」
と、セレスは騎士の鍛錬場に向かう。フェイテはルシアン、殿下、タキ、護衛を部屋に案内…オレもそっち行こうっと。
しかしカスリか。顔に大きな傷のある剣士…オレも何度か顔合わせしたが、会う度に明るくなっている気がすんだよな。初めて皇宮で会った時は、無表情で暗い奴ってイメージだったんだが。
部屋に着くと、オレは本を手に取り椅子に座って続きを読む。ルシアンは部屋にいた精霊にちょっかいを出し始めた。
スクナ殿下はソワソワと、どうしたらいいのか分からない様子。そこにフェイテが茶を淹れて、どうぞお寛ぎくださいと声を掛けた。
「ねえ。エリゼ殿はよく来ているんでしょう?普段、何をしているの…?」
と、殿下がソファーに座りオレに聞いて来た。どうやら…友達の家って、何するの?と言いたいらしい。オレは本を閉じ、少し考えてから…普段の行動をそのまま話した。
「う~ん…勝手に屋敷の中彷徨いて。仕事中のバジルやグラス、フェイテ、テオファにちょっかい出して。
騎士団に顔を出して…魔術の指導してやって。たまーにモニクやネイの仕事を手伝って…厨房に忍び込んでつまみ食い。
精霊と遊んだり…番猫のシグニを追い掛けたり。先せ…公爵の執務室に行って本読んだり。
一応許可を得てからセレスの部屋で寛いで。昼寝したり…一緒に勉強して…孤児院行ったり、町をぶらついたり。教会で木に登って、林檎食って。
……そういや、特別な事は何もしてませんね?」
なんつーか…完全に自分の家感覚だったわ。ただオレの答えに「そ、それが友達の距離感なんだね…!!」とスクナ殿下は目を輝かせた。その時…
「お前普段そんな事してたのか!!俺だってまだ、セレスタンの布団に入ってないのに!!」
「うわ出た…」
サロンに行ったはずのパスカルが部屋に飛び込んで来た…。テオファの存在を確認して、満足して急いで来たらしい。
そんで悔しい!!とか言って靴を脱ぎ、セレスの布団に潜り込み…匂いを嗅ごうと…この変態野郎!!!つかオレは、昼寝っつってもソファーの上でだよ!!
「何してんですかコラ!!貴方、俺の言ったことなんも理解してませんね!?」
「いいじゃないか別に!!」
フェイテが引き摺り出そうとしても、布団にくるまり抵抗するパスカル。この2人結構仲良いな、結局掛け布団ごと床に転がしていたわ。そこにタオフィ先生も現れた。
「おやまあ。……王、姫のクローゼットとか興味無いんですか?」
「へ?なんでクローゼットですか?」
「いやあ…なんとなく王は姫の下着とか漁って、くんかくんかハアハアしてそうなイメージがありまして」
という先生の発言に…部屋にいる全員が噴き出した。オレはその様子を想像して…ヤバい、笑いが込み上げてくる…!
ただしパスカルは布団をまとったまま「誰がしますかそんな事!!」と超怒ってる。
「失礼な!俺はただの布に興奮する変態じゃありません!!セレスタンが着用してこそ興奮する変態です!!出来れば恥ずかしがりながら自分で捲って見せてもらいたい!!!」
「変態は認めるのだな…」
と、ルシアンはベッドに腰掛けた状態で呆れながら言った。
スクナ殿下は顔を真っ赤にしてクローゼットを凝視して…ふらりと開けそうになっとる!!タキに止められたがパスカルの存在、殿下に悪影響与えてない!?
パスカルは変態で悪いか!好きな人に興奮するのは正常な男の反応だ!!と熱弁している。
「ちなみに俺は、セレスタンには黒のレースを着て欲しいと…」
「こんのお馬鹿っ!!僕の布団を返せーーー!!」
そこへセレス登場。実は少し前から…扉の前で話を聞いていた。オレ以外誰も気付いていなかったが、パスカルがセレスの下着について語り始めてしまい、入れなくなっていたのだ。
ただしそろそろ奴の発言がアウトになってきたので、赤い顔をしながら変態目掛けてセレネをぶん投げている。なあ、本当にそいつが彼氏でいいの???
「全く…っきゃーーー!!?ホラーかよ!!」
そんでパスカルに近付くと…パスカルが彼女の腕をガシッと掴み、布団に引き入れようとする!アホかやめろ馬鹿!!オレ、ルシアン、フェイテで必死に止めたのだった…。
こういった馬鹿騒ぎは、疲れるけど少し楽しかったりする。誰にも言わないけどな!しかし今日は特に忙しいな!?
「飛白、久しぶりだね」
「はい。お久しぶりです、殿下」
「わあ…喋りも流暢になってる!」
「ありがたい事に、騎士達にも教わってます。まだまだですが…」
スクナ殿下とカスリは、ほのぼのと再会の挨拶をしている。
すぐ近くで…セレスを膝に乗せて匂いを嗅ぐパスカル。必死に抵抗するセレス。2人を引き剥がそうとするオレ達の姿は見えていないのだろうか?
暫く騒いでいたら……
「わ、今日は賑やかだね」
と、闇の精霊様が姿を現した。のはいいのだが…何処から…?
彼はとある扉から出て来た。しかし…廊下に通じる扉でも、バスルームの扉でもない。ついさっきまで壁だった場所に…片開きの、見事な細工が施されている扉が出現した…?
セレスも扉を不思議そうに見つめている。一体どうなっている?
「ヨミ?その扉…何?」
「ん?ぼくの部屋に通じてるの」
「「「はああああああっ!!!?」」」
今の絶叫はセレス、パスカル、オレのもの。しかしその壁の向こうは、シャルロットの部屋じゃなかったか!?
「ぼくの部屋は地下だよ。クロノスに頼んで、この部屋と次元を繋げてもらったの。あ、扉を通れる人間はセレスだけだからね」
女神に何頼んでんだ!!最近セレスは着替えの時とか部屋から追い出すから、自分の部屋を用意したと。
「まあ、お風呂は覗いてるけど…たまに」
「はああーーー!!?お前、いつもシャーリィの裸を見ているのか!!!」
「こ、ここここ、この、変態死神!!」
「いやあ、パスカルには負けるよ?」
セレスは布団を被って、部屋の隅で丸くなってしまった。ちょっとこの会話をスクナ殿下とかに聞かれるのはマズいな…と思っていたら、フェイテがとっくに手を打っていた。
気付けば部屋にはオレら4人しかいなくて、メモがテーブルの上に…どれどれ。
『皆様を連れてサロンに行っています。エリゼ様、後は任せました。フェイテ』とな。
こいつ優秀だな…オレの屋敷に来てくんないかな?と、本気で考えてしまうのであった。
パスカルと精霊様は、扉の前に移動して座り込み内緒話をしている。よく見えないが…何か雑誌を開いている?
「……この子より、シャーリィのほうが胸あるよ…」「マジか。じゃあ、この子は……」「くびれは…」
……?覗き込んでみると…エロ本じゃねーーーか!!!オレがそう叫ぶと、隅っこからセレスも反応した。
「っきゃあああーーー!!!ヨミ!全部バティストに返してって言ったでしょ!!?」
「返したもん。そしたら「パパから息子にプレゼント」って言ってくれたんだもん」
「もんじゃねーわ可愛くねーわ!!!暖炉、全部燃やして!!!」
「駄目だよ、暖炉」
哀れにも暖炉は、契約者と最上級精霊の命令に板挟み。セレスの頭の上で超オロオロしている間に…精霊様は影の中にエロ本を押し込んだ。そして悔しそうにするセレスに、爽やかな笑顔を向けている。
「ヨミ。俺の部屋とこの部屋も繋げて…」
「絶っっっ対ダメ!!!」
だろうよ…。
「繋いだとしても…通れるのはシャーリィだけなんだから、君がこの部屋には来れないよ?」
「……成る程。つまり…
シャーリィ。俺はいつでもウエルカムだから!!」
パスカルはそう言いながら、セレスのベッドの上に肘枕で横になり、キメ顔で服をはだけさせた。セレスは「行くか馬鹿!!!」と突っぱね…そんなやり取りを、オレは密かに笑いながら見ているのだった。
騒がしいやり取りをしていたら、バジルが部屋に来た。なんでもファルギエールが菓子を作ってるとかで…皆に振る舞いたいと。
「ルネ様も一緒になって厨房にお立ちになったんですけど…黒煙を発生させてしまい、シャルロットお嬢様に連れて行かれました。
ロイさんとラッセルさんは煙を吸ってしまい昏倒、現在療養中です。
その後なんとかオスワルド様が炭となった食材を復活させ、ただ今お茶の準備をしています」
バジルは笑顔でそう言っているが…ツッコミどころが多すぎて…。オレ達は様々な言葉を飲み込んで、皆が待つサロンに向かった。
他のメンバーは先に始めているだろうなと思いつつ、合流する。そこには…
ルシ「あ!!それは私が狙っていたタルトだぞ!」
ジス「むぐ?……ごくん、申し訳ございません。では代わりにこちらを…」
ルシ「其方自分が梨を嫌いなだけであろう!?」
シャ「わ、美味しい!凄いわオスワルドさん、これがさっきの炭だなんて!」
ルネ「ふふ、褒めすぎですわティーちゃん。……炭?」
木華「あぁ~紅茶に合うわねえ…」
薪名「姫様、ちょっとおばさんくさいです」
木華「おばさん!?」
少那「ねーねー咫岐!これ食べてみてよ、美味しいよ!」
咫岐「私はただの従者ですから…皆様とご一緒する訳には…」
少那「いいじゃん別に!ほら飛白も」
飛白「ありがとうございます。咫岐様もどうですか?」
咫岐「全くもう…!」
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フェ「人によっては、コーヒーとかがいいかもしれないな」
テオ「旦那様とジャンさんも呼ぼうか」
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そこには…貴族の優雅なお茶会など存在しなかった。1つの菓子を巡って争い、敗れ、散っていく者達。わいわいぎゃーぎゃーと…どいつもこいつも、生き生きとした表情だ。
オレはセレスと顔を見合わせて笑い。負けてたまるか!!と、戦場に足を踏み入れたのだった。
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