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閑話

揃ったよ!公爵家全員集合

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 立ち尽くす僕、ルシアン、ジェイル。
 そんな僕らを真っ直ぐに見据える青年。


 俺を買わないかって…え。身売り…!?僕ちょっとそういう趣味は無いかなー!!
 グイグイ来る青年。ジェイルが間に入るも、彼は止まらない。

「お兄さん、俺は役に立つ。力がある。体力がある。手先も器用。言葉も4つ使える。顔は普通。どうですか?」

「どうですか?じゃ無いですよ?あの、貴方は誰ですか?」

「奴隷です」

「ほーん………はああ!!?」

 何、マジで言ってるの?クフルジョーク?ど、へあ?奴隷?



 ポカンとする僕らに、ガイドさんが説明してくれた。


 この国では奴隷が認められている。しかし歴史上の奴隷のようなものではなく、彼らにも人権はちゃんとある。
 主人が奴隷に暴力を振るうのは普通に傷害罪だし、衣食住をきちんと保証する義務がある。
 奴隷という名は少々大袈裟で、金で買った労働力と言ったほうが正しいらしい。

 そしてこの国では大きな街には、大体奴隷販売店がある。
 例えば僕ら外国人が通訳として言語に明るい奴隷を購入したとして。帰る前にもう要らんから別の販売店に売って帰る…という事も多いとか。
 え。そんなフリマ感覚で人間売ってんの?クフル怖っ。

 そんで奴隷になる人ってのは、大体が親に売られた子供。
 奴隷から解放される道は2つ。お金を貯めて、身分を買う事。それはこの国でしか出来ないので…国を出てしまったら、もう1つの方法しか無い。
 それは…主人が解放する事。「お前はもう自由やで」と、契約書を破棄すればいいのだ。
 ただしコレは契約した主人の手で行わないと、奴隷は死ぬ。

 奴隷の証が、首のタトゥー。そのタトゥーには彼らの情報が刻まれていて、いつどこで誰に買われた…とか全部分かるんですって。
 契約書を破棄すればタトゥーも消えるとか…。

 それでその販売店では、奴隷のほうも客を選べる。特に若い女の子を目的で買おうとする客も多いらしいからね…。
 でだ。あまりしつこいのは駄目だけど、こうして彼らから売り込む事も認められている。よく見ると、足止めされたのは販売店の真横のようだ。


 そして僕はターゲットにされてしまった…なんで僕!?この中で一番チョロそうだからか!?


「俺は役に立つ。だから………この子と一緒に買わないか?」

「へ?」

 よく見ると、青年の後ろに…小さな少女がくっ付いている。顔立ちが似てる…兄妹かな?
 それに2人共、ヨミと同じ翠の目をしている。この国では多い色のようだ。


「この子はあまり役に立てない。でも俺が2人分働く。どうですか?」

「ど………え、っと…いや、僕は…その」

「…坊ちゃん。こういうのはキッパリ断ったほうが良いですよ」

 ジェイルが耳打ちをしてくる。そ、そうだよね。僕が断っても、他の人と縁があるよね!つーことで悪いんだけど



「俺達は長く売れ残っている。明日には俺は鉱山。この子は娼館に送られる。どうですか?」

「「脅迫じゃねえーーーか!!!」」

 思わず絶叫した。おま、お前…うをい!!!!


 ガイドさんによれば…一定期間一度も購入が無い奴隷は、無駄飯食いとして見放されてしまうらしい。でもそこまで残る事は稀で…最終的に男は鉱山で強制労働、女は娼館……おおおい!!!

 と、その時。販売店から1人の男性がこっちに向かって歩いてくる。彼は店主らしく…青年の売り込みが過剰だと判断したようだ。


「店主が申し訳ございません、と言っています」

 店主は青年と少女にも頭を下げさせ、店に連れて帰……………。




「其方……同情してるだろ?」

「う……………ん…」

 彼らが去った後…僕の足は、その場から動かなかった…。
 だって…だって。兄妹が離れ離れになるどころか、男の子のほうは過酷な肉体労働を強いられ。女の子はいずれ身体を売る事に…。
 
 そう考えると…僕は…。
 特に一昨日、ヨミが過去に奴隷だったという話を聞いてしまったばかりだし…。
 拳を握り締め、口を結ぶ。…これはきっと偽善だろう。彼らのような人達は他にもいる。その上で、相手を選び救いたいと願うのは…


「………………」

 …?ヨミが…影から出て来た?僕の握り締められた手をほどき繋いで……スタスタと、販売店に向かって歩き出す。
 
「ぼくは君が暗い顔をしているところを見たくないよ。あの兄妹、助けたいんでしょう?」

「………うん…」

 僕も彼の手を握り返した。後ろから3人が付いてくる足音も聞こえる、ルシアンは僕に並んで歩き…

「叔父上に叱られたら、私も一緒に頭を下げよう」

 と言ってくれたのだった。ありがとう…!




 バターン!!

「たのもーう!大人しくさっきの兄妹を出しやがれ!!」


 僕は勢いよくドアを開けた。
 販売店の中が檻だらけで、その中に人がいたらどうしよう…とか考えていたけど。結構小綺麗で、一見カフェっぽい?
 商品と思しき子供達も自由に過ごしているし…タトゥーにこの店からあまり離れられない魔術が掛かっているから、逃げる心配も無いとガイドさんが言う。
 
 キョロキョロ見渡すと…いた!店の隅っこに2人纏めて座っている。目を丸くしてこっちを見ているぞ。
 店主も同様に目を見開き、僕らに近付いてきた。



 ここから先は、通訳さんを通した形での会話をお送りするぞ。


「店主。さっき僕はあの男の子から「自分達は明日、鉱山と娼館に送られる」って聞いた。これは本当?」

「はい…その通りです。明日で期限になりますので、もうこの店には置いておけないのです」
 
 ふむふむ、僕の同情を買う為に嘘をついた訳じゃなかったか。……いや立派に脅迫されたけどな!
 
「どうして彼らにはそんなに引き取り手が現れないの?お客を選んでるから?」

「…少年のほうは優秀で労働力として人気なのですが、妹と一緒でないとどこにも行かないと言い張るのです。
 その時点で多くのお客様が諦めますが…中にはセットで購入される方もいらっしゃいます。しかし妹が…力も無い、学も無い。まるで役立たずで…すぐに揃って返品されてしまうのです。
 一週間以内に返品ですと全額返金、購入履歴に残りません。なのであの兄妹は…明日、期限の半年を迎えるのです」

 ……ふーむ。だから彼は、どうにか買ってもらおうと売り込みを…


「いえ、違います」

「ほ?何が?」

「奴隷が売り込みをする事は珍しくありませんが、あの少年は今まで身売りをした事はございません。
 恐らく明日は…いえ、今日の夜にでも。妹と一緒に自決するつもりだったのでしょう。
 期限が迫った奴隷は大半がそうします。今後生き地獄を味わうくらいなら…と。

 しかし先程、このガラス越しにお客様の姿を見た途端…妹の腕を引いて、飛び出してしまったのです」


 その店主の言葉に、僕とルシアンは顔を見合わせた。そこまでチョロそうな顔してますかね僕?

「いや…違うと思うが」

 あらそう?まあ男の子の考えは、本人に聞くしかないか。



 店主が兄妹を呼び、僕らの前に立たせた。女の子は兄の手をぎゅっと握っている…うーむ。

「えーっと、確認するけど…2人は僕に付いて来たい。という事でいいの?」

「!!はい!お役に立ちます!」

「?」

 ぼそぼそ

「……がん、ばり、まふ!」

 ………可愛い。そっと彼女の頭を撫でると、にこにこと笑った…可愛い。
 で…2人を引き取るには、幾ら掛かるの?


「これ程で…」

「どれ……オデュンッ」

 思わず変な声出た。分かっちゃいたが…僕の小遣いじゃ足んねえ!!!勢いだけで来ちゃったからね!
 仕方ない…ここは…えーと、なんか売れる物持ってなかったっけ…ミカさんは駄目。他に~…

 と店主に背を向け4人で円陣を組み、会議をしていたら…ヨミが横からスッと何かを差し出した。


「これあげる。ぼくにはいらない物だから」

「わ…綺麗な王冠…本当にいいの?」

 彼はこくんと頷いた。その手には、宝石が散りばめられた赤い王冠。君いつも、こういうお宝どこから持って来てんの…?

「精霊界に転がってる」

 さいですか。よーしこれで…!!


「ま、待ってください!!」

 店主に渡そうとしたら、ガイドさんに止められた。え、コレ偽物だったりする?価値無い?

「違います、高価過ぎます!!恐らくこの店の奴隷、全員購入してもお釣りが来ます…!」

 うそん。まままっまじでえ!!?
 ガイドさんの提案により、まずコイツを売ってくる事に。販売店にはルシアンとジェイルを残して、僕とガイドさん(とヨミ)で大きい質屋へゴーだよ!


 そこで…まー大騒ぎ。これは、ウン百年前のナントカ!と…僕には全く分からなかったが、とんでもないブツを持ち込んでしまったらしい…早よ帰りたい。
 流石歴史の国なだけあって、こういう遺物には相当な価値があるらしい。なんでもいいから早く決めてー…。

 そこでお宝に詳しいガイドさんが値段交渉までしてくれて…なんとか決着がつきました!お金の入った袋を抱き締める、これ金貨にしたら何枚相当かな?早くグランツに帰って換金しーよおっと。
 


 その後販売店に戻り、店主に指定された金額を渡した。そして出された契約書に…サインと、血を一滴。これで正式に、僕は2人の雇い主という訳か…。

「ありがとうございました!……どうか、2人をお願いします」

「……はい」

 店主…あんたもこの2人を気にしてたんだな…。この奴隷商め…と一方的に悪モンだと思っててごめんよ。太っちょだし、悪徳業者かと…。
 心の中で店主に謝罪し、改めて兄妹と対面した。


「僕はセレスタン。君達の名前と年齢を教えてくれる?」

「俺はフェイテ、16歳。妹はネイ、8歳。
 よろしくお願いします、ご主人さま」

「あー…ご主人様は勘弁…。今は、セレス様って呼んで」

「…?はい、セレスさま」

 よしよし。それで…僕らはこの国の人間じゃあ無い。もうこの後、すぐに出発するんだが…

「クフルに挨拶したい人はいる?連絡を取りたい相手とか」

「いません。俺の家族は、ネイだけ。友人も、いません」

 …そっか。


 僕は契約書を2枚纏めて手にし…勢いよく引き裂いた。

「「えっ!?」」

 戸惑う兄妹を無視し、更に細かく千切る。すると…本当に彼らのタトゥーが消えた。
 これで彼らは完全フリー。国籍も戸籍も無いが。
 最早ゴミとなった契約書は店主に「捨てといて」と押し付ける。

 突然の僕の行動に、この店の全ての人が驚いていた。ルシアンとジェイルだけは、困ったように微笑むだけだったが。


「僕は奴隷を購入したつもりは無い。公爵家の庭師とメイドとして、君達を雇ったんだ。さっきのは前金。
 …ってのは逃げかな。奴隷を買った人間って言われたくないだけだね。僕って自分勝手の卑怯者だから。

 ……本当はこの国に頼れる人がいるのなら。そっちを頼りなさい。どこにも行く当てが無ければ、一緒においで。悪いようにしないと約束する」


 ここで逃げても、僕は君達を責めない。そもそもグランツ皇国は奴隷禁止だっつーの。兄妹の答えは…


「……どうか俺達も、連れて行ってください」

 というものだった。…うん、行こうか。僕が手を差し出すと、ネイがゆっくりと取った。
 


 そう。未だに公爵家には、庭師がいないしメイドもアイシャとモニクしかいないのだ!!
 庭は外注してるけど、メイドがね~。お父様が適当に雇うのを嫌がるし、バティストの審査も厳しいんだよ!!
 って今回2人は無理矢理雇う訳だけど。なんとか納得してもらうしかないよね…すまぬ。
 
 ネイは勉強が先だし、バティストには迷惑かけちゃうなあ。お父様に、彼の給料を上げるよう言っとくか?


 はあ~…と心の中でため息をつきながら、ネイの手を引き店を出た。ちらりと彼女の顔を見れば目が合い、頬を染めはにかんだ。
 そんな顔されちゃあね…頑張るかあ!としか言えないよう。フェイテのほうに目を向ければ、泣きそうな顔で微笑み、ネイを見ている。
 きっと今まで、妹を守りながら苦しんできたのだろう。

 僕も可愛い妹がいる身だからね、気持ちは分かるとも!!
 じゃあまず予定通り…食べ歩きじゃい!!



 遺跡のガイドさんは街のガイドもお手の物。オススメの屋台に連れて行ってくれた。
 実はルシアンの護衛も離れてついて来てるんだが…食べるとなると毒味の為近寄ってくる。どうやら陛下との交渉は決裂したようだ。
 という訳でまずはこのホットドッグみたいなやつ!!中に挟める物を選べるんだねえ。どれにしよう?

「僕、このフルーツ!ルシアンとジェイルは?今日は全部ヨミの奢りだよ!ガイドさんも遠慮しないで~」

 と、大盤振る舞いしちゃうぞ。他人の金ですし。

「フェイテは?辛いの平気?ネイはこっちの甘そうなやつがいいかな」

「…え!?いや。俺達はいらないです」

「なんで?お腹空いてるでしょ?」

 という僕の発言と同時に…彼のお腹がぐうと鳴る。

「あ…」

 すると彼は恥ずかしそうにお腹を押さえ、顔を赤くして俯いた。やっぱまだ遠慮があるな…。
 ネイはさっきからじーっと見ている鶏肉のやつでいいか。購入してほいっと渡せば、笑顔で受け取って食べ始めた。

「で、フェイテは?」

「……その…ネイと同じので…!」

 はいよっ。

 その後もジュースを飲んだりよく分からんゲテモノをジェイルに食べてもらったり、観光を充分に楽しんだのでした。




 ※※※




 その後追加で必要な物を購入、僕らは帰路につく。
 ガイドさんには大変お世話になったので、チップも弾んでおいた。
 すると「またクフルにいらしたらお呼びくださいね!」とニッコニコで帰っていったぞ。現金よね。


 ヘルクリスに久しぶりに大きくなってもらうと、フェイテもネイも超驚いてたのが面白かった。
 ネイを僕の前に座らせ、後ろにルシアン、ジェイル、フェイテ、ルシアンの護衛×2の順で座り…しゅっぱーつ!!




「お~…いい風。グランツとは空気違うねえ~」

 空の旅を楽しみながら…僕は今後を考える。
 勢いで行動した結果、2人の身柄を預かる事になってしまったが…どうしても屋敷の仕事が出来なければ、孤児院に預けるしかないかなあ。
 それよりお父様になんて説明しよう……ここは正直に言うべきだよね。


「フェイテー。今更だけど君、庭仕事出来る?」

「…………………」

「坊っちゃーん。駄目です、フェイテはずっとオレにしがみついたまま、半分意識飛んでます」

 あら…高いとこ苦手か。ネイはきゃっきゃと楽しんでいるが。でもヘルクリス大きいから、身を乗り出さなきゃ下見えないんだけどなあ。

「*****~!!」

「そうかそうか!うむ、もっと讃えるが良い、敬うが良い!!」

「***?」

「む…敬うというのはだな。うーん…「キャー!素敵、格好いいー!」だ!!」

「***ー!****!!」

「ふはははははは!!!その調子だ!!」

 2人は話が弾んでいるようだ。
 なんかヘルクリスを見てると…力が抜ける…。


 ………今考えても仕方ねえ!!!人生なるようにしかならないんだからな!!





 休憩を何度も挟み、2日かけて帰ってまいりました。
 約束通りルシアンも一緒に…お父様に説明するのに付き合ってくれた。


「…………という訳で。この2人を、その…お屋敷で雇いたい…ん…ですけど…」

「「………………」」

 執務室にて。僕はお父様とバティストに2人を紹介した。
 どっからどう見ても異国の、エキゾチック風な子供達を連れ帰った僕に…皆「それ誰?」でしたとも。

 そんで公爵家トップのお父様、使用人を統括するバティストに真っ先に報告した訳ですが…なんで無言なのおー!!?
 お父様はいつも通り机に向かって座り、バティストはその横に立っている。2人は右手で頭を抱え、何も言わない。


「あの、あの…その!フェイテは即戦力になるし、ネイはまず言葉からだけど…僕も教えるから!
 でも休暇が明けたら、バティストやアイシャに負担掛かっちゃうけど…その…」

 段々と僕も自信無くなってきた…やっぱ、僕は間違えた?2人を助けたいって思った結果だけど…迂闊な行動だった?
 僕はなんか顔を上げていられなくて…服をぎゅっと握って俯いてしまう…。これじゃ駄目だ、後ろの兄妹も不安がるだろう。でも…うぅ…。


 その時、お父様がカタ…と立つ音が聞こえ、こっちにカツカツ歩いてくる。
 僕の前に立ち…俯いてるから足しか見えないけど…そのまま、僕の頭をポンと叩いた。


「…………?」

「はあ…そんなに怯えるな、怒っちゃいないから。驚いたけど…。
 お前が最良を求め、一生懸命考えた結果だろう?なら…それでいい。しょっ中じゃ困るが…お前は、そこまで馬鹿でもねえ」

「そうですね。まあ人手不足は確かですし…お嬢様の性格じゃあねえ、2人を見捨てる事は出来なかったんでしょう。
 それに中々有望そうな人材ですし?お嬢様を選ぶ辺り、いい目をしているわ」

「だろうな。だから泣くなって」

「う~~~…ありがとう…!」

 ビビって泣いてないけどね!お父様が抱き締めて背中をポンポンしてくれるのが、温かくて…それが嬉しいだけだから!!!
 隣に立つルシアンも、にっこり笑って僕の頭を撫でてくれた。ありがとよ…!

 

「んじゃあバティスト、廊下の3人中に入れろ」

「かしこまりましたー」

 へ?僕が落ち着くと、お父様が小声でそう言った。バティストが楽しげに忍び足で扉に近付き、一気に開けると…

「「「んぎゃあ!!?」」」

 と…ロッティ、バジル、グラスがべしゃっと雪崩れ込んできた!?いたんか!!


「その…気になって…ってお父様!お姉様の事泣かせたわね!?」

「泣かせてねーよ!!…それより、屋敷の新しい使用人だ。
 自己紹介出来るか?兄のほうは言葉通じるんだろう?」

「うん。ネイにも自己紹介だけ教えたよ。さ、言ってみて」

 お父様、僕、ロッティ、ルシアンがソファーに座る。他は側に控え、2人の言葉を待つ。
 注目されたフェイテ達は少し気後れしていたが、頑張って言葉を発した。


「俺は、フェイテ・ナイルです。セレスさまに、雇ってもらいました。庭師です。よろしくお願いします」

「わたし、は。ネイ・ナイル、でふ。メイド、がんばり、まふ」

 ナイルというのは僕が考えた。もちろん、日本における世界三大河川が由来さ。
 皆も自己紹介をする、徐々に覚えていこうね。

 そんで早速仕事の話に移る…前に!大事な話をせねばなるまい。


「あのね、僕こんな格好してるけど女なの。屋敷の人は皆知ってるけど…お客様とか、外の人に対応する時は男扱いしてね。
 他に誰が知っているとかは…まあ、追々ね」

 と。フェイテは驚きつつもネイに通訳すると…。


 何故かネイは、ポロポロと泣き始めた。
 

「え!!?なんで…え、泣かないで!?」

「…ふ、ふぐうぅ~…!!」

 ついにはフェイテにしがみつき嗚咽を漏らす。僕が女だと何か不都合が!?別に捨てないよ!!
 僕以外も全員困惑を隠せない。するとフェイテは心当たりがあるようで…なんだか、笑いを堪えながら教えてくれた。


「ふ…!その、ネイは…セレスさまを「優しくて格好いい。大好き。大きくなったら、お嫁さんになりたい」…と、ぶふっ、言って、ました。ので…!」

「……………へ?」



 その言葉に…部屋にいる全員が噴き出した。恐らく全員笑い転げたいことだろうが……

「ふええ、ふあああん!!びゃああーーー!!」

 と…初恋(多分)が散り大泣きする少女をこれ以上傷付けまい、と…両手で必死に口を押さえて笑いを殺しているのであった……。


 
 そしてこの話は…公爵家に伝わる笑い話の1つとして、末永く語られるのでした。





 
 ラウルスペード公爵家関係者一覧

 当主:オーバン・ラウルスペード
 夫人:イェシカ・ラウルスペード(故人)
 長女:シャルティエラ・ラウルスペード
 次女:シャルロット・ラウルスペード

 家令:ジャン=バティスト・ファロ
 執事:バジル・リオ
 侍従:グラス・オリエント
 メイド長:アイシャ・リオ
 メイド:モニク・リオ
 メイド:ネイ・ナイル
 料理長:ロイ・シモン
 料理人:ラッセル・リオ
 庭師:フェイテ・ナイル

 専属医師:マイニオ・カリエ

 タウンハウス管理:
 ハンス・オランジュ
 レベッカ・オランジュ
 

 ラウルスペード騎士団

 団長:オーバン・ラウルスペード
 副団長:未登場

 騎士:ジェルマン・ブラジリエ
 騎士:デニス・ミュール
 その他の皆さん


 番猫:シグニ


 こうしてラウルスペード家に、必要な人材が揃ったのでした!!!





「ところでシャーリィ」

「ん?どうしたのお父様」

「お前が王冠を売ったっつークフル通貨の残り…換金したら金貨8000枚越えになったんだけど…」

「オデュフッ」


 日本円にして約8千万円相当。資金も増えたぞ!!(ヤケ)

 
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