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学園1年生編
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しおりを挟む「ははは、よく逃げずに来たな!!」
「こっちの台詞だよ」
どうやら本当に触れて回ったようで…ギャラリーが半端無い。
あ、生徒会トリオも心配そうに見てる。大丈夫ですって!
それに僕、全然緊張してないぞ。この間の大会はいい経験になったみたい。
相手の実力だって見れば大体分かる。あいつはジスランの足元にも及ばない。なら、僕が負ける道理が無いよね。
にしても…ギャラリーはいいんだけど、なんか空気悪くない?ブーイングもちらほら聞こえる。
「安心しろ、お前に対してじゃないから」
「エリゼ…」
彼の言う通り、向こうに対するブーイングが凄いのだ。
「そりゃな…3年生が1年生に決闘を申し込む時点で恥知らずだぞ…。
しかも、アレ」
アレ、ね。
相手が選んだ剣は、なんと大剣。片やこっちは細い日本刀。まあ、側から見りゃ向こうの圧倒的有利だろう。
今更だけど…剣統一しなくて良かったの?決闘って対等な条件で闘うイメージだったよ。
特に破壊力で言ったら桁違いだ。しかも僕はまだ刀を使いこなせていない。でも、まあ…。
「打ち合いは出来なくても、一振りで終わらせることは出来るよ」
「へえ…自信満々だな」
まあね~!
心配する友人達に軽く手を振り、僕はあの男と対面する。向こうはすでに勝利を確信しているのだろう、ニヤニヤ気持ち悪く笑っているぞ。
「私が審判をする、異論は無いな?」
「「ありません」」
彼は…剣術の先生か。まだ授業受けたことないから、よく知らないや。大会でも審判してたけどね。
他の先生達も待機している。お、ゲルシェ先生。後でコイツの治療お願いね!
決闘って学園で禁止はされてないけど、やっぱ危険だから。先生の立ち会いは必要なのだ。
「それぞれ賭ける物の確認をする。
セレスタン・ラサーニュ。お前は第三皇子殿下のご友人という立場、「え待って、私聞いてな」静粛に。
…そして今構えている剣を賭ける、良いな?」
「はい」
「では次…」
「先生!俺が賭けるものなんて確認不要だ!!」
「……いいか?ラサーニュ」
「構いません」
どうせ明日からその顔を見ることも無いのだから。
「行くよ、魅禍槌丸」
【承知】
僕が刀を抜くと…周囲からどよめきが聞こえて来る。
それは誰も抜けなかった伝説の剣を僕が抜いた驚きか、この美しい刀身に見惚れているか…どっちかな?
刀を正面で真っ直ぐに構える。勝負は一瞬…集中しろ、僕。
「それでは…始め!!」
スタートと同時に、向こうが突撃して来た。先手必勝のつもりだろうけど…遅すぎる。折角の大剣を使いこなせていないじゃないか、剣に振り回されているのがよく分かる動きだ。
だが相手は…躊躇うことなく斜めに剣を振り下ろす。成る程、いっそ僕を殺す気か…上等だ!!!
「はははは!!そんな細っこい剣で受け止める気か!?愚かな!!!」
「誰が受け止めるか。
断ち切るんだよ」
僕の眼前に剣が迫る。僕は…素早く身体をずらし剣の軌道から外れ、右斜め下から切り上げる!!!
スッ……ガラン!!!
「は………」
「ふっ!!」
男は半分になった剣を凝視し動かない。いい的になってるぞ?
大剣を真っ二つにした僕はそのまま跳び、柄の先端・頭の部分で…相手の右側のこめかみを強打する!!
「あがっっ!?」
そのまま男は…横に吹っ飛び倒れた。
あとはゆっくり近付き、その喉元に刀を突き付けるだけ。
ね?
「…勝者、セレスタン・ラサーニュ!」
「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」
「きゃああああっお兄様格好いいーーー!!!」
先生の勝利宣言の後、ギャラリーから大歓声が上がる。いえーい!!サンキュー!!!今ならファンサしちゃう!!
ミカさんで鉄をも斬れるのは昨日のうちに確認済みさ!!凄いわ、まるでバターのようにスッと斬っちゃうんだよ!!!
しかも刃こぼれひとつなし、控えめに言って名刀なのでは?
お疲れ様、ミカさん。鞘に納め周囲を見渡す。
ギャラリーの反応は、興奮7割恐怖3割かな?
これで分かってもらえた?
辛うじて意識のある男ににっこり笑いかけ、右の親指を立て首を掻っ切るポーズをして見せる。
「僕に喧嘩を売るなら…その首を賭けてね?」
これはこの男だけでなく、他の人にも言ったつもりさ。この刀なら容易に落とせちゃうから…ね?喧嘩を売るならこの刀で買うよ?
っていう意味を込めて言ったのにな。
「なん、だ、その剣は!!!俺がその剣を使えば、俺の勝ちだ!!!
武器の差で勝てて嬉しいか!?」
「うん超嬉しい。
それよりちゃんと退学してよ?ほら、とっとと荷物纏めてこい」
しっしっと手を振る。だが相手は「退学なんぞ約束していない!!」と駄々をこね始めた。
はあ…仕方ないなあ。ここまでする気はなかったけども…。僕は右手をすっと顔の高さに上げる。すると…
ガガ…
『セレスタン・ラサーニュ。貴様に決闘を申し込む』
『……はあ?』
校舎のスピーカーから…音声が流れ始めた。
ギャラリーも当然聞こえて来た声に戸惑っている。
「…おい…まさか…!?」
『僕が受ける理由がありませんが』
『はっ、腰抜けが!!』
『決闘のメリットは?』
『俺が勝ったらあの剣を寄越せ。そして今後一切殿下に近寄るな』
『では貴方が負けたら何があるんですか?』
『なんでも一つ、貴様の言うことを聞いてやろう』
『結構です』
まさか、呼び出しに無策で応じると思った?残念でーしたー、用心深い僕はきっちりボイスレコーダーを持っていました!
『ははは、ここまで言われても受けられないか!』
『いやだって…貴方に僕の友人とあの剣に代わる何かを用意出来るとは思えませんが』
『仕方ない…ではその妹を貰ってやろう!』
『………………………あ"ぁ…?』
「うっわ…」
「げ…サイテー…」
「きっしょ…何様?」
「おい貴様!!今すぐ放送を止めろ!!」
「やだね。止めたきゃ勝手にどーぞ、放送室にはガーディアンがいるけどね」
ふふー。実は最初から、バジルとジスランはここにはいないのだ。そう、放送室は僕が占拠した!!
バジルは僕が合図したら音声を流す役目。ジスランはそんな彼を守るのだ。とはいえ、相手が素直に退くなら流す気は無かったとも。
『ははは、僕がそんな安い挑発に乗るものですか。
女性をまるで賞品のように扱うなど…ははは』
『お、お兄様…?』
『おいクソ野郎。こっちから決闘を申し込んでやるよ』
『…あ?』
『お兄様!?』『坊ちゃん!?』
「ヒュゥ!」
「かぁーっこいーい!」
いやん。格好付けたのもバレちゃった。
『ただし僕が賭ける物は殿下の友人という立場と剣のみ。
こちらが望む物はお前の退学』
『………はは、ははは!いいだろう、受けて立つ!』
「セレス、せめて前もって言っておいてくれないかなあ!?」
「ごめんぬ」
『武器はもちろん真剣だ、異論はないな?』
『無い』
『は…はっはは!!いい度胸だ、では明日の放課後!グラウンドで決着だ!!!』
『退学届用意して待ってろゴミムシが』
「ぶ…っ!」
「くく、ゴミムシって…!」
最後はカットしときゃ良かった…でもま、証拠としては十分でしょ。
「ふーん、退学の約束はしてないんだあ。じゃあこの声、誰かな?
お前じゃなければ…昨日この現場にいた、他の誰かかな?ねえ」
「「「!!」」」
昨日の5人は僕の言葉に肩を跳ねさせた。そして…全員目を逸らした。
ま、学園を退学なんて…家に疵が付くもんね。しかし決闘のルールは絶対だ。彼はどう足掻こうと、この学園に居場所はもう無いんだよ。
「誰も心当たり無いってさ。じゃ、さようなら。元先輩」
未だ立ち上がれず地面に座り込む彼に背を向けて、僕は歩き出す。
くだらない茶番だったけど、僕の勝利を喜んでくれている友人達の元に合流を——…。
「俺は、負けて、ない……!」
【避けろ主!!!】
——え。ミカさんが声を荒げたと思った、次の瞬間…
「「きゃああああああっっ!!!」」
「うわああああ!!」
「セレス!!!」
「お兄様あっ!!!?」
「——は」
脇腹にごずっ…と衝撃が走り…
視線を下に向けると……折れた大剣の、半分が…僕の腹に、めり込んで、る…?
「——か、ふっ…ごぼ…」
次いで僕を襲ったのは、激痛…!
ダメ、何もかんがえられ、ない……
ああ…ほんとぼくって、つめが、あまい…な………
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