私の可愛い悪役令嬢様

雨野

文字の大きさ
上 下
106 / 164
学園

19

しおりを挟む

 ~遡ること約30分前~

「あれ、パリス。何ぼうっとしてるの?」

「アシュリィ様…アイルちゃん…ララちゃん…。」



 かくかくしかじか



「「「えええええ!!?」」」

 マジでえっ!?アシュレイが…トレイシーの事を!?

「正確には、ぼくと同じ人が好きなんだと叫んでいました。」

 うそん。…ちょっと…これは凛々の管轄ですわ。


 …そっか。そうなんだ…。

「…びっくりしたー。まあ愛の形は人それぞれだもんね!
 どうしよっかな、私はパリスを応援するつもりだったのに…困っちゃうね。」

「アシュリィ様…。」

 あはは。はは…は?はぉ~ん?
 いや、アシュレイはどんな人と結婚するのかなーとは思ってたけど。予想外というか大気圏外から飛来して来ちゃったな。

 …いや。昔は「活発な子のギャップが好き」って言ってなかった?トレイシーのギャップってなんだよ。ハゲに毛が生えた辺りか?


「…アシュリィ様。もしかしたら(いや絶対に確実に…十中八九)勘違いかもしれません。
 念の為アシュレイ様本人に確認しましょう。」

 アイル…。いや別に、私は…


「…うぃ~…魔族の体力半端ねぇ~」

「死ぬかと思った…」

 都合良くトレイシー、とヒュー登場!!今夕方だけど、朝から泳いでたんか?まあいい、トレイシー!

「あん?」

「貴方…アシュレイの事好き!?」

「は…?えーと…手のかかる弟みたいな…。」

 つまり好き!?はっきりしてよ!

「うぅ~…ん?どっちかと言や好きだろうな。」

 なんと…!

「つまり…相思相愛…!?」

「「何が!!?」」

 あわ、わわわ。困惑する大人2人は無視、ベイラーって同性婚出来たっけ!?
 私は昔からアシュレイを見てきた。優しくてヘタレだけど頼りになる男の子で、苦楽を共にしてきた。
 離れていた時期もあるけど…それでも大切な家族なんだ。彼には幸せになってもらいたいし、近くで見届けたい!!


「いいか、アシュレイを不幸にしたら許さないからな!?
 彼を泣かしていいのは私だけなんだから!お付き合いするなら、必ず私を通すように!!!」

「待て待てお前は何を言っている!?」

「トレイシー卿!?ウチの弟に何してくれてんじゃああ!!」

「はっ!?待っ、ちょ、だ…ドアホーーー!!!」
 

 アシュレイ!!あんたの本音を知りたい、本気で奴を愛しているのか!!
 確かに強くて格好良くて逞しくていい男だけど!あんたには似合わないっていうか…世間の目っていうか…お姉ちゃんは認めん!!!



 海岸沿いに走っていたら、蹲るアシュレイを見つけた。その目には涙が…
 そんなに、彼の事が好きなの?恋する乙女のように…夕日を見つめながらトレイシーを想っているの?


 このまま立ち去るべきだろうか。そう思ったけど…やっぱり本人の口から聞きたい。

 なので意を決して話し掛けた。すると顔を青くさせて、赤くさせて…忙しいやっちゃ。

 しかしこうして向かい合ってみると。夕日に反射して、彼の紫の瞳がキラキラと輝いている。
 吸い込まれそうな眼差しが照れくさくて、つい伏せてしまう。肩を掴まれ、アシュレイの顔が近付いた。…随分と精悍になったな…。

 ドキドキするけども、思い切って訊ねてみる。そうしないといけない気がするから。



「本当に…トレイシーの事が好きなの…!?」

「…………は?」


 アシュレイは目を真ん丸にして、ぽかんと口を開けた。いやほんと、ポカーンて文字が見えそう。


 それから15分程経った、彼はまだ呆然として動かない。仕方ない…。

「だからさ、あんたはパリスと同じ人が好きなんでしょ?あの子はトレイシーが好きなの。だから…」

「……はああ!?」

 やっと戻ってきた。

「待ってくれ、パリスは男だろ!?」

 は?いや…はっ?


「パリスは女の子だよ?」

「え?」

「は?」

「「あん?」」


 …………どういう事?
 落ち着こう、まず誤解を解こう…。


「どうして男の子だと思ったの?」

「…なんで男物の制服着てんだよ。」

「女子はワンピースじゃん。それだと尻尾穴の問題とか、スカート捲れたりしちゃうじゃん。だから特例でスラックスなんだよ。てかブレザーは女子のものだぞ?」

「…髪短いじゃん。」

「水が苦手だから、髪を洗う時間を短縮したいんだよ。」

「…む…胸、無いじゃん…。」

「…無じゃない、決して。貧なだけだ、オーケー?」

「…………………。」

「…え、そんだけ…?」


 あんな可愛い男がいてたまるか。ふふ…お馬鹿だなあ。

 アシュレイは動かず…徐々に顔を赤くさせた。


 え、じゃあ結局…あんたの好きな人って誰なの?
 パリスの近くにいる女性。まさかララじゃないよね!?駄目だぞ、あの子にはガイラードがいるんだから!


「……わあああああ!ばか、オレのばかああああ!!!」

「えええっ!?」

 なにごと!?突然奇声を上げて涙を流す。落ち着いて!!


「うるさい!ばか、バーーーカ!!」

 誰が馬鹿だ!!反論しようとしたら…



「うるっさい!!お前なんて、お前なんて……大好きだーーー!!!」



 …………は?


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...