私の可愛い悪役令嬢様

雨野

文字の大きさ
上 下
15 / 164
幼少期

15

しおりを挟む


「それで少年は?もう大丈夫なの?」

「はい。2週間かかりましたけど…精神的にも体力的にも落ち着きました。」

 
 よーやく少年専属から解放された私。さって!今度こそ魔法の…


「なあ、いつになったらオレに名前つくの!?ですか?」

「「あ。」」


 今私は、リリーと少年とお茶をしている。お茶っつってもあれよ、貴族のお茶会みたいなアハハウフフな感じじゃないよ。
 どっちかってっと縁側で緑茶すすってお団子食べてるようなのんびりしたもの。会話は少ないけど、穏やかな時間を過ごせる。
 
 そして少年もリリーに慣れたようだ。元いた地域の領主がクソ貴族だったようで、最初はリリーに対しても警戒してた。私の後ろから。


「なんだかずっと少年で通じてたから、すっかり忘れてたわね。」

「皆そう呼んでますもんね~。シスター達なんかも少年くんって言ってたし。
 で、少年。希望ある?昔呼ばれてた通称とかないの?」

「んー…。」


 少年は考え始めた。あと誕生日と年齢も考えなきゃねー。


「駄目だ、思いつかない…リリー様とアシュリィ、付けてくれ。」

「「ん~~…。」」




「そういえばお前、オレのこと一度「チワワ」って呼んでなかった?あれなんだ?」

「あら。いい響きじゃない?どんな意味なの?」

 あれか…。小さい体でキャンキャン吠える犬って勝手なイメージで言っちゃったんだよね…日本語で。
 なんか日本で発売されてたゲームだからか知らんけど、結構似通ってるところあるんだよね。まあ習慣とか生活様式は違うけど。


「あー、「チワワ」はね…異国の言葉でチワワのことだよ。」

「チワワ…あのちっこい犬!?」

「ふっ!…それは不採用ね…っ。」


 あーらら、やっぱり怒っちゃった。しょうがないじゃん!リリーもめっちゃ笑ってるしー。

「あーもう!そんじゃあんたは今日から私の弟、アシュレイだ!ついでに誕生日はこの教会に来た日、7歳ね!!」


「アシュ、レイ?…うん、それでいいや。でも7歳は駄目だ!オレも8歳な!!」

「…決まりね。さ、皆に報告に行きましょうか。」



 こうして正式に少年は、アシュレイと名付けられた。勢いだったけど…我ながらなかなかいい名前だね!








 そうして今度こそ三度目の正直!魔法の練習であーる!!
 簡単な生活魔法はもう出来るし、後はゲームみたいな魔法だけ!

 そしてそういった魔法は、魔導書を読むことで習得できるらしい。簡単すぎないかって?んなこたない。
 知力のステータスによって、書いてある事が読めなかったりするらしい!!正確には文字は読めても、理解が出来ないとか。
 つーまーりー、チートなステータスの私なら恐らくほぼ全ての魔法を扱えよう!!!
 そしていつか、自分のオリジナル魔法を創りだすのだ!

 そもそもその魔導書が、平民に手が届く値段だと低レベルなのしか無いんだけどね。だからリリー様に侯爵家のを貸してもらうのさ。


 って最初はテンション上がってたけど…。



「はい、今日はこのくらいでって…どうしましたの?浮かない顔ですわね。」

「いや、えっと…その。」

「お話しなさいな。気が楽になるかもしれなくてよ?」



 そう言いながらリリーは、私の隣に腰掛けた。もちろん地面だ。
 悪役令嬢リリーナラリスだったら、地面に座るなんて死んでもごめんだったんだろうなー。なんてどうでも良いことを考えてしまう。


「ん…私の考えがおかしいってのは理解してるんですけど…。
 こう、ステータスで人生決まっちゃうってのが、なんだか…生まれながらに勝敗が決してる気分になる、といいますか…。
 ステータスが努力で多少は伸ばせるのは知っています。でも10を20に出来ても、10を1000には出来ないでしょう?だから…その。つまりですね。」

「いいわ。あなたの考えは伝わりました。
 ……じゃ、私なりの考えを言うわね?

 まず…生まれで決まるという事。そもそも平民と貴族だって生まれながらに決まってますわよ?」


 たし!かに!!家柄とかほぼない日本の常識が邪魔しとった!


「そしてステータス…確かに10を1000には出来ません。でも、500には出来るかもしれなくてよ?」

「そうなんですか!?」

「ええ、昔の人ですけれどその記録がありますの。ただ数十年かかったようですけど、不可能ではないと証明されています。
 それに前例がないだけで、1000にする事も出来るかもしれませんわね?」

 リリーはそう言って笑った。
 リリー、本当によく笑うようになったなあ。でもお屋敷では一切無表情を崩さないらしい(トロくん談)。
 だから彼女の笑顔を見ていると、侯爵家の人達は天使の微笑みを見られなくて可哀想だなあ、と思ってしまう。

 …って思考が逸れた。



「しかしアシュリィは面白い考え方をしますのね。私も言われるまで思いつきもしませんでしたわ。
 そもそもステータスで仕事を決めるのは当たり前というか…例えば魔力量が3しかない人がいたとして。「魔法師になりたかったなあ」と考える人は稀だと思いますわよ?
 平民だろうと貴族だろうと「3かー。じゃあ魔法関係以外の仕事しよう」と考えると思いますの。」

「えーとつまり…例えば人間は水の中では呼吸が出来ないから、海の底で生活するのは不可能。
 でもそもそも海底で生活する必要がないから、そういう考えすら起きないって事ですか?」

「簡単に言えば、そうですわね。そして魔法なりなんなりを駆使して、なんとか海の中で暮らそうとしているのがアシュリィの考えかしら。」


 ほう…なんとなく分かった。
 …私、まだまだ日本の常識に囚われてるな。ここは剣と魔法の世界。科学の世界じゃないんだから!


 私は勢いよく立ち上がり、リリーに頭を下げた。

「ありがとうリリー様!スッキリしました!!
 では早速、魔導書読ませてくださあい!!」

「ええ、喜んで。」


 おっし!いっちょやったるか!!!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる

青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。 ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。 Hotランキング21位(10/28 60,362pt  12:18時点)

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。 「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。 しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。 これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。

天災
恋愛
 美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。  とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

処理中です...