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第16章 どうやら金剛は八虐の謀反のようです。

八虐のリーダー

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 彼女の身体が地面に静かに落ちる。
胸に突き刺さった日本刀は抜き取られ、傷口からさらに血が流れ落ちる。

「黒ッ………!?」

一瞬の出来事であった。他者の気配など感じる暇もなく。彼女の身体に刃が突き刺さったのだ。
静かな死神は足下で横たわっている黒にトドメを差すことなく。刀を鞘にしまう。
そいつが誰なのかは俺には分からない。
ただ、今は怪我をおった黒を助けなければならない。
そう考えた時、すでに身体は動き出していた。

「ウゥゥ…………」

彼女は顔を地面につけたまま、俺の方を向こうと首を動かす。
しかし、立ち上がれる気力もないらしく、ただ彼女は目で俺に助けを求めていた。
だから、走る。
例え、敵が剣を隠し持ったまま静かに黒を見下していたとしても…………。
これが罠であるとしても、俺は駆け寄らずにはいられなかった。



 ザッザッ…………!!!
一振りの太刀筋が俺の体に刻まれる。
罠だと知って飛び込んだのだ。狙いは俺だと知って敵の間合いに飛び込んだのだ。
完全に腕を切り落とされるはずだった。

「…………!?」

だが、黒が俺の足を蹴り転ばせてくれたお陰で俺のバランスは崩れる。
その太刀筋から逃れることはできた。
その代わり、俺は顔面から地面に激突。
そして、腕の皮膚を一直線に斬られた。

「痛ッ…………!!」

だが、痛みを感じる時間はない。
地面に身体が着いた瞬間に、腕に力を込めて足を気合いで動かして立ち上がる。

「…………お前。何者だ?」

振り返ると、敵は横たわっている黒に剣先を向けた。どうやら俺の動きを止めるための人質として黒を使うつもりらしい。
奴は無言で俺の質問に答えることもなく。
黒に剣先を向けている。

「答えろよ!!!   お前は何者なんだって聞いてるんだ」

「………………ハァ。
本当は答えるつもりなんてなかったのだが。
あの一撃で殺れなかった俺のミスだな。
いいだろう。俺の名は『金剛(こんごう)』」

「金剛…………?」

「八虐のリーダー格をやらさせてもらっている男だ。あっ、お前の自己紹介はいらんぞ。
お前のことは知っている」

なんだろう。この上から目線の教師のような男はなんなのだろう。
八虐のリーダー格。つまり最後の1人というわけか。

「お前が………八虐の最後の………」

こいつが俺の命を狙っていた刺客の最後の1人。こいつらのせいで………八虐のせいで俺のこの異世界ライフは平穏とは程遠いものになった。
その最後の1人である男が目の前に現れたのだ。
今までの鬱憤をはらしてやりたいと思う反面、これで最後かと思うと嬉しく感じる。

「最後の最後がお前みたいなクズだとは思わなかったぜ。奇襲なんて……………リーダー格ならリーダー格としてのプライドはないのか?」

「ふん、プライドなど既に棄ててきたわ。
俺はただお前を殺す。それだけのために今日まで生きてきた」

サングラスの奥で奴の目が鋭く殺気を放ちながらこちらを睨み付けているのがわかる。
よほど、俺に恨みがあるらしい。
しかし、俺にだって八虐への恨みは深い。
八虐に大切な友である死神さんを殺されたのだ。
その怒りは振るえるほど煮えたぎってるのだ。

「悪いがお前が誰かは知らない。その憎しみの元凶は同士の仇か?
 なら来い。俺だってお前らに大切な仲間を殺されているんだ」

「ああ、お望みならば喜んで殺してやる。その古びた思想を俺が打ち砕く!!!」

そう言って奴は俺に向かって襲いかかってきた。



 「『五円ソード』」

金剛は剣を構えて、俺に攻め込んでくる。先程の日本刀とは違う。別の剣で俺を殺そうと走ってくる。それならば、剣で相手をするのが筋だ。
俺は特製メガネをかけて、能力を発動。
5円玉を消費することで作成した剣を握りしめて、金剛の剣を防ぐ。
剣と剣とがぶつかり合い。腕が弾かれる。
だが、そこで諦めて動きに任せて後ろに退くわけにはいかない。
地面に突き刺さるかのごとく足を踏ん張り、強制的に腕に力を込める。
対して、金剛はもちろん体勢を崩すことなんてなかった。
奴は俺を押し込み、そのまま剣を突き刺して終わらせるつもりだった。
だが、再び金剛の剣を防ぐ。それで精一杯だった。

「無駄だな」

奴の一言が心に響く。
金剛の攻撃を防ぐことはできても、そこから先に向かうことができない。
今までとは違う更にでかい壁を金剛から感じた。
必死に奴の剣を防いでも、それ以上ができない。自らの身を守ることしかできない。
さすが八虐のリーダー格である。
奴はこちらが攻撃する隙を全く見せてくれない。
防ぐ。防ぐ。防ぐ。防ぐ。防ぐ。防ぐ。防ぐ。
ありとあらゆる方向から振られる剣を俺は必死に防ぐ。
しかし、さすがの五円ソードにも限界は来た。
再び防いだと感じた瞬間に、刃は砕け落ちた。

「それが限界か。残念だ」

目で自分の刃が落ちるのを追いながら、耳が敵の言葉を拾う。
もう五円ソードは使い物にならない。
そう判断し、敵に視線を向けた瞬間。
敵は既に新しい剣を構えていた。
剣を取り替える時間などなかったはずなのに、奴は新品の剣を構えていた。

「くっそ……………!!!」

俺の手には武器はもうない。この間合いから逃げ出すにも時間が足りない。
そうこう考えているうちに金剛は剣を振り下ろしてくる。
もう一か八かやるしかない。
振り下ろされる剣を無視し、俺は隠し持っていた10円玉を握りしめる。
剣に対して拳で戦おうというのだ。
圧倒的不利なのは承知だが、この状況で考えられる手段が他に見つからなかった。

「『十円パン…………』」

奴が剣を振り下ろすよりも速く。俺はその拳を金剛に向けて放った。
それでも、拳は届かない。
俺のパンチに気づいた金剛は、剣を振り下ろすよりも速く俺の脇腹に蹴りを入れたのだ。

「ぐっ…………!?」

放った拳が届くことはなく、10円は無駄になる。そして、俺の重心は揺れる。
その強力な蹴りは俺の身体をそのまま蹴り飛ばしてしまった。
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