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15.5章 魔崩叡者霊興大戦ラスバルム(南)

乗鞍、空木率いる南軍

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 魔王城南。
この魔王城を囲むように分けられた仕切りで、魔王城を中心に4方向に延びたあらゆる魔法を無効化する壁。“魔王壁”に分けられた南側。
この場に呼ばれた連盟同盟は300人。
その中にいる王レベルは『乗鞍(のりくら)』と『空木(そらき)』のチームである。


───────────────────

 彼らが鏡の中をワープして最初に見た光景はなにもない荒野。
その中心に何者かの人影があり、その奥にはおどろおどろしい魔王城が建っている。

「おやおやおや、私の相手はあなた達なんですね。これはこれは遠いところからよく来てくれました」

彼は紫色の髪に尖った鋭い目の持ち主。黒い神父服を着た大人の男性。
丁寧な口調と姿勢で、上品さを醸し出しているが、戦士達には人間と話をしているような感じがしなかった。
それでも敵であるか確かめなければならない。
乗鞍はそう考えて、謎の男に問う。

「お前は何者だ?  吾輩達は魔王軍と戦う戦士。敵でないのなら退いてくれないだろうか?」

「私の名前ですか…………。私は国際テロ組織バイオ団リーダーであり元八虐の不孝。
『バイオン』ですよ」

国際テロ組織バイオ団のリーダーであるバイオン。これまで数々の国を滅ぼしてきたとされる伝説の不老不死軍団。
彼はある日突然その姿を表舞台から消えて行方不明の状況になっていたが、まさか魔王軍にいたとは………。
この場にいる1人を除く戦士はそう考えてしまった。



 その場に1人。
バイオンの存在を知っていた者が連盟同盟の中に目立つことなく配属されていた。
彼は英彦。付喪カフェ金曜日バイトである白帝英彦である。

「なんだ?  前の方で今バイオンって聞こえたような」

この場に集まった戦士は300人。
前の方が前の人の肩で見えないことなんてあり得る話である。
すると、前の様子が気になっている英彦の様子を気になって、横にいる男が彼に話しかけてきた。

「ああ、その通りだぜ。あの最悪のテロ組織バイオンらしい」

彼は『大汝(おおなんじ)祐三郎(ゆうさぶろう)』。特に名前を覚えることでもない普通の一般人。金目当てでこの戦争に参加した冒険者連盟の冒険者である。
ちなみに平凡・普通が彼の取り柄で冒険者連盟内での階級は中の下。

「そうなんですか?  バイオンか……あいつ死んだはずじゃ……?」

「そうなの?  付喪連盟にはそう伝わってるのか?  うちはまったく行方不明だって聞かされたぜ?」

「いえ、付喪連盟では王レベルか誰かが倒したってニュースで言われてます。まぁ、明山さんが倒したんですがね」

「倒した?  嘘だろ?  明山なんて王レベル聞いたことがないぞ!?」

大汝は英彦の語る真実に驚いている。
そういえばあれは明山さんの気になっていたニュースキャスターがいなくなった時期で、英彦が明山さんと始めてあったきっかけだった。
……と英彦が懐かしんでいると。
どうやらバイオンにこの会話が聞かれていたらしく。

「明山…………今誰かその名を言いましたね?
しっかりと聞きましたよ。いるのですか?
この戦場に明山の野郎が!!!」

バイオンは300人の戦士の中を1人ずつキョロキョロと明山を探している。

「明山…………?」
「乗鞍………。例のブロードピークと出会ったという小僧だ」

「おっ!?   おやおやおやおや~?
どこかで見たことがある顔がありますねぇ~!!」

そう言ってバイオンは無慈悲にも、小さなエネルギー弾を発射。
豆粒くらいの小さなエネルギー弾は一直線に連盟同盟の集団の中へと入っていった。

「グァ?」
「キャッ!?」
「ウッ……」
「ピャッ?」
「ティ!?」

すると、連盟同盟の集団の中へと飛ばされたエネルギー弾は縦一列に戦士たちを撃ち殺していく。光の一線は肉体を貫く。



 そのエネルギー弾は銃弾のように戦士達の体を貫いていき、英彦の前にいた男が倒れると銃弾は消滅した。

「ヒィィッィ!?!?」

その横にいた大汝は恐怖の叫び声をあげて、英彦は目の前に死体の道が出来たことに焦りながら、周りをキョロキョロと見ている。
すると、英彦の姿を視認したバイオンは嬉しそうに英彦に挨拶する。

「久しぶりですね。あのときはお世話になりました。いや~あの時の惨めな小僧がここまで生きているとは………。元気でしたか白帝英彦さん」

「お前…………なんでこの人たちを殺したんだ。名前を呼べばよかっただろ?」

目の前で死んでしまった戦士達の事を考えて、英彦は下を向きながら怒りを堪えている。

「だって、邪魔ですからね。それはそうと久しぶりですね英彦さん。会いたかったですよ。あれから、どうしていたと思います?」

「……………ッ。もうバイオン。黙れ」

今までに見せたこともないほどの怒り。
周囲の戦士がビビって声も出せないほどの殺意。
英彦は怒っていた。激怒していた。
だが、バイオンはそんな英彦に恐れることもなく。

「ほぉ、私の名を覚えていましたか。よかった」

「あなたは僕の家族や親戚や一族を兵士として道具にしたり、国ごと滅ぼしてきました。
そんなあなたを忘れるわけがないですよ」

「ハァ……………私もですよ。てめぇを絶対に許さん!!
あの日私の魔王への昇格の道を絶ち、恥をかかせた貴様は殺す。この場の全員も殺す。そして魔王も殺す!!!  産まれた事を後悔させてやる!!!」

お互いに恨みを持った2人の男は敵を今すぐ殺したいという殺意を必死に抑えながら、睨み合っている。
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