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第15章 どうやら全面戦争が始まるようです。(開戦)
盟友との別れ
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これは魔王軍との戦争開始まであと数日となったあの日……。
それはまだ明山が病院から脱走する前の過去の出来事である。
このころ、国民は魔王軍との戦争を前に不安になっており、じわじわと店をたたんでいる者が多かった。
あとはこの国が戦火に呑まれるかは分かっていないので、国からの指示を静かに待っている状況である。
そんな時期であった。
英彦がマオとヨーマから再び旅行に誘われたのは……。
その日、彼らは早朝に付喪カフェで待ち合わせをしており、集合場所に一番乗りした英彦は2人が来るのを今か今かと待っている。
「遅いなぁ~。マオさんとヨーマさん、なんでこんな時期に僕を旅行に誘ったんだろう。あーあ、早く来ないかな~」
2人が10分も遅刻していることが英彦には不思議だった。
いつもなら、2人とも時間ピッタリにくるような真面目な子たちなのだ。
そんな2人が遅刻してくるなんてめったにあることではない。
「なにかあったのだろうか?」
英彦は心配してソワソワとして携帯で電話をしようとしたその時……。
2つ先の店の角からチラチラと白色の髪の毛が現れたり隠れたりしているのが見えたのだ。
白髪であのくらいの身長といえば、英彦に思い当たるのはマオしかいないのだが。
何をコソコソとやっているのだろう。
さては、遅刻してきたのが申し訳なくて謝るタイミングを見失ったのかな……と英彦は考える。
「やれやれ、しょうがない人たちですね。別に怒っていないのに……」
英彦は小声でつぶやくと、ゆっくりと彼らに気付かれないように歩き始める。
このまま近くまで近づいて2人を驚かせてやろうという悪戯心がわいてきたのだ。
そうして、静かに近づいていき、2つ先のお店の角の近くまでやってきた。
あと数メートル近づいて、ワァ!!と後ろから驚かせてやろう。
そう思っていたのだが、ふと2人の会話が聞こえてきた。
「まって、お兄様。妾達がほんとうに─────のことを言うの?」
「そうだよ。もうこの機会しかないんだ。早くしないと時間過ぎてるじゃん」
「ちょっとまだ心の準備が……」
2人の声が聞こえてくるこの距離まで近づいたのだ。聞き間違いなど起こるはずがない。
彼らは気づいていないのだろうが、英彦にはハッキリと聞こえた。
そして、今度は2人に気付かれないように声の主が本当に本人たちかを確かめるためにそっと覗いてみる。
すると、そこにいたのは白髪の紫色の瞳の男の子と、黒色の緑色の瞳を持った女の子がいた。
やはり、マオとヨーマだ。
しかし、ここまで来たがどうすればいいだろう。
これはこのまま聞いてはいなかったフリをすればいいのか。かれらの反応を待つべきなのか。
英彦は迷ったが、彼はいつものマオとヨーマを信じることにした。
「なら、我が言う。ヨーマの代わりに我が言うよ。妹に辛い思いをさせるわけにはいかない」
「お兄様……」
「いや、大丈夫だよ。聞こえたから……」
「「えt quおd mいrum!?!?!?!?」」
突然、聞こえた英彦の声にマオとヨーマは叫び声にならないほどの叫び声をあげて驚いてしまった。
やっぱり、ワァ!!の方がよかっただろうか。
場面は変わり、馬車の中。
そして、ここは理市。大自然の中にある自然に一番近い都市だ。
そんな理市の中を馬車は3人のお客を乗せて走る。
今回の英彦達の旅行は"海へ行く理市馬車の旅”というコース。
普通なら車で行ける場所なのだが、3人の中で1人も免許書を持っていないし、車自体大金持ちしか買うことはできない。
例えば、巨大組織に勤めていた過去を持つ元発明家やどこかの大手兵器企業、もしくは大量殺人を行い金品をついでに奪っていける殺人鬼、都市からの税金や命令で買うことが許されるなど、数市以外の普通の人が車を買うにはこの時代の庶民はまだ安くはないのだ。ちなみに、新車が庶民に出回ることはめずらしいので買えたとしても中古車である。
なんて、そんな車がよかったなんて考える時ではない。
今考えるべきは英彦たちの話である。
さて、馬車内ではというと先ほどまでの重たい雰囲気とは違い。
「見て見て、ヨーマ!!!
あれ川が見えるよ。川が見える!!」
「見て見てお兄様!!!
あれ熊とかいう生物じゃない。手を振ってるわ」
マオとヨーマが窓の外を見ながら子供のようにはしゃいでいたのだ。
この2人の様子と先ほどまでの2人の様子はどうしてここまで違うのか……と英彦は首をかしげていた。
「2人とも旅をしてた経験があるのに今更驚くんですね」
「そりゃ、似てる所もあるけど、ここはちがうよ~」
「せっかく最後の旅行なんだよー。この景色を目に焼き付けておかなきゃ」
マオの言う通り、これが3人の盟友にとっては最後の旅行。
まぁ、魔王軍がこの国に攻めてくると考えれば、旅人である2人は国の指示をまたなくてもどこへでも避難できる。
そのため、彼らはこの国に別れを告げて旅をするという事を英彦に話そうと思っていたが、なかなか心の準備ができなかったらしい。
しかも、旅に出るのは明日。
だから、彼らはこの国での最後の思い出として英彦との旅行を選んだのだ。
英彦にとってはこの国最後の日にマオたちが英彦との旅行を選んでくれたのはうれしいことなのだが……。
「そんなに違うもんなんですか?
海外は?」
やっぱり、旅をしている人にとってはこんな自然豊かな場所は、ありふれた普通の景色に見えるようなものではないのだろうか。
すると、ヨーマが窓の景色を眺めることをやめて、英彦の方を見ながらこう返事を返す。
「もちろん、こんな色々な特色がある国はそうないよ。和風、貿易、近代的、大自然、ベッドタウン、王都。この6つの特徴を持った国はなかなか見つからないもんだよ~。妾は初めてここに来た時感動しちゃったもん」
キラキラとした目でこの国を褒めるヨーマの目からは嘘を言っているようには感じられない。
しかし、なんだろう。自分の住む国がここまで評価されている事が英彦にとってはすごくうれしいらしい。
彼は自分が褒められているかのような気持ちになり、赤面している。
それほど、英彦にとってはこの国は自慢の国だという事だろうか。
すると英彦がそんな質問をしてくる理由が分かっていないマオが英彦をチラチラと見つめながら質問してくる。
「もしかして、英彦っちはこの国きらいー?」
「いえいえ、僕だって好きですよ。生まれも育ちも違う国でしたが、僕はこの国を故郷のように思っていますから」
……と英彦は俯きながら少し恥ずかしそうに答えていた。
そんなこんなで、馬車は目的地の海に到着。
生命の海。海、海、海。
しかもこの時期はお客も来ないらしく、完全にプライベートビーチのように人がいない。
「見て見て、ヨーマ 英彦ー!!
貸し切りだよー!!!!!」
マオは目の前の海が楽しみで仕方がないらしく、馬車のドアを開けてまっすぐに全速力で海へと走っていった。
そんなはしゃいでいる子供っぽい兄をしっかり者の妹が慌てて追いかけていく。
「お兄様~!!!
今日は水着を持ってきていないから。入っちゃだめだよ~!!!」
そうやってマオが海に入ろうとするのを止めに行くヨーマなのだが彼女もなんだか少しはしゃいでいるように見えるのは気のせいだろうか。
「2人とも子供なんだから……。あっ、馬借さんお金っていつ払えばいいですかね?」
「いらねぇよ。ほら、あんたも荷物もって行ってきな!! 気が済むまで遊んできな!!」
「いや、お金は払わないと……いくらですか?」
「だから、いらねぇよ。この国をこんなにも愛している奴から金は取れねぇ。それにあの2人は旅に出るんだろ? だったらこの金は『無事に素晴らしい旅を送れよ』っていう俺からのプレゼントだ。それにお前も最後の思い出作りなんだろ、時間が限られてるなら早くいけって」
なんて、やさしい馬借さんなのだろう。しかし、この顔はこの馬借さんはやっぱり……。
「あの……シュオルの町に行くときにいた馬借さんですか?」
「いや、人違いだぜ。俺は理市担当だからな」
瓜二つのそっくりなのに、どうやらシュオルの町の馬借とは違う人らしい。
「そうですか……」と残念そうに英彦は呟いた後、あの時の馬借さんにそっくりな馬借さんにお礼を言ってマオとヨーマのいる場所へと走り出すのであった。
それはまだ明山が病院から脱走する前の過去の出来事である。
このころ、国民は魔王軍との戦争を前に不安になっており、じわじわと店をたたんでいる者が多かった。
あとはこの国が戦火に呑まれるかは分かっていないので、国からの指示を静かに待っている状況である。
そんな時期であった。
英彦がマオとヨーマから再び旅行に誘われたのは……。
その日、彼らは早朝に付喪カフェで待ち合わせをしており、集合場所に一番乗りした英彦は2人が来るのを今か今かと待っている。
「遅いなぁ~。マオさんとヨーマさん、なんでこんな時期に僕を旅行に誘ったんだろう。あーあ、早く来ないかな~」
2人が10分も遅刻していることが英彦には不思議だった。
いつもなら、2人とも時間ピッタリにくるような真面目な子たちなのだ。
そんな2人が遅刻してくるなんてめったにあることではない。
「なにかあったのだろうか?」
英彦は心配してソワソワとして携帯で電話をしようとしたその時……。
2つ先の店の角からチラチラと白色の髪の毛が現れたり隠れたりしているのが見えたのだ。
白髪であのくらいの身長といえば、英彦に思い当たるのはマオしかいないのだが。
何をコソコソとやっているのだろう。
さては、遅刻してきたのが申し訳なくて謝るタイミングを見失ったのかな……と英彦は考える。
「やれやれ、しょうがない人たちですね。別に怒っていないのに……」
英彦は小声でつぶやくと、ゆっくりと彼らに気付かれないように歩き始める。
このまま近くまで近づいて2人を驚かせてやろうという悪戯心がわいてきたのだ。
そうして、静かに近づいていき、2つ先のお店の角の近くまでやってきた。
あと数メートル近づいて、ワァ!!と後ろから驚かせてやろう。
そう思っていたのだが、ふと2人の会話が聞こえてきた。
「まって、お兄様。妾達がほんとうに─────のことを言うの?」
「そうだよ。もうこの機会しかないんだ。早くしないと時間過ぎてるじゃん」
「ちょっとまだ心の準備が……」
2人の声が聞こえてくるこの距離まで近づいたのだ。聞き間違いなど起こるはずがない。
彼らは気づいていないのだろうが、英彦にはハッキリと聞こえた。
そして、今度は2人に気付かれないように声の主が本当に本人たちかを確かめるためにそっと覗いてみる。
すると、そこにいたのは白髪の紫色の瞳の男の子と、黒色の緑色の瞳を持った女の子がいた。
やはり、マオとヨーマだ。
しかし、ここまで来たがどうすればいいだろう。
これはこのまま聞いてはいなかったフリをすればいいのか。かれらの反応を待つべきなのか。
英彦は迷ったが、彼はいつものマオとヨーマを信じることにした。
「なら、我が言う。ヨーマの代わりに我が言うよ。妹に辛い思いをさせるわけにはいかない」
「お兄様……」
「いや、大丈夫だよ。聞こえたから……」
「「えt quおd mいrum!?!?!?!?」」
突然、聞こえた英彦の声にマオとヨーマは叫び声にならないほどの叫び声をあげて驚いてしまった。
やっぱり、ワァ!!の方がよかっただろうか。
場面は変わり、馬車の中。
そして、ここは理市。大自然の中にある自然に一番近い都市だ。
そんな理市の中を馬車は3人のお客を乗せて走る。
今回の英彦達の旅行は"海へ行く理市馬車の旅”というコース。
普通なら車で行ける場所なのだが、3人の中で1人も免許書を持っていないし、車自体大金持ちしか買うことはできない。
例えば、巨大組織に勤めていた過去を持つ元発明家やどこかの大手兵器企業、もしくは大量殺人を行い金品をついでに奪っていける殺人鬼、都市からの税金や命令で買うことが許されるなど、数市以外の普通の人が車を買うにはこの時代の庶民はまだ安くはないのだ。ちなみに、新車が庶民に出回ることはめずらしいので買えたとしても中古車である。
なんて、そんな車がよかったなんて考える時ではない。
今考えるべきは英彦たちの話である。
さて、馬車内ではというと先ほどまでの重たい雰囲気とは違い。
「見て見て、ヨーマ!!!
あれ川が見えるよ。川が見える!!」
「見て見てお兄様!!!
あれ熊とかいう生物じゃない。手を振ってるわ」
マオとヨーマが窓の外を見ながら子供のようにはしゃいでいたのだ。
この2人の様子と先ほどまでの2人の様子はどうしてここまで違うのか……と英彦は首をかしげていた。
「2人とも旅をしてた経験があるのに今更驚くんですね」
「そりゃ、似てる所もあるけど、ここはちがうよ~」
「せっかく最後の旅行なんだよー。この景色を目に焼き付けておかなきゃ」
マオの言う通り、これが3人の盟友にとっては最後の旅行。
まぁ、魔王軍がこの国に攻めてくると考えれば、旅人である2人は国の指示をまたなくてもどこへでも避難できる。
そのため、彼らはこの国に別れを告げて旅をするという事を英彦に話そうと思っていたが、なかなか心の準備ができなかったらしい。
しかも、旅に出るのは明日。
だから、彼らはこの国での最後の思い出として英彦との旅行を選んだのだ。
英彦にとってはこの国最後の日にマオたちが英彦との旅行を選んでくれたのはうれしいことなのだが……。
「そんなに違うもんなんですか?
海外は?」
やっぱり、旅をしている人にとってはこんな自然豊かな場所は、ありふれた普通の景色に見えるようなものではないのだろうか。
すると、ヨーマが窓の景色を眺めることをやめて、英彦の方を見ながらこう返事を返す。
「もちろん、こんな色々な特色がある国はそうないよ。和風、貿易、近代的、大自然、ベッドタウン、王都。この6つの特徴を持った国はなかなか見つからないもんだよ~。妾は初めてここに来た時感動しちゃったもん」
キラキラとした目でこの国を褒めるヨーマの目からは嘘を言っているようには感じられない。
しかし、なんだろう。自分の住む国がここまで評価されている事が英彦にとってはすごくうれしいらしい。
彼は自分が褒められているかのような気持ちになり、赤面している。
それほど、英彦にとってはこの国は自慢の国だという事だろうか。
すると英彦がそんな質問をしてくる理由が分かっていないマオが英彦をチラチラと見つめながら質問してくる。
「もしかして、英彦っちはこの国きらいー?」
「いえいえ、僕だって好きですよ。生まれも育ちも違う国でしたが、僕はこの国を故郷のように思っていますから」
……と英彦は俯きながら少し恥ずかしそうに答えていた。
そんなこんなで、馬車は目的地の海に到着。
生命の海。海、海、海。
しかもこの時期はお客も来ないらしく、完全にプライベートビーチのように人がいない。
「見て見て、ヨーマ 英彦ー!!
貸し切りだよー!!!!!」
マオは目の前の海が楽しみで仕方がないらしく、馬車のドアを開けてまっすぐに全速力で海へと走っていった。
そんなはしゃいでいる子供っぽい兄をしっかり者の妹が慌てて追いかけていく。
「お兄様~!!!
今日は水着を持ってきていないから。入っちゃだめだよ~!!!」
そうやってマオが海に入ろうとするのを止めに行くヨーマなのだが彼女もなんだか少しはしゃいでいるように見えるのは気のせいだろうか。
「2人とも子供なんだから……。あっ、馬借さんお金っていつ払えばいいですかね?」
「いらねぇよ。ほら、あんたも荷物もって行ってきな!! 気が済むまで遊んできな!!」
「いや、お金は払わないと……いくらですか?」
「だから、いらねぇよ。この国をこんなにも愛している奴から金は取れねぇ。それにあの2人は旅に出るんだろ? だったらこの金は『無事に素晴らしい旅を送れよ』っていう俺からのプレゼントだ。それにお前も最後の思い出作りなんだろ、時間が限られてるなら早くいけって」
なんて、やさしい馬借さんなのだろう。しかし、この顔はこの馬借さんはやっぱり……。
「あの……シュオルの町に行くときにいた馬借さんですか?」
「いや、人違いだぜ。俺は理市担当だからな」
瓜二つのそっくりなのに、どうやらシュオルの町の馬借とは違う人らしい。
「そうですか……」と残念そうに英彦は呟いた後、あの時の馬借さんにそっくりな馬借さんにお礼を言ってマオとヨーマのいる場所へと走り出すのであった。
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