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第15章 どうやら全面戦争が始まるようです。(開戦)

緊急王レベル会議その2

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 乗鞍による推理の一時遮断はあったが、真丸は自分の推理をまとめあげる。

「───さて、この天乃四霊の中に魔王軍幹部である大不敬と謀反が待ち構えていると考えた方がいい。その4人が魔王軍に攻めこんできた者を出迎えると僕っちは推理している」

これにて今回の真丸の仕入れた情報は終了。
みんなが納得する推理を見せてくれた真丸。
彼は自分の推理に誇りをもって傲りながら腕をくんで自分のことを静かに自画自賛していた。
だが、その推理に付け加えて声をあげる者が1人。
そいつは真丸の推理が正しいとは言うものの、自分の得た情報についても話し合うべきだと思い彼は声をあげたのだ。
その男の名は『空木(そらき)』。
謀叛と悪逆編で出てきた王レベルの男である。

「確かに御前の推理は正しいと思う。
だが、俺が仕入れた情報では………つい2日前からバイオ団が集結し始めたという連絡がある。この時期にだぞ!!
魔王軍戦の時期に!!!
これは何かあると思うのだが………対処するべきだと思うが?」

勢いよく感情に任せて机を叩きながら立ち上がる。
そのせいか、灰色のモフモフとしているコートが彼が立ち上がったことでゆらゆらと少しだけ揺れていた。
しかし、真丸は冷静になりながら彼に尋ねる。

「では、バイオ団はどこに集結し始めたんです?」

「この大陸の北東側にある国」

「そうすると、この大陸の南側が我が国だから、バイオ団は他の方角にある国がなんとかしてくれるはず」

「いや……でも、なんとかって………」

真丸にだって空木の言うことも分かる。
国取り組織バイオ団……。
他国に力のある勢力が無い場合、やつらによって侵略されて白帝家一族のようになる可能性があるのだ。
バイオンというリーダーがいないにしても、危険なのには代わりない。
それに侵略されてしまえば魔王軍を対処したとしてもその後に控えた他国には勝てないかもしれない。
だから、空木は他国にも何人か勢力を派遣しバイオ団を潰すべきだと言うのだろう。
だが、魔王軍に注ぐ勢力がギリギリの状況で他国を救いに行くことなど絶対にできない。
そんなことは誰にでも分かっていた。
それでも諦めきれない空木に塩見が口を出す。

「──今、他国なぞどうでもいいだろうが!!
滅ぶなら自衛勢力がない国が悪い。今は1人でも強い奴が必要な時だ。敗者は死ぬ勝者は生きる。
その国はバイオ団の侵入を受け入れている時点で……敗者だ。弱者だ。負け犬だ」

塩見からの意見を空木は黙って受け入れるしかなかった。

「────────ああ、すまなかったみんな……」

そう言って、空木はみんなに頭を下げると自らの椅子に座り直す。

「いや、君の想いは分かってる。でも、見捨てよう」

真丸が空木を宥めるように言うと、生徒会である大台ケ原が話を元に戻した。

「しかし、魔王軍が“鍵”をどうするかにもよるな。やつらが求める物は我が国にしかない。
だから、この国を潰した後で他国をどうするか……」

その大台ケ原の意見に大楠はハッと気づいたような顔になった。

「では、国民は外国に保護してもらうってのは…………」

彼女は気づいたのだ。
さすがの他国も、我らが戦争を終えて疲れきった状態で国討ちしようとしたとしても、国内に大量のジャパルグ国民がいれば、ジャパルグ国民に革命でも起こされるかもしれない。
それに大陸内で船での移動代などもない。
ただバイオ団のいる北東の国以外に国民を避難させなければよい。
こうすれば、王都に攻め入られても心配はない。



 しかし、大楠の考えなどお見通しなのか。
付喪連盟副会長が大楠に向かって悔しそうに言う。

「いや、そういうのは国の上層部が決めることだ。我々で決めることではない。
だが、おそらく王都付近は戦場になると考えるべきだ。鍵の獲得候補者がいるからな」

「それやったら、国民問題は置いといて、まず潜入する四方と王都に分けないかんね」

紅葉が提案すると、三原がアッと思い出したように言葉を発する。

「ああ、言っておくが、吾はどちらに行くかは事前に伝達できん。
諸事情だ。最悪の場合は鏡を使って変わってもらうぞ」

三原の発言内の彼の参戦条件に塩見は少し不満を持ったようで、三原を睨み付けながら彼に反論する。

「諸事情?
そんなことが許されるわけがないだろ?」

「傾奇者ごときに力を貸すほど安くはないのだ。因縁のために吾は貴様らに協力してやっていた事を忘れたか?」

互いに睨み合う2人。
そこで一触即発しそうな雰囲気の2人を大楠が言葉で押さえる。

「まぁ、あなたのお陰で今までは色々と出来ましたから……。構わないと私は思いますよ?」

それに続いて付喪連盟副会長も彼らの喧嘩を止めるために話題を変える。

「よし、分かった。なら三原の持ち場は決めない。では、他の9人はどうする?」

付喪連盟副会長がみんなに組分け方法を尋ねると、まず大台ケ原が口を開いた。

「なら、生徒会は3人で1つにまとめてもらいたい。我らは全体で1つの王レベル」

三原に続いて生徒会まで……。
もう少し考えながら配役を決めるべきだと考えていた付喪連盟副会長であったが、敵がどんなやつか分からない状態では何も考えることはできない…と諦めて、ため息を吐きながらみんなに伝えた。

「分かった分かった。もう勝手にしても構わん。どうせ情報が少ない中で戦うのは厳しいからな」

「それじゃあ、組分けをしましょう。各2組ずつ」

敵がどんなやつかは分からないため、組分けは相性やその日の気分や余り合わせ。
適当。
ほんとに適当。
国の命運をかけたこの国の最高勢力達、戦士をまとめて魔王軍を討つリーダー達に作戦など無い。
心にあるのはただ1つ。
誰が幹部を討ち取るか。
誰が一番最初に魔王を討ち取るか。
国の平和や仲間の敵討ちもあるが、一番心の支えとなっているのは、名誉。待遇。名声。
魔王首取り合戦は彼らの欲望と共にある。



 数分後。
それぞれが配役を決め終わり、三原が代表でこの会議を閉めることとなった。
三原は椅子から立ち上がり、この場にいる全員の顔色を伺った。
見回すと、みんな覚悟に満ち溢れた顔つきをしている。
その顔を見て三原は少し安心し、呼吸を整えると演説を始めた。

「これより数日間、吾らは託されようこの国の命運を。
───さぁ優れた者達よ。使命を背負った戦士達よ。刻は来た。
敵は諸悪の根元魔王軍。人類という種のために未来のために吾らが国を後世まで残すのだ。
これより魔崩叡者霊興(まほうえいしゃれいきょう)大戦…通称ラスバルム大戦。
開戦である!!!!」

魔崩叡者霊興大戦……ラスバルム。
三原が名付けた名前だが、彼は紅葉のように自分が名付けたアピールは行わない。
頂点とはすでに高き場所にいるのである。

「おお、三原がいつも以上に張り切っている。いつもこれ程やる気を見せてくれればありがたかったのだが……。
ごほんッ、それではこれで王レベル会議を閉会する。
次に会う時はみな戦争が終わった後だ。
全員でこの場に集まっていることを祈るよ」

王レベルのみんなにそう言って付喪連盟副会長はこの会議室から立ち去る。
副会長もお元気で………とその会議室に残された王レベル達は思いながら、三原以外彼に向かって頭を下げた。
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