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第13章 どうやら犯人は八虐の不道のようです。

もうひとつの秘密

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 「もう逃げられないし、言い訳もさせないからな犯人。全部あいつの携帯電話からの通話で聞いてたよ。
まさか、あんたが……信じたくはなかったけど。あんたが犯人だったとはな!!」

鈴木に対して、俺は怒っていた。
彼は簀巻を殺したんだ。
簀巻との会話から断末魔、王レベルの2人との戦いまで全てが聞こえていたのだ。
許せない。許せない。許せない。
彼は俺たちを騙して、平然と人を殺し続けてきたのだから。
簀巻もあの時の数市から派遣された部隊達も、他の何の関係もない犠牲者も…。
この目の前にいる男がスポンジマンの能力で殺してきたのだ。
この平然とした態度をとっている男が…。

「君たち………残念だよ。私は本当にあの場所が好きだったんだ。死神さんが死んだときは本当につらかった。あの場所は第2の家のような場所だったんだが」

そうやって、悲しそうな表情で俺たちを見てくるが、そんなの全く心から信用できるわけがない。
なぜなら、今まで俺は彼を信用していたのだから。
それを急に裏切られたのだ。

「───覚悟してもらうよ鈴木さん。個人的な恨みは裏切られた事と簀巻の事だが……。
殺された人々の敵討ち分は簡単には死なせないからな」

俺はメガネをかけて一歩、犯人に近づく。

「──切り抜けるには少々面倒だが……。店長と妙義以外は仕方がない」

逆に犯人は一歩後ろに足を退く。
そして、そのまま睨み合う2人。
それはまるで西部劇のガンマンのように攻撃の瞬間を待っているのだ。



 睨み合った2人の眼が光る。

「スポンジマン!!」
「『10円パンチ』!!」

スポンジマンは俺の頬に拳を喰らわせて、反対に俺はスポンジマンの頬に拳を当てる。
しかし、それだけでは終わらない。
スポンジマンはその状態で俺の頭を掴んでくる。
そして、そのままスポンジマンは俺の腹にパンチを繰り出した。

「クッ………」

腹に来る痛み。
でも、俺とスポンジマンの殴り合いは止まらない。
互いに振るわれる拳、その軌道を変えながら繰り広げられる殴り合い。
怒りの力でドーピングされた俺の力vs戦いを学習したスポンジマン。
その勝負はなかなか終わらない。



 一方、こちらは妙義と犯人。

「──まったく、どうするか。こりゃもう少し知力を鍛えなきゃいけないなぁ」

血に染まった服を気にしながらも彼は頭を抱えて悩んでいた。
スポンジマンは問題なくあの殴り合いに勝ってくれるだろうが、その後ここから安全に逃げ出す手段がない。
目の前にいる妙義をどうにかしなければ、逃げ出すチャンスはないのだから。
しかし、そう簡単に妙義が彼を逃がしてあげる訳がないのだ。
こちらから彼女を攻撃してしまっては後味が残る。
犯人にとって、妙義という存在は家族のような傷つけたくない程の存在だからだ。
彼女を傷つけずにここから安全に逃げ出す。
両方を完璧にやりきらねばならない。

「なぁ、見逃してくれないかい?
私は君に怪我をさせたくない」

犯人は決して店長と妙義を傷つけたくはないと思っているようだ。

「見逃すわけがないだろ。
でも、1つだけ聞きたいことがあるんだ?」

妙義には何か犯人について気になることがあるようだ。

「ああ、構わないよ。なんだい?」

「あなたの本名を教えて欲しい」

本名?
妙義は何故犯人の本名を知りたがっているのだろうか。

「鈴木だけど……。
それがなにか問題でもあるのかい?」

でも、その鈴木という名前すら、偽名だということは妙義にも分かっている。

「それはない。別に隠さなくても構わないぞ。私はあなたの本当の本名を知りたいんだ」

妙義にはバレていると悟った犯人は急に気分を暗くして、ため息をつく。

「───あの過去は隠しておきたかった。
君がそう言うなら知っているのかな?
はぁ…せっかく隠し通してきたのに。これじゃあ今までの努力が台無しじゃぁないか」

「私が気づいたのはあの携帯から聞こえてきたあなたの生い立ちからだよ。私も信じたくはなかった。でも、あの話は明らかに………」

妙義にはなにか思うところがあるらしい。
とてもツラそうな表情で、犯人を見つめる妙義。

「──こんな日が来るとは思ってもみなかったよ。私は君に危険が及ばないように陰ながら見守っていたんだが……。まったく、こんなハードな日は初めてだよ。最悪の気分だ」

右手で頭を抱えて、犯人はうなだれている。

「───私だって人生最悪の日だよ。兄さん」

妙義が口に出した兄さんという単語。
前に妙義の親父さんから聞いていた家庭の事情。
母の死をきっかけに家出をしてしまった妙義の兄。
それが今、目の前にいる犯人…………鈴木さんだったと言うのだろうか。
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