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第11章 どうやら殺人鬼はスポンジマンのようです。
残酷
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しばらくして、靄が消え始め隙間から水晶玉の奥が見えるようになった。
そこに映っていたのはどこかの薄暗い部屋。
その部屋に人の姿はないが、並べられた皿の上の料理から湯気が上がっているのでどこかに行っているようだ。
どこにでもある普通の人の住んでいる部屋なのだが。
その部屋の中央には赤く染まった球体が置いてある。
「なぁ、簀巻。お前この付喪神の正体を探るつもりが、別の気になる人の部屋でも映してるんじゃないよな」
もしもその通りなら即刻警察に付き出せるレベルの盗撮者だが、
「おかしい。僕は今、確かにあの付喪神の過去を映しているんだけど。時間が違うのかな?」
簀巻が困った顔をしているので、盗撮しているのでは無いようだ。
すると、妙義が何かに気がついた様子で水晶玉を眺めていた。
「なぁ、みんな。
これって逆再生しているんだよな?
あの机の下を見てみろ。
何かが動いているんだ」
妙義に言われた場所を見てみると、確かに小さな何かが蠢いている。
まるで何かの破片の様な物体。
真っ赤に染まってはいるが、小さな物体が部屋の中央に向かって蠢いているのだ。
「ねぇ、明山。これって何かしらね」
「分からない。しかし、あの付喪神の過去を映しているなら、何であいつが現れないんだろうな」
それから3分間待っても、付喪神の姿は現れない。
ただ小さな赤い破片の数が増えて、それらがみんな中央に向かって蠢いているだけ。
この光景はいったい何を表しているのだろう。
その時、大量の赤い破片の中の一部を見ていた英彦の顔色が急に悪くなっていた。
「ヒィッ……!?」
まるで怖いものでも見たかのように冷や汗を流している。
英彦は付喪神に関する何かを見つけたのだろうか。
「どうしたのよ?」
黒が心配そうに英彦に話しかける。
すると、英彦はある一部の破片を指差しながら……。
「あの赤い破片、指輪が付いているんです。」
「「「「なっ…………!!?」」」」
全員が英彦の指差す先を見る。
そこに映っていたのは、指輪がくっついた赤い破片。
「そっ……そういえば、この破片の数が増えているな」
先程よりも沢山の赤い破片が部屋の中央に向かって蠢いている。
そして、その破片は部屋の中央にある赤く染まった球体に集まっているのだ。
この時点で全員がこの光景は只事ではないという事を理解していた。
「なぁ、簀巻。もう少し早送りにできるか?」
「あっああ、構わない」
そう言って簀巻は水晶玉に映っている逆再生のスピードを上げた。
すると、水晶玉に映し出された光景にも変化が起き始める。
部屋のさまざまな所から現れた赤い破片はその後も増え始めて、すべてが部屋の中央の赤く染まった球体に向かって蠢いているのだ。
そして、まるでジグソーパズルの様にジワリジワリと形を作ろうとしている。
「ねぇ、これって」
「ああ、まさかこれが」
「おいおい、これは嘘だろ?」
「あああ、これ以上はもう見たくない」
「信じられない」
その光景は俺達全員の心に後悔と恐怖を刻み込んだ。
まず、赤い破片が集まって出来たのは足。
そして、赤く染まった球体の周りを囲むように、下半身が築かれていき……。
続いて上半身。
腕、手、首、
そして、どこからか白い二つの丸いものが向かってきて……。
首の上に築かれていったモノの中に入る。
また、どこからか細長い糸のようなモノが大量に中央に向かって飛んできて、築かれていったモノにくっついていった。
そう、出来上がったのは人間。
たぶん、内部から破裂して粉々に吹っ飛んだのだろう。
あの赤く染まった球体に全身の血などの水分を吸収されて……。
その殺害方法はとても人間のする行為ではなかった。
そして、その次の瞬間、そこにいたのはあの付喪神であった。
逆再生なので、後ろ向きに歩いているように見える。
しかし、どうやらその被害者と付喪神に面識はないようだった。
奴がこの部屋に現れた時に、被害者は慌てる素振りも見せなかったのである。
被害者には何の罪も起こしていないように見える。
つまり無差別殺人。
それが最も恐ろしいのだ。
「なぁ、これより先はどうする?」
誰も恐怖で動けなくなった状態で、簀巻が聞いてきた。
「これより先だってどうせ同じような光景が映るだけだ。
これで確定したな。この国を脅かしている殺人鬼。変死体を残していく犯人。何年も何年も何人も何人も殺害していた犯人」
俺はそう言いながら、拳を強く握りしめた。
まさか、これほどまで残酷な殺害方法で人を殺めていたとは思ってもいなかったのである。
きっと何らかの方法でジワジワと身体中の水分を奪い、あの球体に吸わせていたのだ。
そして、それが膨張して……。
「みんな、これ以上はやめよう。別の日にまた改めて」
すると、周りの雰囲気を感じ取って簀巻が全員を寝室へと急がせた。
もちろん、誰もその判断に反論するものはいない。
そうして、全員が寝室へと入っていくのを見て、簀巻は水晶玉の能力を解除した。
そこに映っていたのはどこかの薄暗い部屋。
その部屋に人の姿はないが、並べられた皿の上の料理から湯気が上がっているのでどこかに行っているようだ。
どこにでもある普通の人の住んでいる部屋なのだが。
その部屋の中央には赤く染まった球体が置いてある。
「なぁ、簀巻。お前この付喪神の正体を探るつもりが、別の気になる人の部屋でも映してるんじゃないよな」
もしもその通りなら即刻警察に付き出せるレベルの盗撮者だが、
「おかしい。僕は今、確かにあの付喪神の過去を映しているんだけど。時間が違うのかな?」
簀巻が困った顔をしているので、盗撮しているのでは無いようだ。
すると、妙義が何かに気がついた様子で水晶玉を眺めていた。
「なぁ、みんな。
これって逆再生しているんだよな?
あの机の下を見てみろ。
何かが動いているんだ」
妙義に言われた場所を見てみると、確かに小さな何かが蠢いている。
まるで何かの破片の様な物体。
真っ赤に染まってはいるが、小さな物体が部屋の中央に向かって蠢いているのだ。
「ねぇ、明山。これって何かしらね」
「分からない。しかし、あの付喪神の過去を映しているなら、何であいつが現れないんだろうな」
それから3分間待っても、付喪神の姿は現れない。
ただ小さな赤い破片の数が増えて、それらがみんな中央に向かって蠢いているだけ。
この光景はいったい何を表しているのだろう。
その時、大量の赤い破片の中の一部を見ていた英彦の顔色が急に悪くなっていた。
「ヒィッ……!?」
まるで怖いものでも見たかのように冷や汗を流している。
英彦は付喪神に関する何かを見つけたのだろうか。
「どうしたのよ?」
黒が心配そうに英彦に話しかける。
すると、英彦はある一部の破片を指差しながら……。
「あの赤い破片、指輪が付いているんです。」
「「「「なっ…………!!?」」」」
全員が英彦の指差す先を見る。
そこに映っていたのは、指輪がくっついた赤い破片。
「そっ……そういえば、この破片の数が増えているな」
先程よりも沢山の赤い破片が部屋の中央に向かって蠢いている。
そして、その破片は部屋の中央にある赤く染まった球体に集まっているのだ。
この時点で全員がこの光景は只事ではないという事を理解していた。
「なぁ、簀巻。もう少し早送りにできるか?」
「あっああ、構わない」
そう言って簀巻は水晶玉に映っている逆再生のスピードを上げた。
すると、水晶玉に映し出された光景にも変化が起き始める。
部屋のさまざまな所から現れた赤い破片はその後も増え始めて、すべてが部屋の中央の赤く染まった球体に向かって蠢いているのだ。
そして、まるでジグソーパズルの様にジワリジワリと形を作ろうとしている。
「ねぇ、これって」
「ああ、まさかこれが」
「おいおい、これは嘘だろ?」
「あああ、これ以上はもう見たくない」
「信じられない」
その光景は俺達全員の心に後悔と恐怖を刻み込んだ。
まず、赤い破片が集まって出来たのは足。
そして、赤く染まった球体の周りを囲むように、下半身が築かれていき……。
続いて上半身。
腕、手、首、
そして、どこからか白い二つの丸いものが向かってきて……。
首の上に築かれていったモノの中に入る。
また、どこからか細長い糸のようなモノが大量に中央に向かって飛んできて、築かれていったモノにくっついていった。
そう、出来上がったのは人間。
たぶん、内部から破裂して粉々に吹っ飛んだのだろう。
あの赤く染まった球体に全身の血などの水分を吸収されて……。
その殺害方法はとても人間のする行為ではなかった。
そして、その次の瞬間、そこにいたのはあの付喪神であった。
逆再生なので、後ろ向きに歩いているように見える。
しかし、どうやらその被害者と付喪神に面識はないようだった。
奴がこの部屋に現れた時に、被害者は慌てる素振りも見せなかったのである。
被害者には何の罪も起こしていないように見える。
つまり無差別殺人。
それが最も恐ろしいのだ。
「なぁ、これより先はどうする?」
誰も恐怖で動けなくなった状態で、簀巻が聞いてきた。
「これより先だってどうせ同じような光景が映るだけだ。
これで確定したな。この国を脅かしている殺人鬼。変死体を残していく犯人。何年も何年も何人も何人も殺害していた犯人」
俺はそう言いながら、拳を強く握りしめた。
まさか、これほどまで残酷な殺害方法で人を殺めていたとは思ってもいなかったのである。
きっと何らかの方法でジワジワと身体中の水分を奪い、あの球体に吸わせていたのだ。
そして、それが膨張して……。
「みんな、これ以上はやめよう。別の日にまた改めて」
すると、周りの雰囲気を感じ取って簀巻が全員を寝室へと急がせた。
もちろん、誰もその判断に反論するものはいない。
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