どうやら主人公は付喪人のようです。 ~付喪神の力で闘う異世界カフェ生活?~【完結済み】

満部凸張(まんぶ凸ぱ)(谷瓜丸

文字の大きさ
上 下
173 / 294
第11章 どうやら殺人鬼はスポンジマンのようです。

お義父さんとは呼ばせない

しおりを挟む
 とるるるるん。とるるるるん。ガチャッ。
ここは数市にある高級住宅。
とある一室に電話のベルが鳴り響く。
彼はその受話器を取って電話の相手と話を始めた。

「はい、あっ、お前か。おい、あいつはお前の差し金だな。どういうつもりだぁ?
なっ、それは、お前本当か?
しかし、いい加減にしてほしいな。
私は別に構わないが。ああ、分かった!!」

そう言って彼は電話を切ると、辺りを見渡して周囲に人がいなかったかを確認し始めた。
そして、安全を確認すると何もなかったかのようにその電話を後にした。



 奥の部屋から戻ってきた彼は襖を閉めると、側にいた男を睨み付けながら座布団の上に座った。

「いや~、あの妙義は……妙義さんは?」

「私の娘を貴様のような軟弱者に会わせるわけにはいかんのだ。
私だって早く後継者を探したいが……。娘の彼氏として私は貴様を認めるわけにはいかない!!!」

どうやら、やはり勘違いされているようだ。
俺は妙義の彼氏ではないのだから。
しかし、この妙義の親父は俺が付き合っていると勘違いしているようだ。

どうして、こうなったかと言うと……。
あの商店街で現れたヘリコプターはどうやら妙義を心配して送ったものらしく。
妙義を迎えに行く妙義家の専用のヘリのようだ。
彼女が親父に黙って墓参りに行った事で、俺はその戦犯(彼氏)として認識されている。
それだけならまだ挽回の余地はあったのだが。
この妙義の親父はまったく人の話を聞かないのだ。

「だから、俺は妙義さんと付き合っていません。ただボディーガードを頼まれただけで……」

「ほぉ、それで、餡蜜屋にねぇ~」

こいつ、完全に疑っている。
最初から怪しいと思っていたんだ。
この高級住宅に着いた後、店主と妙義とは別行動にされた時に早く気づいていれば……。こんな和室に俺と妙義の親父だけとは……。
すると、妙義の親父は俺に話題を振ってくる。

「なぁ、知り合って何年になる?」

「えっと、半年以内だったかな」

「嘘をつくな!!
どうせ1年以上前からだろ。
1年…1年…1周年以上なんだろ?」

どうやら、俺のあやふやな発言に妙義の親父はイラついてしまったようだ。
やってしまった。俺としての出会った期間を言ってしまった。
確かに、明山があいつとどのくらい知り合っているかなんて知らない。
というか、この妙義の親父はどんだけ首を突っ込んで来るのだろう。これ以上は耐えれそうにない。
何とかして誤解を解かなければ……。



 「あのですね。俺は妙義さんとはお付き合いしてません。それじゃあ、これで」

そう言って俺は座布団から立ち上がってこの部屋から出ようと考えていたところ。
妙義の親父はスッキリしたような表情を浮かべて最後まで俺に嫌みを言ってくる。

「そうだ、帰れ帰れ!!
私の軍事企業の次期社長は、上級貴族階級しか見合わない。
貴様のような貧乏人は必要ないのだ」

当たり前だ。
こっちだって帰りたくてうずうずしてたんだ。
この妙義の親父とはもう関われない。
そうして、俺は振り返り部屋を出ようとしたのだが。



 待てよ。美人…後継者…軍事企業…社長。
最初の台詞からしても、この妙義の親父は早く社長をやめたいのだろうか。
だから、会社を継いでくれる後継ぎを欲しがっているのか。…となれば取るべき行動は一つだ。

「お義父さん、もう一度 僕にチャンスをください。
僕は過去に何度も魔王軍幹部と戦い、勝利を納めてきました。
あんな奴らよりも、娘さんも会社も安全を保障できます。
あいつら、金で解決しようとしますからね~。
今の世は実績ですよ」

「そうだな。それでも、貴様はダメだ」

これほどの実績がありながらも、何故ダメなのだろうか。
俺にはまったく理由が分からないのだ。
やはり、先程のやり取りで嫌われてしまったのだろうか。
すると、ため息をついた妙義の親父は熱弁を始めた。

「いいか?
この都市は百年も前は普通の町だった。
しかしある日、一人の男が異世界より舞い降りた。
さまざまな近代的技術を伝えにな。
彼は武器や道具、兵器や乗り物等を伝えてくれた。
そうして、この都市は数年でここまで進歩したのだよ」

なんだろう。いかにも語りたいオーラがあふれでている。
それに異世界という言葉にも俺は耳を傾けてしまった。
俺以外にも過去にこの世界に来た奴がいたのだろうか。
そんな奴が来て普通の町をここまで近代的にしたのなら、そいつはチート持ちか、チート付喪人なのだろう。
武器だって、兵器だって、日用品だって……。
今や、その大半は数市が生産元らしいのだ。
つまり、そいつの偉業は凄まじい物である。

「その近代的技術に溢れた町で貴様は今までのように暮らせるか?
日々、技術が進歩して変化する物事。歯車の一つでも欠ければ崩れる企業。貴様にはそんな都市で生きる自信があるか?」

驚異的な技術力。
他の都市とは世界観が違う町。
近未来感溢れるこの都市。
確かに、この都市で生きてきた者からの想いは重かった。

「私の娘と付き合うのは、私の後を継ぐ事は……。そういった責任と変化に対応しなければならない。
生半可な者が手を出す世界ではないのだ!!」

「なッ………」

俺は何を考えていたのだろう。
後継者になれば金が手に入るなんて、欲望を持って挑む事ではなかったのだ。
この都市の歯車となって、自分の命を燃やす。
俺にはその覚悟が足りなかったのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

処理中です...