170 / 294
第11章 どうやら殺人鬼はスポンジマンのようです。
お墓参りに行きたい
しおりを挟む
早速、車に乗り込むとドアは閉められ、車は急発進し始めた。
「しかし、驚いたよ。お前がこんな車に乗ってくるなんて……」
「何と言うか。私の父が金持ちだというだけで……。その、みんなには……」
水色のパーティードレスを着た妙義は少しだけ赤面し、うつむきながら答える。
俺は、この彼女が今まで隠し通してきた事を言いふらしたかったが、流石に彼女が泣いてしまうと思い、その計画を実行しようとは思えなくなってしまった。
きっと彼女にも何かしらの考えがあっての事だったのだろう。
こんな事なら知らないままの方が過ごしやすかったのだが、知ってしまったものは仕方がない。
「まぁ、別にいいけど。なぁ、どうして今日は俺を呼びつけたんだ?」
早速、本題に入ることになる。
秘密をバラすような真似までして俺を呼びつけたのには何か理由があるはずである。
妙義は深呼吸を行って、少しだけ間を空けると本題に入った。
「実はな。まぁ、見ての通り私は金持ちの父を持つ娘だ。
私には母がいてな。
もう私が覚えていないほど前に亡くなったんだ。
だが、最近の父は忙しそうで、毎月行っていた墓参りには2人で行けそうにない。それに私が勝手に行ったら、怒鳴られてしまう。
だから、明山に付き添いとして来て欲しいんだ。
魔王軍幹部を何人も相手にしてきたお前ならボディーガードとしても優秀そうだからな」
「はぁ、しょうがねぇな」
母のお墓参りに付き添って欲しい…という願いは断るにも断りにくかった。
俺も自分の母には感謝しているし、尊敬しているからだ。
しかし、「彼女は勝手にお墓参りに行っても大丈夫なのだろうか」と心配にはなるが、きっと彼女の父も分かってくれるだろう。
俺がそんな事を考えていると、妙義は少し微笑んでいる。
「どうした?
俺の顔になんか付いてたか?」
「いや、長い間待たせたようだから、不機嫌じゃないかな…と思って見てただけだよ」
自覚しているならもっと早く来て欲しいものだ。
俺はふと今まで聞いてみたかった事を聞けるチャンスなのではと思い、話題を作ろうと見せかけて彼女に質問してみる事にした。
「なぁ、そういえば、ずっと思ってたんだけど。
馬車が主流の都市と、車が主流の都市があるじゃないか。あれって何で統一しないんだ?」
「それはな。この国は王都を囲むように円みたいに、いくつかの都市によって構成されているだろ?
その都市はそれぞれ特徴を持っているんだ」
特徴と言えば、
歴史ある和風な都市の社市。
モンスターや外国との交流が盛んな都市の英市。
自然豊かで、野生のモンスターとかもいそうな都市の理市。
都会と田舎の中間くらいで、付喪神に詳しい都市の国市。
…などの様な事だろうか。
俺がそんなそれぞれの町の特徴を頭に浮かべながら考えていると、妙義は再び話を再開し始めた。
「だから、その都市ごとの特徴を尊重するために統一はしないんだ。市を愛している市民もそれには同意している。
だから、馬車が主流の都市もあれば、車が主流の都市もあるんだよ」
その場所の特徴を守る、市民も同意している。市民たちの何と素晴らしい愛市心だろうか。
自分の色に染まりきって、それ以上大胆に染まらないというのは難しい事だとは思う。
しかし、この国はそれをやってのけてしまったのだ。
俺はこの世界…の住民を少し侮っていたようだ。
俺がこの世界の事に感心していると、妙義は窓から外の景色を見る。
「さぁ、そろそろだ。」
妙義がそう言ってしばらくすると、車は急に止まった。
「着いたのか?」
外に出ようとする妙義を見て、窓の外を覗いてみるとそこはお寺だった。
妙義はドアを開けて地面に降りると、運転席の方へと歩いていった。
俺も車から降りると、運転手と妙義はまだ話をしている。
なんの話をしているかはここからじゃ聞こえないが、真剣そうに話をしているので呼び止める事も難しそうだ。
今日だけでも待たされるのは2回目だったが、今度は先程よりは話し合いが早く終わったらしい。
妙義は運転手のもとを離れてこちらに向かって歩いてきているのだ。
「すまない、待たせてしまった。それじゃあ着いてきて……」
そう言って彼女は俺の片腕を掴むと、その手を引っ張ってお寺の中へと向かうのであった。
「しかし、驚いたよ。お前がこんな車に乗ってくるなんて……」
「何と言うか。私の父が金持ちだというだけで……。その、みんなには……」
水色のパーティードレスを着た妙義は少しだけ赤面し、うつむきながら答える。
俺は、この彼女が今まで隠し通してきた事を言いふらしたかったが、流石に彼女が泣いてしまうと思い、その計画を実行しようとは思えなくなってしまった。
きっと彼女にも何かしらの考えがあっての事だったのだろう。
こんな事なら知らないままの方が過ごしやすかったのだが、知ってしまったものは仕方がない。
「まぁ、別にいいけど。なぁ、どうして今日は俺を呼びつけたんだ?」
早速、本題に入ることになる。
秘密をバラすような真似までして俺を呼びつけたのには何か理由があるはずである。
妙義は深呼吸を行って、少しだけ間を空けると本題に入った。
「実はな。まぁ、見ての通り私は金持ちの父を持つ娘だ。
私には母がいてな。
もう私が覚えていないほど前に亡くなったんだ。
だが、最近の父は忙しそうで、毎月行っていた墓参りには2人で行けそうにない。それに私が勝手に行ったら、怒鳴られてしまう。
だから、明山に付き添いとして来て欲しいんだ。
魔王軍幹部を何人も相手にしてきたお前ならボディーガードとしても優秀そうだからな」
「はぁ、しょうがねぇな」
母のお墓参りに付き添って欲しい…という願いは断るにも断りにくかった。
俺も自分の母には感謝しているし、尊敬しているからだ。
しかし、「彼女は勝手にお墓参りに行っても大丈夫なのだろうか」と心配にはなるが、きっと彼女の父も分かってくれるだろう。
俺がそんな事を考えていると、妙義は少し微笑んでいる。
「どうした?
俺の顔になんか付いてたか?」
「いや、長い間待たせたようだから、不機嫌じゃないかな…と思って見てただけだよ」
自覚しているならもっと早く来て欲しいものだ。
俺はふと今まで聞いてみたかった事を聞けるチャンスなのではと思い、話題を作ろうと見せかけて彼女に質問してみる事にした。
「なぁ、そういえば、ずっと思ってたんだけど。
馬車が主流の都市と、車が主流の都市があるじゃないか。あれって何で統一しないんだ?」
「それはな。この国は王都を囲むように円みたいに、いくつかの都市によって構成されているだろ?
その都市はそれぞれ特徴を持っているんだ」
特徴と言えば、
歴史ある和風な都市の社市。
モンスターや外国との交流が盛んな都市の英市。
自然豊かで、野生のモンスターとかもいそうな都市の理市。
都会と田舎の中間くらいで、付喪神に詳しい都市の国市。
…などの様な事だろうか。
俺がそんなそれぞれの町の特徴を頭に浮かべながら考えていると、妙義は再び話を再開し始めた。
「だから、その都市ごとの特徴を尊重するために統一はしないんだ。市を愛している市民もそれには同意している。
だから、馬車が主流の都市もあれば、車が主流の都市もあるんだよ」
その場所の特徴を守る、市民も同意している。市民たちの何と素晴らしい愛市心だろうか。
自分の色に染まりきって、それ以上大胆に染まらないというのは難しい事だとは思う。
しかし、この国はそれをやってのけてしまったのだ。
俺はこの世界…の住民を少し侮っていたようだ。
俺がこの世界の事に感心していると、妙義は窓から外の景色を見る。
「さぁ、そろそろだ。」
妙義がそう言ってしばらくすると、車は急に止まった。
「着いたのか?」
外に出ようとする妙義を見て、窓の外を覗いてみるとそこはお寺だった。
妙義はドアを開けて地面に降りると、運転席の方へと歩いていった。
俺も車から降りると、運転手と妙義はまだ話をしている。
なんの話をしているかはここからじゃ聞こえないが、真剣そうに話をしているので呼び止める事も難しそうだ。
今日だけでも待たされるのは2回目だったが、今度は先程よりは話し合いが早く終わったらしい。
妙義は運転手のもとを離れてこちらに向かって歩いてきているのだ。
「すまない、待たせてしまった。それじゃあ着いてきて……」
そう言って彼女は俺の片腕を掴むと、その手を引っ張ってお寺の中へと向かうのであった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
転生王子はダラけたい
朝比奈 和
ファンタジー
大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。
束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!
と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!
ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!
ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり!
※2016年11月。第1巻
2017年 4月。第2巻
2017年 9月。第3巻
2017年12月。第4巻
2018年 3月。第5巻
2018年 8月。第6巻
2018年12月。第7巻
2019年 5月。第8巻
2019年10月。第9巻
2020年 6月。第10巻
2020年12月。第11巻 出版しました。
PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。
投稿継続中です。よろしくお願いします!
ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜
蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。
魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。
それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。
当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。
八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む!
地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕!
Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
召喚士の嗜み【本編完結】
江村朋恵
ファンタジー
本編1th~4th完結
蛇足編5th~8th
召喚士達の住む大地がある。
──召喚獣は強大なドラゴンからペガサスまで、様々な幻獣──。
中でも長い歴史のあるガミカ国。
13歳の誕生日を迎えたパールフェリカ姫は初めての召喚の儀式を行う。
そして、召喚されたのは
── なぜか──
山下未来希(ヤマシタミラノ) 27歳 元派遣社員、現無職。
召喚獣に、人類の敵・モンスターも沢山住む大地にやって来たクールな元OLミラノ。
ミラノは“召喚獣”として“うさぎのぬいぐるみ”の格好に……。
パールフェリカ姫のイケメンな兄達、シュナヴィッツやネフィリムに振り回されつつ……歯車は動き始める。
神による巨大な召喚獣が暴れはじめて――。
※各プロローグのみ一人称、読み飛ばしOK
・アリアンローズ新人賞(女性向け)一次選考通過
・MFブックス&アリアンローズ小説家になろう大賞2014 MFブックス部門(男性向け)一次選考通過
・第六回ネット小説大賞一次選考通過
○本編1st~4thまで完結済み
一人称は各プロローグのみ、他は三人称です。
○蛇足編5th~8th執筆中。
形式は本編と同じ
感想欄は閉じたり開いたりしてます。
◆個人サイトからの転載。
なろうさん
https://ncode.syosetu.com/n6108p/
★空行ありバージョン↓ノベプラさん
https://novelup.plus/story/268346707
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
物書き屋~つくもがみものがたり~
鈴木しぐれ
キャラ文芸
『物の想いをお書きいたします』 紅茶の香りに包まれたブックカフェ、物書き屋。物の想いを本にするという店主の柳は、大家の桜子と共に日々執筆の依頼を受ける。 この二人は人ではなく”付喪神” 人も、付喪神も訪れるそこでは、物を巡る出来事が起こる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる