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第10章 どうやらミハラは八虐の大不敬のようです。
迫り来る絶望
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あれから何年たっただろうか?
彼は何百年も前から任務を遂行しようとしていた。
それはこの世のあらゆる世界の過去 未来 現在 が記された禁断の書物。
宇宙が滅びても消え去らない書物。
創歴書のオリジナルを手に入れることである。
だが、天界の神が保管していると言われているその書の入手は不可能に近い。
彼はそのために何百万以上という自分を犠牲にした。
鏡に自分の姿を映して死んでいく日々。
彼がどのような感情を抱きながら戦ったかは分からない。
そして、今から10年前。
なぜか彼は創歴書を手に入れていた。
不可能を可能としたのだ。
何百万という自分の死体を踏み越えて…。
何百万という死を体験して…。
──────────────────────────
「さぁ、どうする? 叛逆者」
「1と無限。勝算は猿でも理解できるがな」
ミハラ達の忠告がグッシリと俺にのし掛かってくる。
逃げても戦っても、殺されるのは目に見えている。
無限に増える事ができる敵のなんと恐ろしいことだろう。
今にも自分の心臓を剣で突き刺して自決したい。
「お前……いや、お前ら。そうか。こりゃ、この世界をここまで破壊できた訳だ」
俺は平然を装って彼らに言った。
集団戦略で世界制圧なんて……なんとも嫌な話である。
「では、そろそろ我も貴様は見飽きた。しかし、この世界も飽きてきたな。次は貴様の世界に行ってもよいかもしれん」
そう言ってミハラは俺を蔑むような目で見つめてくる。
俺の世界に来る。
それは俺のあの世界を滅ぼすというのだろうか。
「…………」
「そう、怒るな。旅とは良いものだぞ。叛逆者よ。
見るも珍しい新鮮な物を見る事ができる。
どの世界に行っても異なる物が見れる。
旅は我を飽きさせる事なき有意義な時をくれる」
そう言ってはいるが、こいつらは旅だけで終わるような奴ではないと思う。
「旅で巡る世界は広い、数も多い。そのぶん知識も多い。
貴様は万物を知ることは出来ぬだろうが、自分の世界で小さな事でも知識を得たいという意識が大切なのだ」
「貴様の世界は我を楽しませるものかな?
楽しみだ。貴様の世界に行けるのが」
「数百年間の任務で無駄にした時間を我のために使わねばな」
ミハラ達は完全にこの世界からいなくなってくれるのだが。
俺の世界に進軍するのだろう。
そして、世界を壊してまた次の世界に……。
無限を味わい尽くすまで彼らは止まらないのだ。
これ以上彼らを進ませてはいけない。
「悪いが、それはさせない。お前らの旅は此処で終着なんだ」
俺は死を受け入れる覚悟を決めた。
無限を倒すなんてできる気がしない。
勝つなんてできる訳がない。
だが、ここで俺が止めなければ誰が奴を止めるのだろうか。
別の世界を当てにしてはならない。
俺は腕が恐怖で震えるのを必死に抑えながら、自身の財布の中身を覗きこんだ。
中の小銭は少ない。
連戦続きでバイトも出来ずにお金を稼げていないからである。
この近くに銀行でもあれば、通帳から金を下ろすことができるのだが。
そもそも、職員がいないのでどうにもならないのだ。
生き残る確率0%の中、俺は自害よりも辛い道を進むのである。
彼らに向かって歩いているのだが、五百円モードで体力を使いきってしまい、フラフラとふらつきながら足を動かす。
しばらく歩き、財布の中から十円玉を取り出すと、俺はそれを勢いよく彼らに向かって投げ飛ばした。
「『十円ショット』」
投げ飛ばされた十円玉はまっすぐにミハラ達の方へと飛んでいく。
だが、銃弾の威力程の十円玉が迫って来ているのに奴はその場から逃げようとはしない。
それどころか奴はどこからか縦長な鏡を取り出した。
そして、その鏡をまるで盾の用に持っている。
まさか、それで十円玉を防ごうと言うのだろうか。
その行動に俺は目を疑ってしまった。
誰にも止められることなく、まっすぐに十円玉は鏡に向かっていく。
そして、十円玉が鏡に当たる。そう思ったときである。
十円玉は海に落ちた石のように、鏡の中へと入っていったのだ。
そう俺は忘れていたのだ。俺がどうやって鏡の世界へ来たのか。
鏡を出入り口にして入った事を忘れていた。
「しまった!?」
十円玉はこの世界から消えて、どこかの世界に持っていかれたのだろう。
どこかで誰かがあの十円玉を食らって死んでしまうのかもしれない。
「これで我には貴様らの攻撃が通じない事が分かっただろう?
やはり、口で伝えるよりは実践した方が良いな」
ミハラはそんな事を言って退屈そうにしている。
自分との力の差を少しずつ見せつけて、俺の心を壊したいのだろうか。
だが、そのお陰で、こいつらとの戦いに飛び道具は無意味だという事が分かった。
俺は再び財布から小銭を取り出すと、今度は俺の必殺技で仕留めようとしていた。
もちろん、手に持ったのは五十円玉。
俺は必殺技を放つ構えを取ると、僅かな希望に賭けて技名を言い放つ。
「『五十円波動光線』」
輝かしく眩しい光線が俺の掌から放出された。
彼は何百年も前から任務を遂行しようとしていた。
それはこの世のあらゆる世界の過去 未来 現在 が記された禁断の書物。
宇宙が滅びても消え去らない書物。
創歴書のオリジナルを手に入れることである。
だが、天界の神が保管していると言われているその書の入手は不可能に近い。
彼はそのために何百万以上という自分を犠牲にした。
鏡に自分の姿を映して死んでいく日々。
彼がどのような感情を抱きながら戦ったかは分からない。
そして、今から10年前。
なぜか彼は創歴書を手に入れていた。
不可能を可能としたのだ。
何百万という自分の死体を踏み越えて…。
何百万という死を体験して…。
──────────────────────────
「さぁ、どうする? 叛逆者」
「1と無限。勝算は猿でも理解できるがな」
ミハラ達の忠告がグッシリと俺にのし掛かってくる。
逃げても戦っても、殺されるのは目に見えている。
無限に増える事ができる敵のなんと恐ろしいことだろう。
今にも自分の心臓を剣で突き刺して自決したい。
「お前……いや、お前ら。そうか。こりゃ、この世界をここまで破壊できた訳だ」
俺は平然を装って彼らに言った。
集団戦略で世界制圧なんて……なんとも嫌な話である。
「では、そろそろ我も貴様は見飽きた。しかし、この世界も飽きてきたな。次は貴様の世界に行ってもよいかもしれん」
そう言ってミハラは俺を蔑むような目で見つめてくる。
俺の世界に来る。
それは俺のあの世界を滅ぼすというのだろうか。
「…………」
「そう、怒るな。旅とは良いものだぞ。叛逆者よ。
見るも珍しい新鮮な物を見る事ができる。
どの世界に行っても異なる物が見れる。
旅は我を飽きさせる事なき有意義な時をくれる」
そう言ってはいるが、こいつらは旅だけで終わるような奴ではないと思う。
「旅で巡る世界は広い、数も多い。そのぶん知識も多い。
貴様は万物を知ることは出来ぬだろうが、自分の世界で小さな事でも知識を得たいという意識が大切なのだ」
「貴様の世界は我を楽しませるものかな?
楽しみだ。貴様の世界に行けるのが」
「数百年間の任務で無駄にした時間を我のために使わねばな」
ミハラ達は完全にこの世界からいなくなってくれるのだが。
俺の世界に進軍するのだろう。
そして、世界を壊してまた次の世界に……。
無限を味わい尽くすまで彼らは止まらないのだ。
これ以上彼らを進ませてはいけない。
「悪いが、それはさせない。お前らの旅は此処で終着なんだ」
俺は死を受け入れる覚悟を決めた。
無限を倒すなんてできる気がしない。
勝つなんてできる訳がない。
だが、ここで俺が止めなければ誰が奴を止めるのだろうか。
別の世界を当てにしてはならない。
俺は腕が恐怖で震えるのを必死に抑えながら、自身の財布の中身を覗きこんだ。
中の小銭は少ない。
連戦続きでバイトも出来ずにお金を稼げていないからである。
この近くに銀行でもあれば、通帳から金を下ろすことができるのだが。
そもそも、職員がいないのでどうにもならないのだ。
生き残る確率0%の中、俺は自害よりも辛い道を進むのである。
彼らに向かって歩いているのだが、五百円モードで体力を使いきってしまい、フラフラとふらつきながら足を動かす。
しばらく歩き、財布の中から十円玉を取り出すと、俺はそれを勢いよく彼らに向かって投げ飛ばした。
「『十円ショット』」
投げ飛ばされた十円玉はまっすぐにミハラ達の方へと飛んでいく。
だが、銃弾の威力程の十円玉が迫って来ているのに奴はその場から逃げようとはしない。
それどころか奴はどこからか縦長な鏡を取り出した。
そして、その鏡をまるで盾の用に持っている。
まさか、それで十円玉を防ごうと言うのだろうか。
その行動に俺は目を疑ってしまった。
誰にも止められることなく、まっすぐに十円玉は鏡に向かっていく。
そして、十円玉が鏡に当たる。そう思ったときである。
十円玉は海に落ちた石のように、鏡の中へと入っていったのだ。
そう俺は忘れていたのだ。俺がどうやって鏡の世界へ来たのか。
鏡を出入り口にして入った事を忘れていた。
「しまった!?」
十円玉はこの世界から消えて、どこかの世界に持っていかれたのだろう。
どこかで誰かがあの十円玉を食らって死んでしまうのかもしれない。
「これで我には貴様らの攻撃が通じない事が分かっただろう?
やはり、口で伝えるよりは実践した方が良いな」
ミハラはそんな事を言って退屈そうにしている。
自分との力の差を少しずつ見せつけて、俺の心を壊したいのだろうか。
だが、そのお陰で、こいつらとの戦いに飛び道具は無意味だという事が分かった。
俺は再び財布から小銭を取り出すと、今度は俺の必殺技で仕留めようとしていた。
もちろん、手に持ったのは五十円玉。
俺は必殺技を放つ構えを取ると、僅かな希望に賭けて技名を言い放つ。
「『五十円波動光線』」
輝かしく眩しい光線が俺の掌から放出された。
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